折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

ドキュメント・『ザ・株主総会』(最終章)

2006-10-31 | 仕事・職場
第6回  『強行採決』に総会屋「マジ切れ」、議長席に突進、「あわや」の場面も


株主との一問一答が始まった。

先ずは、関西から来た「T」グループの代表が一番手で質問に立つ。

「先ほど暴力を振るった株主は、社員株主だろう。その氏名と、事が起こった経緯について説明しろ」と迫る。

「あの株主さんには、退場を命じました。それで、もうこの問題は決着しております」と議長。

「退場させた株主を、ここに呼んで来い。」
「株主さんは、もう帰られました。おられません。」
「株主の名前ぐらいは、わかるだろう。公表しろ。」
「株主さんの出席番号がわかりませんので、調べようがありません。」
「・・・・・・!!!」


S課長が、社員株主を退避させた機敏な措置が、いかに的確かつ有効な対応であったかが、ここに来て歴然としてきた。

後に判明したことだが、退場させられた社員株主は他人名義それも某法人の議決権行使書で入場していたとのことで、総会場に止まっていて、このことが判明したら、それこそ取り返しの付かない大事に発展する所であった。

次に質問に立った総会屋も暴力を振るった株主を糾明しなければ、審議に応じないと迫ったが、議長は「お帰りになって、最早いらっしゃらないのだから、それ以上どうしようもない」と突っぱねて、この問題に深入りさせない。


『強行採決』に激昂した総会屋「K」は、役員席を飛び越え、議長席に突進し、議長の議事を妨害しようとした


3番目に質問したのは、某社のロングラン総会を始め各社の総会で過激な発言を繰り返し、要注意マークがついている「M」グループのリーダー「M」である。

メモ用紙を片手に、恫喝するような大きな声で質問を繰り出してくる。
それに対し、議長は「その質問は、一括回答で既にお答えしていますので、重複のお答えはご容赦願います」、「そのご質問は、議題に直接関係がないので、お答えはご容赦ください」等々冷静かつ毅然と答える。

その答弁に業を煮やした「M」は、席を離れて、つかつかと議長席の方に近づき、いきなり手に持っていたメモ用紙を天井めがけて放り投げた。

「M」一流のパフォーマンスであるが、議長はひるまず、すかさす「粗暴な行動は、止めていただきたい」と注意を促す。

その後も、次々と総会屋が示し合わせたように質問に立つが、議長はある時は、のらりくらりと質問をはぐらかし、また、ある時は毅然と質問をはねつけるなど、総会屋の攻勢を耐え忍んでいる。

緊迫した状況が続く中、時間が経過していく。
その時、会場の外に配置した係員から、メモが事務局に入る。

「総会屋が、すぐにこっちに来るよう仲間に電話している」と書かれていた。

一方、議場では、総会屋が「おい、事務局、そろそろお昼だ、昼食の準備をして置けよ」と大きなヤジを飛ばし始めた。

状況は、煮詰まりつつある。顧問弁護士と相談、そろそろ質疑打ち切り、強行突破のタイミングであることを確認、議長にその旨メモを入れる。同時に、株主席右側の最前列に座っている動議を提出することになっている社員株主に合図を送る。

