折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

人間の哀しい性(さが)に心揺さぶられる~葉室 麟著「千鳥舞う」

2012-10-23 | 読書
だいぶ秋めいてきた。

秋と言えば、本を読んだり、音楽を聴いたりするのにもってこいの季節である。

そんな訳で、出かけない時は日がな本を読み、音楽を聴いて過ごしている。

そこで丁度読み終わったばかりの「千鳥舞う」という本の感想をいつものように会話風に紹介したい。

作者はこのところ小生が傾倒している葉室 麟(先般直木賞を受賞)さんである。

「千鳥舞う」葉室 麟著(徳間書店)

主人公は博多の女絵師(春香・本名里緒)。
彼女は江戸から来た妻子持ちの狩野派の絵師(杉岡外記)と不義密通のかどにより、男は江戸へ追放の上破門、彼女も師から破門される。
それから三年。
女絵師は破門が許され博多の豪商から博多八景の屏風絵の依頼を受ける。
そして、この主人公が博多八景を描きながら出会う人々の物語に触発され、下絵にその思いを込めて屏風絵を完成させていく。
主人公が描く「博多八景」には、誰もが切なさを胸に納め、懸命に自らの道を求めて歩んでいる人たちの『哀しみ』がこめられていた。

― 葉室作品、ほとんど読みつくして新作を待ち望んでいた。

― 期待に違わず、心揺さぶられて一気呵成に読み終えた。

― 博多八景を小題とする8短篇と二人の運命的な馴れ初めを描いた序、そして、二人の恋の結末を描いた結の2編を配した構成、構想が何ともすばらしい。

― 10編ともそれぞれ味わい深くて、まさに珠玉の作品と呼ぶにふさわしい。

― 不覚にも涙が出てしまうことが何回かあった。歳のせいで涙もろくなっているのかも知れないが・・・・。

― 許されるべくもない、男と女の情愛。親子の悲しい愛。叶わない愛。もどかしく、狂おしいまでの様々な愛が描かれていて、身につまされる。

― 許されることのない想いを自分の胸に押し込めて、つらい日々を生きていく人々の姿は哀れでもあり、愛おしくもある。

― 人間の哀しい性(さが)を暖かく、深い愛情を込めて描いていて、心が震える。

― 作者の人への思いやり、やさしさを感じさせる作品。作者の清廉な心が現れている。

― この手のテーマを現代小説で描くのは中々むずかしい。

― 時代小説ならではの味わいというべきか。

― こう言う小説を書ける作家は、得難い存在だね。

― まさに「読書の秋」にふさわし作品で、多くの人に読んでほしい、お勧めの作品である。


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2 コメント

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葉室麟最新作「蛍草」 ( ひろ)
2013-01-25 12:30:03
図書館で「蛍草「を読みました。他の人がいるにも拘わらず感受性の鈍い私が泣かされハンカチで涙を拭いました。
葉室ワールドは凄い。お薦めの作品です。ハムリン先生には長生きしていただき素晴らしい作品で泣かせてもらいたいです。
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ありがとうございます (fit-723)
2013-01-25 13:29:51
ひろさん

情報ありがとうございます。
まだ読んでいませんでしたので、早速読もうと思います。
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