団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

♪車を売るなら~♪

2023年07月28日 | Weblog

  テレビから頻繁に流れる「♪車を売るなら~♪」の宣伝歌。ある時期からまったく聞かれなくなった。ニュースでその会社が保険金不正請求していたらしいと知った。

 テレビやラジオの宣伝を観察すると、何となく世の中の様子をうかがい知れるような気がする。

 今でもラジオでは、ほとんどの番組の広告主が、過払い金とB型肝炎と相続税関係のものである。テレビでは、サプリメントの世田谷食品と通販のジャパネットが相変わらずどこの局でも放映回数がダントツに多い。広告宣伝が悪いと言っているのではない。企業が利益をあげるために、広告も必要であろう。私の経験から言えば、広告宣伝は、企業にとって売り上げを伸ばす良薬でもあり、一方企業を破滅に追い込む毒でもある。下手をすると広告宣伝費を支払うために、自転車操業に陥ってしまう。広告宣伝を注意してみていると、浮き沈みがわかる。

 私の好きな番組に毎週土曜日午後6時から放送のTBS『世界遺産』がある。以前、スポンサーはソニーだった。一時期ソニーの業績が芳しくなくなった時、スポンサーがソニーからキャノンに変わった。ソニーのコマーシャルは、洗練され斬新だった。ところがキャノンに変わるとコマーシャルは、同じものを何年も使っている。地味だ。企業の体質や風土が出る。ソニーやキャノンのような大企業でさえ、広告宣伝費で苦心している。司法書士事務所やサプリメントの通販会社が、今のように過剰な広告宣伝をしていると、どのように広告宣伝費を捻出しているのか、他人事でも気になる。

 立身出世は、多くの人々の願いである。私もそうだった時期があった。口コミだけで運営が成り立ったはずなのに、塾を大きくしようと、宣伝広告に打って出た。英会話の外国人講師や英語以外の教科の教師も大勢雇った。結果は、広告宣伝費と人件費のために運営を続けるという悪循環に陥った。なかなかその状態から抜け出せなかった。大きな犠牲を払って、やっと決心した。塾を私ひとりで教えるように変えた。広告宣伝費で積みあがっていた借金も数年で完済できた。

 馬力があって、走っている台数も少ない高級車を持ちたいという見栄と同じで、自分の会社や事業を大きくしたい願望がある。地味で地道な生き方を嫌ってしまいがちになる。失敗を繰り返して、やっと自分の間違いに気づく。私も40歳を超えて、人生をやり直した。妻の支えがあったからこそである。

 「♪車を売るなら~♪」の会社の社長の記者会見をテレビで観た。まるで戦国時代の木下藤吉郎のような人だと思った。山口県の小さな自動車販売会社を大企業にまでした成功した人物である。事業には成功しただろうけれど、社長自身を含めて人に失敗したと思う。特に後継者としての息子。今、人の上に立つ者の息子たちに問題が多い。日本の岸田首相、アメリカバイデン大統領の息子など。武田信玄は、人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なりと言った。上に立つ人間には、武田信玄なみの人間力が必要だ。

 会社の経営どころか、人の上に立つこともできなかった私である。しかし私は妻に救われた。妻のお陰で人間としての敗者復活を成し遂げたと信じている。今思うのは、妻は城 妻は石垣 妻は堀。 


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若い命と水難事故

2023年07月26日 | Weblog

   7月21日、福岡県宮若市で小学6年生の女子児童3人が、川で遊んでいて溺れ、亡くなった。

  水難事故があるたびに、私は、自分も死んでいたであろう2つのことを思い出す。ひとつは、私がまだ小学校に上がる前だった。私は、自分でこのことの記憶がまったくない。親から聞いた話だ。近所を流れる矢出澤川の脇に農業用水があった。田植えの季節が来ると、用水に、矢出澤川から取水した水が、満々と流れる。ある日、私は、その用水に子猫が流されているのを見つけた。当時、猫でも犬でも生まれた子を川に流すのが当たり前のように行われていた。その子猫を助けようとした私は、川に落ち流された。たまたま用水で水を汲んでいた田中の叔父さんが流されている私を見つけ、救い上げてくれた。私は、子猫をしっかり抱いていたそうだ。水を飲み、気を失っていたそうだ。田中のおじさんは、私の家の裏に家があった。国鉄を退職して、家の畑で野菜を育てていた。田中さんの家には、用水で水を汲めるように、用水の水面まで降りられる階段があった。田中のおじさんは、用水で水を汲んで、畑の野菜に水をやっていた。偶然田中さんが用水で水を汲んでいた時、私が流れて来た。あの時あそこに田中さんがいなかったら、私は水死していた。

