ケーブルテレビで見ました。以前から面白い作品だと聞いていたので興味がありました。
コウモリの持つ病原菌が人間に移り、多くの人間がバンパイア化した世界。
バンパイア→不老不死だが、人間の血を飲まないと理性を失ったり集中力をなくしたりする。太陽の光に当たると燃えつきて死ぬ。世界のマジョリティであり、地下街が発展したり、車は昼間太陽の光を遮断するような構造になっていたりとバンパイア仕様となっている。
人間→数が激減。バンパイアに見つかると食糧として捕まってしまうので隠れて生きている。
サブサイダー→人間の血が不足し、バンパイア同士で血を吸うとサブサイダーと呼ばれる化け物に変身してしまう。バンパイア軍は彼らを捕まえて処刑しているが、このところの食糧不足から数が増えている。彼らの容姿はかなり気持ち悪いです。
エドワードイーサンホークは人間の血不足を解決しようと日々人工血液を開発する研究をしている科学者。彼はバンパイアになりたくなかったが、弟フランキーマイケルドーマンに噛まれてバンパイアになった。弟は軍に所属しバンパイアであることを満喫しているが、エドワードのほうは自身がバンパイアであることを嫌い人間の血を飲むことを拒否していた。イーサンホークってチンピラもインテリもできる役者さんですが、こういう憂いある役がとても似合うと思います。
エドワードが働く研究所は人工血液の研究が完成するまで、人間の血を供給すべく人間を飼っていた。所長のチャールズブロムリーサムニールは人間だったとき癌で死ぬところだったが、バンパイアになったことで不老不死になれたことから、この“バンパイア病”に感謝していた。彼は人間の血で儲けることに罪悪感など感じていなかったが、彼の娘アリソンイザベルルーカスはそんな父親を嫌い人間のままどこかで生活していた。
ある日エドワードは逃亡中の人間と出会い、軍の追っ手をごまかして逃がしてやる。そこには元バンパイアだったが人間に戻ったというライオネルコーマックウィレムデフォーがおり、バンパイアたちを人間に戻す研究を手伝ってほしいとエドワードは持ちかけられる。
ライオネルは事故で車から投げ出され太陽の光に当たってしまい燃えた次の瞬間に池の中に落ちたことでバンパイアから人間に戻ったという。この偶然の状況を故意に作り出すことによってバンパイアを人間に戻せると考えたライオネルの仲間たちは科学者であるエドワードの力を借りようとしたのだった。そんな彼らにバンパイア軍の追っ手が迫る。
色々な設定が面白い作品です。マイケル&ピータースピエリッグ監督が作り出した新たなバンパイア像やその社会がきちんと矛盾なく描かれているところがとてもよくできていると思いました。太陽の光を浴びて、それを一瞬で消せば人間に戻るっていうのは、正直なんで?と思うけど、まぁそれも設定のひとつなのでヨシとしましょう。
エドワードが苦悩するバンパイアであり、それとは対照的な弟、ボスが描かれていますが、弟は兄を噛んだとき、兄にも一緒に不老不死になってほしかったからという兄への愛が見られます。ボスは娘を発見し、やはりバンパイアにしてしまいますが、娘は自分の信念に基づいてバンパイアであることを拒否し、わざと自分の血を飲んでサブサイダーに変わってしまい処刑される道を選びます。この辺りの人間模様がきちんと描かれていてスリラー要素だけではないところも好感が持てました。
映像的にはかなりスプラッタで、結構エグいので苦手な人は苦手かもしれません。特にサブサイダーが太陽に当てられて処刑されるシーンはエグいのですが、何人ものサブサイダーが車に鎖で繋がれて車が動き、建物の影から日向に出て燃え、あとに残された手錠と足枷だけが車に引きずられていくというのが、なんか妙にカッコいいと言うか美しささえ感じてしまいました。
もう一つの設定として、元バンパイアの人間の血を吸ったバンパイアも人間に戻るというのが最後のほうで分かるところもなかなか面白かったです。最後はかなり血みどろの戦いになって、イーサンホークとウィレムデフォーが出ていなければもっとB級くさくなったところですが、彼らのおかげで作品のクラスが保たれていたと思います。
見に行こうかどうか迷ったのですが、ジェニファーガーナーに魅かれて見に行くことにしました。
まず始めに日本人用にNFLのドラフトについての説明が映画が始まる前に入りました。ワタクシ、こういうの嫌いなんですよねー。なんか興冷めしてしまうっていうか。と、思ったのですが、後々この最初の解説に感謝することになりました。
1、ウェーバー制でのドラフト
2、指名権をトレードできる
3、指名の持ち時間は10分。その間にも指名権のトレードは可能。
特にこの3番目を知らなかったので、教えてもらっておいて良かったです。
成績不振が続くクリーヴランドブラウンズのGMサニーウィーバーJr.ケヴィンコスナーは12時間後に迫ったドラフトに向け、シアトルシーホークスから今年の第一位の指名権を譲るから3年分の1巡指名権を譲れと取引を持ちかけられ悩む。私生活では球団の財務の役員でもある恋人アリ(ガーナー)に妊娠を告げられ戸惑っていたが、今日はドラフトの日、それどころではないという態度をしてしまい彼女を怒らせてしまう。
GMたちはお互いに電話でやりとりをしてその間に選手のエージェントや選手本人に電話もしたりして、駆け引きが行われていく。肝心の駆け引きがほぼ電話でのやりとりになるにも関わらず、スピード感もあるし、映像のうまさもあってまったく退屈しなかった。
60歳のケヴィンコスナーと43歳のジェニファーガーナーが恋人同士で、彼女が妊娠っていうのが絶対ないとは言わないけれど、なんか無理やり感のある設定で、恋人同士でもいいけど、妊娠どうのこうのっていうのはこの作品には必要なかった気がします。「カンパニーメン」ではジェニファーガーナーの実際の夫ベンアフレックの義理の父をケヴィンコスナーが演じていたので、そんなことも思い出してしまって違和感がありました。
ジェニファーガーナーを目当てに見に行ったワタクシとしてはこの幼い頃からフットボールが大好きで、フットボール愛ゆえに男の世界でのし上がった役員のアリがとても魅力的で大満足でした。さすが男社会の中できびきびと働いている優秀な女性だけあって、はっきり言うことは言い、それでいて研修生などには優しい一面も見せるところがとても良かったです。彼女が喧嘩をするGMとヘッドコーチ・ペンデニスリアリーを止めて「2人ともコーヒーでもどう?」と言い、コーチが「砂糖とミルク入りで頼むよ」と言うと「誰が淹れてやるか!」と啖呵を切るシーンはとてもすっきりしたし、前のチームでの優勝リングをみせびらかすペンコーチに向かって「世界で一番タフなスポーツの優勝記念品がジュエリーなんて誰が決めたのかしらね」なんて言うところも吹き出しました。今時のデキるオンナなのに、食堂で取っていたのはジャンクフードばかりだったのも好感が持てました。
いよいよドラフトが始まって、それぞれの指名の持ち時間10分の間にも、他チームとの交渉を続けるシーンがとてもスリリングで手に汗握りました。実際にも一番人気のはずの選手があとにあとに残されていくという現象が起こることもあるようで、絵空事でもないのかなと思う反面、こんな当日ギリギリに色々調査とかするの?という疑問もありつつでしたが。結局は人柄で判断、みたいなのって実際には甘い!ってことなのかもしれないけど、映画的にはそれもありかなと思いました。それにしてもドラフトまでエンターテイメントにしてしまうアメリカって本当に貪欲な国だなぁと思います。
ひさびさにケヴィンコスナーの主演作を見ました。彼ってこういう不器用だけど、実直で誠実みたいな役がとてもよく似合います。がんがん有能な人ってわけじゃないけど人柄で周囲を惹きつけるタイプのリーダーが似合います。
フットボールを知らない人が見るとわけの分からない作品かもしれません。アメフトまたはスポーツ好きの方にお勧めです。
レンタルで見ました。ワタクシがとても好きなタイプの群像劇で登場人物が少しずつS字フックのように関わり合いを持ちつつ、それぞれの物語が進行していくタイプのドラマです。
