団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

行きはよいよい帰りはこわい

2014年12月19日 | Weblog

  麻酔をされるとすぐ眠くなる。歯科医で歯槽膿漏の治療を受けている。上下全ての歯を5回に分けてやる予定だ。すでに18日で3回目となる。

 老化による歯茎の後退を少しでも遅くしようとする治療である。無駄な抵抗ともとれる治療である。それでも一縷の望みを託すことにした。治療自体は部分麻酔をかけて実施されるので治療中に痛みは感じない。ただ困るのは麻酔を打った直後から眠くなることである。治療中、半分眠っている。担当医にも歯科技工士にも麻酔を打つ前に眠てしまかもしれないことを伝える。「口さえ開いていてくれれば、眠っていても大丈夫ですよ。それのほうが治療しやすいです」と言われ「普段から口を開き気味なのでそれはできると思います」と答えた。

 行きつけの歯科医院へは往復3時間かかる。行きはよいよい帰りはこわい。治療が終わって帰りの電車に乗った。マスクで口を被っていても落ち着かない。普段顔に意識が向くことはない。唇はたらこ唇のように腫れている感じがする。切開された歯肉を舌がなぞろうとする。気になりだすともうどうにも止まらない。だんだん麻酔が切れてくる。麻酔が切れて来た部分は、しびれが薄らいでいく一方痛みが眠りをさますようにジワジワと押し寄せてくる。痛みを抑え込もうと麻酔が働き、痛みを感知したぞと神経が騒ぐ。そのせめぎ合いが治療を受けた部分で展開される。1時間もすると麻酔は覚醒した神経に完全降伏してしまう。切口から血が出ていることさえ察知する。口の中に鉄サビの味が拡がる。ズキンズキンと血管の動きが伝わる。

 数日治療を受けた場所の歯は仕事をしない。代わりに他の歯を使う。時々もつれて舌を噛む。できるだけ固い物を食べないようにする。後2回である。年内はこれでおしまい。来年は6日から治療再開である。4年前にも同じ治療を受けた。歯磨きの指導を受けたお蔭か4年前よりずっと楽になった。歯科医師からは「この治療と歯磨きを両立させる努力をしてください。片方だけでは進行を遅くすることはできません」と言われている。ただ習慣として歯を磨いていた。歯磨きも治療の一環であることを自覚したい。

 私は人生の折り返し点をとうに過ぎた。若い時は体のあらゆる場所で復元力がみなぎっていた。無茶ばかりしてきた。因果応報。自分が生きて来た通りに、今になって体にその影響が出ている。

 帰りの電車の中、通学帰りの多くの学生が乗っていた。帰りが早いのは試験中なのか。若さが眩しいくらいだった。笑うと見える歯茎もピンク色で健康そうだ。♪命短し、恋せよ乙女♪もいいが、♪行きはよいよい帰りはこわい。こわいながらもとうりゃんせとうりゃんせ♪を唄って聴かせたくなった。


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