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オリオン村(跡地)

千葉ロッテと日本史好きの千葉県民のブログです
since 2007.4.16
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猫弁と透明人間

2016-06-04 02:32:42 | 読書録

猫弁と透明人間

講談社

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猫弁の第二弾、相手は透明人間です。
ただこのシリーズ、やはりジャンル分けが難しく、少なくともミステリーの範疇に入れるには要素が足りなさすぎでしょう。
ネタがバレているところを読み解いていくコロンボともまた違いますし、こうなるのだろうな、やっぱりこうなった、の水戸黄門な安心感が売りなのだと思います。

事件とは直接の関係がない猫タワーだったり、無理矢理に猫に絡めているところが、人によってはあるいは鼻につくかもしれません。
猫が事件の鍵を握るわけでもなく、ただの猫好き、猫に囲まれた弁護士を取り巻く人たちの、家族を中心とした人間模様といったところでしょう。
なかなか核心に近づかずテンポがいいとも言えませんし、それでも耐えられる、は語弊があるかもしれませんが、ドラマ効果があってこそだと思います。
吉岡秀隆などは他は考えられないぐらいにピッタリですし、杏や柳原可奈子も笑っちゃうぐらいに適任です。
このキャストを想定して書いたのではないかと思うぐらいで、そういう意味でも予定調和を楽しむのがツボなのかもしれません。
弁護士のゴーストライターと医療事故、猫弁の婚約、肝心のストーリーは可もなく不可もなしです。


2016年6月2日 読破 ★★★☆☆(3点)


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鍵のかかった部屋

2016-06-01 01:10:26 | 読書録

鍵のかかった部屋

角川書店

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防犯探偵シリーズの第三弾、そしておそらくは最終章です。
前作と同じくやや長めの短編集で、一作目の長編ももう一つでしたが短編でもシリーズの特徴を活かせていません。
主人公は榎本径なのか青砥純子なのか、いつの間にやら夫婦漫才のようになってしまい、実際にドラマ化がされているようですし、それを意識した構成への変容のようにも思えます。

一作目はそれでも防犯コンサルタントの色が濃く出ていましたが、今やそれもありません。
単なる密室好きな探偵、作中の登場人物に「密室探偵」なるセリフを吐かせていましたので、あるいは確信犯なのでしょう。
それぞれのストーリーは見るからにプンプン臭う容疑者を榎本が追いつめていくという仕立て上げ、しかしコロンボとは違ってその容疑者はさして手強くもありませんし、「やられた!」ではなく「なんだそりゃ」と脱力をしてしまうような密室のトリックも独りよがりに見えます。
またここまで散々に榎本の謎をほのめかしながらも拾わないままにシリーズは終わるのか、しかしそれもどうでもよいのが正直なところです。


2016年5月31日 読破 ★★☆☆☆(2点)


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64(ロクヨン)

2016-05-28 03:25:01 | 読書録

64(ロクヨン)

文藝春秋

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D県警シリーズの最新作、とは言っても4年前の、しかし先日にテレビドラマとなり、現在に映画が公開をされている旬な横山秀夫です。
ただやはりこのD県警シリーズ、なぜにシリーズで一括りにされているのかがよく分からず、順番どおりに読んでここに至りましたが予習にもなりませんでした。
辛うじて二渡警視や七尾警部が登場をしましたが重要な役回りながらも脇役でしかなく、似顔絵婦警も出てきませんし、シリーズならではのわくわく感がありません。
あまり意識をせず、むしろ単独で構成をされていると考えた方が入りやすいのではないかと、あまり構える必要のない作品です。

僅かに一週間しなかった昭和64年、自分などは昼まで寝ていて目が覚めたら平成になっていたのですが、その昭和64年に起きた未解決事件に絡んだ人間模様が描かれています。
映画の紹介映像などを見ればその事件を解決していく過程が描かれているようにも受け取れますが、そこは横山秀夫、警察内部の組織が主戦場です。
かなりなボリュームで、しかも骨太、軽い気持ちで読むと飲み込まれてしまいそうな、D県警の広報官である主人公の三上の心の動き、その内面が克明に描かれており、また三上を取り巻く広報室の部下たちの成長物語でもあり、しかし温かく見守れるようなものではありません。
内面を語るだけに独白も多く、原作を読んでの映画鑑賞はハズレが多いので避けるようにしているのですが、この64(ロクヨン)はむしろそのハズレを探るような、これをどうやって映像表現でまとめるかの怖いもの見たさ、そんな複雑な心境だったりもします。
こと小説と考えれば個人的には独白が多すぎでテンポの悪さが足枷となり、また余韻のように見えて実際には放置とも思える展開が今ひとつの七日間の後始末でした。