中学生のジェイソンディクソンコリンフォードは友達と悪ふざけばかりしていて、暗いタイプで音楽が好きなベンボイドジョナボボのフェイスブックのページにジェシカという女生徒になりすましてベンに好意があるふりをするメッセージを送ってベンを馬鹿にしていた。ある日、ジェシカからヌード写真をベンに送り、ベンにもヌード写真を送るように言う。ベンは裸になり口紅で「愛の奴隷」と体に書いた写真をジェシカ宛に送り、それをジェイソンたちはネット上に公開してしまう。全校生徒にそんな写真を見られてしまったベンは自殺を計る。たまたまその場に居合わせた姉アビーヘイリーラムに助けられ一命は取り留めるが意識不明の重体に陥ってしまう。ベンの父リッチジェイソンベイトマンは弁護士で仕事が忙しく家族を顧みることがあまりなかったが、息子の自殺の原因を必死で探ろうとする。
そのリッチが弁護士を務めるテレビ局のキャスター・ニーナダナンアンドレアライズブローは、インターネットを通じてポルノ行為を見せるサイトで働く未成年たちの取材をしようとそのサイトで働くカイルマックスシエリオットに近づく。
いたずらの加害者ジェイソンの父親マイクフランクグリロは元警察でインターネット犯罪の捜査に関わっていたが、妻を亡くして以来息子と過ごす時間を増やすためインターネット専門の探偵になった。そんな彼のところにネット犯罪でカード番号や個人情報を盗まれた夫婦デレックハルアレキサンダースカルスゲルドとシンディポーラパットンから依頼を受ける。
この3つの物語が同時に進行していくのですが、きっかけはすべてインターネット上のことではあるのですが、物語の内容としてはとても巧みにそれぞれの登場人物の内面が描かれるようになっています。
ジェイソンのしたことはもちろん許しがたい行為だし、そのせいでベンは自殺未遂をしてしまったのですが、ジェシカになりすましてベンとチャットしていたときのジェイソンはとても素直に父親との関係などを吐露していて、友達の手前否定はしていましたが、本当は少しベンと共感し合っていた面があったようだった。自殺の真相を知ろうとするベンの父親ともジェシカになりすましたままチャットを続けていて、そこでもベンを思いやるリッチの心情に触れいたたまれなくなるジェイソンが映し出されていきます。
テレビ局のキャスター・ニーナは始めは自分の仕事の手柄のためだけにカイルに近づきますが、そのうち本当にカイルの身上を気にし始め、なんとかカイルを助けようとして自分が窮地に立たされます。
ネット犯罪被害者になってしまった夫婦は幼い子供を亡くして以来関係がぎくしゃくしており、夫はオンラインギャンブルにハマり、妻は同じ苦しみを分かち合うサイトにハマっていき、捜査のためパソコンを調べたマイクからお互いにその事実を聞かされ、容疑者シューマッカーミカエルニクヴィストを共に追ううちに夫婦の絆を取り戻そうとしていきます。
他人のネット犯罪を調べていたマイクは自分の息子が実はネットいじめの加害者になっていたことを知り愕然とします。元警官として、探偵として息子ジェイソンのしたことにどう対処するのかと注目して見ていましたが、ここではマイクは愚かな一人の父となり、息子のパソコンからそのいじめの形跡をすべて消し去ろうとします。
全体的に切ないトーンが貫かれていてこれまた大好きな映画「クラッシュ」を彷彿とさせました。特にやはり息子の自殺の真相を必死で追い、それに必死になるあまりまた家族をないがしろにしてしまう父親像リッチの姿が印象的だったし、自分のやってしまったことの大きさに押しつぶされそうになりながらも告白することはできずにいる少年ジェイソンが切なかった。
出番はそんなに多くないですが、ベンのお姉ちゃんがベンとは正反対の学校の人気者でスポーツ好きっぽい雰囲気を持っていて事件前特にベンと仲良しってふうでもなかったけど、自殺未遂のあとずっと病室のベンにつきっきりで、そんな状態を思いやりもしない友達には唾をかけたのが強烈でした。ベンのことでケンカをする両親を前に「あんな2人と私だけ置いてけぼりにしないでよ」とベンにつぶやくシーンが妙にリアルでした。
それぞれの登場人物の内面に非常にうまく触れながらも、3つの事件も結構スリリングに進行するので食い入るように見ていたら、すべてのクライマックスがストップモーションからスローモーションで演出され一瞬息をするのを忘れてしまいました。ネットのもめごとに端を発したあの生身の人間同士のぶつかりあいのシーンの演出はとても効果的だったと思います。
映画ファンが見ると、登場人物ほぼ全員「あ、知ってる」って感じの役者さんたちなんですが、映画ファンでない方には初見の人ばかりかもしれませんが、物語そのものは面白いのでオススメします。この作品のヘンリーアレックスルビン監督の1作目「マーダーボール」も評価の高かった作品ですので、見てみようと思います。
ものすごく評価されている「スウィートヒアアフター」の良さはいまだに分からないでいるのですが、アトムエゴヤン監督は好きです。彼がアメリカ、アーカンソー州で起こった実際の猟奇殺人事件を題材にした映画と聞いて見に行くことにしました。
1993年5月5日、平凡な日の夕方パムホッブスリースウィザースプーンの8歳の息子スティーヴィーは友達のクリスとマイクと一緒に遊びに行ったまま失踪してしまった。その日の夜懸命に3人を捜索する町の人たちをよそに警察はただの家出かもしれないとすぐには捜索を始めてくれなかった。
翌日ようやく捜索を始めた警察は3人の遺体を近所のロビンフッドの森の中の川の中から引き揚げる。3人とも手首と足首とをそれぞれの靴ひもで結ばれている状態で虐待され死亡に至っていた。
警察はその時3人と一緒にいたという少年の証言を基に知能指数の低いジェシーミスケリークリストファーヒギンズに事情を聞くことにする。ジェシーは警察に促されるままダミアンエコールズジェームズウィリアムハムリックとジェイソンボールドウィンセスメリウェザーと一緒に3人の児童を殺害したと自白する。ダミアンとジェイソンはメビメタが好きで悪魔崇拝などに興味を持つ高校生で3児童を悪魔的な儀式のために殺したと警察は踏む。
調査会社のロンラックスコリンファースは、警察のずさんな捜査のために高校生が逮捕されたと知り、それぞれの国選弁護士たちに無償でこの事件の調査に協力すると申し出る。
アトムエゴヤンが監督をしたということで、何かしら怪しげなというか、少し特異な作品なのだろうと思って見ていたら随分ストレートな演出の冤罪もので少し拍子抜けした。しかし、これが実際に起こった冤罪事件であることを考えるとこういうひねりのないストレートな演出に好感が持てた。
犯人を悪魔崇拝者とし、それをよってたかって糾弾する集団ヒステリーのような現象はキリスト教徒の多いアメリカならではのような気がしてしまうのだが、警察のずさんな捜査、自白の強要、都合の悪い証拠の隠滅、先入観による決めつけ、単純な真実を見ようとしない検察、裁判官といった構図で冤罪が出来上がっていく様は日本の冤罪事件とも大いに重なる部分がある。
事件当日に泥と血まみれでレストランに入ってきた黒人が遺した血痕を採取したにも関わらず失くしてしまう警官。3児童のうちの一人クリスの継父ジョンケヴィンデュランドの虐待の前歴や彼のナイフについた血痕、当日スティービーが持って出かけたはずのポケットナイフを継父テリーアレッサンドロニヴォラが持っていたこと、3人の手足を結んだのはロープとジェシーが証言したこと、3人と一緒にいたと証言している児童の母親ヴィッキーミレイユイーノスが軽犯罪で警察に脅されていたこと、スティービー一家の知り合いで少年に異常な興味を示していたクリスモーガンデインデハーンの取り調べのずさんさなどなどなどなど、数え上げればきりがないほど真犯人は別にいるのではないかと思えてくるのだが、、、
結局裁判で3少年は有罪となり、現在では無罪を主張してはいるものの2011年に有罪と認めれば仮釈放するという異例の司法取引によって、釈放されているという。この司法取引も意味が分からないんだよね。ダミアンの死刑が迫っていたらしく、当局としても死刑にしないでおける方法を無理やり編み出したのかって感じ。
