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オリオン村(跡地)

千葉ロッテと日本史好きの千葉県民のブログです
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玄い女神

2016-03-22 00:03:56 | 読書録

玄い女神

講談社

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建築探偵シリーズの第二弾です。
ただ看板に偽りあり、とでも言いますか、最後に申し訳程度の出番があるだけで、建築ならではの作品とはなっていません。
ミステリアスな雰囲気で興味深くはありましたがトリックはややしんどく、作者の撒いた鍵を拾い集めて推理をするといった楽しみ方には不向きだったことで物足りなさがありました。

後から指摘をされてみればなるほど、ではあるものの、さすがにこれを見極めるには自分のレベルがそれに至っていなかったのでしょう。
とは言いながらもこれに気がつけた人がどれだけいるのか、インドの神々など取っつきにくいところもあり、そういった方面に強い人にとっては面白いかもしれません。
意図せずに集まった登場人物、災害により孤立した館での事件、などお約束な要素はふんだんですし、10年前にインドで起きた事件、その10年後に帰国をしたかつての知る人ぞ知る名女優、など2時間ドラマによさそうな題材ではありますが、人に内在する思い、過去と現在に向き合う姿勢、に重きを置いていますから映像よりは文章に向いています。
それだけにもう少しでも読者に気を配ってくれればなと、そこが残念だった戦いの女神、カーリーでした。


2016年3月21日 読破 ★★★☆☆(3点)


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猫弁

2016-03-11 01:31:36 | 読書録

猫弁

講談社

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かなり前に吉岡秀隆でドラマ化をされていたのをチラ見したことがあるのですが、原作を読むのは初めての猫弁シリーズです。
読んでみればなかなかにジャンル分けが難しく、ミステリーと呼ぶには奥深さ、謎解きの楽しみがありませんし、ホームコメディとでも呼べばよいのか、殺人などのどきつさはありませんし根っからの悪人がいませんから、2時間ドラマとしてのお茶の間向けにはピッタリかもしれません。

東大を主席で卒業をしながらも弁護士として最初に携わった仕事が猫屋敷事件、そんなこんなで猫弁と揶揄をされるぐらいに猫関係の訴訟が持ち込まれる天才百瀬が主人公です。
霊柩車が柩ごと盗まれる事件をきっかけに百瀬に持ち込まれる複数の依頼が一本に紡がれていく、その紡がれ方が半端ないです。
ある意味で水戸黄門であり、予定調和な展開と言ってしまえばそれまでですが、いくら何でも世間が狭すぎで、容易に先が読めてしまうわけですからわくわく感が足りません。
こうなるんだろうな、やっぱりこうなった、よかったね、とほのぼのとした雰囲気が売りなのか、そう考えれば百瀬の吉岡秀隆はピッタリですし、亜子の杏もツンデレな感じでよし、七重は今で言えば高畑淳子か、なんてことを思いながら読めばまた違った楽しみにはなります。
とりあえず勢いで全シリーズを買ってしまったので、次巻以降はもう少し謎は謎として撒いてくれないかなと、そんな願いを込めて★3つ、本音は★2つです。


2016年3月8日 読破 ★★★☆☆(3点)


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悪党の戦旗

2016-03-03 01:11:43 | 読書録

悪党の戦旗

日本経済新聞出版社

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楠木正成らとともに悪党、とも呼ばれた赤松則村、円心の名の方が通りがよいかもしれませんが、その円心は足利尊氏を助けて室町幕府の創業に大きな役割を占めて、三管領四職、細川氏、畠山氏、斯波氏、山名氏、一色氏、京極氏とともに有力大名として赤松氏は幕府を支えてきました。
しかし悪御所、6代将軍義教の強権政治に怯えて円心の曾孫の満祐が嘉吉の乱で義教を暗殺し、逆賊として赤松氏は滅ぼされます。
そこから赤松氏の再興を願う家臣たちの苦労が題材とされており、長禄の変で南朝から神璽を奪い取るまでの16年間の物語です。