 あとひとつは、カナダのブリティッシュコロンビア州のオカナガン湖で起こった。夏休みに知人家族とキャンピングカーでサクランボを採りに行った時のこと。たくさんサクランボを収穫して、途中のオカナガン湖で泳いでいくことになった。オカナガン湖は、大きな湖で、英国のネス湖の怪獣ネッシーのように、オゴパゴという恐竜がいると言われている。私は、オゴパゴを見つけられるかもしれないと、沖合まで泳いで出た。突然、脚が攣った。湖の水に層があって、急に水温が低くなっている場所がある。そこで私は、脚が攣って、沈み始めた。もうダメかと思った時、私は、近くに居た人に助けられた。近くに人がいなかったら、私は溺れて、オゴパゴに食べられていたかもしれない。

 私は、自分の経験から水に対して恐怖感を持っている。水泳も得意ではない。運動神経は、もともと悪い。勉強もできなかったが、運動もこれというものがなかった。そんな私だが、今年76歳になった。

 日本は、少子化が大きな問題になっている。政府は、特別予算を計上して、あれこれ策を講じているが、効果は出ていない。期待も希望もない。そんな中、今年の夏も、水難事故があちこちで起き、若い命が失われている。少子化の中での若い命が失われることは、悲しい。日本にとって子供や若者は、宝である。

 親や家族が子どもを殺したり、無謀な運転で通学途中の子どもが事故に巻き込まれて命を奪われたりしている。事件や事故の前まで、普通に暮らしていた命が、突然失われる。病気で、治療の甲斐もなく、手をつくした末の死ではない。防ぎようがあった事故事件で、命が失われるのは辛い。

コキロクは、切ない。76年間、喜怒哀楽こもごもの人生。大きな功績も結果も出すことはなかった。普通に生きた。ギリギリに生き延びた。それなのに子どもや若者が、私のようには、生きられなかった。失われた命は、戻らない。無念である。申し訳なく思う。


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ミンミンゼミの夏本番

2023年07月24日 | Weblog

  20日(木)、家の近くでミンミンゼミが鳴き始めた。まるで気象庁の梅雨明け宣言を待っていたかのようだ。

  連日の猛暑、太陽の陽ざしだけが、眩しく地表に差し込んでいた。時々、鶯や鳥のさえずりが聴こえるが、私同様、暑さで元気がない。2重ガラスのせいか、家の中は、灼熱の砂漠のように静まりかえっていた。

  ミンミンゼミが鳴きだす前、ジージーゼミが鳴き始めていたが、こちらは秋の虫の音に似て、ぼやけた感じだった。ミンミンゼミの鳴き声は力強い。2重ガラスもなんのその。陽ざしの中さえ突っ切って私の耳の鼓膜を震わせる。その鳴き声は、オペラのプリマドンナのソプラノみたいに良く通る。

  私は、夏の暑い日に生まれたと聞いている。ミンミンゼミに好意を持つのは、ひょっとして、私が初めて耳にした音だったのかもしれない。

  まるで冬、シンシンと雪が降る深夜のような、夏の猛暑日の音のない世界が、ミンミンゼミによって打ち破られる。(写真:23日朝の散歩で路上にミンミンゼミが落ちていた)これでやっと梅雨が明け、真夏になったと感じる。

  このところスイカの頂き物がかさなった。伊豆の田中山のスイカ、奈良県の大和スイカ。別々に友人が届けてくれた。冷えたスイカは美味い。熱中症対策で水分を多く摂るように言われている。ジュースや甘い飲料水より、スイカなどの水分が多い果物で水分補給するのが好き。

  私の76歳の誕生日に、長男家族からの誕生日プレゼントの中に、冷凍庫で冷やして、首に巻く小物が入っていた。さっそく使ってみた。20分冷凍庫に入れ、約1時間使える。タオルで包んでそれを首に巻く。