映画としては事件の内容を事実通りに語っていくといった感じなんだけど、リースウィザースプーンが素晴らしかったな。田舎のちょっとダサい主婦って感じがよく出ていたし、8歳の息子を亡くした母親として憔悴しきった中でもきちんと裁判を傍聴する間に裁かれている3人と彼らを取り巻く事実を冷静に見極めようとしている姿勢がよく伝わってきた。集団ヒステリーの中で少年たちを糾弾するよりも、自分の息子を殺した真犯人をただただ知りたい。その思いが静かに伝わってきたし、調査員のロンを演じるコリンファースと交わす視線だけで会話をしているのが聞こえてくるようだった。
ネットのレビューは評価が低いですがワタクシはとても良い作品だと感じました。ただワタクシはこの「ウェストメンフィス3事件」というものを知らないで見たので良かったのかもしれません。この事件のことをすでにドキュメンタリーなどで見て知っている方には特に目新しい発見のない作品ということになるかもしれません。
もともとはジョニーデップの出世作となったTVドラマだったということだけは知っていたのですが、内容はまったく知らずに見ました。
高校の同級生だったジェンコチャニングテイタムとシュミットジョナヒルは共に警察官になる。2人とも童顔であることから高校にはびこる麻薬犯罪を取り締まるために高校に潜入捜査を行うメンバーに選ばれる。
この2人のキャスティングを見れば分かると思うのですが、当然ジェンコは高校時代イケてた子でシュミットはイケてない子だった。高校の時は仲良くなるはずもなかった2人だけど、ポリスアカデミーで一緒になり、勉強が苦手なジェンコ、運動が苦手なシュミットをお互いにフォローし合っていくうちに仲良くなっていった。
潜入捜査の設定でも当然ジェンコが運動部のスター選手でイケてる薬を使用・売買しそうな子たちを担当し、シュミットが化学オタク系で薬を製造しそうな子たちを担当するはずだったんだけど、2人がちゃんとニセの身元の名前を憶えてなかったことから、設定が逆転してしまう。始めはそれでうまくいきそうになかったんだけど、2人とも徐々にその役割にはまってくる。
この2人の立場が逆転するっていうのがなければ、そんなに面白くなかったと思うんだけど、この単純な設定の入れ替えが物語を面白くしている。高校時代イケてたジェンコが、シュミットにイケてる子になるためのアドバイスをするんだけど、彼らが高校にいたときと時代は変わっていて、環境問題に関心があって読書が好き、みたいな子たちがイケてる時代になっていたっていうのが笑えた。ファッションの流行も以前とは違うからジェンコはすっかりイケてない子になってしまっていた。それをジェンコが「Gleeなんかが流行ったせいだ!」って言ったのがGleeファンとしてはかなりウケました。本当はイケてるはずのジェンコがすねつつも化学オタクたちと仲良くなっていくとこも笑えました。
他にもいっぱい笑えるところがあって、なかなか爆発を起こさないカーチェイスのシーンとか、アクション映画を逆手に取って笑わせるのが良かったです。2012年の作品なので、十分チャニングテイタムは日本で有名だったと思うのですが、DVDスルーだったようです。多分コアなジョニーデップファンでないと元々のドラマもそんなに知られていないでしょうし、アメリカのコメディはそこまで日本ではヒットしませんしね。多分元ネタを知っていたら笑えるとシーンもあるんでしょうが、知らなくても全然大丈夫でした。
全然違うタイプの2人が親友になって協力して捜査を進めるものの、途中仲間割れなんかもありつつ、最後にはまた親友に、という“ブロもの”で、絵に描いたような展開ではありますが、なかなかにセンスもテンポを良くワタクシは好きでした。
最後にゲスト出演でドラマ時代の主役の2人(ジョニーデップとピーターデルイーズ)が登場したのは元のファンにはたまらないシーンだったでしょうね。
この夏にアメリカでは続編の「22ジャンプストリート」が公開されてヒットしたようです。今度は大学に潜入するのだとか。
シェイクスピアの最後の作品を映画化。舞台版の演出経験のあるジュリーテイモアが監督を務め、主人公を女性に変更してアレンジしている。ジュリーテイモアってなかなかにユニークな世界観を持った監督さんですね。
12年前実の弟アントーニオクリスクーパーの陰謀によりミラノ大公の座を奪われ追放されたプロスペローヘレンミレンは美しく成長した娘ミランダフェリシティージョーンズと共に流された島で暮らしていた。そこへやってきたナポリ王アロンゾーデイヴィッドストラザーンの一行。その船には弟アントーニオや王子ファーディナンドリーヴカーニーも乗っていて、プロスペローは妖精のエアリアルベンウィショーを使ってその船を難破させる。
一行は小さなグループで離ればなれになり島をさまよう。王子ファーディナンドは一人ではぐれ、プロスペローの思惑通り、娘ミランダと出会い恋に落ちる。プロスペローはファーディナンドに試練を与えそれを乗り越えたファーディナンドはミランダとの結婚を許される。
王のグループはアントーニオが王の弟セバスチャンアランカミングをそそのかして王を暗殺しのし上がろうと企む。
プロスペローの奴隷キャリバンサイモンフンスーに出会った王の家来トリンキュローラッセルブランドとステファノアルフレッドモリナは、キャリバンにそそのかされてプロスペローを殺しに向かう。
プロスペロー自身も島流しにされて以来魔術を学び魔法が使えるようなのですが、王たち一行を色々と操っているのは、プロスペローに恩義がある妖精のエアリアル。ワタクシ、ベンウィショーはあまり好きな役者さんじゃないんですが、このエアリアルという役は彼にピッタリで健気にプロスペローに尽くすエアリアルに何か悪い事が起こらないかとひやひやしながら見ました。プロスペローのほうも家来のようにエアリアルを扱ってはいるものの最後に約束をきちんと守って彼を自由にしてやったのでほっとしました。
物語もセリフ回しもザ・シェイクスピアで、シェイクスピアが苦手な方は全然面白くもなんともない話ということになってしまうと思いますが、ワタクシはシェイクスピアが好きなので楽しめました。セリフ回しで言えばヘレンミレン、アルフレッドモリナ、デイヴィッドストラザーンが特に良かったと思うのですが、クリスクーパーは全然シェイクスピア劇のイメージがなかったのですが、意外にはまっていて良かったな。アランカミングは道化のトリンキュロー役でも面白かったかなぁと思います。
大好きな役者さんヘレンミレンがめちゃくちゃカッコいいんだけど、彼女が着ている衣装がまたねー。この時代にはありえないジッパーを多用した衣装なんですけど、超カッコ良くて。と思ったらアカデミー賞衣装デザイン賞ノミネートされてたんですね。手がけたのはサンディパウエルという3度アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞している人ですね。どうりで。彼女が手掛けたかどうかは分かりませんがキャリバンの容姿も独特で魅力的でした。
まぁ色々とごちゃごちゃあった上で大団円。というシェイクスピアのパターン。これは喜劇に分類されるんでしょうね。ファンタジーちょいシリアスコメディーといったところかな。
シェイクスピアってどうしても難しいっていうイメージがあると思うんですが、このブログでも多分何度も書いていると思いますが、当時のイギリスではシェイクスピアと言えば大衆演劇のスーパースター。いまの日本で言う三谷幸喜とか蜷川幸雄とかそういう人みたいなもんで、(この例えが正しいかは分かりませんが)全然難解とかそういうことではなかったのです。だからあんまりアレルギーを感じないで見て頂きたいなぁと思います。
世界が崩壊した100年後、復興した人類はそれぞれを性格により5つのfaction(共同体)に分けることで平和な世の中を保っていた。一定の年齢になると性格審査にかけられ、どの共同体に属するのかを判断されるが、その判断とは別に自分の意志でどの共同体で残りの人生を生活していくかは決めることができた。ただ、90%ほどの者は生まれた共同体に残り、別の共同体を選んだ者はそこに属する資質がなければ「無所属」というホームレスのような生活をしなければならなかった。
その5つの共同体とは
Abnegation(無欲) 他人に奉仕することを主として生きる。政治を司る。服装はグレー。虚栄の象徴である鏡を見ることを許されていない。
