散歩が日課である私にとって、靴はとても大事だ。糖尿病の知覚障害で、足裏の感覚が異常に敏感になっている。いろいろな靴を試した。靴下もタンスの引き出しからはみ出る程、買って試した。靴の中敷きも下駄箱に積み上げられている。どれもこれもしっくりしない。日課の散歩も、靴、中敷き、靴下のどれがおかしくても、楽しさは半減する。何とか良いモノを見つけようとテレビ、ラジオ、ネットなどでCMや投稿を見ていた。
ある日「まるで転がるような新感覚な歩き心地」のウォーキングシューズの宣伝文句に目がとまった。75年間生きてきて、分かったことがある。自分がモノを売るのには不向きだが、買わされるよいカモだということ。店員が勧めることを鵜呑みにしてしまう。特におだてや誉め言葉にはイチコロだ。宣伝文句にもニコロ。あまりの節制の無さに、買い物依存症かもと思ったこともある。
「…転がるような…」なには、抵抗があった。「…新感覚な…」に売り手の罠に近づいた。「…心地」で捕まった。私は、勝手にその靴を履いて、いい心地になった自分になっていた。夢をみてしまう。宣伝する側の思う壺である。散歩を“新感覚”でしてみたい。散歩をして“心地”よく感じてみたい。清水の舞台から飛び降りてみよう。買うことにした。ダメだったら、3人いる孫の一人が小学校5年生で足のサイズが26㎝なので26.5の私の靴を履ける。他の2人は、すでに29㎝を越えてしまった。
KEENというアメリカのオレゴン州のメーカーのWK400を注文した。(青いのが底が弓なりのKEEN,黒はそこが平らなKARHU)2日で届いた。さっそく履いて散歩した。確かに歩きやすい。そこが弓なりなので脚を動かしやすい。普段使わない脚の筋肉を使うらしい。約40分間5千歩の散歩を終えた。“新感覚”であった。でも“心地”はまだ疑問符だった。2日目、3日目だんだん足になじんできた。これなら孫に送らなくても良さそうである。妻は、私の靴、靴下、中敷きの買いあさりにほとほと呆れかえっている。理解して欲しい。もう新しい服を買うこともない。飲み屋へも行かない。毎日家にいて漢字パズルをして留守番する。だから散歩を気持ちよくできるための出費を許して欲しい。
とても気に入ったウォーキングシューズだが、この靴は、車の運転には不向きである。階段の上り下りにも注意が必要。あくまでも歩くためだけの靴だと思う。今日も晴れそう。桜は散り始めた。この新しい靴を履いて、散る桜の花びらの中、桜並木のトンネルを歩く。