シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ロードオブザリング~王の帰還 スペシャルエクステンデッドエディション 後編

2007-02-16 | シネマ ら行
この戦いがひと段落したあと、ピピンとメリーは再会します。いつもはメリーのほうがしっかりしてるけど、ここではピピンが倒れこんでいたメリーを探し出します。「ボクを見つけてくれたんだね」と言うメリー。この再会シーンも感動。そして、怪我をして休んでいるエオウェンとファラミアの間にはなにやらロマンスが生まれている様子…あら、エオウェン、アラゴルンのこと好きだったんじゃ…?ま、でもアラゴルンとアルウェンの間には誰も入れないからね、ファラミアにして正解よ。

フロドとサムはどうしてたかと言いますと、フロドはますます指輪の魔力に支配され、みるみる弱っていってます。そんな判断力のにぶったフロドにゴラムはうまく取り入って、サムを悪者に仕立て上げ、フロドとサムを仲たがいさせてしまいます。残り少なくなったレンバス(エルフにもらった食べ物。一口でおなかいっぱいになるらしいんやけど、みんな何口も食べてるのはナゼ?)を自分は食べないでフロドにあげることまでしていたのに。そして、きちんと帰りの分の食べ物を残しておいてフロドにも観客にも希望を与えてきたのに。かわいそうなサム。どんなにサムが泣いて訴えてもフロドは信じてくれないのです。あんなにフロドに尽くしてきたのに、ゴラムに騙されたフロドはサムを追い払ってしまうのです。フロドへの怒りとサムの悔しさを考えるとここもすごく胸が痛いです。でも、サムはもちろんフロドを見捨てたりしません。ちゃんとこっそりフロドについて行っています。

ゴラムは隙あらばフロドから指輪を奪おうと考え、大蜘蛛のおばばが住む洞穴へとフロドを騙して連れて行きます。フロドはまんまと引っかかっちゃうんだよなぁ。ここで、サムが助けてくれなかったら本当にゴラムに指輪を取られていたよ。フロドはこの大蜘蛛のおばばの糸にグルグル巻きにされちゃうんだけど、そのフロドの姿がおかしくっていつもププッと吹き出しちゃうのです。すごく深刻なシーンなのに、フロドがミイラかマトリョーシカに見えちゃうんですよ。あれ、もうちょっとなんとかならんかったんかなぁ。しかも、オークにさらわれちゃうし…もう「3」ではほとんどサム一人の奮闘記って感じになっちゃって、どっちが主役だか分からない感じ。この洞窟でガラドリエル様にもらったエアレンディルの光を武器として使うんだけどさー、ガラドリエル様に文句を言うのは勇気がいるけど、これってイマイチ役立ってないんじゃ…?もうちょっと強い武器をくれれば良かったんだけどなぁ。きっと、ガラドリエル様にはワタクシのような卑しい人間ごときには分からない意図がおありになるんでしょう。しかし、サムの抵抗空しくフロドはオークにさらわれちゃうんだよね。あのマトリョーシカのまま…

ミナスティリスでの戦いを終え、本当に最後の最後、残り少ない兵でアラゴルンたちは精一杯サウロンの目をフロドたちからそらせるために戦い続ける。サウロンの目をこちらに向けるために危険を冒して、硝子玉でアラゴルンはエレンディルの剣をサウロンに見せます。そのとき、アルウェンの死を見てしまったアラゴルンはブローチを落とし、ブローチは粉々に…こんなに主人公たちに不吉な予兆ばかり見せる物語が他にあるでしょうか?

みな、さすがにもう死を覚悟した戦い。「エルフの隣で死ぬとはな」というギムリに「友達の隣でなら?」と尋ねるレゴラス。胸が熱くなるシーンです。そして、アラゴルンは初めからかっこいいんだけど、このシリーズを通して「2」「3」と加速度的にカッコよくなっていきますねぇ。この最後の戦闘のときなんてケタ外れにカッコいいです。それは多分、彼が王としての自覚を持ち、エレンディルの剣を持つにふさわしい人間になっていた過程をワタクシたちが目撃しているからなのでしょう。

オークがごちゃごちゃともめている間にオークからサムはフロドを助け出す。フロドが死んだと思って取っておいた指輪をフロドに返すとき、指輪の誘惑がこの二人の間にまで起こります。でも、もちろんサムはそんなものよりフロドのほうが大切な忠実な友達なのです。サムはもう歩けないというフロドにホビット庄の話を聞かせてやりますが、もうそんなものを思い出す余裕はフロドにはありません。ここで、サムは「指輪の重荷は背負えなくてもあなたは背負えます」と泣かせるセリフを言ってフロドを背負い、アラゴルンたちがサウロンの目をそらしている間に滅びの山の裂け谷へ。いよいよ、指輪が葬り去られるんですが、、、その方法が、、、やっぱり、フロドってダメダメだった…いや、フロドは指輪の魔力に支配されてるから仕方ないんだよね。ここまで、耐えられたことこそ、すごいことなんだよね。だから、最後のことはちょっと大目に見てやって。きっと、他の者ならここまでも耐えられなかったんだよ。ガラドリエル様が認めたフロドだもの。

