① 旧ユーゴスラビア
② タイ
③ 台湾
① アメリカ大リーグのワールドシリーズでロスアンジェルス・ドジャース対ヒューストン・アストロズの第三戦をテレビで観た。ホームランを打ったアストロズのグリエル内野手は、ベンチに戻り、指で両目尻を引っ張りスペイン語で「Chinito」(チニート)と発した。日本からやって来てプレーするダルビッシュ有投手に対する差別行為であることは明白である。このすべてがテレビカメラはとらえていた。アメリカでは白人至上主義が勢いを吹き返してきている。アメフトの黒人選手の一部が国歌演奏の時、この人種差別に抗議する目的で、起立せず膝まずきアメリカの大きな問題になっているさなかでの出来事だった。グリエルは「誰も傷つけるつもりはなかった。日本でプレーしていたし、日本人には多大な敬意を持っている」と釈明した。これは嘘である。人間は、酒に酔った時、勝利に酔った時は、本音が出る。グリエル選手もダルビッシュ投手からホームランを打ち、得意慢心になり本音が出てしまったのだろう。だから言い訳は、見苦しい。悲しいことにグリエル選手は、キューバ人である。定かではないが、スペイン系ならアメリカでは、人種的にはヒスパニックである。ヒスパニックがアメリカでどれほど差別されているかは承知の事実である。キューバでは黒人との混血も多いので黒人の血が入っているかもしれない。ダルビッシュ投手だって父親はイラン人で母親は日本人である。子供の頃はだいぶ差別を受けたと聞いている。アメリカの人種優劣ランクではWASP(白人でアングロサクソン系でプロテスタント)が一番だとWASPは唱える。加えてグリエル選手は、かつて日本のDeNAでプレーしたことがある。つまり日本で住んだことがある選手なのだ。収入だって年何十億も稼げるスポーツ選手である。それでも差別は、人間に蜜の味を与える。私もカナダ留学時代数えきれないくらい「ジャップ」と言われ、両手の指で目じりを上げられた経験を持つ。ダルビッシュ投手は会見で「完全な人間はいない。彼の一つのミス。これによって、またいろんな人が学べる。」とツイートした。良い答えだ。私もそう思う。差別心は誰にでもある。もちろん私にもある。それを覆い隠すのが教養と品格かもしれない。私は差別心は、優越感劣等感の発露と思うと同時に。動物の縄張り意識に由来するとも感じることがある。それはさておき、ダルビッシュ投手の好投を期待したが、残念ながら2回グリエル選手のホームランなどの4失点で降板した。
海外で暮らし、また旅行して日本人であることで差別されたことは多々ある。差別や偏見から解き放されて暮らせることは嬉しい。旧ユーゴスラビアのベオグラードは、その点で住みやすかった。社会主義の教育が、そうさせていたのかもしれない。一度だけロマの子にすれ違いざまに「キノ」と言われただけである。セネガル、チュニジアで「シノワ」と数えきれないほど言われたのとは、大違いである。石を投げられたり唾を吐きかけられたこともある。
② ネパールに住んだ3年4か月の間、休暇や買い出しの度にタイを頻繁に訪れた。ここでも日本人だからという理由で嫌な思いをしたことがない。
③ 台湾も普通に接してくれる世界で数少ない国である。
差別は絶対になくならない。しかし心の奥深くに教養と品格で包み、隠してしまいこむことはできる。教育の目的は、教養と品格を身に着けることだと私は思う。鎌倉円覚寺に「教養とは、気配り、目配り、手配りである」の教えが掲げられている。