この作者らしく、その名を知られた武将たちの華々しい活躍ではなく、下支えをする家臣たちの生々しさが描かれています。
基本的には史実に忠実に、小寺藤兵衛を中心に上月左近、間島彦太郎、中村弾正、石見太郎の5人が主要人物として登場をしますが、小寺藤兵衛は豊職、上月左近は満吉のことなのか、ともに播磨の豪族として戦国期まで家を繋いだ存在ですし、他の面々も赤松氏の遺臣としてその再興に力を注ぎました。
もちろん逆賊として滅ぼされた経緯からして簡単な道のりではなく、忠臣蔵と同じく生きる糧を求めて離脱をしていった仲間たちも少なくありません。
そんな中で堪え性のない主君に疑問を感じつつも「義挙」に参加し、お家滅亡の後は名を隠しながら、それまでとは天地の差の貧しさに耐えつつ、それでも心の支えは赤松氏の家臣たる誇りであり、もう少しは苦しい生活ぶりを強調してもよかったとは思いますが、その苦衷は充分すぎるぐらいに伝わってきました。
それだけに最後のオチ、と言いますか急転直下とも言うべき後始末がもったいなく、それまでの苦労は何だったのか、とのガッカリ感は否めません。
まるでページ数の関係で手仕舞いを強要されたかのような、もう少し最後まで丁寧に描いて欲しかった嘉吉の乱始末、でした。


2016年3月1日 読破 ★★★★☆(4点)


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特等添乗員αの難事件

2016-02-26 00:55:23 | 読書録

特等添乗員αの難事件 I

角川書店

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特等添乗員αの難事件 II

角川書店

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特等添乗員αの難事件 III

角川書店

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特等添乗員αの難事件 IV

角川書店

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特等添乗員αの難事件 V

角川書店

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かなりなハイペースで刊行がされてきた万能鑑定士Qシリーズ、その姉妹編でもある特等添乗員αシリーズも、一昨年の春を最後に打ち止めとなったようです。
その後にドラマ化もされた探偵の探偵シリーズ、そして新たに水鏡推理シリーズにバトンタッチをされました。
各作品のコラボ作がまた発表をされるようですが、とりあえずは一区切りといったところなのでしょう。
そんなこんなで今月は特等添乗員αシリーズ5冊を一気読み、さすがに食傷気味になってはしまいましたが、入念な伏線と軽快なテンポは健在で、さすがの一語に尽きます。

膨大な知識を積み上げて答えを導くロジカル・シンキング、そんなQシリーズの凜田莉子に対して、αシリーズの浅倉絢奈は閃きの小悪魔、ラテラル・シンキングを誇ります。
言うなれば女の勘が鋭くなったもの、とは作中の紹介でもあり、そこに論理的な根拠はありません。
それだけにかなりいい加減、とは言い過ぎかもしれませんが、強引な展開が目立つのもまた事実、しかも中卒ニートという設定とは相容れない基礎知識が必要だったりもします。
Qシリーズのようになるほど、やられた、というのではなく、このαシリーズではそうくるか、そりゃないんじゃないの、との印象で、いわゆる推理を楽しむにはもう一息です。
それでも登場人物は魅力たっぷり、根底にある「人の死なないミステリー」で読む人を選びませんし、ついつい作者のペースに巻き込まれるのも悪い気はしません。
あまりに善人な悪役たちもご愛敬、映像化をしてしまえばチープになってしまうでしょうから、是非とも小説を楽しんでいただければと思います。


2016年2月25日 読破 ★★★★☆(4点)


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無双の花

2016-01-29 00:02:15 | 読書録

無双の花

文藝春秋

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本多忠勝と並び称されて、豊臣秀吉にも「その忠義、鎮西一。その剛勇、また鎮西一。」と評価をされた、立花宗茂が主人公です。
大友氏の家臣として北上をする島津氏に抗したところまでを前半生とすれば、この作品は後半生で関ヶ原にて敗れて帰国をするところからの生き様を描いています。
関ヶ原で西軍に与して改易をされながらもその後に旧領に復帰をした唯一の武将であり、立花の義、正室との心の繋がり、なかなかにてんこ盛りでした。

