飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ大統領選後も「政治空白状態」が続く恐れが!

2010年02月09日 21時14分38秒 | Weblog
 7日行われたウクライナ大統領選の決選投票で親露派のヤヌコビッチ前首相(59)の当選が確実になった。だが、恐れていた通り、親欧米派のティモシェンコ首相(49)との差はわずかで、国内を二分する対立により政治的空白状態が続きそうな雲行きだ。

 タス通信の報道によると、開票率99・58%でヤヌコビッチ氏の得票率は約49%、対するティモシェンコ首相の得票率は約46%で、わずか3%という僅差だ。そのほかに「どちらの候補にも反対」という人が約4%いるという。勝利しても得票率が過半数に届かないのだ。

 この結果についてロシアの有力紙・独立新聞は「選挙は勝者も敗者もいないという、中間点にとどまっている」との見方を示している。国家が真っ二つに分断され、まとまりが付かないことを意味しており、「こうした政治的敗北状態は5年間の大統領の任期切れまで続く可能性がある」との悲観的見通しを述べている。

 ウクライナはロシア語で「辺境」という意味があり、歴史的にその時々の大国の支配下に組み入れられてきた。1991年のソ連崩壊で独立し、事実上初めて自分の国家を持てたといわれた。ところが、西は欧州、東はロシアに接していて、東西で考え方が大きく異なっている。独立後、しばらくはひとつにまとまっていたが、そのうちに欧州志向の住民が多い西部と、ロシア語系住民が多い東部とに二分されてきた。04年の前回大統領選では、両者の対立が「オレンジ革命」と呼ばれる街頭闘争に発展した。

 この背景には、歴史的に「長兄」と呼ばれるロシア人と、「弟」とされるウクライナ人のスラブ民族同士の根深い対立がある。ソ連時代はイデオロギーとKGBなどの暴力装置によって封印されてきたが、ソ連崩壊によってパンドラの箱が開けられた。その後、民族の名誉や安全保障問題をめぐって反露感情が一気に盛り上がったことが何度かあった。

 その半面、旧ソ連から独立してまだ日が浅く、国家運営の経験が乏しいことから、統治能力が十分備わっていないとの指摘も受けている。国家が事実上分断されている状態では、政治決着が遅れるのも無理はないともいえる。 
 
 新政権の当面の課題は、首相を含む新内閣の成立だ。ティモシェンコ首相を解任するにも議会(定数450)の過半数の賛成が必要だが、ヤヌコビッチ氏が率いる地域党は172議席で過半数に届かない。このため他会派との多数派工作が急務となっている。

 金融危機の影響でウクライナ経済は瀕死の状態にある。今は各会派が大同団結し、挙国一致内閣を樹立して国家再生に取り組まなければならない時である。それこそ、ウクライナ人の真のガバナビリティが問われている。


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