2016年5月27日 読破 ★★★☆☆(3点)


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コメント (4)

顔 FACE

2016-05-14 00:10:02 | 読書録

顔 FACE

徳間書店

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D県警シリーズの三作目は連作短編集で、第一弾にも登場をした「似顔絵婦警」が主人公です。
その前作で失踪事件を起こして半年の休暇を経て復帰をしたのが広報担当であり、そして電話相談窓口、捜査一課の刑事と次々に短期間で異動を繰り返していきます。
一貫して描かれているテーマは男社会の警察内部での「男尊女卑」であり、露骨さ、陰湿さ、男性目線でも女性目線でも、いろいろと考えさせられる作品となっています。

物語としてはやはり横山秀夫らしい重苦しさがありながらも軽やか、と言ってしまうと矛盾ではありますが、どこか明るい気持ちにさせられます。
それは挫折を繰り返しながらも主人公が一歩ずつでも前に進もうとしているのが理由ではないかと、これは成長物語でもあるのでしょう。
ミステリーとしては読み解くための材料があまり撒かれていないのでそういう意味での楽しみはもう一つですが、なるほど、とやられた感のある仕掛けは心地よいです。
余韻を残して読み手それぞれのアフターストーリーを考えさせる、そんな締めくくり方も深みを持たせているのかもしれません。
この魅力的な主人公が脇役でもいいので登場をしてくれれば嬉しいのですが、次はいよいよ本丸の64(ロクヨン)です。


2016年5月13日 読破 ★★★★★(5点)


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動機

2016-05-11 00:01:55 | 読書録

動機

文藝春秋

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NHKでドラマになったときにはさして興味が無かったのですが、先日に映画館で映画の予告編を見て虫が騒ぎ出したのが64(ロクヨン)です。
その64(ロクヨン)は横山秀夫のD県警シリーズの4作目ですから、やはり順序立てて読んだ方がいいのかなと、陰の季節に次ぐ第二弾の動機を手に取りました。
しかしなぜこれがシリーズの一角を占めているのかが理解できず、四編の短編集ですがD県警どころか警察が舞台になっていないものすらあり、その立ち位置がよく分かりません。
前作の主人公格だった二渡警視の名前がちらっと出るだけで、少なくとも64(ロクヨン)の前提になっていないことだけは確かです。

だからと言って面白くないわけではなく、いや実際に面白いといった類いのものではないのですが、かなりの読み応えがありました。
電子ブックなのでページ数はよく分かりませんが、短編集ながらもそれぞれがそれなりのボリュームです。
人間の心の弱さ、意地、など内面の葛藤、機微を描いているのは前作と同様で、その前作よりも重さと言いますか、深く考えさせられるところがあります。
自分がその立場だったらどう考え、どう行動しただろうか、相当に思い悩むことになるでしょう。
暗いイメージが付きまとうものばかりですので取っ掛かりは悪いですが、警察手帳の紛失事件が題材で表題にもなっている「動機」は仲村トオルの二渡警視を無理矢理に絡めるなどして原作からいじられたようですが先日にドラマ化をされましたし、横山秀夫の世界観、という意味では64(ロクヨン)の予習になるのかな、とも思います。


2016年5月9日 読破 ★★★★☆(4点)


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六点鐘は二度鳴る

2016-05-05 00:13:54 | 読書録

六点鐘は二度鳴る

小学館

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かつては作家として活動をしていた井沢元彦は最近はすっかりと歴史研究家であり、ここ数年で小説の発表はないはずです。
その井沢元彦は好きな作家でもあり当時はよく読んだもので、しかしやはり短編集は今ひとつと手を出していませんでした。
今回に読んでみましたがやはり長編ほどに奥行きがないのは仕方のないところで、また戦国期を舞台にしたミステリーというだけ、残念ながら予想どおりの名探偵信長です。

名探偵信長であれば徹底をすればいいのですが、収録をする作品が足りなかったのか、そこは中途半端です。
それでもキリシタンの宣教師だかの目から見た信長の好奇心、探究心、そして緻密な判断力がベースになっているのは伝えられる信長像にぴったりですし、松永久秀や敵対関係にあった毛利氏を絡めるなどはさすがと言えばさすが、このあたりが井沢元彦の筆力なのでしょう。
ただ片桐且元など史実を微妙にずらした記述もあり、今の本人からすれば隠したい過去かもしれません。


2016年5月4日 読破 ★★★☆☆(3点)