ただ残念ながら、あまりに小ぎれいに過ぎたように思います。
帰国後の柳川城での攻防で一敗地に塗れましたが宗茂は出陣をしておらず、その後の大坂の陣、島原の乱でも槍働きの勇壮さはありません。
それはそれで大名としてはむしろ当然ではあるのですが、その全てがあまりに潔く、人間味に欠いているとでも言いますか、聖人君子の域で身近に感じられないのがもどかしいです。
その出処進退があまりに見事すぎてどこか嘘っぽく、もう少し泥臭さがあってよかったようにも思います。
いわゆる史実と言いますか、有名な逸話は漏れずに挿入をされていますし、最近に見直しが進んでいる正室、立花道雪(実際は北条早雲と同じく立花を名乗ったことはないとのことですが)の娘との関係や、継室、継々室との人間関係を上手くまとめるあたりはさすがだっただけに多少は隙が欲しかったかなと、凡人には窮屈さが否めません。
長宗我部盛親や真田信繁との挿話などは縦横無尽に筆をふるっただけに、作中の徳川家康の言葉とは裏腹に画竜点睛を欠いた宗茂でした。


2016年1月28日 読破 ★★★☆☆(3点)


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震える牛

2016-01-24 00:54:05 | 読書録

震える牛

小学館

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ミステリーは作者と読者の知恵比べ、いかに作者が仕込んだ謎を読者が解き明かしていくか、これが一番の楽しみだと考えています。
しかしながらこの作品はその楽しみを取り上げてしまっていますので、ミステリーとしては失格です。
これほどに根幹を隠そうとはしない、確信犯のように手の内を明かしている作品は珍しいのではないかと、プロローグで既に方向性が見えてしまい、一割ほどでそれが確信に変わる、サプライズを期待するも最後までその道に沿ってストーリーが展開をしていくだけですから、ある意味では予定調和なサスペンスなのかもしれません。
なぜこんなことが分からないのか、と右往左往する刑事にイライラさせられて、もしかしたらどんでん返しのつもりだったのかもしれない仕掛けもバレバレ、かなりレベルは低いです。

おそらくは描きたかったものが別のところにあった、それ以外の理由が思い浮かびません。
大量仕入れによる低価格戦略で地方に大型SCを展開し、地元の商店街をシャッター街に変えながらも売上げが落ちれば別の土地に移っていく、この「街を壊していく」焼き畑商法の結果と思しき寂れた街並みを旅先でよく見かけますので、便利さの代わりに失ったものの大きさを訴える登場人物の言葉には深く感じ入るところがあります。
また廃棄物の横流しがニュースとなっていますが、おそらくはミートホープをモデルにしているのでしょう、おぞましいぐらいの消費者軽視、食の安全をないがしろにした食品偽装、そして政財界の癒着などを赤裸々に描くことで世間への警鐘としているようにも思えます。
どうしてこんなに安いのか、そう考えればとても手を出せないような商品であっても背に腹は代えられないのが現実でもあり、消費者はただただ弱い存在でしかありません。
震えたくなるのはこっちだよ、と言いたくもなる、そんな強盗殺人改め痴情のもつれによる殺人事件でした。


2016年1月23日 読破 ★★★☆☆(3点)


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朝の霧

2016-01-08 00:04:30 | 読書録

朝の霧

文藝春秋

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波川清宗、あるいは波川玄蕃、と聞いてピンとくる方はほとんどいないのではないかと、そんな土佐の国衆である波川清宗が主人公です。
あるいは清宗とその家族、妻の養甫と子どもたちのストーリーでもあります。
長宗我部氏に仕えた武将、ということで飛びついたのですが、しかし案に相違をした内容ではありました。

武勇に長け、民心に通ずる清宗は主人公ですので当然の颯爽ぶりで、無益な殺生を好まない、この時代からすれば異質な存在として、そして部下や民衆から慕われています。
元親の妹である養甫との睦まじさ、息子や娘との血の通った繋がり、ほのぼのとさえします。
ただ悪役となる元親を短気で嫉妬深く、また猜疑心の強い狭量に描いているのはそれはそれで構いませんし、香宗我部親泰が凡庸で家臣に支えられる存在でしかないのも我慢をするとしても、大野直昌などの記述は時代考証を疎かに、あるいは無視をしすぎているようで残念ではありました。
長宗我部フリークということもあり面白くない展開だったこともありますが、何を言いたかったのかも今一つ分からず、今も残る波川玄蕃城への思い入れも尻切れトンボで、また各章を最後まで描ききらずに終えたのは余韻をもたらして読み手に考えさせる効果はあったにせよ、しかし中途半端さも否めません。
残るものがあまり無かった、が正直な感想です。