  窓の外の目を細めたくなる照り返し。エアコンの“ドライ”に設定した気持ち良い涼しい風。ミンミンゼミの勢いある鳴き声。

  3年間コロナで家に閉ざされた。5類解除で、コロナから解放されたと思ったが、つい最近、友人夫妻がコロナ感染した。ワクチン接種をしていたが、感染した。世間では、多くの人々が、マスクを着用せずに、出歩いている。海外からの旅行客も、コロナ前に戻る勢いで増加している。猛暑が来た。ますます家を出るのが、億劫になる。早朝、早々と散歩して歩数を確保する。

  コロナにもまだ用心の鍵を解いていない。猛暑にも警戒している。家の中で、エアコンを使って過ごしている。朝のアメリカ大リーグ中継、夕方の大相撲名古屋場所の中継。そして今週から、ラグビー、バレーボール、バスケットボール、なでしこ女子サッカーのワールドカップ。くだらないお笑い芸人たちの内輪話に終始する局番組を観なくて済む。ワクワク、ドキドキが日替わりで楽しめる。コキロク(古稀+6歳)は、若者たちが、スポーツで躍動する姿を、眩しく眺めて喜んでいる。

  2台あるエアコンの1台のエアコンの水漏れがひどい。トイレの便器の床との接地面から水漏れがある。修理依頼に返答もない。修理や新しいエアコン設置以来が多く、修理会社がいつ見に来てくれるかわからないという。それでも他の1台エアコンがフル運転してくれている。ただただもう1台のエアコンが壊れないことを願う。

 コキロクの夏、ミンミンゼミが力一杯鳴く。そんな真夏、私は一歩前進2歩後退の生活をしている。

  


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生ハム

2023年07月20日 | Weblog

  現在日本では、イタリア産の生ハムを入手できない。2020年1月から禁輸措置が取られている。これは、イタリアやヨーロッパでアフリカ豚熱が流行っているからである。スペイン産の生ハムは、禁輸対象になっていない。スペインは、アフリカ豚熱に関して清浄国とされているからだという。私は、イタリアのサンダニエル産の生ハムが好き。成城石井で買えるので重宝していた。

 ネットで興味深い記事を見つけた。ニューズウイーク日本版7月15日版『金正恩の「謎に包まれた食習慣」が料理人に暴露される・英報道』「……イタリアのパルマ地方で作られるプロシュートの一種であるパルマハムを大食いするのが好きである……。」

 えッ、北朝鮮でイタリア産の生ハム禁輸されていないの。調べてみると、イタリア産の生ハムを禁輸しているのは、日本と香港だけだという。北朝鮮の、あのお方なら禁輸だろうが、何だろうが、欲しいものは手に入れられるであろう。

 あのお方が、パルマの生ハムをどう食べているのか興味がある。私は、メロンはもちろん、スイカ、柿、イチジクと食べるのが好き。特に黒イチジクが一番生ハムと相性がいいと思う。最近、キングというイチジクを初めて生ハムと食べてみた。これもいける。すでにシーズンが終わってしまった。来年のお楽しみである。通販サイト『産直アウル』の香川県三豊市のai-sai自然園から 6個入り2290円(税込み 送料込み)で購入できる。ここは9月から黒イチジクも3950円(税込み 送料込み)で買うことができる。

 イタリアで生ハムは、プロシュートと呼ばれる。スペインでは、ハモン・セラーノ。私は、イタリアのプロシュートが好き。日本でも最近スーパーなどで「生ハム」が売られている。しかしあれは生ハムでなくて、ハムの一種になる。製造法がまったく違う。日本の一般的な生ハムは、低温で調味液に7日間以上漬けたものである。1,2週間で製品化できる。一方イタリアやスペインの生ハムは、1,2年かけて作られる。全く違うものだ。

 しかし日本のあちこちで本格的な生ハムを製造する企業や個人が増えてきたという。喜ばしいことである。日本には、優れた醸造技術がある。生ハムを熟成させるために、醤油麹などの麹菌を活用して独特の風味を生み出している企業もあるそうだ。生ハム製造には、良質の豚肉もいる。豚の品種改良も進んでいている。日本の生ハムもそのうちに世界で評価される時代が来ることを期待したい。