「議長!!、株主番号××番の○○です。質疑打ち切りの動議を提出します。議案の審議に入ってください」

抜き打ちの質疑打ち切り動議に総会屋が激昂し、動議を提出した株主めがけて殺到する。それを、近くにいる社員株主が身を挺して、ガードする。

怒号が渦巻く中、議長は、すかさず「ただ今、株主さんから質疑を打ち切り、議案の審議に入るよう動議が提出されましたが、いかがでしょうか」と議場に図る。

「賛成、異議なし」

の大合唱が議場に響き渡る。

「賛成多数ですので、本動議は可決されました。それでは、ただ今から議案の審議に入ります」

と宣言して、議長は議事を進めていく。あとは、何があろうと最後まで一気に突っ走るだけである。

この強行手段に収まらない総会屋は、一斉に席を立って会場の最前列に飛び出し、口々に議長のとった措置を非難する。

そして、「まだ質問があるんだよ」、「俺にも質問させろよ」とわめき声を上げる。

しかし、そんな騒ぎの中、議長は粛々と議事を進め、議案は次々と原案通り承認可決されていく。

遂に、マジ切れた「S」グループの「K」が、ひな壇の役員席を乗り越えて、議長席に突進すると言う暴挙に出た。

「K」は議長席の前に詰め寄り、議長の前に置かれているマイクを奪おうと身を乗り出し、議長とマイクの奪い合いになった。小生は、「K」の腕をつかんで、「止めなさい」と大きな声で制止し、にらみ合った。「K」は顔面蒼白で、目が据わっている。それは、まさに「無頼漢」そのものの顔であった。「下がれ、下郎」と怒鳴りつけてやりたい衝動をかろうじて理性で抑え、「やめろ」と再度、静止した。

何とか、マイクを確保した議長は、「K」から身を避けるべく、演壇の一番後ろまで下がって、片手にマイクをもう一方の手に台本を持って議事を進めることを余儀なくされた。

この段階になって、ようやく臨場に来ていた所轄の刑事たちが動き出し、先ず、「K」を議長席から株主席へ連れ戻した。他の総会屋も、刑事たちに促されて席に着いた。

それからは、一気呵成、数分で全ての議案を可決し、総会開始から2時間30分を要した株主総会は、12時30分に終った。

ドキュメント・『ザ・株主総会』⑤

2006-10-28 | 仕事・職場
第5回  議長、正常化に向けて懸命な努力


思わぬハプニングに瞬時呆然の体であった議長だが、すぐに立ち直って事務局を一瞥する。

顧問弁護士が、「当事者二人を、即、退場させてください」と小声で伝える。

議長は、即刻、その場で二人の株主の退場を命じると共に、席を離れて議長席周辺を歩き回り、気勢を上げている総会屋に対し、席に戻るよう再三要請を繰り返す。

一方、株主席においても、S 課長がこの状況に機敏に対応し、総会屋の手を引っ張って、倒してしまった社員株主を議長の「退場命令」が出ると、間髪を入れずに会場から連れ出し、会社の小部屋の中に「退避」させた。

総会屋連中も、この社員株主の身柄を確保しておかなければと、すぐに後を追ったが、一瞬の差で見失い、飛び出していった総会屋は、空しく会場に戻ってきた。

総会の正常化には、先ず何をおいても事態の沈静化が必要であり、議長は株主に席に戻るよう懸命な努力を続ける。

一方の総会屋側としては、いかに混乱状態を長引かせ、議事を混乱させるかが狙いであるから、議長の再三にわたる要請を完全に無視して、議長席の前で不規則発言を繰り返している。

ここは、まさにこれからどちらが指導権を握るかのせめぎ合いである。

総会屋は、盛んに今起こった暴力行為について質問させろと議長に迫っているが、議長はここで総会屋の質問に応じれば、彼らのペースにはまり、混乱に拍車がかかり好ましくないと判断し、少々強引であったが、

「先ほどの二人の株主さんについては、退場を命じました。本件を含め、株主様からのご質問は、後ほど質問の受付時間を設けておりますので、その時に十分におうかがいし、また、ご説明申し上げますので、どうか議事の進行にご協力をお願いします」

と述べて、議事を再開した。

総会屋側は、猛反発したものの、議長は毅然として、株主から事前に文書で提出されている質問状に対する「一括回答」まで、一気に議事を進める。

「一括回答」とは、株主から事前に文書で提出された質問事項を会社側でまとめた上で、その回答を総会当日、株主の質問を受ける前に回答し、当日の質問との重複を防止しよう考え出された、総会屋対策の一方式のことを言う。