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ふちなしのかがみ

2016-04-29 00:00:12 | 読書録

ふちなしのかがみ

角川書店

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1986年から記録をつけ始めた読書録、記念すべき1500冊目は辻村深月です。
5篇の短編からなるホラーストーリーとでも呼べばいいのか、これまでとはかなり趣向の違った作品に仕上がっていて、しかし残念なことに個人的には受け入れられず、あのハッピーエンドにこだわった深月はどこに行ってしまったのか、とにかく後味の悪さが際立っています。
おそらく最初に出会ったのがこれであれば冷たい校舎にも、スローハイツにも、そして名前探しの放課後にも出会うことはなかったでしょう。

後味の悪さだけで言えばこれまで全くなかったわけではありませんが、ここまでの不可解さはなく、ある意味で理不尽とも言えます。
1篇目はまだよかったのですが2篇目の中盤からおかしくなってきて、3篇目は何を言っているのか、何がしたかったのかが全く分かりませんでした。
タイトルとなっている4篇目で深月らしさ、仕込みの上手さにやられはしましたがダークすぎますし、持ち直した5篇目がなければ★1つですら付けなかったかもしれません。
ゆうちゃん、ありがとう、ゆうちゃんのおかげで深月を読み続けることができます。


2016年4月28日 読破 ★★☆☆☆(2点)


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コンピュータの熱い罠

2016-04-24 00:52:15 | 読書録

コンピュータの熱い罠

講談社

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読みやすさ抜群の岡嶋二人です。
人さらいの岡嶋、と誘拐ものを得意とする岡島二人ですが、一方でコンピュータものも得意なようで、これはコンビを組んでいた両人の趣味嗜好によるものとのことです。
あたし、で始まるデータセンターに勤務する女性オペレータが不審なデータを見つけるところから始まる殺人事件、テンポよくやはり二時間ドラマにぴったりなストーリーですが、しかしなかなかに映像化は難しいような、そのトリックは最後まで気がつけませんでした。

今の時代の個人情報管理については当然のように厳格さが求められていますが、この作品が刊行をされたのは1986年、さすがとしか言いようがありません。
その道に生きている身からすればチープ感はありますが時代が違いますし、大学生のときに最初に触れたのがフォートラン、会社で最初に学んだのがアセンブラ、そのときにはそんなことを考えもしなかったことからして、当時とすれば斬新な視点だったのではないかと思います。
怪しい人物をあちらこちらに配置するところなどはこの作者にして珍しい手法でもあり、海外でのそれのご都合主義は否めませんが、そこは刺身のつま、問題なしです。
終わり方があまりに唐突で何を悟ったのかが理解できなかったのが引っ掛かりはしますが、安定感万歳、岡嶋ストーリーはもう折り返し地点です。


2016年4月23日 読破 ★★★☆☆(3点)


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コメント (2)

幻の城

2016-04-22 00:23:04 | 読書録

幻の城

祥伝社

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すっかりと大河ドラマのおかげで真田信繁の名前が定着をしつつありますが、当然に昔の作品では幸村が幅を利かせています。
そんな幸村の大坂の陣での活躍、ともなれば講談ならずとも真田十勇士が縦横無尽になんてことになりがち、しかしこの作品は全くそれとは別世界でした。
そもそも幸村が主人公だと思ったことが間違い、真の主人公はその幸村が数だけは多いものの烏合の衆でしかない大坂方の総大将として担ぎ出そうとしたある人物であり、あるいはその手引きをする根津甚八であり、よって大半は大坂ではなくはるか離れた土地での物語となっています。

着眼点は素敵ですし、なるほどと思わせるものがあります。
言われてみればこの人物が大坂の陣で埒外だったのが不思議と言えば不思議、もちろん福島正則がそうであったように徳川方の厳重な監視下にあったことで身動きがとれなかったのが実情なのでしょうが、もし実現をしていたら面白いことになっただろうなと夢が広がる設定です。
またのっけから猿飛佐助が死に、三好清海、伊佐が死に、由利鎌之助が病に倒れるなど真田ファンが悲鳴を上げそうな展開も新鮮と言えば新鮮でした。
ただそれだけかなと、設定はよいのですが奥深さがなく、淡々と話は進んでいきます。
ifなストーリーながらも史実から大きく踏み外さない、のがむしろ逆目に出たような、もう少し狂ってもよかったように思います。


2016年4月21日 読破 ★★★☆☆(3点)


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シリウスの道

2016-04-19 00:07:14 | 読書録

シリウスの道(上)

文藝春秋

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シリウスの道(下)

