ある日のことです。
友人とイオンナゴヤドーム前店に行き、ランチを食べようということになりました。
時間は午後の1時。
まだ一番込み合っている時間帯です。
私たちが狙っていた柿安のバイキングのお店は、相変わらず良く流行っていて、並んで待っている人たちがいました。
並んで待つほどの気もなかった私たちは、「どこでもいいから入ろうか。」とすいていそうなお店を探し、入店しました。
そこで友人は、「彩り御膳」と「どて煮」を、私は「和風ハンバーグ定食」を注文しました。
しばらくして、まずは友人が頼んだ単品の「どて煮」がやってきました。
「なんだろう、これ・・?」
上にデロリと乗っているナマコの親玉のようなものを見て、友人が気持ち悪そうに言いました。
一口食べて、「なに?」と聞いても「う~ん、食べてもわかんない・・」と言います。
「どれ」と一口もらって私も食べましたが、ふわふわして煮込んだナスのような感じがしましたが、よくわかりません。
「でも、やっぱり大根なんだろうねぇ・・」
今度は友人が別のものをパクリ。
「なに、これ!」と今度は前より少しキツイ口調で言いました。
「ちょっと、えっちゃん、これ食べてみて。」とこれは一目見て、こんにゃくであることは判別できるものを指して言いました。
食べてみると、スポンジのような、なかに大きな気泡がいくつもある、って感じの歯ごたえがします。蜂の巣を煮込んだものを食べているみたいです。(蜂の巣を煮込んで食べたことがあるわけではありません。あんな形状のものを噛んだ、というたとえです。)
要するに煮込みすぎで「スがたっている」という状態なわけです。
「これはちょっとひどいんじゃない・・?」
さすがの私もそう言いました。
「でしょ?」とヒソヒソ言っていると、今度は私たちの食事が到着しました。
ここのレストランではご飯を「白飯」か「菜飯」かが選べます。
私たちはふたりとも「菜飯」で注文していました。
「これ見て!」みたび、友人が声をあげました。
彼女が傾けたおわんを見ると、それはいったいどこに菜っ葉が入っているの?という状態です。
「それ、白飯と間違えたんじゃないの・・?」と言うと、
「違う、ここ見て。」と彼女が指差したところをみると、かすかにゴミのように菜っ葉がこびりついています。
これだけ・・?
ひどい・・
「これはもう言うしかないよね。言ったほうがお店のためだよね。」と友人は、すみません、と店員さんを呼びとめ、「厨房の責任者の人か、店長さんいる?」と尋ねました。
するとまだ年端もいかぬ20代も半ばというアルバイトかと思ったその女性が、
「私ですけれど、なにか・・?」と言いました。
友人は、おわんを見せ、「これ、菜飯?」と言いました。
すると、じーっとおわんに顔を近づけ中身をよく確認したその店長は、
「はい、かすかに菜っ葉が入っているので、それは菜飯だと思いますが・・」と答えたのです!
笑い話じゃないですよ。
ほんとにそう言ったんですから!
菜っ葉の入り方が“かすか”であることを認め、だからこそ“立派”にそれが菜飯であることの証明だとのたもうたのです。
もう、笑うしかないっしょ。
しかも、“思う”だってさ。
友人もあきれてもう何か言う気がうせたみたいです。
で、矛先を変え、
「ちょっと、このどて煮食べてみて。」と言いました。
素直に「はい。」と言って、食べたその店長、「普通の味がしますけれど、何か?」とまたそう言いました。
「こんにゃく、オタクのはこういうものなの?」と今度はわたし。
「中に空洞があるように感じるような食感だけれど・・」と言うと、
「私には、こういうものだ、と普通に思えますが。」と言う。
さすがに腹を立てた友人、
「これが普通だって言うんなら、これ、どこのどういうこんにゃく?」と聞きました。
すると、「・・さぁ、そういうことまでは知りません。」と言うではありませんか。
店長というすべてを把握していなければならない立場で、自分のところで扱っている食材の産地や仕入れ業者を知らない、と言うのです。
こんなお粗末な話ってあるでしょうか。
私たちは顔を見合わせました。
険悪なムードを感じ取ったその店長、次に
「あの、今日はお代は結構ですから。」と言いました。
いきなりの「お金は要りません。」発言に私たちはまたびっくり。
「は? これ、あなたんところでは不良品ではない、普通の商品なんでしょ。」「はい。」
