twitter上で「救いのあるR-TYPE」と評判だったので見てきました艦これ劇場版。
というわけで以下の記述はネタバレありなので、いちおう反転しておきます。
↓ここからネタバレスタート
まず作品としては、シリアス方向に方向性を固定して、作品のテーマを『轟沈した艦娘の深海棲艦化』と目的を『アイアンボトムサウンド攻略』という形での明確化を行っていたので、少なくともTV版のように「シリアスやりたいのかギャグやりたいのか方向性がはっきりしない」「話の軸がない」という事態にはなっていません。
これによってようやく「素材をちゃんと調理して料理にする」というフェイズが完了できたと思います。
キモの一つである戦闘シーンもよく動いていてなかなか良かったと思います。
出番に関してはまあ全員均等に見せ場を作ることは不可能なので仕方ないとして、主要なキャラにはきちんと見せ場がありました。
その見せ場も、作品の構成要素として意味のあるものになってましたので、TV版の「ただ単にキャラを動かしているだけ」の状態にはなってなかったのも高ポイント。
ただ、今回も正直なところシナリオが……。
特に気になったのが、本作のストーリーが「吹雪の話」と「睦月と如月の話」のふたつに割れてしまっている点。
上記の通り今作のテーマは「轟沈した艦娘の深海棲艦化」なんですが、冒頭で回収された如月は主人公である吹雪ではなく睦月との結びつきのあるキャラなので、このテーマに主人公であるはずの吹雪が結び付けられていないんですね。
逆に吹雪は後半部分、アイアンボトムサウンド中心部で深海棲艦化した自分と邂逅するわけですが、このあたりは完全に吹雪の話になってしまっているので、結局話の焦点がどっちつかずになってしまっています。
作品のテーマが「轟沈した艦娘の深海棲艦化」であるなら、必然的に話の主役は深海棲艦化しつつある如月とその友人である睦月になってしまうので、いっそ本作では吹雪を主人公に据えなければまだ話に一貫性が保てたのでは?と思ってしまいます。
実際回収された如月は睦月以外の記憶を忘れてしまってますので、吹雪と如月はほとんど絡まないし。
それにラストの解決パートも、正直なんだか有耶無耶な感じでアイアンボトムサウンドが浄化されて……で終わった感じです。
こうして考えてみると、TV版も劇場版も、吹雪を主人公に据えたのはいいけど、「吹雪が主人公としてどう特別なのか」を表現するのにことごとく失敗してる気がします。
今作では「アイアンボトムサウンド内では、そこにいるだけで偽装がダメージを受ける」と設定があるんですが、吹雪だけはこのダメージを受けません。
しかしその理由についての説明は一切なし。
ラストのアイアンボトムサウンド中心部での深海棲艦化した自分との対話から浄化についても、なんというかその場のノリでなんとなく解決した感が非常に強く、具体性に欠けます。
作品としてはよくできたように思えますが、それは実は「TV版からすれば」という低いラインから見ればの話のような気がします。
確かにTV版での不満点は概ね解消されてはいたものの、及第点ギリギリまで到達するのがやっとだった、っていうのが正直なところなんじゃないでしょうかね。
ですが個人的性癖としては、如月が深海棲艦化しつつある過程(ここ重要)が丁寧に描かれていたのでそこらへんのリビドーは満たされた感じですかね。
↑ネタバレ終了
まあ、見て損したとまでは言いませんが、やはりツメの甘さが残ってしまった、というのが率直な感想ですかね。
あと「救いのあるR-TYPE」というよりは「絶望がほんの少し先送りになったR-TYPE」というか「難易度がちょっとマイルドになった(世界観的な意味で)R-TYPE」何じゃないかな、本作は。