2016年1月7日 読破 ★★★☆☆(3点)


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虚夢

2015-12-30 00:04:56 | 読書録

虚夢

講談社

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デビュー作もそうでしたが、この作品でも犯罪被害者が主人公です。
刑法39条、心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ、心神耗弱者ノ行為ハソノ刑ヲ減刑ス、つまりは心神に問題があるとされた加害者には責任能力がない、として罪を問わない、問えない、行うのは罰ではなく治療である、これはニュースなどで目にすることも少なくありません。
常識、この常識が何を意味するかも定義は難しいですが、普通では考えられないような事件、それが猟奇殺人のようなものでなくとも、理解しがたい事件には精神鑑定がつきもので、弁護側には言葉を選ばなければ便利な切り札であり、しかし被害者からすればそれは理不尽でしかないでしょう。
精神科に通院歴のある青年に愛娘を殺された主人公は、その青年が僅か4年で社会に舞い戻っていることを知り驚愕をします。
事件がきっかけで別れた元妻の異常な行動、殺しても殺したりない相手が目の前にいる現実、主人公の苦悩はページをめくる指が止まってしまうほどのものでした。

しかしただ刑法39条、あるいは加害者に対する非難に終始をしているわけではありません。
加害者の目には何が見えているのだろう、と慮るところもありますし、しかし一方で「精神障害者と精神障害をもつ犯罪者を混同していないか」と問いかけてきます。
そして今日もまた精神鑑定が行われるであろう事件があり、いつ自分の身近で起きてもおかしくはない、それが現代社会です。
ある意味でずるい、と言ってしまえばずるいのですが、作者はその答えを出していません。
過去に囚われるのか、未来に向けて歩んでいくのか、それらを含めて答えを出すのは読者である、そう深く考えさせられる作品でした。


2015年12月29日 読破 ★★★★★(5点)


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深追い

2015-12-18 00:13:17 | 読書録

深追い

新潮社

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意識をしたわけではないのですが、立て続けの短編集です。
職住が接近をしすぎていてどこか息苦しい、そんな地方都市の警察署が舞台となっています。
いわゆるミステリーと言うよりは心情、機微、心の動きに重きを置いた人間ドラマで、それぞれが短いながらもヘビーな作品でした。

一つ一つは大したことがない、と言ってしまえば語弊がありますが、警察官とすれば何でもない日常がテーマです。
しかしそれぞれが抱えたいろいろな事情が絡み合い、その心理描写がひしひしと迫ってきます。
自分がその立場にいたらどう行動をしただろうか、そこに自己投射をすることで深みが増しますし、その結果に苦々しい思いを抱いてしまいました。
ある意味で平凡なんだろうなと、ホッとする反面、その平凡さを嘆きたくもなります。
まさに深追い、をしてはいけないのかもしれません。


2015年12月17日 読破 ★★★★☆(4点)


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儚い羊たちの祝宴

2015-12-11 00:08:08 | 読書録

儚い羊たちの祝宴

新潮社

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これはミステリーと言うよりはホラーなのでしょうがおどろおどろしいものではなく、気がつけば首元にナイフの刃を立てられたかのような、背筋が凍る怖さがあります。
どこか歪んだ、そしてその自覚がある中での出来事、しかしそれらは最後までは語られません。
最後の一行でぐさりと刺しながらも傷跡がどうなるかは読み手が考える、目に見える恐怖ではなく見えない恐怖、そんな短編集です。

基本的に短編はページが限られていることから深み、広がりが物足りなくて好きではないのですが、この作品はその短さが上手く活かされています。
日記、あるいは独白といった形で語られていくストーリーには無駄が無く、これが長編であれば散漫になってしまったでしょう。
バベルの会、上流階級の子女が集う読書サークルが微妙に絡み合う連作となっており、終わりは始まり、きっと最後の女学生は・・・といろいろと考えてしまいます。
退廃的で、その設定は大正、あるいは昭和30年代ぐらいなのか、それらが醸し出す雰囲気が怖さを際立たせています。
その全てがうら若き乙女、現実と幻想との脆い壁を行き来する儚さ、今晩はうなされるかもしれません。


2015年12月10日 読破 ★★★★★(5点)


