Discover the 「風雅のブリキ缶」 written by tonkyu

科学と文芸を融合した仮説作品「風雅のブリキ缶」姉妹篇。街で撮った写真と俳句の取り合わせ。やさしい作品サンプルも追加。

弦音にほたりと落る椿かな(漱石)

2006年02月19日 16時30分02秒 | note 「風雅のブリキ缶」
 漱石の椿の句で作品に取り上げたのは、芭蕉の句「落ちさまに水こぼしけり花椿」との比較で、「落ちさまに虻(あぶ)を伏せたる椿哉」(明治30年)だった。タイトルの句は、明治27年に正岡子規へ宛てた手紙に添えた最も初期の作である。でも、やっぱり漱石風が出ているのは不思議。文体は、持って生れたものが大半なのであろう。
 なお、漱石に私淑した寺田寅彦は、後に、落ちさまに虻の句をモチーフに「空気中を落下する特殊な形の物体――椿の花――の運動について」(”On the motion of a peculiar type of body falling through air – camellia flower”)と題する英文論文を書いている。
 そして、その漱石風にも、もしかして自分で飽きがきていたかもしれない晩年の大正3年に、「藁打てば藁に落ちくる椿哉」「活けて見る光琳の画の椿哉」「飯食へばまぶた重たき椿哉」と詠み、大正4年に、自画賛として「椿とも見えぬ花かな夕曇」がある。写真は、漱石が同年に、京都祇園の野村みきとかいう芸伎さんに贈った画帖中の画である。美しい女性に贈るとて、漱石先生も椿に見えるか心配だったのかもしれない。
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