シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

やさしい嘘

2007-02-26 | シネマ や行
これは旧ソ連のグルジアという国のお話です。カンヌ映画祭では国際批評家週間大賞っていう賞を取ったらしい。変な名前の賞だけど、カンヌ映画祭にはメインの映画祭のコンペと平行して、「監督週間」と「批評家週間」というのがあって「批評家週間」には新人監督の作品がジャーナリストたちに公開されるらしい。その週間のなかでの大賞を取った作品ということだろう。

なんとな~くとっつきにくい作品が賞を取ることが多いカンヌの賞だが、この作品もあまり映画を見ない人にとってはとっつきにくいかもしれない。旧ソ連の小さな国の話だし、言語はよく分かんないし、展開は静かすぎるくらいだし。ただ、内容は変にひねったところがないから、その辺にはとっつきにくさはない。

エカおばあちゃんエステールゴランタンはパリにいる息子オタールからの手紙を楽しみにしている。目の弱ったおばあちゃんにいつも孫娘のエダディナーラドルカーロワは手紙を読んであげている。エカおばあちゃんの娘であるエダの母親マリーナニノホスマリゼはおばあちゃんとうまくいっていない。おばあちゃんも息子ばかりを愛している印象でうまくいっていないのも仕方ないように見える。

そこへオタールがパリの工事現場の事故で死んでしまったという訃報が入る。マリーナは年老いた母親にその事実を隠そうとオタールからの手紙を偽造したりしているが、孫娘のアダはおばあちゃんに嘘をついていることに反対している。

お話は静かに進んでいくが、セリフの中には家族や親子の関係を考えさせられるものが秘められているし、反発する2組の母と娘(おばあちゃんとお母さん、お母さんと孫)が本当はどのように思い合っているかを巧みに表現している。

題名になっている「やさしい嘘」というのが、原題のままなのかどうか分からないのだけど、まさにこの物語は「やさしい嘘」が題材になっている。上に書いた娘のマリーナと孫のアダがおばあちゃんにつく嘘、おばあちゃんが彼女たちにつく嘘、そして最後に娘(とおばあちゃん?)が母親につく嘘。すべての嘘が家族を思いやるやさしさに溢れている。正直さというのは大切なものであるし、美徳であることは事実ではあるが、時と場合によっては「正直に言わない」ということも思いやりになるという心温まるお話だ。

ワタクシはこの映画を見て、子供のときから見ている吉本新喜劇を思い出した。親元を離れて暮らすヤクザな息子がいる。親に安心してもらおうと自分はヤクザではなく、会社の社長をしていると嘘をついている。その親が息子に会いに来る。それを哀れに思ったヤクザの組長以下仲間たちはその息子が社長であるという芝居を打ってやる。それを見た親は安心したわと言うが、本当は息子が社長なんかじゃないことに気づいている。っていう感じの、吉本新喜劇にはよくあるパターンのお芝居。新喜劇では途中におふざけ満載なのであるが、基本的な筋はこの映画も変わらないものだ。新喜劇もカンヌも同じテイストってことか