 私が初めて生ハムに出会った時、“生”という言葉が、とても気になった。豚肉は、よく火を通して食べなさいと言われていた。豚を生で食べる。いくら魚の刺身を食べる文化の国で育った私でも、豚肉を生で食べられない。名前が良くない。生というより漬けてから熟成させた豚肉である。良い名前を考えて欲しい。

 イタリアから生ハムが再輸入されるまで、まだまだ時間がかかりそうである。私は、すでに海外旅行を諦めた。でもイタリアへ行けば、生ハムを食べられる。最後の海外旅行に、イタリアへ行こうかと思い始めている。イタリアのサンダニエル村に行って、大皿に隙間なく並べられた黒イチジクの上に薄く薄くスライスされた生ハム。イチジクと生ハムをほおばり、冷えた白ワインを含む。もう一度あの至福を感じたい。


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ナッツ類

2023年07月18日 | Weblog

  テレビの宣伝で一番多いのは、サプリメントではないだろうか?ラジオでは、過払い金やB型肝炎や相続税の宣伝が多い。なぜなのか興味深い。つまり宣伝すればするほど売れる、申込者が増えるから宣伝をするのだろう。

 私は、サプリメントに頼るより、必要なビタミンやミネラルなどは、食品から摂取するよう心掛けている。テレビのサプリメントの宣伝を観ていて、隣の妻が、ボソッと「そんなことあるわけないでしょう」とか「うそでしょう」と言う。家で妻が医者風を吹かすことはまずない。しかし宣伝を観て、医者として聞き捨てならないことを言うので、黙っていられないのだろう。

  調べてみると宣伝をする会社の多くは、自社生産でなく、ほとんどがOEM(委託生産)なのだ。つまり原料の生産元が、みな一緒という可能性がある。商品名を変え、同じようなサプリメントを販売していることになる。新興宗教団体が俳優や歌手のだれだれが信者だと、有名人を客寄せパンダにするように、有名人とやらを宣伝に使う手口も多くみられる。

  病院で処方される薬の中にも、劇的に効果てきめんなものもある一方、効いているのかいないのか分からないものもある。ましてや栄養補助食品であるサプリメントが、劇的に短期間で効果が表れるとは、信じがたい。

  私は、糖尿病である。長い時間をかけて、生活習慣を通して発病した。食生活や遺伝的な要因もあった。糖尿病と分かってすぐ、糖尿病教育入院という2週間のコースに参加した。糖尿病を抱えて生きてゆく上で、良い訓練と知識を持つことができた。毎日、同病相憐れむ同室の患者達と、病院の周りを3万歩歩いたり、温泉プールで1時間以上泳いだりと運動療法も実践できた。病院食で食事療法の計算の仕方も習った。2週間後、体重を20キロくらい落として帰宅した。新婚の妻は、玄関に立った私をすぐに彼女の夫だと認識できなかった。

  あれからすでに30年以上が過ぎた。糖尿病の合併症の狭心症で心臓バイパス手術を2001年に受けた。70歳を過ぎて、心臓の冠動脈に3本のステントを入れた。右脚の下肢の狭窄にも腹部の血管にもステントを入れた。体は、まるでサイボーグのようになっている。すでに、テレビの宣伝でうたわれるサプリメントの効果では間に合わない状況にいる。糖尿病の教育入院で学んだからと言って、糖尿病が軽くなった訳ではない。いろいろな療法や生活習慣を経て、今の結果がある。

  毎日、私はナッツを摂る。朝、書斎にコーヒーと炭酸水とナッツ類とプラムとビーツ各1個を入れた小さなガラスの器を持ち込む。ナッツは、ピーナッツ6個、カシューナッツ2個、マカデミアンナッツ2個、クルミ(ウォルナッツ)2かけ、アーモンド2個、プスタチオ7個である。これを大きな容器の中から、探しだす。探すのも数えるのも、何か脳に刺激を与えている気がする。ナッツ類は、カロリーが高いので、多くは食べられない。でも栄養価があるらしいので摂っている。