Dauntless(勇敢) この世界の秩序を保つ警察のような役割。体育会系のノリでハメを外しがち。服装は黒のボディスーツでスポーティー。
Erudite(博学) 知識、教育を司る。服装は紺。
Candor(高潔) 嘘をつくことができない。白黒をはっきりさせる性質から司法を司る。黒いジャケットに白のネクタイ。
Amity(平和) 平和を愛する農民。明るい性格。オレンジ色や土色の服装。
トリスシャイリーンウッドリーは無欲生まれだが、自然に人助けができる兄ケイレブアンセルエルゴートとは違って無欲であることに違和感を覚えていた。そんな兄妹についに残りの人生をどの共同体で暮らすかを選ぶテストの日が。父アンドリュートニーゴールドウィンと母ナタリーアシュレイジャドは彼らがどんな選択をしようと愛していると言ってくれている。
トリスのテストの番がやってきた。適性を調べる機械にかけられるトリス。試験官のトーリマギーQはトリスの結果を見て青ざめる。トリスはどの共同体にも分類されない「ダイバージェント」(異端者)だと言うのだ。弟がダイバージェントで社会に殺されたトーリは手動でトリスの適性を「無欲」と入力してトリスを逃がしてくれた。無欲を選んで静かに暮らしなさいとトーリに言われたトリスだったが、選択の日、昔から憧れていた「勇敢」を選んでしまう。
トリスが勇敢を選んでから、他の転向組と一緒に教官フォーテオジェームズの下、訓練されるシーンがねぇ、、、長いんだわ。これ多分1時間以上ここに時間を割いてますよね。訓練風景っていうのは決してつまらないわけじゃないんです。ガチな素手での殴り合いとか、射撃訓練とかナイフ投げとか面白いんですよ。女の子たちが容赦なくボコられるのは見ていてつらいですけど、全体的に見ごたえはある。が、です。ただこれがすごく長くてですねぇ。トリスがダイバージェントと診断されたことっていうのが全然生きてこないで、延々と「勇敢」に属するための訓練を見せられるっちゅうのがどうにも納得がいきません。
肉体的な訓練が終わったと思ったら、今度は精神的な訓練ってわけで、ここでトリスがダイバージェントだってことが教官フォーにばれてしまいます。どうやらダイバージェントは特殊な能力で恐怖を克服してしまうらしい。でも、このフォー教官がトリスが気があるもんだからまたかばってもらえちゃうんです。やっぱ可愛い子は得だね。
一方そのころ、博学のリーダー・ジャニーンケイトウィンスレットは、無欲よりも博学が政治を司るべきだと考え、勇敢の武力を利用して無欲を支配しようとしていた。その企みに気付いたトリスとフォーは2人で反逆を起こし、世界を救おうとする。
ここでやっとこさトリスのダイバージェントとしての能力が大いに発揮されるのかと思いきやですね、博学が勇敢を操るために打った薬がトリスにだけは効かないってのは良かったですけど、結局それだけなんですよねー、彼女のダイバージェントとしての能力は。あとは勇敢の訓練で培ってきたものを使っただけって感じだったのが非常に残念だったなぁ。ダイバージェントってそんなに社会の脅威とされるほどの能力ないじゃん!
トリスを演じたシャイリーンウッドリーちゃんが可愛いから見てられましたけどね。そして、後から娘を助けに来たお母さんが超カッコ良かったー。お母さんがアシュレイジャドで最初にちょこっと出ただけだったから、あれだけでアシュレイジャド使うなんてもったいないなぁって思っていたら!なんとお母さん実は勇敢生まれだったんだねー。あの一連のシーンは非常に良かったですね。
ケイトウィンスレットの初めての悪役も楽しみにしていたんだけど、もう少しパンチが欲しかったですね。マギーQももっと後半活躍してくれるのかと期待していたんですが。
要はアメリカの中学高校生向け映画っちゅうことですかねー。シャイリーンウッドリーが活躍してテオジェームズがカッコ良ければそれで良かったのかな。設定的にはすごく面白い作品になる要素がある作品だと思うので、もう一歩深く掘り下げてくれたらもっと面白い作品になったんじゃないかなぁと思います。途中笑えるシーンとかカッコいいシーンとかはいっぱいあるので、決して面白くなくはありません。ただちょっと惜しいなという作品でした。
オマケ1若者向けとあって、サントラもカッコいいんですが、トリスが勇敢に入ってすぐにみんなと一緒に列車に飛び乗って行くシーンの「Run Boy Run」は最高にカッコ良かったな。
オマケ2原作は3部作らしく、2作目をナオミワッツ主演で撮影が始まっているそうです。それにトリスたちが登場するのかどうか全然知らないのですが、主演がナオミワッツならまた見に行きたいな。
1979年カリフォルニア。歌手を目指しているドラァグクイーンのルディアランカミングは毎日アパートの隣の部屋から聞こえてくる大音量の音楽に悩まされていた。ある日仕事から帰ると管理人がその隣の部屋に入っていて、家庭局の人間がその家の子どもであるダウン症の少年マルコアイザックレイヴァを連れ出すところだった。その子の母親ジェイミーアンオールマンは麻薬使用で捕まったと言う。ルディはなんとか止めようとするがもちろんできるわけはなくマルコは施設に連れて行かれてしまう。
その夜、仕事の帰り道ルディは施設を抜け出しとぼとぼと町を歩くマルコを発見する。自分のアパートへ連れ帰り、最近バーで知り合った弁護士のポールギャレットディハラントに助言を求める。ポールは始めマルコが施設に送られるのは仕方のないことと言っていたが、ルディの「麻薬中毒の母親の元に生まれたことも、ダウン症に生まれたことも全部マルコのせいじゃない。それなのに、どうしてマルコが辛い思いをしなくちゃいけないの?」という言葉に打たれ、弁護士として何とか方法を考える。その方法とは、刑務所に収監中のマルコの母親から出所までの監督権を譲り受けるというもので、面会に行き正式に手続きを済ませた。
ポールは裁判所に納得させるためには、きちんとした住環境が必要だとルディとマルコを自分の家に住むように誘う。同棲の誘いに有頂天になるルディ。表向きは“いとこ”と偽ってではあったが、3人の幸せな生活が始まった。マルコが初めて与えられたキレイな自分の部屋に涙するシーンが印象的。
母親からほぼネグレクト状態で育てられてきたマルコのために2人は医者に診せ、メガネを買ってやり、特別学級がある学校に入学させた。食事を作り、宿題を手伝い、祝日を祝い、寝る前にはマルコの大好きなハッピーエンドのお話を聞かせ、時々は健康には悪いけどマルコの大好きなチョコレートドーナツを一緒に食べた。マルコの成長は目覚ましく、2人からたっぷり愛情を受けとても幸せな1年が過ぎた。
ルディは目指していた本物の歌手になるべく、デモテープを送り、週に数回ではあるがバーで歌うようにもなっていた。そんな幸せな日々は永遠に続くかのように思えたのだが、、、
2人がゲイのカップルであるということがバレ、ポールは仕事をクビになり、マルコは家庭局に連れて行かれてしまう。絶望の中で2人はマルコを取り返すべく裁判に訴えることにした。ポールは自分が同性愛者であることをカミングアウトせずに人生を過ごしてきていたが、愛するマルコとルディのため勇気を出してクローゼットから出る決心をする。
ここからが見ているのがとても辛い。学校の先生ケリーウィリアムズや3人の家庭生活の視察に来た家庭局の職員は、2人は最高の両親であり、マルコは2人の元で暮らすべきだと証言してくれるのだが、ゲイに偏見のある、というか偏見しかない検察官のランバートグレッグヘンリーは重箱の隅をつつくような底意地の悪い質問で、3人を引き裂くことに全力を注いでいた。
ハロウィーンにフランケンシュタインの花嫁に扮したルディのことを、マルコに女装を見せた、だの、マルコの前でキスしたことがあるか、だの、開店準備の仕事場に連れて行っただけでゲイバーに連れて行ったことがある、だの、マルコのお気に入りのおもちゃは女の子の人形だ、だの、それはルディに出会う前からマルコがずっと大切にしていたものなのに、マルコに悪影響を与えている、とか言って、本当にムカつくおっさんだった。これが当時の世間の大方の見方だったのかもしれないけど、ルディのくやしさを考えると本当に腹が立った。