今回株主からの質問は約200問にも及ぶが、これを会社側で整理し、作成した回答を担当の常務が読み上げていく。

全部読み終わるまでには、20分以上を要するので、この時間が事態の沈静化と態勢を立て直す余裕をもたらしてくれた。

この間も、総会屋からは「総会は無効なんだから、そんなもの読んだって無駄だよ!」等々議事を牽制するヤジが飛び交うものの、担当常務はひたすら一括回答の文言を読み上げることに専念する。

そして、約30分、一括回答が終った。
これから、株主との一問一答、正念場である。

悲願ならず!!中日ドラゴンズお疲れさま

2006-10-27 | ごひいき
10月は
3人目の孫の誕生→居合道3段昇段→新しいアンプの購入→中日ドラゴンズセ・リーグ優勝→中日ドラゴンズ52年ぶり日本シリーズ制覇で終れば、文句無く「最高」の10月になったのであるが、「画竜点睛」を欠く結果に終わり、いささか残念であった。

落合監督が「52年の厚い壁にはねかえされた」とコメントしたと伝えられているが、一昨年、そして今年の日本シリーズの戦いぶりを見ると、中日のチームカラー、体質が「長丁場」のペナンとレースにはむいていても、「短期決戦」の日本シリーズには、必ずしもむいているとは言えないのではないだろうか。(昨年の「交流戦」もしかり)


それを痛切に感じたのが、両チームの1番バッターの森本と荒木である。
闘志を露に好球必打、初球から打ち気満々中日投手陣にプレッシャーをかけ続ける森本と慎重に球を選び、いい球だけを打とうとしているうちに日本ハム投手陣に見る見る追い込まれてボールを振らされる荒木、まさに『陽』と『陰』本シリーズの両チームのチーム状況、チーム・カラーを見事に象徴していた。

これだけを見ても、我が中日ドラゴンズは、「負けるべくして、負けた」と思わざるを得ない。

来年の「捲土重来」を大いに期待したい。

ドキュメント・『ザ・株主総会』④

2006-10-25 | 仕事・職場
第4回 株主総会開会  いきなり「ハプニング」、波乱の幕開け


開会時刻3分前、社長を始め全役員、監査役が入場し、それぞれ所定の場所に着席する。
場内は、水を打ったように静まり返っている。
緊張がひしひしと伝わってくる。


<株主総会会場 ひな壇が役員席、正面が議長席、議長席の右に事務局席>


定刻、小生おもむろに立ち上がる。緊張のため、唇は乾き、のどはカラカラである。

「大変お待たせいたしました。定刻となりましたので、始めさせて頂きます。社長は議長席へお願いします。」とマイクの力を借りて、どうにか開始の口上を述べた。

社長が議長席に立ち、おもむろに水差しからコップに水を注ぎ、「ぐびっ」と一口飲む。社長も緊張しているに違いない。

手元に広げた台本に目をやり、本日出席の株主の人数とその株式数、議事進行上の注意事項等を読み上げ、当期の会社の活動状況を示す「営業の概況」の説明に入ると、場内がにわかに騒がしくなってきた。

総会屋がヤジ攻勢を強め、それを牽制しようとする社員株主との間で激しい応酬があり、険悪な雰囲気が漂い出している。

すかさず顧問弁護士から小生にメモが入る。「議長、『静粛に』と注意されたし」
そのメモを議長に届けて、事務局席に戻ると、会場の総会屋が、「そこの事務局の『ギョロ目』(小生のこと)、チョロチョロするんじゃない」と大きなヤジで事務局の動きを牽制しようとする。

『静粛に願います』とすかさず議長が総会屋のヤジを遮る。先ほどの、メモの効果である。

開会から約15分、「営業の概況」の説明が終わり、監査役の監査報告が始まろうとした矢先に、そのハプニングが起こった。

70歳過ぎの年配の総会屋で自己流の会計論を延々と開陳し、総会を故意に長引かせることで会社側の顰蹙を買っているIと言う株主がいきなり立ち上がって、監査役の所に行き、一言二言何か言った。

それを近くで見ていた社員株主が、I株主を席に連れ戻そうと手を引っ張ったところ、何せ体力の無い老人のこと、体のバランスを崩して、その場に倒れ込んでしまった。

それを見て、待ってましたとばかりに、何人もの総会屋が一斉に立ち上がって議長席の前に詰め寄り、口々に「暴力総会だ」、「この総会は無効だ」、「休憩だ」とがなり立て、「蜂の巣を突っついた」ような騒ぎとなる。

それまで、みんなで声を出して議長をサポートしていた社員株主も思わぬ事態の発生と、それをきっかけに、一気に攻勢を仕掛ける総会屋の勢いに押されて、株主席で沈黙してしまう。

かくして、株主総会は、はなから波乱の幕開けとなり、早くものっぴきならない場面を迎えた。

ドキュメント・『ザ・株主総会』③

2006-10-22 | 仕事・職場
第3回 株主総会当日 総会屋大挙して出席


総会開会へのカウントダウン


株主総会の当日、会場である本社別館には社旗、国旗がポールに掲げられ、玄関には「株主総会会場」の立て看板が掲出され、緊張のうちにその日の朝を迎えた。


AM6:15
事務局全員が揃い、朝のミーティング

AM6:30
社長出社、自室にて静かにその時を待つ。

AM7:30
当社研修所の宿泊施設に泊り込んでいた証券代行部の担当者が、会場の入り口に設置された受付にスタンバイ。

AM8:00
一連の準備状況を確認して、1階に行く。
駐車場から一見してそれとわかる連中が、数台の車から降りて、何か喋りながら歩いてくる。中には、見知った顔も見える。「おはようございます。遠路ありがとうございます」と一応、挨拶する。

「・・・・・・・」
じろっと、一瞥をくれて通り過ぎていく。

これを境に、黒塗りの高級車が何台も入ってきては、その都度数人の総会屋が会場の建物へ入っていく。

「いよいよ、始まる」と体が震える。
急いで、4階の会場に戻り、受付で今までに来た株主の氏名を確認する。

そして、再度会場の様子を見に行く。
会場は、当日の出席株主を100名前後と見て、120席準備している。

前から3列ほどを既に打ち合わせしたとおり社員株主が、びっしりと座っている。
S課長は、真ん中の列の中ほどに陣取って社員株主全体をリードする。小生は、事務局に入って、社長、顧問弁護士、事務局員のコミュニケーションを図る、と言う役割分担になっている。

総会屋は、まだ入場しておらず、別室の株主控え室で何やら打ち合わせているようだ。再度、受付に行き、その後の株主の出席状況を確認する。新たに、何人かの総会屋が受付を済ませていた。

AM8:30
予め警備要請していた地元の警察署から刑事5名が会場に到着、別室でこれまでの総会屋の出席状況や質問状が多数来ていることを説明する。刑事たちも、出席している総会屋の人数、氏名等を聞いて緊張した表情となる。
会場の最後の列に椅子を準備して、そこに座ってもらう。

AM8:45
駅に迎えに行っていた社用バスが、一般株主さんを乗せて到着、受付が急に忙しくなる。会場も開始時間1時間以上も前だというのに、ほぼ満席である。
総会屋も、思い思いに着席して、その時を待ち受けている。


受付けで確認したところ、今日出席している総会屋は、関西で今売り出し中の2グループ、また、S社のロングラン総会の仕掛け人でもある、Mグループ、Kグループ、Tグループ、昔からの大物総会屋SグループのNとKなど、主だった者だけでも20名を越えている。

容易ならざる事態である。これに対し、当方で準備した社員株主は40人余、「これで、果たして大丈夫か、もう少し多くすれば良かったか」との思いが、一瞬、頭をよぎる、最早打つ手はない。これで最善を尽くすしかない。

AM9:00
これまでの状況を、社長に報告する。
「わかった、打ち合わせたとおり、2時間は『親切総会』で彼らの質問を受けるが、それを過ぎたら、一気に議事を進める、それでいいな」

「はい、それで結構です。よろしくお願いします」
トップと事務局の最終の意思確認であった。


そして、時間は刻々と過ぎ、いよいよ開会時間の10時を迎えた。