ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『地上5センチの恋心』

2008-01-26 13:01:04 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Odette Toulemonde)

-----ちょっと変わったタイトルの映画だニャあ。
これもフランスの映画だよね。
どういう意味ニャの?
「まあ、映画を観てみると分かるけどね。
カトリーヌ・フロ演じるヒロインのオデット-----
(と言っても、2人の子持ちの主婦なんだけどね)、
普段はデパートの売り子として働き、
夜も生活のために
家でお裁縫仕事をしている彼女の唯一の楽しみは
お気に入り作家のバルタザール(アルベール・デュポンテル)のロマンス小説を読むこと。
ところが、ひょんなことから
このバルタザールが彼女の家で
しばらくの間、同居することになる。
さあて、この恋のゆくえは…というお話」

-----へぇ~っ。その人、
人気作家なんでしょ。
ニャんでそういうことになったの?
「彼の小説がテレビで
めちゃくちゃけなされるんだ。
そのけなした相手というのが同業の小説家で評論家。
しかも、バルタザールの妻の不倫相手だったんだね。
聞けば、もうすでにパリ中の噂になっているとか…。
傷心のあまり自殺まで企てたバルタザール。
そのポッケから出てきたのが、オデットからのファンレターだったわけだ。
心から自分を愛してくれる人を探し求めるバルタザールは、
手紙を片手に彼女の家へ…」

-----ふうん。でも、それじゃこのエンディングは見えているね。
オデットの恋は成就するニャ。
だって彼が、そんな嫌な妻のところに戻るわけないもの。
「さあ、それはどうかな。
このオデットというのが、とても心が広い。
たとえば、彼女の息子は同性愛者だけど、それを受け入れているし、
がさつな娘が不潔っぽい大男を2年間も家に連れ込んでいるのにも
口うるさく言わない。
でも自分にはストイックなんだね」

-----へぇ~っ。そんな人っているんだ。
「そこがこのヒロインの、そして映画の大きな魅力。
オデットは、嬉しいことがあると、
まるで『メリー・ポピンズ』、
いや、高畑勲『おもひでぽろぽろ』のタエ子のように、
空を駆け上っていく」

-----あっ、だから『地上5センチ~』。
「うん。ほんとうはもっと高く上がるけどね(笑)。
で、何かと言えばジョセフィン・ベイカーを歌う。
しかもちょっと口ずさむというのじゃなくね。
羽飾りや化粧品まで踊ったりして、
ここの演出は
ちょっとしたセミ・ファンタジー・ミュージカル。
観ているこちらまで幸せな気分になってくる」

-----じゃあ、
どちらかと言うと感覚的な映画ニャんだ。
「いや、ボクがこの映画を高く買うのは、
その感覚的な部分ももちろんだけど、
裏付けがしっかりしているから。
バルタザールに言いよられたオデットは
ピシッと彼を拒否する。
自分の置かれた立場をちゃんと見つめているんだね」

-----恋と愛は違うというわけ?ちょっと古くない?
「いや。それがいいんだ。
憧れと現実の生活は違う。
その客観的な視線を持った現実的な主婦が、
どうやって恋の奇跡を起こすか、それがファンタジックな映像の中に
納得のいくロジックによって展開していく。
だから緊張を孕むし、スリリングなんだね。
映画って、もともと人をワッと驚かせるところから始まり、
徐々にいろんな楽しみを教えてくれたわけじゃない。
この映画の中でもオデットが
“難解な小説より、
バルタザールの書くような
普通の女性たちの心を掴む小説の方がいい”というようなことを
語るシーンがある。
この映画のように、ヒロインだけでなく
観る者をも楽しませてくれる映画は大いに歓迎したいね」

----監督はだれニャの?
「劇作家で小説家のエマニュエル・シュミット。
『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』の脚本も手がけたみたい。
この『地上5センチの恋心』は彼自身の経験が基になっているらしい。
実は彼にも、ちょっと、自分のファンを見下した時期があったのだとか。
オデットの暮らしぶりなどの描き方にも
それらが反映。
ユーモアのスパイスとしていかされていたな」


        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「嬉し恥ずかしだニャあ」もう寝る

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「寒い家」


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