団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

炎天下のパンク

2024年08月13日 | Weblog

 同い年の元大学教授の友人からメールが来た。「講義を受け持つ学校へ炎天下行って来ました。学校は駅から歩いて15,6分のところなのですが、あまりの暑さなので往復タクシーを使いました…。」

 友人のメールをみて、暑さに打ち負かされているのは、私だけではないのだとちょっぴり安堵した。先週の土曜日夕食に近所に住む友人夫妻を招いていた。準備はすでに1週間まえから進めていた。昼過ぎになってレモンを切らしているのに気が付いた。今日の料理にレモンは絶対に必要だった。妻と車でスーパーへレモンを買いに行った。よせばいいのにコーヒーパックや缶入りの生ビールも買ってしまった。スーパーの駐車場に戻ってかなり重い買い物バッグを後部座席に置いた。妻が「あっ、パンクしている」と左側後輪の空気が抜けているのを発見した。とにかく暑い。モノがきちんと考えられないくらい暑かった。パンクと知って、この暑さで機能低下している私の脳の内部は、沸騰した蒸気の霧で満たされ状態だった。これをパニックというのだろう。パニックに陥るのは、久しぶりだった。

 パンクらしいが、幸いまだタイヤの中の空気は、抜けきっていなかった。これなら何とか行きつけのガソリンスタンドまで走行可能だろうと、わずかに脳に残っていた正気が判断した。ガソリンスタンドまで行ければと祈りながら運転した。妻とのいつもの楽しい会話はなく、車内は重苦しい空気でいっぱいになっていた。不気味な静寂があった。車のエアコンの冷気だけが味方の気がした。到着。この暑さの中冷や汗が出た。

 いつもの店員が元気よく「いらっしゃいませ」と声をかけた。その元気さが、暑さとは別の腹立たしさを注ぎこんだ。「パンクしたらしいので見てください」と最高に不機嫌な声で伝えた。店員二人がかりで空気が抜けたタイヤを調べてくれた。「パンクですね。タイヤの横に亀裂が入っていれば、このタイヤ修理できないので交換になります。でも今日土曜日なのでタイヤの会社休みなので火曜日まで入荷できません」 私はなんで月曜日でなくて火曜日なのかと思った。月曜日は山の日で祭日だ。店員私の落ち込みを察して、「一応タイヤ外してみてみます、車置いて行ってください」 車置いていってって、この炎天下歩いて行けという事?終わったら電話してくれるとのことだった。

 その朝4時45分から散歩でこのガソリンスタンドの前を通った。日中の暑さを避けて、わざわざ早起きして散歩している。なのになんでこの午後の一番暑い時に、歩かなければいけないの。私は妻に「お願いだ。タクシーで帰ろう」と言った。友人が15,6分の距離でもタクシーを使ったと言っていたことを思い出して言った。ガソリンスタンドから家までだって15,6分くらいだ。決して恥ずかしいことではない。妻は無言で重い買い物バッグを持って歩き出した。仕方がない。買い物バッグの取手の片方を持った。家に着いた時、二人とも汗びっしょり。すぐシャワーを浴びた。冷たいシャワーが気持ち良かった。

 シャワーを浴びてエアコンの効いた部屋で休んでいると電話が鳴った。ガソリンスタンドからだった。「タイヤにネジくぎが刺さっていました。修理できました。タイヤの脇の亀裂はありませんでした。良かったですね」 私は着替えて再び灼熱の陽ざしの中、ガソリンスタンドへ向かって歩いた。これで今日3回目のいつもの散歩コースを歩くことになった。悔しい。惨め。

 修理代2300円を払って、エアコンが効いた車で楽々今日3周したことになる散歩コースを横目に帰宅した。妻が今時タイヤに釘が刺さってパンクだなんて宝くじに当たったようなモノよ、と言った。そう考えれば良いのか。ものは考えようだ。明るく受け止めよう。

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