  ナッツを口に入れ、コーヒーを飲み、炭酸水を飲んで、パソコンで調べ物をしたり、ChatGPTとやり取りしている。外の猛暑から隔離された静かな生活をおくる。


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昆虫採取の虫篭

2023年07月14日 | Weblog

  散歩していると、あちこちで昆虫を見る。生きているのも死んでいるのもいる。特に街灯の周りに多い。昆虫の多くは、光に集まる習性がある。街灯は、光を発しているが、自然界に存在しない人工的な光である。その光は、昆虫に方向を示すものでも、餌を得る手助けにもならないし、ましてや繁殖のための異性に出会う場所でもない。

 私は、街灯の付近を綿密に見回す。時々、タマムシが落ちているからである。私は、タマムシの美しさにぞっこんである。この世でもっとも美しいと思っている。

 妻にタマムシの話をした。妻は、教科書で正倉院の玉虫厨子の写真を見たという。私の記憶に玉虫厨子の写真はない。正倉院と螺旋の枇杷を教科書で見た気がする。

 それはどうでもいい。問題は、タマムシの美しさだ。昔にもタマムシの美しさに心を奪われた人が多くいたことである。そのタマムシを使って正倉院に保管されるような美術品を作ったということが私を感動させる。

 幼い頃、昆虫採取に夢中だった。今考えれば、残虐な行為である。ただトンボを何匹捕った。他の誰も捕れなかったオニヤンマを捕まえた。蝶も珍しいものに価値があった。一種の捕獲競争だったのだ。学術的な意味もなく、ただ太古の昔から私たちの中にある狩猟本能が出て来ただけかもしれない。養老孟司さんのように特定の種類の昆虫を集めて標本にすることもなかった。ただ捕って、いつしか忘れて引き出しやポケットの中で干からびさせた。夏休みの自由研究で、昆虫採取と言って、いろいろ捕ったが、休み明けにきちんと研究の結果など出した覚えもない。昆虫に申し訳なく今は思う。

 数日前、散歩途中、路上で弱っているオスの立派なカブトムシを見つけた。最初、小学校時代に戻ったように「スゲェ カブトムシだ」と即捕まえようとする自分と、「捕まえてどうする?どうせ、すぐ死んでほったらかしにするんだろう」の自分がせめぎ合った。75年の年季がモノ言う。「弱っているなら、家に持ち帰って、何か餌を与えて元気になったら放してやろう。だめだったら葬ってあげよう」

 家に連れ戻った。適当なカブトムシを入れておく籠のような物を探した。ない。日中、買い物に出たついでに虫かごを探した。270円+消費税で297円。さっそくカブトムシを入れた。カブトムシの餌も売っていたが、買わなかった。私に考えがあった。きっとカブトムシは、樹液を餌にしているのだから、メープルシロップなら餌になるに違いない。

 カブトムシは、小さな籠の中でぐったりしていた。カブトムシだけではない。私だってこのところの猛暑でグロッキー気味。寝る前に籠の中にカナダのメープルシロップを容器に入れて籠の中に置いた。

 いつものように4時に起きた。すぐ籠の中のカブトムシを見た。なんと、羽を広げてブーンという音を発していた。元気そう。昨日とは、明らかに違う。思った「放すなら今」。ベランダ側の戸を開け、カブトムシが入った籠の蓋を外して、床に置いた。本当に元気を取り戻したなら、自分で出てゆくだろう。戸を閉めた。

 散歩から戻って虫かごを見た。空っぽだった。


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暑さ対策

2023年07月12日 | Weblog

確か今年の夏の気候の予報は、それほど暑くならないというものだった。ところが7月に入ると猛暑日の連続。九州や中国地方では、線状降水帯による大雨。なかなか希望するような気候にはなってくれない。

 夏の暑い最中に生まれた私は、子供の頃から夏には強かった。でも歳のせいか、このところの暑さには、参っている。

妻の父親は、夏に弱かった。夏になると食欲が落ち、そうでなくても骨皮筋衛門だったのに更にやせ細った。ステテコにランニングシャツで手にウチワ。そんな姿を見て、私は夏に強くて良かったと思った。でも古稀を過ぎた頃から、妻の父親に負けないくらい夏に弱くなった。日中、とにかく何もする気が起こらない。食いしん坊で食欲だけはいつも旺盛なのに、一人で食べる昼食は、だんだん冷たいのど越しの良いものになってきた。

