Discover the 「風雅のブリキ缶」 written by tonkyu

科学と文芸を融合した仮説作品「風雅のブリキ缶」姉妹篇。街で撮った写真と俳句の取り合わせ。やさしい作品サンプルも追加。

息子に「どなたさんですか?」と尋ねた母

2014年10月28日 20時45分57秒 | Journal
 あるいは顔なじみが来たと思って見上げたのかもしれない。あの背のひょろりと高い男は誰なのか?と。横に座った男はさかんに「おかあさん、おかあさん」と顔を寄せて話しかけてくる。なれなれしいものだ。よく分からないから、「あなたは、どこのどなたさんで?」と尋ねてみた。男は「オサムだよ。息子の名を忘れちゃったのかよ」と言った。忘れるも忘れないも、知らない男からそんなことを言われる筋合いはない。第一、こんなでっかくて老けた白髪頭の男が自分の息子のはずがない。オサムは自分の息子だが、この男ではけっしてない。オサムは、もっと小さくてかわいい。--母は息子だと自称する大きな中年男を眺めやって、嫌だねと、さもおかしそうに笑った。

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