電脳筆写『 心超臨界 』

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( チェロキーインディアンのことわざ )

真理のひびき 《 真人たらんにはその生活を考慮するに先ち――中村天風 》

2024-10-12 | 03-自己・信念・努力
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[箴言二十四]

真人たらんには その生活を考慮するに先(さきだ)ち
生存を確保することを 第一に認識すべし
To be a TRUE MAN, we must, first of all, perceive to secure
our existence of life before we consider our way of living.


『真理のひびき』
( 中村天風、講談社 (1996/7/18)、p224 )

この箴言は、われらの天風会で開催する心身統一法の講習会の入会日の冒頭に、安武副会長(二代目会長)かまたは井上講師か杉山博士(現会長)のどちらかが、天風教義の根本原則に対するプリンシプルを説くとき必ず説述される重要な問題である。

そして、それを序論として連日講習する教義は、その大部分が、この箴言誦句の眼目となっている生命の生存確保のための実際的手段と方法である、ということは天風会に入会された皆さんはすでにご承知の通りである。

が、世人の多くを見てみると、案外にも相当の教養ある人でも、日々の生命に対する生活のみを考慮することにその人生の重点を置いて、何よりもおろそかにすることが許されない生存という人生の基礎的な重大事を、むしろ考えなさ過ぎるといってよいほど全く考慮の外において、しかもそれで万全の人生を獲得、もしくは建設できるもののごとく考えて、その考えが人生処置に対して極めて不全なものであるということを少しも気付かず、毎日をただ生活のことのみを専念に考え、それらを実行することに日もこれ足らずというふうに、あくせくと心を使って貴重な人生を過ごしている実際傾向がある。

この点については、各講師が講習のたびごとにさらに詳しく言及していることであるから、もはや皆さんは十分に理解されているはずである。すなわち、生活のことのみを重点として専念するというのは、詳しくいえばいかにして利得を多くしようとか、今日はどこに行こうかとか、どうすればもっと楽しめるかとか、あるいは何かうまいものを食べようとか、よい衣服を身につけようとか、たのしい恋愛をしようとか、等々の種々雑多のことである。

これはもちろん人生の一方に存在する考えるべき、いや考えねばならない活きることに対する重要な事項に相違ない。がしかし、真人として正しく完全な人生を活きるためには、一つの人生の奥に存在する侵すべからざる事実を忘れてはならない。それは生命の生存を確保するということである。

もっと詳細にいえば、あれが欲しい、これをこうしたい、ああしたいと欲求する意念が人間の心頭に生ずるのは、ひとえに活きている「命」があるからである。

生命が活きていなければ、何ものをも欲求する意念は生じようはずがない。

多くの人々は、われわれが日々いろいろな欲求や感情を心にもちつつ生活できるのは、その生命が生存しているからだという重大なことを案外気づいていないようである。

したがって結論的にいうと、こうした慣習が自然と、心と身とを一つに結合して活きるという人間の正真正銘の活き方を考えないという、遺憾な結果に陥っているのであるといえる。

であるから、それを完全に是正する厳格な必要条件として、われらの提唱する心身統一法は、その根本原則の第一のプリンシプルとして、生存の確保ということを強調するゆえんであると、これまた各講師が諄々(じゅんじゅん)と啓蒙されているところであるから、無論皆さんは充分理解し実行に専念されていると信ずるが……、実際、いつもたえず説述している通り、会員諸子のような真人生建設の真理と方法とを知っている人はとにかく、知らない人々は、その生命の健康のときには何の反省も感ずるところなく、ただ、心頭に発作的に生ずる意念から生まれる欲求のみを本位とする生活一途に活きているが、第一健康難や運命難に襲われると、ただ薬餌(やくじ)療法とか食餌(しょくじ)療法とか等々その他の肉体本位の手段のみでこれを恢復もしくは救済しようとする。

ところが、平素から生存の確保という、生活ということよりも、より以上真剣に考えねばならぬことを実行していない生命には、いかなる方法手段をもってしても相対的な効果はあっても、絶対的な効果を獲得することはできないのである。