ルディにはマルコが受けてきたであろう理不尽な差別や彼の孤独がとてもよく分かったのだろう。だから、始めから何の抵抗もなくマルコを引き受ける気持ちになったのだと思う。検察官から放たれる攻撃的な言葉や侮辱も、自分に向けられるものならルディなら我慢できただろうし、普段ならひねりの効いた返しもできたかもしれない。でも、マルコとの生活がかかった裁判で、何をどう言い返そうが理解しようともしない検察官を前にルディがどんなに悔しい気持ちでいたか。ルディが証言台に立つシーンは涙が止まりませんでした。
興味深いのは学校の先生と家庭局の職員の実際に3人が家族として過ごしている姿を目にした人たちは「3人が一緒に暮らすべき」という結論を出していて、実際には何も知らない、ただゲイのカップルが他人のダウン症の子どもを育てようとしているという事実だけを見ている検察官や裁判官が3人を引き離そうとしているということなんですよね。親としての2人を実際にちゃんと見た人なら彼らがマルコにとって最高の親だと分かるのに。
それでも執拗に世間の枠から外れる3人を引き離そうとする検察側は、マルコの母親の刑期を短くしてまで出所させ母親の監督権の復権を申請させる。当然、実の母親が監督権の復権を求めてくればポールとルディに勝ち目はなかった。マルコをネグレクトし、アパートに男を引き込んでドラッグ三昧の母親にダウン症の子を引き渡す検察。ゲイのカップルの要望を通させないためなら、一人の子どもの福祉など彼らにはどうでもいいことだった。これは法律の問題じゃない。本当にただゲイのカップルが許せないだけの行動としか思えない。むしろ、そんな取引で母親を出所させた検察のほうが法律を捻じ曲げていると言ってもいいだろう。
法律の下結婚した“夫婦”でもなく、血のつながった家族でもない。でもそこには間違いなく愛があって、その愛はそんじょそこらの誰にも負けないものだった。でもそれを許さない人たちがいる。彼らの何を邪魔したわけでもない、ただ世界の端っこにひっそりと幸せに暮らしたいだけの人たちのことを絶対に許せない人たちが存在している。同性愛だけではない。ダウン症だけでもない。様々なマイノリティについて。自分の考える枠からはみ出す人たちを一切許さない、その狭量さにどう立ち向かえばいいのだろう。
このブログを書くために調べるまで知らなかったのですが、このお話実話がベースだそうです。どこまでが実話なんだろう?マルコがルディとポールを求めて彷徨い歩き死んでしまうラストまで実話なのかなぁ。だとしたら悲し過ぎる。マルコは母親のアパートに連れて行かれるとき「僕の家じゃない。僕の家じゃない」ってずっと言っていました。誰一人としてその言葉に耳を傾けてやる大人はいなかった。ハッピーエンディングが大好きだったマルコ。彼にこそハッピーエンディングが訪れてほしかったのに。
最後にルディが歌う「I Shall Be Released」に心を揺さぶられました。単館上映ですが、たくさんの方にぜひご覧になってほしい作品です。
普段完全な恋愛映画というのはそんなに見ないほうなのですが、これは大好きなケイトウィンスレット主演ということで見に行くつもりにしていたら、何かで応募したらムビチケが当たったので超ラッキーでした。
9月初め新学期が始まる直前の週末、シングルマザーのアデル(ウィンスレット)と13歳の一人息子ヘンリーガトリングリフィスがスーパーで買い物をしていると、お腹から血を流した男・フランクジョッシュブローリンがヘンリーに俺を車に乗せて家まで行けと脅して来る。ヘンリーを守りたい一心でアデルはフランクを車に乗せ自宅へと連れて行く。ニュースでは盲腸の手術直後に窓から飛び降りて脱走した男のことを報じていた。男は殺人の罪で服役中の重罪犯だと言う。
フランクは脱獄は本当だが、自分が犯した罪はテレビが言うような酷いものではないと言い、親子には危害は加えないから明日電車に乗って遠くの町へ行くまで今晩一晩だけ泊めてくれと言う。そして、自分をかくまったことがバレたとき罪に問われないようにアデルをイスに縛り、フランクは料理を始めた。イスにしばりつけたアデルの口にスプーンで料理を運ぶフランク。
出て行く約束の次の朝になったが祝日で電車が通らない。フランクは親子に朝ごはんを作り、男手がなくほったらかしだった家や車の修理を始めた。
ヘンリーの父親と離婚する前から情緒不安定気味だった母のアデル。ヘンリーはその分しっかりしなくては、とアデルの夫の役割も果たそうとしてきたが、やはり13歳の少年にはそれはまだ重荷だった。そんなところへやってきた頼りがいのあるフランク。家の修理だけでなく、タイヤの交換に仕方や野球の仕方も教えてくれた。
しかも、このフランク、そういう男らしい側面だけではなくて料理が上手。最初に作ってくれた昼ご飯も朝ご飯も絶品で、近所の人がくれた大量のモモを使ってピーチパイの作り方までこの親子に伝授。ずっと一人で不安を隠しながらヘンリーを育ててきたアデルが魅かれるのも当然である。このピーチパイのシーンがめちゃくちゃベタなんだけど、アデルとフランクの2人っきりではなくてそこにヘンリーもいるから、ちょっと変則的なベタになっていていいですね。アデルとフランクが魅かれて行くのは必然で、そんなにじっくりは描かれないのですが、仕方ないのよ、だってフランク脱獄犯だから、なんせ時間がないのですよ。
この13歳の少年ヘンリーが、自分も性の目覚めを感じつつ、母が女としてもう一度開花するのを目の当たりにしていくという、ちょっぴり複雑な気持ちになる設定なのですが、それを開花させるのがフランクというヘンリーも憧れを抱く男性だったのでうまくいったんでしょうね。そうでなければ、同級生のおませな女子に焚き付けられたヘンリーが警察にちくったりしちゃうところだったんだろうけど、そうはならないのを説得力を持って描くためにはやはりフランクの魅力を存分に見せる必要がありました。そして、それは大成功していたと思います。正直、ジョッシュブローリンがあんなにかっこよく見える日が来ようとは予想だにしていませんでしたよ。だいたい刑事かワル役が多い彼。ここまでロマンティックな役は最初で最後ではないでしょうか?と言ったらファンの人に怒られるかな。
こういう繊細でちょっと小ダサイおばさんを演じさせたらこの世代でケイトウィンスレットの右に出る者はいません。それでいて、色気もある部分も演じなければいけませんから難しい役だと思いますが、やはりそこは彼女の得意とする分野と言っていいでしょう。彼女にはいまのまま自然に年を取って行ってほしいと思います。
アデルとフランクはヘンリーを連れてカナダに逃げようと決意します。しかし、近所の人にフランクのことを通報され・・・
ここでの展開の可能性は2つ。蜂の巣になるか捕まるか。ですよね。よくある映画の展開では蜂の巣パターンだと思うのですよ。でもこのお話はそうじゃない。そうじゃないところがすごく良かったなぁ。やっぱりアデルとフランクには幸せになってほしかったから。
フランクと過ごしたたった5日間。これがアデルとヘンリーの人生を変えました。アデルはもちろんなんですが、ヘンリーの人生を大きく変えたというところがとても良かったと思います。その後のヘンリーの人生を流しているシーンではなんだか涙が止まりませんでした。
最後、アデルはもう死んじゃってるとかそういうのなのかなぁと思ってドキドキしながら見ていたら、ちゃんとハッピーエンドだったから良かったー。ロマンチックな作品がお好きな方にはオススメです。
2日連続でディズニーアニメです。
地上波で放映があったのを見ました。公開時から興味はあったものの見逃していた作品です。
18年間塔の上から出たことのないラプンツェル。母親から外の世界は危険だから出てはいけないと教えられていた彼女だが、実は彼女が母親だと信じている人は魔女でラプンツェルの不思議な髪の毛の力を利用して若さを保っている。そのために魔女は幼いラプンツェルを誘拐してきたのだが、ラプンツェルは本当は王国の王女さまだった。
ラプンツェルを誘拐されて悲しみに暮れる王様とお妃様は毎年、ラプンツェルの誕生日にたくさんのランタンを空に浮かべて王女の無事を祈っていた。そうとは知らないラプンツェルは、年に一度空に浮かぶ光を自分の目でそばで見てみたいと外に出ることを夢見ていた。
