折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

大作、力作、傑作~今年度最大の収穫 小説「光圀伝」

2012-12-09 | 読書
図書館で本を借りて読むようになってから、本屋さんではめったに本を買わなくなった。
しかし、この「光圀伝」は、数十人が予約待ちという状況ということもあり、久しぶりに身銭を切って購入した。

徳川光圀の生涯を膨大な資料を駆使して忠実に描き、パワーフルな人物を浮かび上がらせた歴史エンターテイメントである。

いつものようにその感想を会話風にまとめて見た。

冲方 丁著 「光圀伝」(角川書店)


― 750ページという大作であり、精魂こもった力作であり、語り継がれる傑作と言える作品だね

― 今年一番の収穫といってもいいんじゃない。

― ネットを見ていたら、ある書店員がこの本について「いくたび感動で心が震えただろうか」、「いくたび目頭が熱くなっただろうか」、「いくたび共に嘆いただろうか」、「いくたび胸塞がれる想いがしただろうか」とコメントしていたが、実に言い得て妙だと感心したよ

― 確かに、終わりが近づき、「読み終えたくない」「ずっと読んでいたい」と、そう思う作品は久々だね。
 
― 徳川御三家の当主の義直、頼宣を始め、保科正之、宮本武蔵、沢庵和尚、山鹿素行、林羅山の四男の読耕斎等々、実に登場人物が多彩だ。

― 確かに、魅力的な人物がいっぱい登場するが、中でも光圀の兄の「頼重」、奥方の「泰姫」、親友の「林読耕斎」の描き方が実に個性的、魅力的で印象が強い。

― この物語は人との出会いを通しての親子愛、兄弟愛、夫婦愛、同志愛、子弟愛の物語と言えるのだろうね。

― 光圀は73歳の人生を通じて、これらさまざまな愛を享受できた稀有な人と言えるだろう。

― 73歳と言えば、当時としては超長生きな部類に入る。それだけに、その間に大切な人、愛しい人、敬愛する人たちの死を看取ることになる。このあたりのくだりは哀切極まりなく、読んでいて胸が詰まる。

― 出会いとその後の関わりが濃密に描かれているだけに余計にジンとくる。

― 物語は「幼年期」、「青年期」、「藩主になって以降」に分けられるが、意気盛んな『傾奇者』として暴れ回る中で、宮本武蔵や沢庵和尚、山鹿素行、林読耕斎と言った人たちと交遊する「青年期」が一際光彩を放っていて、ページをめくるのがもどかしいくらいだ。

― それに比べると、後半の水戸藩主となってからは物語の進行がやや単調になって前半に比べると輝きがスローダウンする。

― それにしても、750ページを一気に読ませる著者の筆力は実に凄いね。

― 義妹が瑞竜町に住んでいて、その昔一度だけ水戸徳川家の菩提所に案内してもらったことがあった。その時は、ただ漠然と「ここがそうなのか」と思っただけだったが、この本を読んだらもう一度ぜひ行って見たいと思ったよ。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