かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

映像の出来の粗さは否めませんが、やっぱり昔の作品は面白いです。

2007-08-05 22:59:06 | アニメ特撮
 ちょっとした縁があって「スペクトルマン」を観る機会に恵まれました。
1971年から72年にかけて、計63話製作された特撮ヒーロー物で、私もリアルタイムに観ていたはずなのですが、実のところそれほどしっかり覚えているわけではありません。でも、多分ヒーローの方よりも有名なんじゃないか、と思われる敵役、宇宙猿人ゴリとラーのコンビはしっかり印象に残っていて、表情が出せないゆえの大げさな身振りや、自信に満ち溢れた饒舌な台詞回し、それに『宇宙猿人ゴリ』の主題歌など、それなりに豊富な記憶が脳裏に刻まれております。そもそも第1話からしばらくは(調べてみると20話まで)標題が『スペクトルマン』ではなく、『宇宙猿人ゴリ』なんですから、製作側もよほどこの悪役に入れ込んでいたのでしょうし、子供心にもそれは感じとれていたんではないでしょうか。今回は、その映像に接することができて改めてこの2悪党の魅力を再認識することができました。
 主人公ゴリは天才科学者で母星の支配を目論見ますが失敗、精神改造(一種のロボトミー手術?)をされる直前、配下のラーの手引きで脱出、宇宙をさまよった末地球にたどり着き、その美しさに感動、自分のものにしようとあの手この手で攻めてきます。それをスペクトルマンによって阻止されるというストーリーが展開されるのですが、このときのゴリの侵略理由がなかなかにふるっております。いわく、「美しいこの星を人間が公害などで汚し放題にしているのがけしからん。だからわしが人間どもを駆逐し、自分の星にしてやるのだ」(大略あっていると思います)。我々地球人にとっては迷惑な物言いですが、言いがかりだと反論するには、地球側にもかなり負い目を感じさせる話です。当時は光化学スモッグやヘドロ、重金属汚染によるさまざまな疾病の発生などが世間を震撼させていた時代で、同じ年の夏には東宝特撮映画『ゴジラ対ヘドラ』が上映されていますし、私が住んでいた大阪では、しょっちゅう光化学スモッグ注意報が出たりしてました。ゴリの作る怪獣は、そんなヘドロやスモッグを培養媒体にして作られるそうで、つまりは人間の所業のしっぺ返しだということになるようです。
 改めて観て思ったのは、ゴリの魅力はの源泉です。実は結構理性的で部下思い、それに潔い。たとえば、自分の作った怪獣達が敗れ去ると、彼らは良く任を全うした、敗れたのは自分のせいだ、と反省したり、スペクトルマンにやられても「完敗だな」、と一言つぶやくのみでけして激昂したりしません。そういう役柄はすべてリーの方に任されているのでしょうが、敵役としてこの沈着冷静な態度はなかなか他では見られないのではないでしょうか。
 私は、天才と称しうるほど頭が良く、カリスマもある自信家の実力者が、ちょっとしたことがきっかけで、ついに栄光の道から転落していく、というストーリー展開が身震いするほど大好きなのですが、このゴリの姿はまさにその基本的スタイルの典型例だと思います。多分幼少時にこのゴリとか死神博士とかの活躍と挫折を味わっていたがために、今の私の嗜好が形成されたのでしょう。3つ子の魂百まで。今の子供達は、それほどまでに影響を及ぼす魅力的な存在に、果たして出会えているんでしょうか?

コメント
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