文藝春秋

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テロリストのパラソル、これがとにかく面白かった、と言いますかのめり込めたので藤原伊織の電子ブック化をちょくちょくチェックしていたのですが、気がつけばずらっとリリースをされていて、まず手に取ったのが続編の位置づけなのかもしれないシリウスの道です。
札幌遠征で羽田-新千歳空港、新千歳空港-札幌と移動時間がかなりあったことでの一気読み、もったいないな、とは思いつつもページをめくる指を止められませんでした。
息をつかせぬ展開、魅力たっぷりな登場人物、ちょっと格好よすぎる感じもありますが、ぐいぐいと引き込まれていきます。
今年に入ってからほぼ全著作が電子ブック化をされましたので、今後も追い続けていきます。

広告代理店の副部長である主人公の辰村が大手電機メーカーの証券業参入にかかるコンペのメンバーとなり、社内の政治的なところによる嫌がらせを受けながら奮闘する中で、クライアントの重役からの一本の電話で25年前の出来事、封印をしていた思い出に悶え苦しみ、答えを求めていくといったストーリーです。
続編とは言いながらも一部の人物が絡んでいるだけで直接的な関係はありませんが、しかし重要な役割でもあり、ご都合主義な側面や人間関係が前作とどこか似通っているのが引っ掛かりはするものの、ビシッと一本の筋が通った哲学とでも言いますか、その生き様には憧れてしまいます。
作中で呆れられたように実際にそんな生き方ができるわけもないのですが、だからこそ魅力的なのでしょう。
辰村とタツ、の関係も気にはなりますが更なる続編が望めないのが哀しく、隆慶一郎、そして藤原伊織と、その短すぎる執筆期間が残念でなりません。


2016年4月17日 読破 ★★★★★(5点)


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QED 龍馬暗殺

2016-04-15 00:20:15 | 読書録

QED 龍馬暗殺

講談社

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最近は興味が薄れていますがかつては維新の嵐、でキーボードを連打したこともありますので、幕末ものは嫌いではありません。
ただ史跡巡りの旅でもたまたまぶつかれば、といった程度で、探してまでは、が実際のところではあります。
それでもQEDシリーズでは自分にとって距離の近いテーマでもあり、これまでに比べればページをめくるのが楽しかったタタルの独演会でした。

ただQEDが目的であれば殺人事件を絡めることもないのでは、そんな違和感が強くなってきています。
どうにも無理矢理感がありますし、学術的な意味合いで持論を展開する、そんなストーリーでもよいのではないかと思います。
立て板に水の沙織もいかがなものかと、結局のところはスピリチュアルに行き着いてしまうのは仕方がないにせよ、ミステリー仕立てにしている必要性が感じられません。
肝心の龍馬暗殺、その犯人は無難と言いますか意外性はなく、まあそんなところなのだろうなと、ほたえやな!な龍馬の最期でした。


2016年4月14日 読破 ★★★☆☆(3点)


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疑心 隠蔽捜査 3

2016-04-11 00:05:08 | 読書録

疑心 隠蔽捜査 3

新潮社

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あまりに面白かったので立て続けに読んだ隠蔽捜査シリーズですが、この第三弾は期待外れでした。
より内面に踏み込んだのはそれはそれでいいのですが、隠蔽も捜査もどこかに置き忘れてしまったような、そのバランスが悪すぎます。
颯爽とした竜崎が悩み苦しむそのギャップを描きたかったのかもしれませんが訴えるところが弱く、そんなものは鏡に向かってやってくれといったところです。
周りを固めるキャラも中途半端なモブでしかなく、人物としてもストーリーとしても魅力を出し切れなかった疑心でした。

妻からも唐変木、と言い放たれる竜崎の人生初の恋、そんなものがシリーズに必要だったとは思えません。
確固たる信念を持って我が道を行く、キャリア官僚としては「変人」の竜崎がその道を邁進するところが魅力なわけで、事件よりも人間関係に重きを置いているとは言いながらもさすがにこれは道を外れすぎてしまったと、正直なところ途中から読むのが苦痛で斜め読みになってしまいました。
事件そのものも何のひねりもなく単純で、その大半が竜崎の懊悩、しかも本を読んだら解決って、いくら何でも馬鹿にしすぎでしょう。
こんなにも同一のシリーズで天地の差が生まれるとは信じられない思いで、落ち着くためにもちょっとインターバルを空けることにします。


2016年4月10日 読破 ★★☆☆☆(2点)