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竹千代を盗め

2015-12-06 00:37:17 | 読書録

竹千代を盗め

講談社

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そのタイトルから徳川家康が子どものころに今川氏に人質に出された際に戸田氏の手により織田信秀に売り渡された、そのあたりのエピソードかと思っていました。
しかし竹千代は竹千代でも家康の嫡男の竹千代、つまりは後の松平信康、そしてその母の瀬名姫、妹の亀姫、この三人を盗み出すのに奮闘をする忍びが題材となっています。
桶狭間の戦いを機に岡崎城で自立の道を歩んでいる家康、当時はまだ元康ですが、しかし竹千代らは駿河で人質となっていたために、思うように勢力を広げられません。
そのために何としてでも竹千代らを取り戻す、とは酒井忠次、石川数正ら三河家臣団の暗躍であり、その命により駿河に忍び入る忍びの苦衷が描かれています。

以前に読んだ作品もそうでしたが、そこに華々しさはありません。
むしろ命じられる側、にある者の苦労、悲哀がテーマでもあり、思いがけないぐらいに人が死んでいく、のもそれが理由なのでしょう。
いわゆる忍者、のイメージとはかけ離れた金勘定、経営者としての頭目が新鮮ではありましたが、実際のところ上に立つ者はそういった能力が無ければやっていけません。
そういう意味ではリアルであり、上からは無理難題を押しつけられ、下からは不平不満を叩きつけられる姿には思わず笑ってしまいました。
それだけに中途半端な謎かけが余計だったかなと、荒唐無稽な忍びの術ではなく頭を使った忍びの技、をもっと極めた方がよかったように思います。


2015年12月4日 読破 ★★★☆☆(3点)


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白ゆき姫殺人事件

2015-12-02 00:56:05 | 読書録

白ゆき姫殺人事件

集英社

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昨年に映画化をされたのを観に行けなかったのがちょっとだけ心残りだったので、例によってセールをしていたときに手にとってみました。
OLが滅多刺しにされた上に灯油をかけられて焼き殺された事件、その容疑者とされる同僚について、関係者に対するフリーのルポライターのインタビュー形式となっています。
あることないことを自分目線で語る同僚、上司、友人、知人、そして無責任なSNS、事件はこうやって一人歩きをしていくんだなと、今の時代を象徴している作品と言ってよいでしょう。
上っ面な人間関係、悪意のない悪意が、じわじわと押し寄せてきます。

その構成からして仕方がないのかもしれませんが、これはミステリーではありません。
誰がOLを殺したのか、その犯人をルポライターが取材を通して明らかにしていく、その期待はあっさりと裏切られてしまいました。
インタビューに答える関係者の言葉としてストーリーが進んでいきますので、自分がまるで刑事になったような気分にもなりますが、あくまで野次馬としての視点です。
茶飲み話のようなどうでもいい寄り道なエピソードが煩わしくもあり、チープな三文芝居を見ているかのようです。
展開に意外性もなく、ただただ人間の軽薄さ、生きづらさ、虚しさ、など負のオーラが満載で、読後感はよくありません。
これをどうやって映像化をしたのか、それこそ屋外ロケなどは不要で安上がりに作ろうと思えば作れますが、そこは興味があります。
ただ広告CMをYouTubeで見てみましたが・・・やめておきます。


2015年12月1日 読破 ★★☆☆☆(2点)


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未明の家

2015-11-27 01:01:00 | 読書録

未明の家

講談社

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ここのところは新しい作家との出会いはkoboのセール会場で、今回の篠田真由美も先日に巡り会いました。
電子ブックは紙のそれに比べて5%程度は安いのですが、koboは定期的に20~30%程度の割引きセールをやっていますし、今月はさらに20%のポイントが付きます。
よって半額強ぐらいだったことで、代表作らしい「建築探偵桜井京介の事件簿」の第一部、5冊をまとめて買った次第です。