彼女の18歳の誕生日、王宮からティアラを盗んで兵隊に追われているフリンが、追手を逃れてラプンツェルの塔に登ってきた。ラプンツェルはフライパンでフリンを撃退。フリンが失神している間にティアラを隠し、ティアラを返してほしければ外に連れて行ってと交換条件を出す。フリンはティアラ欲しさに仕方なくラプンツェルを連れ出してやるのだが、2人の行く手には兵隊やらフリンの泥棒仲間やら魔女やらといった追手がいっぱい。ラプンツェルは無事誕生日のランタンを見ることができるのか。
ラプンツェルの親友はカメレオンのパスカル。フリンには「カエル、カエル」と言われていますが自由自在に色を変えるカメレオンのパスカルが可愛い。ディズニーの主人公の相棒にはこういう小動物が多いですね。今回のパスカルはちょっと見せ場が少なすぎる気はしました。しゃべらないから余計かな。
フリンを追いかける兵隊の騎馬マキシマスが超人間っぽくて面白かったですね。最初はフリンを執拗に追いかけていたのに、ラプンツェルには懐いてしまって彼女の味方になってくれるところが良かったです。多分、マキシマスには一番笑わされたんじゃないかな。
この作品はディズニー長編アニメ映画としては50作目ということなのですが、多分これまでで一番強いお姫様なんじゃないかな。ラプンツェルって18年間も塔の上に閉じ込められていたけど、外に出て一気に勇気が花咲く感じですね。逆に閉じ込められていたからこそ、世間を知らなくて割と大胆なことでもできてしまうっていう側面もあるのかも。お姫様として育てられていたら彼女のような魅力的なキャラクターには育たなかったかもしれません。というか、まぁ単純にディズニーも現代的な設定を意識してただ男性に助けられるだけのお姫様は現代ではウケないってことで路線変更ということなんでしょうね。キスもラプンツェルからだったし。
童話のラプンツェルとは全然設定が違うようなんですが、もうひとつこの作品の設定として面白いと思ったのはラプンツェルを育てる“母親”魔女ゴーテルという存在。彼女はラプンツェルを塔の上に閉じ込めていますが、ラプンツェルは彼女を「お母様」と慕っています。お母様が私を外に出さないのは私を愛しているからと信じ切っています。ゴーテルは時に猫なで声を出し、時に脅すようなことを言い巧みにラプンツェルを操る、まさに現実世界でも存在しそうな「毒親」で、彼女を魔女ではなくそういう視点で見てみるのもなかなかに興味深いと思いました。初めてお母様の言いつけを破って外に出たときのラプンツェルの外を謳歌するのとお母様を裏切った罪悪感に苛まれるのが、交互にやってくるところなんかも、まさに「アダルトチルドレン」の心の葛藤を表していて興味深かったです。
こんなことを書いていますが、もちろんディズニーなので明るく楽しく見られる作品です。ラプンツェルが無邪気にイキイキしていて、見ているこちらも自然に楽しい気持ちになります。ラプンツェルの長い長い髪の毛のアニメーションも素晴らしかった。あれを見ているとワタクシの大好きな「リトルマーメイド」も現代のCGアニメでもう一度製作してくれないかなぁという気になります。あの当時でも海の中でそよぐアリエルの髪の毛が美しかったのに現代のCGで作ったらもっとすごいだろうなと思います。
地上波で見たので日本語吹替え版だったのですが、ラプンツェルの声を担当した中川翔子が上手すぎでビックリでした。ラプンツェルの声はしょこたんと聞いて、まぁ上手だろうなとは思っていたのですが、まさかここまで上手いとは!タレントが吹き替えをやるのに反対の方もいますが、ワタクシはうまければ誰でもいいや派だし、むしろ声優さんのあの独特の感じが鼻につくことがあるので返ってタレントさんのほうが良い場合もあったりするなぁ派なのですが、しょこたんはタレントの下手さは皆無で、その上声優独特の変なくせがなく自然なのでものすごく良かったです。歌は小此木麻里という人が歌っているのですね。声が似ていたので歌もしょこたんかと思いました。ちゃんと声の似ている人を選んだのでしょうね。その辺りもさすがです。
アメリカの元のキャストはマンディムーアと「チャック」ことザッカリーリーヴァイということでそちらも興味がありますねぇ。チャック歌えるの~?って。
こちらも「未体験ゾーンの映画たち」という企画の中の公開作品です。
デイヴィッドリンチの娘ジェニファーリンチ監督作品。ジェニファーリンチの作品は「ボクシングヘレナ」しか見ていないので、監禁もの好きなのかなぁなんて思いつつ。。。
ある日映画館の帰りに自宅へ帰ろうとタクシーに乗った母ジュリアオーモンドと9歳の息子ティムエヴァンバード。タクシーの運転手ヴィンセントドノフリオは自宅へは向かわず、母子を自宅へと連れ帰る。タクシーのドアは外からしか開かないようにされており、どうあがいても逃げられなかった。
ティムはガレージに停めたタクシーに閉じ込められたまま、母だけが運転手ボブの家に連れ込まれレイプされ殺害される。ティムはボブに奴隷として暮らすよう命令され、命令に従わなければ殴ると脅され「ラビット」と名付けられそのまま監禁生活を送るようになる。一度逃走を試みるが簡単に捕まりそれ以来足に鎖をつけられたまま生活するようになった。
ボブはタクシーを流し、好みの女性を物色し、家に連れ帰りレイプ殺害するという生活を続けており、ラビットは殺害後の部屋の掃除や死体の処理の手伝いをさせられていた。
それから9年。青年に成長したラビットエイモンファーレンだったが、相変わらず鎖をつけられボブの奴隷として生活していた。
そろそろ大人になり始めたラビットに、ボブは「人体の勉強をしろ」と本を与え、女性をレイプ殺害するという行動を踏襲させようとする。
設定が設定だけにエグい話です。広い敷地に立っている一軒家で誰にも気づかれず犯行を重ねるボブですが、アメリカだとあーゆー立地もよくありそうだし、タクシーに乗っただけで連れ去られるというのも現実にありそうでめちゃくちゃ怖かった。
親に虐待されて育ったボブと実質ボブに育てられたようなラビットとの複雑な関係が描かれているのが、興味深い部分はあった。ラビットはもちろんボブを憎んでいるんだけど、頼る大人はボブしかいないという生活を9歳から9年間も送っているためどこかで慕っているようなふしも見られた。ボブも18歳になったラビットを“教育”しようとする面が見られたり、異常で特殊な疑似親子関係というものを描いているところが珍しい。
カウチで眠りこけるボブに叫ぶラビットというワンシーンがあるのだけど、あれは一種のあざけりだったのか。ボブに支配はされていて恐怖を感じてはいるものの、心のどこかではボブを見下していたのかもしれません。そりゃそうですよね。ボブは見下げ果てたサイコ野郎なわけですから。
ボブがラビットを教育する中で、彼のために連れてきた“獲物”アンジーをラビットが殺していなかったことは、観客は分かっていたと思うのだけど、それはバレていて良かったのかな。特にそれが衝撃の事実ってわけではなかったから良かったのか。
最後の「衝撃の事実」というのに関しては、面白いと思ったし、ちゃんとボブの過去が語られるシーンで弟の存在という伏線が張られていたからいいんですけど、それが分かってからの展開があまりにあっけな過ぎてポカンとしているうちに終わってしまった感じでした。確かに衝撃の事実だけにもうちょっときちんと描いてほしかったな。もったいない。
エンドロールではおそらくラビットが監禁されていたあの家で暮らしている生活音が流れていたのだけど、ラビットはあのままあそこに住み続けたのかな。普通なら、最後にボブを殺したその足で警察に行くと思うのだけど、自分も死体遺棄を手伝っていたとかそういう罪悪感もあってラビットは自分が一番の被害者だということを認識できずにいるのかも。アンジーを助けたラビットだからボブから狂気を受け継いではいないと信じたいけど、もしかしたら、、、という気持ちも捨てきれないでいる。
少し喋り方のおかしいボブを演じるヴィンセントドノフリオがまさに怪演。風貌が怖いのでこういう役が似合ってしまうのですが、ボブのおかしな喋り方は幼いころからの虐待とネグレクトのせいなのかなと考えさせる役作りでした。全然きれい好きそうでもないのに神経質に口元をしょっちゅうハンカチでぬぐうのも一種の神経症なのか。ラビットを演じたエイモンファーレンも「9歳から9年間監禁され奴隷生活を送らされた18歳の青年」という特殊な設定を説得力を持って演じていて素晴らしかったと思います。