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果断 隠蔽捜査 2

2016-04-09 01:53:58 | 読書録

果断 隠蔽捜査 2

新潮社

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読書は基本的に通勤電車のみなのですが、我慢しきれずに家に帰ってきてから最後まで読んでしまいました。
隠蔽捜査シリーズの第二作、それぐらいにのめり込むだけの魅力があります。
いわゆる警察小説、犯罪捜査よりも警察内部の人間模様に重きを置いているのでミステリーとしての謎解きといった楽しみ方には物足りなさがありますが、とにかくキャラが立っている、そんな登場人物ばかりでこれは誰、あれは誰といろいろな俳優の顔を思い浮かべたりもしています。
シリーズものだけに前作を読んでからの方がいいに決まっていますが、単品でも充分すぎるぐらいにドキドキ、ハラハラな現代版石田三成でした。

その前作で降格人事となり警察庁総務課長から大森署の署長となった竜崎は、しかし自分の信ずる「正義」には何の躊躇もありません。
上限関係が厳しい警察内部であっても上が間違っているのであればそれには従わない、周りから変人と言われても意に介さない徹底ぶりが素敵すぎます。
同期で警視庁刑事部長の伊丹、方面本部管理官の野間崎、大森署副署長の貝沼など、一癖も二癖もある面々もいかにもステレオタイプ的なところはあれ、いそうだ、ありそうだ、と思ってしまうしっくり感、その中で我が道を行く竜崎とのぶつかり合い、これこそがシリーズの持ち味でしょう。
テンポがよく起承転結なもっていき方が秀逸なので半ばまで読んだら一気読みをしたくなる、そんな大森署管内での立てこもり事件でした。


2016年4月8日 読破 ★★★★★(5点)


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思い出のとき修理します 2

2016-04-07 00:09:32 | 読書録

思い出のとき修理します 2 明日を動かす歯車

集英社

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前作でそれなりに落ち着いたように思えたので続編はどうなのかな、とも思っていた飯田時計店です。
ミステリーと言えばミステリーなのですが、ファンタジーとホラーをミックスしたような不思議感、タモリの番組を思い出してしまうところなどに変わりはありません。
ある意味でご都合主義ではあるのですが、それがあまり気にならない、むしろそこがメインだったりもします。
心の奥底に隠れている思い出、忘れようとするも忘れられない過去、それらを修理をしたい気持ちは誰でもあるはず、秀司の手により止まっていた時が再び動き出します。

明里と秀司の関係はゆったりと、穏やかな川の流れのように続いている中で、少し寂れた商店街の人々のエピソードが絡んできます。
前作とは違ってそれぞれの関連性は薄い連作短編集のような構成で、たまにはこういったまったりしているものも悪くありません。
あまりにいい人たちばかりで毒気がやや足りませんが、ハッピーエンドが約束をされている水戸黄門のような、それでいて太一の謎がちらほらと、新たな展開を予感させます。
第三作もすでに刊行されているようですから、またホッとしたいときに手に取ってみます。


2016年4月6日 読破 ★★★★☆(4点)


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生きて候

2016-04-02 01:26:16 | 読書録

生きて候(上)

集英社

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生きて候(下)

集英社

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徳川家康の懐刀、本多正信の次男である政重が主人公です。
同僚を切り捨てたことで出奔をしながらも宇喜多氏、上杉氏などを渡り歩いて最後は前田氏の筆頭家老までにもなった政重の、中半生とも言うべき生き様が描かれています。
美しく命を使い切る、そんな政重の爽やかで、かつ豪快な活躍ぶりは痛快で、しかし中途半端であり、一方で徹底をしすぎている、そんなモヤモヤしたところのある作品でした。

政重の逸話としては五万石の壺、などがありますが、しかし描かれているのは宇喜多氏の家臣としての関ヶ原の合戦までです。
エピローグ的に直江兼続の娘婿になったこと、あるいは前田氏の家老として利常を支えたことがおまけ程度についているだけで、そこが政重の人生にとってのピークではないかと思っていますから、前菜だけがてんこ盛りでメインディッシュを取り上げられた、そんな気にさせられました。
かと言って政重に魅力がないわけではなく、陪臣ながらもちょっとした大名並みの5万石は徳川氏との繋がり、江戸幕府の中で前田氏が生きていく上でその血筋を尊ばれてのことがあるにせよ、それに耐えうる実力があるからこその厚遇であり、その人柄、実力が存分なく発揮されています。
ただ何でもかんでも政重のおかげ、のスーパーヒーローぶりが鼻についてしまったのも正直なところで、正重ではなく政重、の理由が榊原康政が烏帽子親だったから、などどこまでが史実ベースでどこからが創造力の賜物なのかは分かりませんが、さすがにやりすぎでしょう。
あまりに清らかすぎて近寄りがたい感じがあり、また政重と大黒が前田慶次郎と松風、にイメージがダブってしまったのも痛手だった、そんな敵味方の誰からも愛される政重でした。


2016年3月31日 読破 ★★★☆☆(3点)


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