電脳筆写『 心超臨界 』

成功はそれを得るために捨てなければならなかったもので評価せよ
( ダライ・ラマ )

生きるための杖ことば 《 淡若水――松原泰道 》

2024-11-11 | 03-自己・信念・努力
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食物の本当の味は淡白にある。飽きることがない。茶の風味は淡白にある。それは閑寂にある。「淡交」とは、淡きこと水のごとき執着なき交わりをいう。


◆淡若水
 淡(あわ)きこと水(みず)のごとし――荘子

『生きるための杖ことば』
( 松原泰道、全国青少年教化協議会 (2001/04)、p54 )

紀元前4世紀ごろの中国の大思想家、荘子の思想集といわれる本人同名の「荘子」外篇に、子桑こ(しそうこ、「こ」の漢字は「雨」カンムリの下に「乎」)という哲学者が、孔子に次のように教えたとの記述がある。

「君子の交わりは淡きこと水の若(ごと)く、小人の交わりは甘くして醴(れい)の若し。君子は淡くして以って親しみ、小人は甘くして以って絶つ。彼(か)の故(ゆえ)無くして以って合う者は、則(すなわ)ち故無くして以って離る」と。

孔子曰く、「敬(つつし)みて命(めい)を聞けり」と。徐行翔佯(しょうよう)して帰り、学を絶ち書を捐(す)つ。弟子(ていし)、前に挹(ゆう)すること無く、其の愛は益々進むを加えた。

「君子(徳行の具わった人)の交わりは淡々として水のようであるが、小人(徳行の欠けた人)の交際は、醴(甘酒)に似て、ねちねちしている。君子のつきあいは、あっさりしているから、いつまでも親しさを保つ。ところが小人同士の関係は甘いから、すぐ切れてしまう。深い理由もなく結びついた交わりは、またこれという理由もなく離れてしまうものだ」。これを聞いた孔子は、学問や読書をぷつりとやめた。彼の弟子たちの孔子に対する敬礼は、以前ほど丁寧ではなくなったが、師弟の愛情はいよいよ深まるばかりであった――。

また『礼記』(紀元前2世紀から紀元2世紀にいたる中国の周代から漢代にわたる儒者の古礼に関する説話集)にも、「君子の交わりは、淡きこと水の如し」とあり、君子が人に交わるのは淡白で交際が永続するのを水にたとえている。さらに『菜根譚(さいこんたん)』(儒教を根幹に、老荘・禅思想を交えた処世哲学書)にも、「真味は只だ是れ淡なり」と見える。

食物の本当の味は淡白にある。飽きることがない。

茶の風味は淡白にある。それは閑寂にある。「淡交」とは、淡きこと水のごとき執着なき交わりをいう。
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