光待つ場所へ |
辻村深月の短編集ですが、いきなり数ページのプロローグ的なものから始まりましたので、連作短編集かと思ってしまいました。
ただそれぞれに関連性はありませんがテーマは一貫していて、どこか青臭い、まさに青春ストーリーのような展開はしかし汗と涙と友情の物語ではなく、人間が誰しも抱えている弱さ、プライド、孤独、嘘、など負の側面をそれでいてさらっと、あまりドロドロとさせずに書き上げているところはさすがです。
この年齢になると遠い過去になってしまった学生時代、それでも胸にチクリと刺すような痛み、誰もが思い当たるであろう心情が丁寧に描かれています。
いわゆるミステリー仕立てではなくどんでん返しもありませんがあっと思わせる仕掛けもまさに辻村ワールド、ファンからすればたまらない一冊です。
逆に言えば、一見さんには厳しいと言いますか、おそらくはその魅力の全ては味わえないでしょう。
ここまでの長編の登場人物のスピンオフ作品でもあり、それを知らずとも何ら問題はないのですが、それでも知っていると知らないとでは大違いなのも実際のところです。
やはり順番を追ってここにたどり着くのがよいと思いますし、チハラトーコの物語、に至ってはその半分も理解できずに何となく読み終わってしまうかもしれません。
いくつもの思いを踏み越えて光待つ場所へ行き着くことができるのか、主人公たちとともに歩むためにもこちらから、をお薦めします。
2017年12月2日 読破 ★★★★☆(4点)
これ単体でももちろん味わい深いのですが、ここまでの作品を読んでいるといないとではその深みが違ってきます。
ここのところ読んだ作品がちょっと傾向が変わってきたような気がしていたので、ホッとした気分でもあり。
スピンオフと言いますか伏線はどうなんでしょうね、ワンピースの尾田っちなんかは壮大すぎる仕込みをしてくれていますが(笑)