日課の散歩は、朝5時に家を出て、とりあえず2千歩をかせいでおく。川のほとりを歩く。花、昆虫、鳥の写真を撮ろうとカメラを持って行く。シャッターチャンスは、そうは訪れるものではない。だいたいカメラを向けた時点で、被写体は、どこかに行ってしまう。それでも今朝は、立派なカブトムシを撮った。今年初めてセミの脱皮した殻も撮った。蜂が朝顔の蜜を吸っているところも撮れた。

日中は、ほとんど書斎を締め切って、エアコンをつけて涼んでいる。今住む集合住宅を買った頃は、南と北側の窓を開けておけば、エアコンは、必要なかった。すでに20年前の話である。今は、エアコンなしでは、過ごせない。入居当時に装備されていたエアコンは、出力が小さくほとんど役に立たなかった。夏の暑さが尋常でなくなってきて、とうとうダイキンの高性能なエアコンを7,8年前に設置した。消費電力が少なくて、冷暖房能力は強いので助かっている。床暖房は、最初から設置されていたが、あまりの消費電力の多さに驚きまったく使っていない。ダイキンのエアコンで冷暖房は、じゅうぶん機能している。

 エアコンを使って涼しい部屋にいれば、窓の外のギンギンギラギラな光線から身を守れる。でも今の状態に弱点を見つけた。私は、服用している糖尿病の薬のせいで、頻繁にトイレに行く。糖を薬で外に排出するためである。書斎がどんなに快適な温度であっても、トイレは違う。入った途端に汗が出ることもある。窓もない密室。エアコンなどない。よく老人が寒い浴室に入ってヒートショックで倒れるという。私も浴室にTOTOの暖房器を設置した。でもまさかトイレの中の心配は、していなかった。冬の浴室でヒートショックが起こるなら、夏のトイレでヒートショックを起こすことも有りうる。何か策を考えなければ。

 そうこう言いながら、暑い夏でも夢中になって楽しめることがある。大相撲名古屋場所とアメリカ大リーグのエンジェルス大谷翔平選手が登場するテレビ観戦だ。自分自身の老化弱体化を知ればこそ、はちきれんばかりの若さで活躍する力士や選手を見て、人生を肯定的にみることができるようになる。嬉しいことだ。

 夏の暑さに加えて、テレビのニュースには、更に暑苦しさを助長する面々が出る。でも私は、できるだけ朝の散歩途中に出会う花、昆虫、鳥に、ぶつかる力士、打って投げ走る選手を見るようにしている。


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サクラマス

2023年07月10日 | Weblog

  北海道斜里町の『知床工房』から「サクラマス生半身真空パック」を買った。

 説明書が同封されていた。「さくらますは鮭科の中で紅鮭と並ぶ双璧の美味しさです。氷明けの知床で一番先に獲れる鮭鱒科の魚で地元知床斜里町民が最も好き好んで食べる魚種のひとつです。そのさくらますの原料そのものを厳選し2㎏以上の特大の脂ののったものを使用して作成しております。さくらますは鮭科のなかでも捕食活動が活発で獰猛な魚種、その分だけ内蔵の持つ消化酵素が他の魚と比べると強い。また身質も繊細で脂がのっております。……◎美味しい召し上がり方 刺身 背骨やハラスの骨は取り除いておりませんが、刺し身鮮度であります。まずは半解凍(ルイベ)や軽く漬刺身としてお召し上がりいただくと素材の味が楽しめます。焼き物、揚げ物にも最適で適当な大きさに切って、塩や漬け味噌にして一晩浸透させたあと、クッキングシートを敷いて、焼いてお召し上がりください。きのこ等と合わせてオリーブオイルを敷いてホイル包み焼きもおつな食べものとして楽しめます。(原文のまま)」

 私は、ロシアのサハリンでサクラマスを釣った。釣ったサクラマスをリンさんがすぐ調理してくれた。小麦粉を付けて、油で揚げただけだったが、旨かった。サクラマスがあれほど美味い魚とは知らなかった。リンさんの説明によると、サクラマスは、ヤマメで海に下って、海で成長すると名前がサクラマスになる。そのまま川に残っているのがヤマメだそうだ。不思議な魚だと思った。

