シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ひめゆり

2008-08-19 | シネマ は行

これは2006年の作品で、太平洋戦争末期、「ひめゆり学徒隊」として、沖縄戦の看護隊に召集された222名の当時の様子を生存者の方たちが語るドキュメンタリーです。2006年の作品ですが、DVD化はされず、繰り返し映画館や公民館などで上映されている作品です。このたび、十三の第七芸術劇場でアンコール上映があったので、行ってまいりました。

222名のうち100名以上が亡くなったひめゆり学徒隊。戦場に動員される前、彼女たちは赤十字の旗の下安全な場所で看護に当たるものと思っていたそうです。ところが、実際には前線同様に砲弾が飛び交う場所で壕を掘り、けが人や病人を収容する場所を作り、自分たちも米軍の攻撃に怯えながらも看護を続けたそうです。

印象的だったのは、複数の方たちが、最初はけが人や切断された身体の一部や死体を見るのが怖くて怖くて仕方がなかったのに、ものの1週間もすると、そんな状況にすっかり慣れてしまったと言っていたことです。人間ってそういうものなのかぁと。多分、虐待されている子供のように、自分の心の中の恐怖心にすっかりフタをしてしまわないと正常ではいられない状況なのだろうと。そして、自分がそんなふうな人間になってしまったことをとても悲しく感じていた方の話も印象的でした。手術で切り落とした腕を捨てて来いと医者に言われ、運んでいる時に軍曹に「すごい女だなぁ」と言われたこと。自分は血も涙もない人間になってしまったのかと悲しくなったとおっしゃっていました。

爆弾などで、友達のはらわたが飛び出して無残な姿で死んでいるのを目のあたりにしたとき、“あんな状況では人間涙すら出ない。ただただ茫然とするだけ”というような表現も複数の方がしていらっしゃいました。

「戦前の教育で、お国ために死ぬのが名誉だと思っていた。捕虜になるのは、恥、非国民。自分だけではなくて親戚全部が誰にも相手にされなくなる」現代の子供たちは命を粗末にするなんて言うけどね、いまは親も学校も命の大切さを教えるのは当たり前の時代。戦前の教育なんて、命を粗末にすることを正当化して教えていたようなもんじゃないのかな。「それでもね、お国のために死ぬのが名誉だといくら頭では分かっていても、爆弾に当たって苦しんでいるとき、みんな“死にたくないよ”って言って死んでいったんだよ」とおっしゃっていました。

そして、いよいよ本当に死というものが迫ってきた時、若い女の子たち(まだ子供と言ってもいいような)は、「もう一度お母さんに会ってから死にたい」そう言い合っていたそうです。やはり、母という存在は偉大ですね。

米軍に攻められ、本島南部へ病院を移動するとき、移動できないけが人や病人に毒を盛るところを目撃した女性がいた。公には彼らは毒殺されたのではなく集団自決したことになっている。

結局、日本軍は自分たちが始めた戦争の責任は取ろうとせず、降伏もせず、(降伏することを禁じ)、でももう組織的な反撃をあきらめ、彼女たちに“解散命令”を下す。とにかく、あとは勝手に逃げろというわけだ。でも、捕虜になるな。最後の一人まで戦い抜け、と。このときの彼女たちの裏切られた気持ちはどんなものだったでしょう。お国のために死ぬことを教えられた子供たちは見事に簡単に国に裏切られる。それでも、彼女たちは日本が負けるなんて、その時点でさえ考えなかったという。そして、この解散命令のあと、それぞれが壕から追い出され、海岸線に追い詰められていく中、ひめゆり学徒隊の100名以上が命を落としている。

生き残った彼女たちは、自分だけ生き残って申し訳ないという気持ちを抱きながらも、(これは広島、長崎の生存者も同じことを言っていた)現代の人たちにあの惨状を伝えるのが私たちの使命と「ひめゆり平和祈念資料館」を開き、そこで当時のことを語ってくれる。「今は孫と同じ年齢になってしまった親友。自分は精一杯生きて、いつか天国で会ったら平和な時代に起こったことをたくさん話してあげたい」きっと、沖縄返還の日のこと、沖縄海洋博覧会のこと、東京オリンピック、大阪万博のこと、ちゅら海水族館のこと。いっぱいいっぱい話してあげたいでしょうね。

いまでも、当時の証言をしていない方が数名いらっしゃるそうです。でも、誰が彼女たちを責められるでしょうか?心に負った深い深い傷を誰にも触れられたくない。そう思う彼女たちの思いもまた尊重されるべきでしょう。証言を残している方々も戦後30年、40年経って初めて戦場跡に行ったり、証言したりすることができたそうです。

ここでは、書ききれないほどの貴重な証言がたくさん詰まっている作品です。「ヒロシマナガサキ」同様、すべての人類が見るべき作品だと思います。DVD化はされません。もし、お近くの映画館や公民館で上映されることがあればぜひぜひご覧になってください。

公式ホームぺージでは、この作品の中で証言してくださっている方2人とこの作品を支援している歌手のCoccoとの対談が記されています。Coccoが若い人たちに向けてとても良いメッセージを残しているので読んでみてください。公式ホームページでCoccoも言っていますが、本当に「生き残って申し訳ないなんて思わないで。生き残ってくれてありがとう」と証言してくれた女性たちに言いたいと思います。下にリンクを貼りますので、ぜひ見てください。

報告 特別上映会 「ひめゆりの風」

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