連休の頭の土日に伊東へ行った。まぶしいような快晴の天気に
伊東に行くならハトヤを口ずさみながらのドライブだった。白黒テレビの子供のころ、このコマーシャルで伊東といえばハトヤとすっかり洗脳されてしまった。しかし、子供のころ伊東に行く機会はなかった。ハトヤも永遠のテーマになっている。今回も、海岸線のハトヤホテルを横目に見ながら右折して伊東市街地を抜け山間の道に入り、高原の一角、一碧湖のほとりにあるインドネシア風のホテルに一泊した。
翌朝、なかなか美味しいホテルの朝食をすましてから、近隣へ散策に出た。周囲は閑静な別荘が立ち並ぶ。ホテルへの帰りがけの路上で、老犬を連れて杖を突いた老人がこちらに「こんにちは」と大きな声であいさつした。おや、どこかで聞き覚えのある声だと感じながら妻につづいてあわててあいさつを返すとき、顔がかち合って、それが往年の名優Ⅰ氏であると気がついた。高度経済成長期の貧しい家族の激動を描いたあの山田洋次監督の『家族』という映画で、倍賞千恵子さんの亭主役をした、癇癪持ちでぶっきらぼうな味をよく出していた俳優である。彼のいらいらとした貧乏ゆすりや眉間に深く刻まれたしわは、高度経済成長期の時間に追われる社会心理の象徴のようにも思われた。
ホテルをチェックアウトして、一碧湖の湖畔を周回して池田20世紀美術館へ行った。これもなかなかコレクションが良く、ミロ、ピカソ、コクトー、シャガール、ムンクらの秀逸な絵が展示してある。来場者も少なく、ゆっくり見てまわれた。それえにしても樹のわきに立つ私は、以前買った服がだぶだぶに見えるほどひょろりとやせ細って老いている。
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それからお椀を倒したような大室山を抜けて、山頂に東急のホテルがある高台まで来て、富士山を眺めた。妻は小さな富士山の撮影にとりわけ熱心だった。ホテルのレストランはランチをやっていないというので、また逆に大室山の椀の周辺を下って、とあるイタリアンレストランでスパゲティーを食べて帰路についた。東名も大した渋滞がなく、大和トンネルも難なく通過できた。