実家が雨漏りする、というのでダーリンに見てもらいました。
ダーリンの会社は防水工事の会社。
まさに最もお手の物とするところです。
実家は築30年以上のビルで、屋上には防水シートが張ってありましたが、かれこれ施工してからもう10年近くたっていたので、再度やり直す時期ではありました。
ということでダーリンがまずは様子を見に行ったとき、どうしても屋上ではなく下の階から雨どいの様子を見る必要があったので、昔の私の部屋に出入りしたそうです。
ダーリンからうれしそうに、「えっこちゃんの部屋に初めて入ったよ~」と電話がかかってきたので判明しました。
「え~! そうなんだ。ちょっと言っておくけど、もうあそこは物置きみたいになっちゃってるからね。私が自分の部屋として使っていたときはもうちょっとキレイだったんだからね。」
「いや、お義母さんが『あの子が居た頃とな~んにも変わってないよ。なにせ、朝起きてちょっと出かけてくる、って感じで出て行ったきりだから。』って言ってたよ。」
ちっ、母親め。暴露しやがったか。
私は付き合っている頃からダーリンを1度も私の部屋に入れたことはありませんでした。
家に来てもらったことはありますが、それでも居間まででした。
「えっこちゃんの部屋が見たいな~」と何度も言っていましたが、「だめだめ、とんでもない、そんなこと。」と私は取り合いませんでした。
だって、当時から部屋っていうより物置きみたいだったんだもの・・・
とても女性の部屋とは思えないような代物で・・・
約8畳ほどのその部屋はベッドとステレオと机と大量の服にあふれかえり、足の踏み場もないほどでした。
そして、結婚するときもはじめはまだ同棲だったし、実家からすぐ近いところにアパートを借りたので、「まぁ、当面今の季節の服だけ持っていけばいいや。そいで、折々必要なものは取りに来るとしよう。」と思い、必要最小限のものしか持って出ませんでした。
しかし、いったん家を出て、“ここが私の本拠地”というところが定まるとなかなか実家に帰るようなことはしないものですねぇ。
私のタイプからして、いったん家を出たら、ベタベタ帰るということはしないとは思っていましたが、必要なものを取りに帰ることさえしなくなるほどとはさすがに思っていませんでした。
でも、服なんて最低限の枚数があれば、それで何とかなっちゃうものなんですよねぇ。
しかも季節が変るたびに1着や2着は買うとなると、それでまた増えていき、結局1度も何かを取りに帰るということはしていませんでした。
しかし私は母親がダーリンに言った「朝起きてちょっと出かけてくる、って感じで出て行ったきりだから。」という言葉にちょっと感じ入りました。
確かにそういう出て行き方だったに違いない・・・
それ以来、「私の部屋は適当に私のものはどけて使ってくれていいからね。」と言ったものの、何にも使われずそのままの原型をとどめていました。
私の私物がひそかに息づく私の部屋だったところは、まるで私がまだそこにいるかのような気配を放っていたことでしょう。
そのことに私は母たちに気の毒なことをしたな、という気がしたのでした。
よく、交通事故でいきなり死んだこどもの部屋をいつまでもそのままに取っておく、とかいう話あるじゃないですか。
あんな意味において・・・
別にうちの母親がおばちゃんと呼ばれるような年齢になった娘のことをいとおしんで出て行ったあとの部屋を片付けられない、ということはないと思いますが。
そこまで感傷的な人じゃないですし。かなりドライです・・・
しかし、物というものは、今までその人が使っていた状態のまま保管されていると何かしらそこにはやはりその主であった人の魂を湛えているような気がするんですよね。
そういうものってほかの人が触れにくいじゃないですかねぇ。
だから母親たちも私の部屋を使うことができなかったのかなぁ、と思ったら悪いことをしたな、と思ったのです。
物に使っていた人の感情が移入されたり、反映されたりすることがあるのか・・?
その問題については私はわかりませんし、しょせん物は物、という気もいたしますが、この世はすべて波長でできていることを考えれば、その人と波長が合っていた物というものは、やはりなにかしらそこにその人の波長が残っていても不思議ではない気もいたします。
そしてそういうものって出て行ったほう、置いてきたほうというのは意外と忘れてしまっているんですね。
たまらないのは、いつまでもその“気”が残っている部屋に毎日接しなくてはならない出て行かれたほうでしょう。
だから「断捨離」ということが大切になるのかぁ。
いつまでもそこにある淀んだ“気”が良いものを発散しているとは考えにくいですものね。
今度、じっくり時間をとって、実家を片付けにいこう、と思い立ったしだいです。
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