指輪が葬り去られたあと、崩れるモルドールの中で、フロドとサムが故郷ホビット庄の思い出話をしますね。フロドも指輪を捨ててホビット庄の話ができるようになっています。覚悟はしていたもののいよいよもう二度と見ることはできないということが現実味を帯びてきた故郷のことを話すサム。後半はフロドより大活躍のサムが、それでもフロドを気遣う様子にまたまた涙です。と、そこへ、、、大きな鷹が飛んでくるではありませんか。ガンダルフが乗った鷹が。おーーーーい、その大きな鷹で初めからモルドールまで運んでくれたら良かったんちゃうん?と思わず突っ込んでしまった。いや、そんな基本的なこと言ったら、ガンダルフの魔法でみんなやっつけろよーとかっていう話にまでなっちゃいますので、そこんとこ目つぶれない人は見ちゃダメ。というか、そういうタイプの人はそもそもきっとこんな大長編に手を出したりしないか。

エルロンドの館で、傷ついた体を癒す一行。意識を戻したフロドの目にはガンダルフが。アラゴルン、レゴラス、ギムリ。そして、ピピンとメリー。最後にはサムの姿が。何も言わなくても分かり合う二人。「1」の最後にバラバラになって以来の旅の仲間の集合。ボロミアが欠けているけれど、ついに再会できた仲間たちに、本当に良かったね、良かったねという気持ちになり、もう後半は涙がまったく止まりません。

そしてついに、アラゴルンが王としてゴンドールに帰還します。この「王の帰還」という邦題、すごくカッコいいと思いませんか?すごくナイスな訳だと思います。ガンダルフによって、王冠を与えられるアラゴルン。旅の仲間たちもそれ以外の共に戦った仲間たちも国中の民衆もミナスティリスに集まっています。エルフからの祝福に応えるアラゴルンに思わぬ嬉しいサプライズ。永久の国へ向かう途中にアラゴルンとの子供の幻を見て、やはり彼との限りある生を選んだアルウェンがアラゴルンの妻となるべくそこに立っていたのです。アラゴルンはここで、まるで王様とは思えないような情熱的なキスをアルウェンにするんですねー。アラゴルン、ほんっとにラブラブなんだもんねー。アルウェンだって、アラゴルンを置いて去って行くわけないよね。なんせ、ガラドリエル様をして、それ以上の贈り物はありませんと言わしめたエルフのペンダントをアラゴルンに捧げているくらいだもんね。(映画では「1」の中でアルウェンから直接渡されるペンダントですが、原作ではアルウェンが自分のおばあさんであるガラドリエルにアラゴルンがロスロリアンを通ったら渡してくださいと託されたものだったんです)

この戴冠式には、もちろんフロド、サム、メリー、ピピンも出席しているのですが、彼らが王に向かっておじぎをするとアラゴルンが言うのです。「君たちは誰にもおじぎする必要なんかないよ」と。そして、王自身がこの4人のホビットたちにひざまずきます。それをうけてその場にいた全員が彼らに対してひざまずくのです。このシーンも何度見てもトリハダが立ちますね。小さき人たちがついにやった。一番小さいホビットたちがこんな偉業を成し遂げるなんて一体誰が予想しただろう。中つ国の者たち全員が小さき人たちにひざまずくなんて。こうして全員にひざまずかれて、ホビットの4人はなんとなく気恥ずかしいような所在なさげにしているところがなんとも愛らしいです。あ、でもピピンは一人で誇らしげな表情をしていて、それがまたピピンらしいです。

ついに、ホビット庄にもどった彼らは平和なときを過ごします。サムはロージーと結婚し、(彼らの結婚式ではなぜかピピンがブーケを受け取っちゃう。ピピン、最後まで笑わせてくれます)フロドはビルボが書いていた物語の続き「指輪物語」を書き始めます。原作ではホビット庄に戻った彼らと生き残ったサルマンの戦いが描かれていて、もう指輪も消滅したことだし、戦いはいいよと思っているところでの展開で、ちょっと辟易していたので、ここはすっかり平和的に日常に戻ってくれて映画のほうの組み立てのほうがワタクシは好きです。こうして幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし、で終わるのかと思いきや、フロドがなんとエルフたちの最後の船にガンダルフやビルボと共に乗せてもらうと言うのです。旅の途中にナズグルにやられた傷は一生癒えず、指輪から受けた影響も完全に消えるものではなく、そういう者はこの俗世では生きていけないということなんでしょうか。フロドが去ることを別れの瞬間まで知らされていなかったサム、メリー、ピピンの3人の辛さを考えると胸が締め付けられるようでした。ガンダルフは「すべての涙が悪しきものではない」と泣きなさいと言ってくれる。このとき、ホビットの4人はガラドリエル様にもらったお揃いのマントとブローチをしていて、見ているこっちはそれで余計に心が痛むんですよねぇ。そして、一人一人との別れ。サムのおでこにフロドがキスをする。こんなずんぐりむっくりの二人で、こんなに美しいシーンが作られるなんて普通では考えられません。

こうして、やっと本当にやっと終わりを迎える壮大なお話。これが、トールキンが自分の子供にベッドタイムストーリーとして聞かせようと書き始めた物語とは到底信じられません。そして、原作とは異なる部分がありつつも、この物語を映像にしてみせたピータージャクソン監督の執念すら感じられる素晴らしい映画史に残る作品です。感想と言ってもなんだかあらずじのようなものになってしまいました。お話が壮大なために少しずつピックアップするのも難しいですね。見る前はこういう冒険ものにここまで涙させられるとは思っていませんでした。こんなに何度も見たい作品になるだろうとも。この作品はおそらく、これからもずっとワタクシのベストの映画のひとつに入っていくと思います。

みなさま長い長い「ロードオブザリング」祭りにお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました