団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

帰宅困難者

2024年09月02日 | Weblog

  先週1週間は、猛暑の閉じこもりから、台風10号の影響による豪雨の予報に翻弄された。台風は遠く九州にまだ上陸していないのに、ほぼ日本列島全域に雨を降らさせていた。遠い台風と住む町の豪雨の関係がしっくり受け止められなかった。予報が現実となり、8月28日水曜日、雨の影響で新幹線が動いたり止まったりしていたので、妻は在来線で帰宅した。ほぼいつも通りの時間に帰宅出来た。翌木曜日、仕事を終えて、定時に病院を出て東京駅に行った。28日と同じ在来線で帰宅すれば、問題はなかった。妻は、新幹線に乗り込んで発車を待った。しかし1時間待っても2時間待っても新幹線は運転再開されなかった。私にメールしてきた。「在来線で帰った方が良い?」 私は「在来線で帰ってきて」と返信した。妻から在来線に乗ったとメールが来たのが6時22分。普段ならすでに帰宅している時間だ。妻はまだ東京駅。いったい何時なったら帰宅できるのやら。

 私は、2011年3月の東日本大震災の日の事を思い出した。妻は多くの人々と同じく帰宅する手段がなかった。病院に留まって一夜を過ごした。翌日、何度も乗り換えて帰宅した。お互いの無事を喜んだ。妻が言った。「今度同じようなことがあったらどんな手段を使っても帰宅する。歩いてでも帰って来る。どうせ死ぬなら貴方と一緒に死ぬ」

 おそらく妻は、あの東日本大震災の時の事を思い出したに違いない。28日結局妻が帰宅したのは、職場を出てから5時間後の午後9時ちょっと前だった。私は常日頃待つのが私の仕事だと言っている。そうは言っても日常の生活は、ほぼ時間正確に同じことを繰り返している。体は、しっかりその時間を覚え込んでいる。それが狂うとストレスになる。

  まだ日本がまともな国だった頃、日本の鉄道は、その発車・運行・到着時間の正確さが世界に知られていた。それに慣らされ知ってしまった国民は、時間正確に鉄道は運行されるものだと思い込んでしまっている。もうそんなことはない。JRを始め鉄道会社は、信じられない事故事件の連発である。8月22日未明、保守点検作業中の作業車が衝突した。電柱が燃えたり、発火事故もあった。人間だから間違いを犯して当たり前ではない。一度に大勢の人を運ぶ鉄道や交通機関は、間違いは多くの犠牲をうむ。交通機関の安全は、重要性が高く、優先的に行うべきことである。鉄道関係者が手を抜いているとは思いたくない。しかし何か歯車がうまく回っていない気がしてならない。

  新幹線の運行が乱れ、ニュースで外国人旅行者が途方にくれている様子が流れる。日本政府は、2035年までに外国人観光客を7000万人を超えると予想しているという。2024年の予想訪日外国人旅行者は、2000万人を超す。今でさえ新幹線が止まっても、それで足止めされた観光客をほったらかしにしてしまう国が、7000万人もの観光客が押し寄せてきたらどう対応するのか疑問である。JRはみな不動産を多く持っている。ホテルも多く経営している。切符を売るなら、売った切符の後始末を考えておくべきである。駅構内もしくは近場に臨時避難的宿泊所などを設けることも一案である。災害時にもそれを避難所として使えればいい。多くの日本人が帰宅困難者になっている時、海外からの旅行者は日本でホームレス状態になっていることを私たちは、見て見ぬふりをするわけにはいかない。

 海外から旅行者を呼ぶのはかまわない。呼ぶなら日本で何か事故や災害が起こった時、対処できる施策は必要である。それが観光立国としての務めである。自民党総裁選でも立憲民主党の代表選でも、候補者の中に2035年の日本を見通しているような候補者が見当たらない。残念である。


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