1968年南アフリカ。がちがちの人種差別主義者で刑務所の看守を務めるグレゴリージョセフファインズは、マンデラデニスヘイスバートが収容されているロベン島の看守となる。黒人たちが話すコーサ語を話せるグレゴリーは囚人たちの手紙を検閲するポストを与えられ、諜報部に報告をあげるという任務を負い、出世街道を進むはずだったし、妻のグロリアダイアンクルーガーもそのことを非常に喜んでいた。
しかし、グレゴリーはネルソンマンデラという偉大なリーダーに接するようになり、少しずつ彼の中の何かが変化していくのを感じていた。囚人たちの手紙を読み、マンデラの妻との面会での内容を諜報部に流し、お国のために役に立ってはいたものの、何か釈然としないものが常にとり憑くようになる。彼が流した情報によって、マンデラの息子が、元囚人が政府によって殺されていく。一方でマンデラはどんなときも顔をあげ、穏やかにそれでも強い信念をグレゴリーに語りかけた。
マンデラの影響を受け、政府の禁制品であるマンデラの自由憲章を読んでみることにしたグレゴリー。そこには、すべての民族の平等と平和を願う信条が綴られていた。
「インビクタス」のときにも感じたが、マンデラの強烈なカリスマ性というのは、すべての人種、民族、世代を超えて影響を及ぼすものなのだろう。グレゴリーだけではなく、その息子や妻にまで少しずつ影響を及ぼすようになっていく過程がうまく描かれている。
この物語はマンデラという偉大な人物の陰にいた(当時の)ごく普通の南アフリカ人を描くことで、より一層マンデラ氏の偉大さを理解することができるお話だと思う。それと同時にグレゴリーの夫婦愛、家族愛を描いたものでもある。
マンデラをかばい肩入れしすぎたために、マンデラの妻に内緒で夫からのプレゼントを渡したことがバレて、家族ともども肩身の狭い思いをしなければならなくなったとき、グレゴリーは自分の職務に執着することなく、家族を連れて別の刑務所に赴任する。妻や子供たちを愛するがゆえの選択だったと思う。
そして、また時代が巡りマンデラと直接接する機会に恵まれたとき、グレゴリーは躊躇なくその職を受けようと考え、このときには妻もグレゴリーを応援してくれる。初めは夫の出世ばかり興味を示していた妻のように思えたが、きちんと夫を支えるところもある良い奥さんだった。
グレゴリーは積極的にアパルトヘイトの廃止のために運動を起こしたわけでもなんでもないんですけどね。それでも、確実にマンデラはグレゴリーの心を変えた。「他人を変えることはできない。だから自分が変わらなきゃ」って言うのが好き人がいますがね、ワタクシはちょっとそれには疑問です。人間って誰かから影響を受けて変わるってことあるし、そうじゃなきゃ独裁もないし、逆にマンデラのような崇高な思想だって広まることはないじゃないって。
もう少しマンデラとグレゴリーの個人的な対話が見たかったなという思いはありますが、27年間という時間の流れを描かないといけないので、仕方ないとしましょう。グレゴリーの育った環境からくる黒人への思いともうまく絡めてあって、ところどころじーんとくるシーンがあって泣けました。こういう形でグレゴリーの家族にスポットが当たって良かったなぁと思います。
オマケ1アパルトヘイトと聞くと、小学校のときの校長先生が朝礼でアパルトヘイトの話をしたことです。その中で「南アフリカではいままでは日本人は黄色人種だから黒人と同じ扱いを受けてきましたが、最近では白人と同じ扱いを受けるようになってきたようです」となんかそのことが嬉しいことのように話したことを真っ先に思い出すんです。子供ながらに「ん~、それって喜ぶべきこと???」と思ったことを覚えています。
オマケ2明日から南アフリカでサッカーワールドカップが開催されるということで期せずしてタイムリーな作品を取り上げることになりました。日本が果たして1勝でもできるのか、どこが優勝するのか気になるところです。でも、それよりも現地での犯罪の状況のほうが気になりますね。
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