12月18日、NHK総合テレビでの大河ドラマ『真田丸』が放送50回目の最終回を迎えた。連続テレビドラマを最初から最後まで毎回欠かさず観たことがなかった。『真田丸』は、すべて観た。毎週、連続して観ると、中毒性になる。1週間という間が「次はどうなる。早く知りたい!」症状をこじらせる。久々に子供の頃の漫画週刊誌を毎週待つような感覚を持った。そんな熱中も最終回以降急速に冷めていった。始めあれば、終わりあり。
そんな私をも一度テレビ画面に引き込む番組が12月25日夜9時から放送された。まさにクリスマスプレゼントであった。NHKの『プラネットアースⅡ』である。『真田丸』ロスの状態にあった私は、息を吹き返した。
第一回の放送は、「高山」「砂漠」「熱帯の森」が舞台だった。「高山」は私が3年間暮らしたネパールのヒマラヤの「ユキヒョウ」の生態が画面に映し出された。4Kカメラで撮影された今回の映像の美しさに圧倒された。我が家も4Kテレビに替えてあった。やっと4Kテレビの威力を発揮する映像に出会えた。4K映像の素晴らしさ以上に撮影した英国BBCやNHKのスタッフのプロ意識の高さに脱帽した。ユキヒョウの撮影に4年の歳月と40箇所の定点カメラを配置して約10分の放送にまとめた。場所はヒマラヤである。高山病、低酸素、など劣悪な環境である。ただテレビの前で口を開けて観ている自分が情けなくなった。いったい撮影スタッフに労働基準法などという概念があるのだろうか。
そして「砂漠」の編に入る。アフリカのナミビア砂漠である。 私はアフリカのセネガルに住んだ時、生まれて初めて砂漠を自分の目で見た。1953年私がまだ小学生だった時、小学校の学年ごとに市内の映画館へ『砂漠は生きている』というウォルト・ディズニーのドキュメンタリー映画を観に行った。あの時地球に砂漠という場所があることを知った。4つの季節が規則正しくめぐる水の国、日本に生まれ育った。広大なセネガルの砂漠を目の前にして、ただ涙が流れた。泣いた理由がわからなかった。砂漠を前に泣くことしかできなかった。
「真田丸」も素晴らしかった。「プラネットアースⅡ 第一集」にも感動した。演劇とドキュメント。比較してもしようがない。虚と実。製作者と視聴者。私にできることは、製作側の人々に感謝することしかない。
12月27日、高校の同窓生N君の家に招かれた。奥さんの手料理、酒、楽しい会話を堪能した。N君が突然「『うさぎ追いし』観ました?」と尋ねた。『うさぎ追いし』は上田高校出身の人工癌研究の第一人者病理学者山極勝三郎の偉業を映画化した題名である。
以前「うさぎ追いし~山極勝三郎物語」製作委員会からサポーター募集の手紙を受け取った。私と妻の名で賛同金一口1万円を数口分送った。募集要項に東京又は上田市で開催されます特別試写会にご招待いたします、と書いてあった。東京在住者との注意書きはなかった。賛同金を送ってから感謝状が届いた。しかしそれ以外何の連絡もなかった。製作委員会に電話してみた。「試写会招待券は東京在住者のみです」とそっけなく言われた。募集のお知らせにそうは書いてなかった。「真田丸」も「プラネットアースⅡ」もNHKの受信料が製作の原資のはずだ。だからこそ受信料を払った視聴者はその出来が良ければ我がことのように喜べる。「うさぎ追いし」も多くのサポーターによって完成したのだろう。サポーターから除外されたような気持ちでさみしいものだ。