軍神の系譜 学習研究社 このアイテムの詳細を見る |
上杉謙信とその養子である景勝、景虎、この3人の心の葛藤を題材とした作品です。
上杉家の華々しい戦いぶりではなく、いかに上杉家を存続させていくかに腐心した3人の心の描写を中心に、一癖も二癖もある国人衆の動向を絡めて描いています。
ifノベルズ界を主戦場にする作家の作品らしく、史実に沿いながらも独自の視点から創意工夫したストーリーに仕上がっています。
なぜ謙信は越相同盟が破れた後も景虎を養子として越後に留めたのか、なぜ景虎は厩橋城に拠らずに防御の弱い御館に立て籠もったのか、なぜ河田長親は終盤まで中立を保ったのか、なぜ直江信綱と毛利秀広は殺されなくてはならなかったのか。
今まで漠然とした疑問に感じていたこれらの事柄が氷解したような、まさにこれが真実ではないのか、そう思えるような見事な論理展開を見せてくれます。
意外とも思える登場人物の言動が、それを一つ一つのピースとして当てはめてみれば、非常に筋の通った動きとなってきます。
作者の筆力が見事に顕れた、素晴らしい作品であると思います。
2008年9月13日 読破 ★★★★★(5点)