というのは肝腎(かんじん)かなめのいのちのちから「生命力」が萎縮減退しているからである。

そのため、努力徒(いたず)らに空しくして効果極めて少なしという遺憾なる結果が心ならずも生じてくるのである。

否、事実においてこの種類の人がいかに現代の世に多くいるかということを見聞するたびごとに、痛切に感ずることは、われわれのように生存確保の真理とその実際方法とを知り、かつ実行する者の幸福への感謝である。

実際、生存確保ということを人生考慮の中におかずに生きる人は、前述した理由でどんな方法手段を行ったところで、完全な成果をいくら期待しても、健康や運命に対していかなる方法や手段を実行してみても、現実に満足するものを獲得することは不可能である。

慎重に考えてみよう!

真理というものは、厳然として今まで述べてきたような消息をいつも事実という侵すべからざるもので明らかにこれを立証しているのだ。である以上、人間がときどき病になったり、不運命になるのを当然のことと思ったり、または避けることはできないやむを得ぬ業(カルマ)のように考える考え方は、断然訂正すべきである。

特に、健康難のごときは、人間の寿命の絶えるとき以外は、そうめったやたらと、病に冒されるはずはないのが絶対の真理である。

しかるに、その反対の状態の人生に活きている人の多いのは……。

要約すれば、原因あっての結果で、俗にいう蒔(ま)かぬ種には花は咲かないのと同様のことである。何事もいわゆる論より証拠のたたえ通り、翻然(ほんぜん)としてこの点を反省し、生命の生存確保の方法を正しく実行すると、即座に宇宙エネルギーの受入態勢が期せずして用意されることになるがために、自然と生命活力が充実してきて、健康のごときはもちろん、運命関係も、まるで天馬空(くう)を行くがごとくに、極めて有意義に、感謝以上の現実復元をするのである。

だから何はともあれ、要は生存の確保をする方法を真剣如実に実行する者は常に価値高い生命力が充実していて、いかなる場合にも颯爽發剌(さっそうはつらつ)とした生命力が躍動しているために、みだりに病難や運命難に侵されるはずがないのが自明の絶対真理である。

であるから、われらの実践する統一道の真理と事実とを未だ知得されていない知己なり友人なりが、皆さんの交人関係なりグループの中におられるならば、皆さんの霊性の中にある尊い人類愛という感情をもって、生存確保と生命運営の枢軸(すうじく)機関といえる神経系統と生活機能との密接な関係を説述されて、その人々の正しい人生自覚を促され、真の人生幸福に活きつつあるわれら統一道の盟友として誘導され、人生真理を知得し、かつまた健康や運命を完全にして活きる真人を殖やすことに貢献されることを、皆さんの尊い人生功徳(くどく)とかつまた人生責務のために心より提唱する。

否、このようにして初めて真理を知らされた天恩に心からの感謝を捧げることとなり、同時にそういう人こそ期せずして常に幸福に恵まれる真人となりえる人であると、あえて重ねて熱唱する。

否、否、およそ心ある人間なら恩恵を受けて感謝を感じない者はないはずである。もしも、恩恵を恩恵と思わぬ者があれば、その人は犬猫にも劣る顰蹙(ひんしゅく)すべき卑しい忘恩(ぼうおん)の徒ともいうべき徒輩(やから)である。かくいう天風がいわゆる人生欲望の最も激しかった年齢四十歳のとき、樹下石上(じゅかせきじょう)もいとわないという決意をもって、敢然としてこの法の宣布を思い立ったのも、凡人不肖の者が偶然の動機から真理を悟らせられ、その上数多い実際方法まで霊感自得したという、考えても考えきれない量り知れぬ天恩を授けられた深甚(しんじん)なる恵を思えばこそである。

しかも、皆さんにおいても天風と同様な恩恵に浴していると厳粛に考慮されるべきであると思う。まして皆さんは労少なくして得るところが多いという、天風よりはるかによい果報の恩恵を与えられている。

その点まで省察が行き着くならば、真理の践行に勤勉であると同時に功徳の布施に力を尽くすべしという天風の真意のあるところも充分に理解されることと信ずる。

こいねがわくは、お互いに清い心で尊さに慣れていないかを反省し、生存確保の践行に努力することである。
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