 『知床工房』で買ったサクラマスは、マリネにして食べることにした。私が好むマリネは、ゲランドの塩150g普通の精製塩150gグラニュー糖100g黒コショウ20gねずの実(砕いた物)15gディル16枝レモンの皮(細かく刻む)1個分を混ぜたもの。よく材料を混ぜ、アルミ箔にマリナード(マリネを作るための漬け材)を拡げる。その上にサクラマスを置く。サクラマスの上にもまんべんなくマリナードを被せる。アルミ箔に包んで、冷蔵庫に12時間以上保管する。

 友人3人を招いて私たちと5人で土曜日にランチを楽しんだ。私たち以外の3人は、コロナに感染してずいぶん体力を失っている。私の料理で少しでも体力を回復してもらえたらと招待した。生ハムとフルーツ(アンズ、スイカ、メロン、イチジク)。トマトとセロリの冷スープ。サクラマスのマリネ マンゴ、タマネギ、青唐辛子添え。ローストビーフ。バナナのオートミールケーキアイスクリーム添え。

 友人たちは、とても喜んでくれた。私は、自画自賛であるが、サクラマスのマリネが一番よく出来たと思った。友人もサクラマスの美味さを知ってくれた。サクラマスの生の半身を買うのは、難しい。今は、こうして宅急便の普及でどこからでも短時間で食材が入手できる。サハリンでのサクラマスを釣って食べた経験を、友人にもおすそ分けできた。遠い過去に経験したサハリンでの思い出が、サクラマスで戻った。

 コロナで3年以上も行き来できずにいた。その間に友人は皆コロナに感染した。心配で心を痛めた。元気になってまた食卓を囲み、飲み食べ話した。普通の生活が一番。どうかもう少し長く友人たちとワイワイと集まって楽しめますように。


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水なす

2023年07月06日 | Weblog

  大阪の友人が、今年も「泉州特産 水なす漬」を送ってくれた。こうして毎年その時期が来ると、届く贈り物は、嬉しい限りである。期待してはいけないと思いつつ、内心で待っている自分が恥ずかしい。

 水なすは、信州生まれの私にとって、何とも不思議な野菜である。水なす漬に同封されていた栞に「水なすは、“だんじり祭り”で知られる岸和田市周辺(泉州地方:大阪府南部)の気候,土壌、慣習等に適するように、室町時代から選抜育種して育まれた地方品種で、他の地方では良質な果実が栽培できない“泉州の特産野菜です。水なすの美味しさは、茄子とは思えないほどの、皮と肉質の軟らかさ、水分と甘みの多さに形容されます。特に、水分の多さは『農作業中に喉が渇いたら、茄子を手で絞って喉を潤していたので“水なす”と名付けられた』と伝えられるほどです。」(株式会社久吾商店 栞 原文)と書いてある。

  私が不思議だと思ったのは、水なすの皮が軟らかいこと。水なすを、どこから見ても普通のナスにしか見えない。綺麗な茄子紺色。ナスの色は、本来白い。なぜか今では、ナスといえば日本では茄子紺になっている。私の中では、ナスの皮は固いが定着していた。それとナスがみずみずしいこと。手でナスを絞るとポタポタとナスから水が出る。信州でナスを絞ったことはない。でも普通ナスを絞ろうとも思わないだろう。あまりにも私が持っていたナスのイメージと違う“水なす”が好きになった。

  信州にも“丸ナス”という美味しいナスがある。皮は厚く、硬い。水なすのように、水分は低め。このナスは、丸い。信州以外でこの丸ナスを見つけるのは難しい。私が住む町のスーパーでも売られていない。子供の頃の丸ナスの思い出は、天ぷらだ。輪切りにした丸ナスの天ぷら。私は、ジャガイモの天ぷらの次に好きだった。丸ナスを“油味噌”という油で炒めた丸ナスに甘い味噌で味付けた具を入れたオヤキも美味い。(上田市の『やまざきや』のナスと野沢菜のオヤキは旨い:ホームページ[やまざきや]で検索) 思い込みかも知れないが、丸ナス以外のナスの天ぷらやオヤキは、物足りない。

  私が住むところでは、丸ナスを手に入れられない。スーパーで売られているナスは、細長いものだ。私は、そのナスを買ってきて、切れ目を入れてオーブンでしっかり焼く。皮をむいて、それをタッパーに入れ、冷蔵庫に保管しておく。こうしておくと味噌汁、ナス麻婆とすぐに使うことができる。子供の頃、蒸かしナスが嫌いだった。貧乏の象徴に思っていた。でも今は、蒸かしナスを和からしと醤油で食べると笑みがこぼれる。