いやー、取りましたねーアカデミー賞主演男優賞&助演男優賞!W受賞でめでたいね。
1985年、ダラスに住む電気技師ロンウッドルーフマシュマコノヒーは現場で怪我をした際の病院のチェックでHIV陽性と分かり余命30日と診断される。エイズに関する正しい知識がなかった時代。エイズはホモがなる病気。俺はホモ野郎なんかじゃない。俺がエイズになんかなるわけない。と初めは医者の判断を否定するロンだったが、図書館でエイズについて詳しく調べ始める。エイズは当然同性愛者だけがなる病気ではなく、娼婦を買っていたロンがなる可能性は十分にあった。
ロンは、その頃ドイツで開発されたAZTというエイズの治療薬の実験に参加しようと考えるが、あくまでも実験段階では自分がプラシボ群に入れられるかもしれないことを知り、病院の職員に金を積み不正にAZTを手に入れてもらうが管理が厳しくなりそれもできなくなる。その職員はメキシコの医者を紹介してくれ、そこへ訪ねていくと、副作用の強いAZTよりもアメリカでは承認されていないが効果のある薬を薦められる。
ロンはその未承認の薬をアメリカに持ち込んで同じ病気の者たちに売りさばき始めた。病院で知り合ったレイヨンジャレッドレトという女装のゲイがたくさんの患者を知っているということでビジネスパートナーとなる。
未承認の薬を他人に売ることは違法だ。そこでロンは月々の会費を取って薬は進呈するという形を取る「ダラスバイヤーズクラブ」を立ち上げる。
ロンウッドルーフは典型的なカウボーイ。アメリカのテキサスのマッチョなカウボーイはゲイなんて認めるはずはない。ロンの仲間全員からロンはつまはじきにされる。エイズと分かった途端、お前もホモ野郎かとケンカになった。さらにビジネスパートナーとか言って女装のホモ野郎と仲良くしてやがる。そんなロンが以前の仲間たちの元へ戻れるはずはなかった。
それでもロンは気にしない。はっきり言って死なないようにするだけで精一杯なのだ。病院なんか頼りにならない。自分でメキシコ、日本、オランダ、中国へ飛んでいくらでも薬を調達してくる。ただロンは死にたくなかった。それだけだ。それに儲かる。一石二鳥だ。別に助けるつもりで始めたわけじゃないけど、同じ病気で苦しむ患者も助けることができている。病院よりもずっとたくさんの人たちを。
ロンの行動力は本当にすごい。海外へ飛び、時には通関するために嘘八百並べることもある。それでも、俺はやる。なぜなら死ぬから。死なないためならなんだってやってやる。これを「熱血」とか「使命感」とかそういうものを前面に押し出す演出をしなかったところがジャン=マルクヴァレ監督のすごいところだと思う。圧倒的な行動力でありながら、これはもう「情熱」なんかじゃなく「執着」だ。そこがまた良い。難病ものって基本的にワタクシは苦手なんですけど、これは一切お涙頂戴なところがなくて良かった。
この薬さえあれば、助かる人たちがたくさんいるのに、別の製薬会社と蜜月にある役所(FDA)は承認しようとしない。医者であるイヴジェニファーガーナーはその現状に絶望して病院を辞め、ロンたちの支援に回る。レイヨンと友人であったことももちろんだが、ロンの生への執着がまっすぐな行動力がイヴの気持ちを動かした。イヴを演じたジェニファーガーナーも素敵だった。
本人も当然ゲイフォビアだったロンがビジネスと割り切ってレイヨンと組むわけだけど、このロンとレイヨンの関係も妙にべたべたしていなくて良かった。ロンの“気づき”はレイヨンを自分の昔の友達に紹介するシーンでさらっと描かれていて、彼が同性愛者たちにいままでの差別心を詫びるシーンなどないけれど、ロンは十分に気づきを得たと思う。気ままにコカインやって娼婦買ってっていうロンだったけど、HIVになってからのまっすぐさとそれでもユーモアを忘れないところなんかが憎めないキャラクターでした。同じHIVにかかった女性に飛びつくところなんかもまぁご愛嬌って感じで見られたな。
FDAとの裁判に負けてしまったロンをダラスバイヤーズクラブのみんなが拍手で迎えたシーンはめちゃ泣けたなぁ。それまでの気持ちの高ぶりがすべてそこに集約されていたシーンでした。法律上ロンを勝たせるわけにはいかなかった裁判官もかなりロンに肩入れはしてくれていたね。ただ生きるために薬を飲みたいという個人の権利を国が侵害するという問題提起にもなっていました。
冒頭で書いたように男優賞をW受賞したマコノヒーとレト。どちらもオスカーだけではなくて色んな賞を総ナメ状態ですね。もちろん、納得の演技でした。マコノヒーの20キロの減量ばかりが話題になりますが、レトもかなり痩せてましたね。そして、2人とも体重の増減などに関係なく素晴らしい演技でした。
実在したホワイトハウスの黒人執事の人生を描いた作品。試写会に行って参りました。
綿花畑の奴隷の子として生まれたセシルゲインズフォレストウィティカー。母マライヤキャリーは雇い主の白人アレックスペティファーに手籠めにされ、父は射殺された。そんなセシルに同情してか女主人ヴァネッサレッドグレーヴは彼を“ハウスニガー”にする。外で農作業をしなくてもよくなり、セシルは家の中の小間使いとして仕事を覚えるようになる。
青年になり生まれた家を出たセシルは“ハウスニガー”としての経験を生かし、ホテルで働くようになる。そこでの働きを認められホワイトハウスの執事としての仕事の声がかかる。
アイゼンハワーからレーガンまで7代の大統領に仕えたセシル。ホワイトハウスでは優秀な執事として重宝されていた彼だったが、家庭の中には嵐が吹いていた。
長男ルイスデヴィッドオイェロウォが反抗期になったころ、世間では公民権運動のきざしが見え始めていた。ルイスは白人に仕える父親の職業を恥じるようになり、家を離れ南部の大学に進学することになる。そこでルイスは公民権運動に没頭し、「フリーダムライド」に参加し刑務所に入れられたりするようになっていった。そんな長男の姿を見て妻グロリアオプラウィンフリーはアルコールに手を出すようになり、次男はベトナム戦争に志願して戦死してしまったりとセシルの家庭はボロボロの状態だった。
一度は身も心も離れてしまったかのように見えたセシルとグロリアの夫婦だったが、次男の死の悲しみを乗り越え夫婦の危機も乗り越えた。しかし、長男ルイスはキング牧師的な運動のほうからマルコムX的な運動に傾き始めブラックパンサーに籍を置いていることを知ったセシルはルイスを勘当してしまう。
ルイスは一度はブラックパンサーに在籍するも、彼らの過激さについては行けず、政治家の道を目指し平和的なデモなどを行うほうになるがセシルはなかなかルイスを許せないままでいた。
というのが、セシルの家庭側の話でこれにセシルの近所の人、仕事場の人間関係、ホワイトハウスでの大統領たち。と色んな話が絡んできてセシルの子ども時代から7代の大統領分ですから、132分というのがちょっと長いけど、まぁなんとか頑張ってまとめましたという感じ。
まぁなんと見どころがたくさんあり過ぎて大変です。ワタクシは題名からホワイトハウスの中の話のほうがメインになると思っていたので、ここまで公民権運動の話とは思っていなくて期待とは違った作品でした。それはワタクシが勝手に想像していただけなので、それで減点するのはフェアじゃないなとは思いますが。
ホワイトハウスの中の場面ももちろん作品の半分近くの時間が費やされてはいるのですが、それも大統領との心温まるエピソードとかは少なくて、その時の大統領が公民権に対してどのような態度だったかを示すシーンが多かったと思います。ちょっとアメリカの近代史、特に公民権運動について知識があったほうが楽しめるでしょう。
せっかくなので大統領を演じた役者を挙げておきます。
アイゼンハワー大統領→ロビンウィリアムス。アイゼンハワーはどんな感じの人だったか知らないので似ていたかどうか分かりません。
ケネディ大統領→ジェームズマースデン。若々しい颯爽とした雰囲気が合ってました。
ジョンソン大統領→リーヴシュライバー。もっと年齢が高い役者が演じるイメージですが、違和感がなかったのはやっぱり彼のうまさかな。
