折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

歴史上の「超有名人」を描く難しさ・・・・葉室 麟著「春風伝」

2013-03-14 | 読書
最近、読書の量がめっきり落ちてきている。

一つは、「根気」がややなくなってきていること、もう一つは、本は図書館で借りて読むことにしているため、その順番待ちが長く、この間空白ができてしまうこと等が要因と言えるだろう。

今、最も多くリクエストしているのが、葉室 麟さんの新刊本であるが、予約者が多くて中々順番が回って来ない。(今も2冊順番待ち)

そんな中、最新作「春風伝」は何としても早く読みたいの一心で、新聞に広告が載ったその日の朝一番に申し込んだこともあり、予約待ち順番1位で、数日後にはもう順番がきて読むことができたのは幸運であった。

葉室 麟著「春風伝」(新潮社)


幕末、坂本龍馬と人気を二分した長州の高杉晋作の生涯を扱った作品であり、著者自身が「この小説は今の私の集大成です」と断言するほどの自信作ということで、大いに期待して読んだのだが・・・・・・。

これまで読んだ葉室作品は、読み始めるとグイグイと引き込まれて一気呵成に読んでしまうという「吸引力」があったが、本作品はどうもイマイチそういう「のめりこみ」ができず、しばしば一息入れるてしまうことが多かった。

どうもその原因は、高杉晋作という実在した人物を取り上げたことにありそうに思われる。

これまでは、名もない藩の名もない武士の話を、自家薬籠中のものとして描いてきた葉室さんだが、これまでと違って歴史上実在した人物では、中々そうもいかず自ずと制約もあるだろう。

と言って、歴史的事実に偏ってしまうと小説というよりは、歴史教科書になってしまう。

この辺りの書き分けが、悩ましいところなのではなかろうか。

この観点から見れば、本作品は必ずしもうまくいったとは言い難く、これまでの葉室さん「らしさ」が余りでていない、というのが小生の印象である。

本作品のある読者レビュアーが、

いつもの葉室さんの繊細な表現が消え、ありきたりの高杉晋作伝ができあがったという感じがします。思いがけない出来事や心に深くしみ込んでくるような場面があるわけでもなく、幕末の歴史を淡々とレクチャーされているような気分になりました。

と書いていていたが、小生も全く同感であり、歴史上の有名人を主人公にした物語を書くことのむずかしさ、悩ましさ、大変さを再認識させられたような気がした次第である。

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