その第一弾が未明の家、桜井京介のデビューです。
建築探偵、とはまた聞いたことのないジャンルですが、W大とは早稲田をイメージしているのか、その大学院生として建築学を専門としている京介が探偵役、本名が明らかではない15歳の蒼がアシスタントでワトソン役、栗原深春は京介の友人で名前からは想像もできない肉体派、とりあえずはそんなメンバー紹介のような作品でした。
建築がメインともなれば綾辻行人の館シリーズを思い起こしてしまいますが、そちらが作りとしての謎がメインになっているのに対して、こちらは建物をとりまく人間関係、それぞれの想いがテーマになっているような、ただまだ一冊目ですので何とも言えないところではあります。
トリックと言えるほどのものはありませんし、そもそもの設定に無理が目立つ、愛のない結婚だったのに娘が4人もいるとか、そのあたりも一冊目だからと、そう思いたいのはあと4冊も残っているからで、せっかく作った模型はどこへやら、ゴヤやスペイン語、聖杯伝説などのうんちく、寄り道が多くてテンポが悪いのが気がかりではあります。
第二部以降に手を出すか出さないかは次の作品で決まりそうな、お願いですからもう少しドキドキハラハラ、驚くようなトリック、を感じさせてください。


2015年11月26日 読破 ★★★☆☆(3点)


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太陽の坐る場所

2015-11-21 01:28:02 | 読書録

太陽の坐る場所

文藝春秋

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辻村深月に慣れすぎてしまったのかもしれません。
今回はどんなトリックを仕掛けてくるのか、と身構えてしまい、そしてあまりに露骨な描写ですぐに気がついてしまいました。
種明かしは八割方のところでされますからそれが主眼でなかったことは明らかですが、慣れすぎだけではなくそこに期待をしすぎたのでしょう。
映画化をされているのは知っていましたが観てはいませんし、その情報を取りにいかなかったのも正解、まっさらなところから読まないと悔いが残りそうな作品でもあります。

ただそのトリック自体が必要だったのか、むしろ無かった方がよかったような気もします。
高校を卒業してから10年、それまでも何回かあった同窓会ながらも今回に話題の中心となったのは同級生だったキョウコ、女優として一躍有名になったことで欠席が続いているものを呼び出そうと、そんな企画が持ち上がったところから話が始まります。
芸能人と知り合いであることを自慢したい、言うなれば虎の威を借る狐ではありますが、誰しもそういった感情は持ち合わせているでしょう。
そして高校時代、また今に至るそれぞれの思い、夢、自虐、見栄、虚勢、悔恨などが、5人の口から語られていきます。
ある意味で青春群像であり、しかしある意味では世代を超えた共通なものでもあり、人はどうして着飾るのか、着飾るからこそ人になれる、そんな問いかけをされた気分です。
そうやってもがき苦しみながら人は自分の居場所を見つけていくのだろうなと、いや、見つけていくしかありません。


2015年11月20日 読破 ★★★★☆(4点)


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QED 竹取伝説

2015-11-14 00:55:05 | 読書録

QED 竹取伝説

講談社

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QEDが紐解く竹取物語です。
前作は桑原崇、棚旗奈々、小松崎良平がいつものバーでの新年会で過去にあった事件を思い出すといったものでしたが、今作はその新年会の続きとなります。
冒頭からお約束のうんちくが怒濤のように押し寄せてきてどうしても斜め読みになりがちで、それでは意味がないと自らを戒めるのに苦労をしました。
怨霊、呪、貴賤、鬼、などがベースになっているのは毎度のことで、そして知らないことばかりだと痛感をさせられます。
本当は怖いグリム童話、なんてのがありますが、本当は怖くて腹が立つおとぎ話、といったところです。

日本人であれば竹取物語を知らない人を捜す方が大変、なぐらいに有名なおとぎ話ですが、藤原氏の圧制に対しての批判、出雲、タタラ、機織り、こういったものがちりばめられてのかぐや姫、そのかぐや姫にも5人の皇子、公家にもモデルがいるとは初めて知りました。
藤原不比等なんて名前が出てくればふむふむ、なんて思ってしまいますし、その他の人物を調べてみようとすることで作者の術中にはまっているような気がします。
ただやはり肝心のミステリー、作者からすれば今回は竹取物語の謎こそがミステリーなのでしょうが、殺人事件の謎解きがチープなのがこれまた毎度のこと、で残念にもなります。
ここのところは安楽椅子探偵な傾向が強まってきていますし、それでも今回は最後に現場に足を運んだだけでもよしとすべきなのかもしれません。
次回はやや守備範囲に近いネタのようですから、これらの傾向が少しでも変わってくれていることを願いたいです。


2015年11月13日 読破 ★★★☆☆(3点)


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