  その土地、土地に古くから伝わる食べ物がある。今では、それらが発達した運送システムのお陰で、短時間で届けられる。運送中でも冷凍、冷蔵保管される。だから離れていても、新鮮のまま配達してもらえる。こんな凄い時代が、日本の過去にあっただろうか。

  美味しい物を食べていると、嫌な事を忘れられる。最近の事件は、残虐で猟奇的なものが多い。滅入った気持ちを癒してくれるのは、美味しい食べ物だ。全国各地の友人たちが気遣って現地の特産品を、旬になると送ってくれる。送られた食品を頂き、友人たちを想う。生きていて良かったと思える瞬間である。


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干からび

2023年07月04日 | Weblog

人間の体重にうち約60%が水だと言われている。厳密にいうと水分量は、年齢によって異なる。新生児が75%。4~5歳児で70%。成人女性が50%。成人男性が60%。老人が50%。今朝の私の体重は、64.3キロだった。今の体重計は、体重ばかりでなく、体脂肪、筋肉量、水分量、体内年齢、基礎代謝量などが計測できる。どれほど正確なのかは、分からないが、数値が表示されるので、自分の健康状態を知る目安にはなっている。私は75歳。水分量は、50%として32.15キロである。

 昔から年寄りを「梅干し…」とか「しわくちゃ…」と呼ぶことがある。要するに歳をとるとだんだん干からびてくるのである。私もご多分に漏れず、しっかり水分が抜けてきている。首のまわり、二の腕、太もも内側、臀部、特に足の裏側と着実にじわじわと干からびが占領し始めている。

 このところ夏日と呼ばれる高温の日が続いている。医者からもテレビやラジオでも水分を補充するように言われる。気をつけていて、水分を摂るようにしているつもりだ。毎朝、妻がお茶を淹れ、容器を冷蔵庫に入れておいてくれる。ありがたいことだ。暑くなる以前、妻が帰宅するまでに500cc2本を飲み切るのは、とてもできない量だった。ところがこのところの猛暑で、何ということか、軽く2本を飲み切ってしまう。

 干からびが進行している私は、汗をあまりかかない。動かないこともあるが、汗が流れて困るということはない。日本は高温多湿の地帯だと言われている。確かにアフリカのセネガルにいた時、気温は40℃を越えても、日陰にいれば、心地よかった。とにかく空気が乾燥していた。ただ困っているのは、寝汗だ。特に首に回り。そこで20数年前に長野日赤病院に心臓バイパス手術で入院していた時、看護師から教えてもらった方法をいまだに使っている。

 タオルを2枚端と端を縫い合わせて、1枚の長いマフラーのようにする。それを寝る時、首の周りにかけて寝る。首に巻くと寝ている間に、首を絞めてしまわないようにただ垂らしておく。これで首のまわりの寝汗の問題を防げた。

 歳をとるにつれて、干からびてくるのは仕方がない。でもなぜ歳をとると、こうも涙もろくなるのだろうか。テレビで悲しいニュース、特に親による子殺しや幼い子どもたちが事故に巻きもまれて犠牲になるなどのニュースを見れば、涙があふれ出る。妻と映画を観ていても、それぞれが違うシーンで泣くこともあるが、同じ場面でティッシュを取り合うこともある。

 あと鼻水とヨダレも困ったものである。風邪をひいていなくて、鼻炎でもないのに、鼻水が出る。ヨダレは、入れ歯を入れるために、上の前歯4本抜いたせいだと思うが、注意を怠ると口からこぼれてしまう。汁ものには、苦労する。ティッシュが手放せない。若い頃、夢でステーキや鮨を食べる夢で枕にヨダレを垂らしたことがある。今は、いつなんどきでもヨダレを垂らす状態にある。トイレの回数も増えた。服用している糖尿病の薬の影響もあるが、干からびた体内から貴重な水分が抜けてしまうようで不安に感じる。

 老化は進行する。体に変化がここにもあそこにも出てきている。梅干し…しわくちゃ…と言っても言い過ぎではないほど、体が乾いて来ても、気持ちは、いつもみずみずしく保ちたいものだ。


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