団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

脱衣所に英国風紳士

2014年12月15日 | Weblog

  集合住宅の共同浴場で熱い風呂に入った。私を含めて7,8名が風呂場にいた。外は風が強く寒い日だった。妻の土曜日出勤もなく午後の明るいうちに入浴できた。冷えた体を温めた。

 脱衣場に戻って着替えようとした。私が服を入れてあったカゴが置いた棚になかった。壁に3段の脱衣カゴを入れる棚が30ある。ほとんどまばらに使用中となっている。最近物忘れが激しいとはいえ、壁の時計の真下という場所をわざわざ選び、忘れないようにした。ない。私のカゴがない。そこには見たこともない服が脱いで入れられていた。私のカゴは、そこから右側に4,5個離れた棚にあった。普通カゴは長方形の短い辺を横にして棚に入っている。多くの人がそのまま入れている。私は辺の短い方を前に縦にして入れる。後で見つけやすくするためである。ところが他のカゴと同じように入れられていた。

 貴重品狙いの窃盗か。私は共同浴場へは貴重品も財布も持ち込まない。下着泥棒。あいにく本日の下着はすでに5,6年は着古したものだ。パンツは盗られていなかった。

 「ナゼ」 私の脱衣カゴは移動されたのか。ミステリーである。このくらいの謎を解けなければミステリーなど書けるはずもない。想像する。

一、普段から私の存在を快く思っていない者の嫌がらせ。

二、カゴを移動させた者は私がカゴを置いたところを自分専用の場所と決めている英国風紳士。

三、カゴが縦になっていたので気分を害して移動させ横に置き直した。

四、奇跡が起こってカゴが勝手に好きな場所に移動した。

五、不審者か猿が侵入、物色後、盗るものがなく腹いせにカゴを移動させた。

 私としては2番だと思っている。世の中には尋常でなく場所にこだわる者がいる。英国の紳士は、通勤する列車に毎日同じ時間に改札を抜け、ホームの同じ場所に立ち、列車の同じ号車の同じ席に座る。その日の新聞を毎日同じページの同じところから読み始める。仕事が終わると同じパブの同じ席で同じ酒を飲み、再び来た時と同じように列車に乗って帰宅するそうだ。紳士が相手の承諾もなく他人の物に手を触れるのか。わからない。

 私はしばらく脱衣場に留まって、真犯人を突き止めようか思った。やめた。脱がれてカゴに入っていた服が何か怪しい色彩だった。コワイ人だったら私のような者はひとたまりもなくやっつけられてしまう。紳士と暴力は似合わないが、場所を維持するために意外な行動に出るや知らず。君子危うきに近寄らず。私のノラリクラリな性格は、物事を突き詰めて解決しようとしない。今回も解決しないままモヤモヤを引きずって自分の部屋に戻った。

 次の日曜日、選挙の投票に出かけた。毎回選挙権を行使するだけの投票である。日本の国自体が私のように優柔不断で毅然とした態度で外交問題にも取り組めないでいる。“いい人”だと思われたくて言いたいことも言わない。教育や躾の影響だろうが、見事な洗脳結果である。今回の選挙で当選した多くの人が私の脱衣カゴを動かした犯人と同じように思える。自分のすでに獲得した議員としての特権や居場所を絶対に誰にも渡したくないと死守する。自分の子にしか場所は譲らない。他の誰にも場所を取らせない、触れさせない。政治屋は家業に成り果てたか。

 私の妄想病は相当重症のようだ。


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