ニクソン大統領→ジョンキューザック。外見は一番似ていませんでした。外見だけじゃなくて全部あんまり似てなかったなー。ジョンキューザックって人が良さそうに見えるからニクソン大統領の狡猾そうな雰囲気がなかったです。庶民的な雰囲気はありました。
レーガン大統領→アランリックマン。上の2人も意外なキャスティングですが、彼が一番意外でしたね。ちょっと笑えた。
ナンシーレーガン→ジェーンフォンダ。大統領たちがかなりの特殊メイクで頑張る中、彼女が一番ナチュラルに似ていたような。ナンシーがレーガンを尻に敷いている様が面白かったです。
ナンシーレーガン以外は外見は似ていないけど、雰囲気で似せようとしている感じでした。
余談ですが、ケネディ政権時代にセシルがケネディの娘に絵本を読んであげるシーンがあって、「あれがあのいま駐日米大使のキャロラインさんだー」と気が散ってしまいました。
いまテレビでCMを見る限りかなりホワイトハウスの内幕もの的に宣伝されていますが、実際は公民権運動の話のほうに重きを置いていますので、それを念頭に見ると良いと思います。
埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにした作品ということで以前から興味があったのですが、なんせ「愛のむきだし」の園子温監督だったもんで躊躇していました。「愛のむきだし」は一般的な評価は高い作品ですが、ワタクシはダメだったもので。面白い部分はあったけど、4時間あるでしょ。あれ、2時間くらいにまとめられたよね?っていうくらい無駄なシーンが多く感じたので。でも、今回は2時間20分と頑張ってまとめてくれたみたいだし、見てみようと思ってレンタルしました。
小さな熱帯魚店を営んでいる社本吹越満は、後妻妙子神楽坂恵と娘・美津子梶原ひかりの関係がうまくいっておらずうんざりしていた。そんな時美津子が万引き事件を起こし、それを助けてくれた巨大熱帯魚店を持つ村田でんでんと親しく付き合うようになる。その途端、社本は村田が金をだまし取った吉田諏訪太郎という男の殺害、遺体遺棄に加担させられる。
この村田ってやつが胡散臭いのなんのって。最初からめちゃくちゃ馴れ馴れしいし、妙子や美津子へのボディタッチもやたらに多い。でもなんかあれだな、こういうおっさんってなんか人懐こいというか、油断してるとふっと懐に入られちゃうみたいなとこあるんだろうなー。天性のソシオパスってとこなんだろうけど、人の弱みにつけこんだり、親切にしてくれたかと思えば恫喝するようなこと言ったりしてグイグイそいつのペースに持ち込まれてしまうんでしょうね。このおっさんを演じるでんでんがうますぎて怖いよ~。ビックリした。
そして、村田の妻・愛子を演じる黒沢あすかっていう女優さんもめちゃくちゃ怖いね。自分も十分に強い女でありながら、より強いオスに支配されることを切望している女とでも言えばいいのか。ある意味こいつのほうが村田よりずっと壊れているのかもな。
犯人像までは分からないけど、実際の事件の内容を見ると結構流れ的には忠実に再現されているっぽい。村田がずっと言ってた「ボディを透明にする」という表現も本当に犯人が使ってた言い回しらしい。犯罪の残虐さ的に北九州監禁殺人とか尼崎事件と似ている気はするんだけど、この事件の犯人は他のと違って自ら死体を解体したりしていたんだよね。それをどうやら楽しんでいたっぽいふしもあって、北九州や尼崎事件とは少し性質の違うものなのかもしれない。
その死体の解体シーンなんてのが、あまりにリアルに本当に臭いまでしてきそうなほどに映し出されるのがめちゃくちゃグロくて閉口してしまった。ワタクシは結構グロいのは平気なほうなんですけどね。この作品のシーンも目を伏せたりはしなかったし。でもやっぱ気持ち悪くなるくらいのシーンでした。しかも何回もあるしね。あれをあそこまで全部見せつけることができる監督はやっぱ園子温くらいしかいないかもしれない。
村田と愛子の性欲まみれのシーンも気持ち悪かったなー。エロいシーンを見せられているのにこちらの性欲は減退してしまいそうな気持ち悪さでした。社本の妻を演じてた神楽坂恵も無駄に谷間強調してたしな。その気持ち悪さは監督の狙いだったんだろうけど。
社本がキレてからエンディングに向かうところは蛇足だったなと思っていたら、監督ももう一度編集しなおせるなら社本がキレたところで終わると言っていたらしいから、やっぱ蛇足と感じたのは間違いじゃなかったんだろう。警察があんな現場に社本の妻子を連れてくるわけないし、結局みんな死んじゃうってのはあんまり面白くない。娘の美津子が死んだ社本をざまあみろって蹴ってたのはさすがにビックリしたけどね。
普段からこういう事件に興味があるからかもしれないけど、146分間かなり釘づけになって見てしまいました。悪趣味だなと自分でも思いますが。エログロ映画が嫌いな人は見ないほうがいいです。というか見ちゃダメです。とは言え、実際の事件っていうのはこの作り物よりもずっとずっとエグいんでしょうね…
お母さん同士がマタニティクラスで知り合い、1週間以内の差で生まれた4人の女の子たち。それぞれキャラクターはバラバラだけど、小さい時から4人は楽しいときも悲しいときもいつも一緒だった。16歳の夏、4人は初めて離ればなれでそれぞれの夏休みを過ごすことになる。その前日4人で買い物に行ったとき、古着屋で不思議なジーンズを見つける。体型がばらばらの4人全員になぜかぴったり合う魔法のジーンズだった。
4人はこの夏休み中、順番にジーンズを履いて過ごそうと決めた。1週間ずつジーンズを履き次の人に送る。ジーンズと一緒にその期間に何があったか詳しく書いて次の人に送るというルールだった。
初めは内気で真面目だけど容姿の美しいリーナアレクシスブレーデル。ギリシャに住む祖父母のところへ旅行に行く。海で溺れかけているところを助けてくれた青年と知り合い、惹かれ合うが祖父同士が天敵と知り怖気づく。
次にジーンズが回ってきたのは個性的で皮肉屋のティビーアンバータンブリン。彼女は一人地元に残りバイトをしながら負け犬たちのドキュメンタリーを撮っていた。ジーンズが間違って届いた先の少女ベイリージェナボイドが届けてくれて、成行き上ドキュメンタリー撮影の助手にすることになる。12歳のベイリーにつきまとわれてうっとおしいディビーはベイリーをジーンズと一緒に送りたいくらいだと言うのだが、ベイリーが病気だと分かり…
3番目はしっかり者のカルメンアメリカフェラーラ。小さいときにママと離婚したパパとひと夏を過ごせるととても楽しみにしていたのに、パパは新しい家族と一緒に住んでいて、もうすぐ再婚すると言う。新しい家族と仲良くするように言われるカルメンだったが、納得が行かず家の窓に石を投げて帰って来てしまった。
最後は、一見自由奔放だが母親の自殺で心に傷を負っているブリジットブレイクライブリー。サッカーの合宿でメキシコに行った彼女は、サッカーよりも禁止されているコーチとの恋愛に必死。
4人の女の子のひと夏の様子が、送られるジーンズとともに数珠つなぎ形式で語られるのかと思っていたら、4人の状況がモザイク的に入り混じって語られるので、場面転換があっちこっちと忙しい。一人一人の持ち時間がもう少し長めで回ってくれるといいんだけど、結構短めでハイ、次!ハイ、次!って感じです。その展開の忙しさにさえ目をつぶれば16歳の女の子たちのひと夏の成長物語として、とても爽やかに見られる素敵なお話です。
内気なリーナは殻を破って勇気を出すことを覚え、皮肉屋のティビーは素直に人生を謳歌することの大切さを知り、自分を抑え気味のカルメンは自分の気持ちをきちんと相手に伝えることを学び、奔放に振る舞い傷を隠しているブリジットは素直に悲しんでいいんだということを教えられる。
この魔法のジーンズっていうのが、どれくらい彼女たちに影響を与えるのかを楽しみに見たんですが、ぶっちゃけジーンズかんけーねーじゃん!!!って感じです。別にジーンズ関係なくても普通に彼女たちの青春物語を楽しむことはできるので、いいんですけどね。ま、ちょっと拍子抜けしたことは事実です。
それぞれの女の子たちを演じる女優さんがみな魅力的で良かったです。続編の「19歳の旅立ち」も見てみたいと思います。