第6回 『強行採決』に総会屋「マジ切れ」、議長席に突進、「あわや」の場面も
株主との一問一答が始まった。
先ずは、関西から来た「T」グループの代表が一番手で質問に立つ。
「先ほど暴力を振るった株主は、社員株主だろう。その氏名と、事が起こった経緯について説明しろ」と迫る。
「あの株主さんには、退場を命じました。それで、もうこの問題は決着しております」と議長。
「退場させた株主を、ここに呼んで来い。」
「株主さんは、もう帰られました。おられません。」
「株主の名前ぐらいは、わかるだろう。公表しろ。」
「株主さんの出席番号がわかりませんので、調べようがありません。」
「・・・・・・!!!」
S課長が、社員株主を退避させた機敏な措置が、いかに的確かつ有効な対応であったかが、ここに来て歴然としてきた。
後に判明したことだが、退場させられた社員株主は他人名義それも某法人の議決権行使書で入場していたとのことで、総会場に止まっていて、このことが判明したら、それこそ取り返しの付かない大事に発展する所であった。
次に質問に立った総会屋も暴力を振るった株主を糾明しなければ、審議に応じないと迫ったが、議長は「お帰りになって、最早いらっしゃらないのだから、それ以上どうしようもない」と突っぱねて、この問題に深入りさせない。
『強行採決』に激昂した総会屋「K」は、役員席を飛び越え、議長席に突進し、議長の議事を妨害しようとした
3番目に質問したのは、某社のロングラン総会を始め各社の総会で過激な発言を繰り返し、要注意マークがついている「M」グループのリーダー「M」である。
メモ用紙を片手に、恫喝するような大きな声で質問を繰り出してくる。
それに対し、議長は「その質問は、一括回答で既にお答えしていますので、重複のお答えはご容赦願います」、「そのご質問は、議題に直接関係がないので、お答えはご容赦ください」等々冷静かつ毅然と答える。
その答弁に業を煮やした「M」は、席を離れて、つかつかと議長席の方に近づき、いきなり手に持っていたメモ用紙を天井めがけて放り投げた。
「M」一流のパフォーマンスであるが、議長はひるまず、すかさす「粗暴な行動は、止めていただきたい」と注意を促す。
その後も、次々と総会屋が示し合わせたように質問に立つが、議長はある時は、のらりくらりと質問をはぐらかし、また、ある時は毅然と質問をはねつけるなど、総会屋の攻勢を耐え忍んでいる。
緊迫した状況が続く中、時間が経過していく。
その時、会場の外に配置した係員から、メモが事務局に入る。
「総会屋が、すぐにこっちに来るよう仲間に電話している」と書かれていた。
一方、議場では、総会屋が「おい、事務局、そろそろお昼だ、昼食の準備をして置けよ」と大きなヤジを飛ばし始めた。
状況は、煮詰まりつつある。顧問弁護士と相談、そろそろ質疑打ち切り、強行突破のタイミングであることを確認、議長にその旨メモを入れる。同時に、株主席右側の最前列に座っている動議を提出することになっている社員株主に合図を送る。
「議長!!、株主番号××番の○○です。質疑打ち切りの動議を提出します。議案の審議に入ってください」
抜き打ちの質疑打ち切り動議に総会屋が激昂し、動議を提出した株主めがけて殺到する。それを、近くにいる社員株主が身を挺して、ガードする。
怒号が渦巻く中、議長は、すかさず「ただ今、株主さんから質疑を打ち切り、議案の審議に入るよう動議が提出されましたが、いかがでしょうか」と議場に図る。
「賛成、異議なし」
の大合唱が議場に響き渡る。
「賛成多数ですので、本動議は可決されました。それでは、ただ今から議案の審議に入ります」
と宣言して、議長は議事を進めていく。あとは、何があろうと最後まで一気に突っ走るだけである。
この強行手段に収まらない総会屋は、一斉に席を立って会場の最前列に飛び出し、口々に議長のとった措置を非難する。
そして、「まだ質問があるんだよ」、「俺にも質問させろよ」とわめき声を上げる。
しかし、そんな騒ぎの中、議長は粛々と議事を進め、議案は次々と原案通り承認可決されていく。
遂に、マジ切れた「S」グループの「K」が、ひな壇の役員席を乗り越えて、議長席に突進すると言う暴挙に出た。
「K」は議長席の前に詰め寄り、議長の前に置かれているマイクを奪おうと身を乗り出し、議長とマイクの奪い合いになった。小生は、「K」の腕をつかんで、「止めなさい」と大きな声で制止し、にらみ合った。「K」は顔面蒼白で、目が据わっている。それは、まさに「無頼漢」そのものの顔であった。「下がれ、下郎」と怒鳴りつけてやりたい衝動をかろうじて理性で抑え、「やめろ」と再度、静止した。
何とか、マイクを確保した議長は、「K」から身を避けるべく、演壇の一番後ろまで下がって、片手にマイクをもう一方の手に台本を持って議事を進めることを余儀なくされた。
この段階になって、ようやく臨場に来ていた所轄の刑事たちが動き出し、先ず、「K」を議長席から株主席へ連れ戻した。他の総会屋も、刑事たちに促されて席に着いた。
それからは、一気呵成、数分で全ての議案を可決し、総会開始から2時間30分を要した株主総会は、12時30分に終った。
株主との一問一答が始まった。
先ずは、関西から来た「T」グループの代表が一番手で質問に立つ。
「先ほど暴力を振るった株主は、社員株主だろう。その氏名と、事が起こった経緯について説明しろ」と迫る。
「あの株主さんには、退場を命じました。それで、もうこの問題は決着しております」と議長。
「退場させた株主を、ここに呼んで来い。」
「株主さんは、もう帰られました。おられません。」
「株主の名前ぐらいは、わかるだろう。公表しろ。」
「株主さんの出席番号がわかりませんので、調べようがありません。」
「・・・・・・!!!」
S課長が、社員株主を退避させた機敏な措置が、いかに的確かつ有効な対応であったかが、ここに来て歴然としてきた。
後に判明したことだが、退場させられた社員株主は他人名義それも某法人の議決権行使書で入場していたとのことで、総会場に止まっていて、このことが判明したら、それこそ取り返しの付かない大事に発展する所であった。
次に質問に立った総会屋も暴力を振るった株主を糾明しなければ、審議に応じないと迫ったが、議長は「お帰りになって、最早いらっしゃらないのだから、それ以上どうしようもない」と突っぱねて、この問題に深入りさせない。
『強行採決』に激昂した総会屋「K」は、役員席を飛び越え、議長席に突進し、議長の議事を妨害しようとした
3番目に質問したのは、某社のロングラン総会を始め各社の総会で過激な発言を繰り返し、要注意マークがついている「M」グループのリーダー「M」である。
メモ用紙を片手に、恫喝するような大きな声で質問を繰り出してくる。
それに対し、議長は「その質問は、一括回答で既にお答えしていますので、重複のお答えはご容赦願います」、「そのご質問は、議題に直接関係がないので、お答えはご容赦ください」等々冷静かつ毅然と答える。
その答弁に業を煮やした「M」は、席を離れて、つかつかと議長席の方に近づき、いきなり手に持っていたメモ用紙を天井めがけて放り投げた。
「M」一流のパフォーマンスであるが、議長はひるまず、すかさす「粗暴な行動は、止めていただきたい」と注意を促す。
その後も、次々と総会屋が示し合わせたように質問に立つが、議長はある時は、のらりくらりと質問をはぐらかし、また、ある時は毅然と質問をはねつけるなど、総会屋の攻勢を耐え忍んでいる。
緊迫した状況が続く中、時間が経過していく。
その時、会場の外に配置した係員から、メモが事務局に入る。
「総会屋が、すぐにこっちに来るよう仲間に電話している」と書かれていた。
一方、議場では、総会屋が「おい、事務局、そろそろお昼だ、昼食の準備をして置けよ」と大きなヤジを飛ばし始めた。
状況は、煮詰まりつつある。顧問弁護士と相談、そろそろ質疑打ち切り、強行突破のタイミングであることを確認、議長にその旨メモを入れる。同時に、株主席右側の最前列に座っている動議を提出することになっている社員株主に合図を送る。
「議長!!、株主番号××番の○○です。質疑打ち切りの動議を提出します。議案の審議に入ってください」
抜き打ちの質疑打ち切り動議に総会屋が激昂し、動議を提出した株主めがけて殺到する。それを、近くにいる社員株主が身を挺して、ガードする。
怒号が渦巻く中、議長は、すかさず「ただ今、株主さんから質疑を打ち切り、議案の審議に入るよう動議が提出されましたが、いかがでしょうか」と議場に図る。
「賛成、異議なし」
の大合唱が議場に響き渡る。
「賛成多数ですので、本動議は可決されました。それでは、ただ今から議案の審議に入ります」
と宣言して、議長は議事を進めていく。あとは、何があろうと最後まで一気に突っ走るだけである。
この強行手段に収まらない総会屋は、一斉に席を立って会場の最前列に飛び出し、口々に議長のとった措置を非難する。
そして、「まだ質問があるんだよ」、「俺にも質問させろよ」とわめき声を上げる。
しかし、そんな騒ぎの中、議長は粛々と議事を進め、議案は次々と原案通り承認可決されていく。
遂に、マジ切れた「S」グループの「K」が、ひな壇の役員席を乗り越えて、議長席に突進すると言う暴挙に出た。
「K」は議長席の前に詰め寄り、議長の前に置かれているマイクを奪おうと身を乗り出し、議長とマイクの奪い合いになった。小生は、「K」の腕をつかんで、「止めなさい」と大きな声で制止し、にらみ合った。「K」は顔面蒼白で、目が据わっている。それは、まさに「無頼漢」そのものの顔であった。「下がれ、下郎」と怒鳴りつけてやりたい衝動をかろうじて理性で抑え、「やめろ」と再度、静止した。
何とか、マイクを確保した議長は、「K」から身を避けるべく、演壇の一番後ろまで下がって、片手にマイクをもう一方の手に台本を持って議事を進めることを余儀なくされた。
この段階になって、ようやく臨場に来ていた所轄の刑事たちが動き出し、先ず、「K」を議長席から株主席へ連れ戻した。他の総会屋も、刑事たちに促されて席に着いた。
それからは、一気呵成、数分で全ての議案を可決し、総会開始から2時間30分を要した株主総会は、12時30分に終った。