「だったら、たまたま私たちの口には合わなかったけれど、これが自信を持ってお出ししているウチのメニューです、でいいじゃない。それに対してお代はいらない、っておかしくない?」
「ですけれど・・ お客様が怒ってらっしゃるようなので・・ お代は結構です。」
「ここは怒ったり、マズイと言ったら、タダになる店なの?」と言うと、
「そういうわけではありませんが・・」としどろもどろ。
まるで私たちが問題ない店の商品にケチをつけることによってタダになることを望んでいた悪質クレーマーみたいじゃありませんか。
「あのね~、これ食べたら10人が10人中、これはスが立ったときになる現象だ、って言うわよ。そうじゃないんだね?」ともう一度念を押すと、
「わたし、うちの店の商品以外は食べたことないからわかりません。こういうものだと思ってました。」と言う。
あくまで、今日の私たちに供されたものだけがたまたまこういう状態なのではなく、この店でのどて煮はすべていつもこういう状態なのだ、と言い張る。
どんなひどいもの出してんだ。
すいているはずだわ。
よく今まで文句言うお客さん、いなかったねぇ。
でもさすがに皆さん、よくご存知だわ。
自分が入ったことはなくても、口コミで知ってるのか、とにかくすいてても入ろうとしないんだからねぇ。
それにしてもこの店長、どんな舌してんだ。
いくら若くたって、自分の店のものしか食べてなかったとしたって、これが普通だと思える味覚ってどうかしてるわ。
そんなわけないじゃない。
どて煮って、どう考えたって、ランチによく出る商品ではない。
夕暮れ以降にお酒のつまみの一品に取るような商品ですよね。
ということは、ランチどきに合わせて調理したとは考えにくい。
どうせ、昨日の残りを温め直したか、あるいはずーっと火を通しっぱなしだったか、と考えるほうが普通じゃないですか。
「ここはセントラルキッチンで調理済みのものを運んでくるの?」と聞くと、
「いいえ、レシピは本部のものですが、調理はすべてウチでしています。」と言う。
「ふぅん、じゃあいいわ。本部のレシピがこういうこんにゃくができるものなのかどうか、本部の人に聞くわ。本部の電話番号教えて。」と言うと、しばらくして紙に書いてもってきたのが、
「ええっと。うちは本部でそういうことを対応するようなところがないので、マネージャーが別のお店にしょっちゅういますからこちらのお店に電話して、マネージャーを呼び出してください。」と言う。
なんだか本部の対応もたいしたことなさそうだな、という悪い予感がする。
食べる気がそがれてしまった私たちは、残して席を立ちました。
お勘定を払おうとすると、レジで再び、「あ、お代は結構ですから。」とまた言う。
「いや、私たち、払わないって言ってるんじゃないですから。」と言っても、「えぇ、それはわかります。」と押し問答。
友人が、「この彩り御膳のぶんは払うわ。でも、このどて煮はさすがに許せない。」と言うと、
「はい、かしこまりました。では、どて煮だけは結構です。」と、何でもこっちの言いなりかい!
友人の菜飯にしたところが、普通なら、「あ、ほんとですね。ちょっと少なすぎますね。すぐにお取替えします。」という対応が当然でしょう。
結局、取り替えてももらえなくて、それに対しても本当ならお代は払いたくないくらいのものだったとは思うけれど、向こうが「これ、普通です。」と言う限り、私たちは憮然としながらも、そちらのお代は払ったのでした。
さて、それから私たちは忙しく充実した時を過ごし、その別の店にいるマネージャーとやらに電話をするのも忘れてしまって、その友人とはその日は別れました。
そして次の日になって。
私はふとそのことを思い出し、電話してみることにしました。
被害をこうむったのは友人のほうのランチだったし、私がするべきことじゃないかもしれないけれど、友人は喉元すぎれば熱さ忘れるタイプ(笑)
あのときには「なにさ!」とかなりおかんむりの様子でしたが、時を経ると「もうどうでもいいや。」となるタイプだとわかっていたので、まぁ、代わりに私がしましょ、と思ったのです。
私もどうでもいい、と言えばどうでもいいのですが、クレームの研修なども担当している身としては、相手がどう言うかを後学のために知りたかったのです。
そして、これから第二幕のよけいに腹が立つ事態となっていくわけですが・・・
長くなってしまいましたので、そのときの様子についてはまた明日。
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