映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

アウトレイジ 最終章

2017年11月04日 | 邦画(17年)
 『アウトレイジ 最終章』を渋谷TOEIで見てきました。

(1)北野武監督の「アウトレイジ」三部作の最後の作品ということで、本作を見に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭の舞台は済州島。
 軽トラックが海の方へ進んでいきます。
 そして、大友ビートたけし)の腹心の部下の市川大森南朋)が、堤防で釣りをしています。
 大友が「週刊誌を読んだら、タチウオが釣れるのは夜とあったけど」と言うと、市川は「たまに昼間来ることがあります」と応じます。

 次いで、夜の繁華街を大友らの乗る車が走ります。
 そして、停まった車から大友らは降りて、ガールズバーに入っていきます。
 そこに、携帯で「すぐ来てくれ」との連絡が入り、男が「すぐ行きます」と答えて、大友に「客が、うちの女が気に入らないと騒いでいるようです」と報告します。
 大友は「どこだ?」と言って立ち上がります。

 大友らは、ホテルの部屋に入っていきます。
 女が「変なことするから嫌だって言ったら、殴られた」と言い、そばの男が「うちの親分が怒ってしまい、金は払わないと言っています」と告げます。
 大友は、別室にいる花田ピエール瀧)に向かって、「どうかしましたか?」と尋ねると、花田は「あんな女、面白くない」と答えます。
 それに対し、大友が「うちの女をキズモノにしおって」と怒ると、花田は「おのれら、花菱と喧嘩するのか?」と怒鳴ります。
 すると、市川は「花菱がどうした」と言って、銃を向けます。
 それで花田は、「ここはおとなしくいこう」「現金の持ち合わせがない」「200万円出す」と言います。
 それに対し大友は「女たちの顔を見てから言え」と応じます。
 花田は「必ず円で用意する」と言い、さらに「あんたの名前は?」「日本人だろ?」と尋ねます。
 大友は、「名前なんかどうでもいい」「カネはこいつに払っておけ」と言ってホテルを出ていきます。

 後に残された花田は、「俺に恥をかかせやがって」と、そばにいた男たちを殴り、さらに「俺は、朝一で日本に帰るから、お前ら上手くやっておけ」「あんな奴らに払うわけがない」「ガタガタ言ったら、ぶち殺したれ」と言います。

 次いで、花菱会の本部事務所に、幹部の親分衆が集まってきます。
 若頭の西野西田敏行)が「花田がどうしたんや?」と尋ねると、若頭補佐の中田塩見三省)が「あいつ、急な仕事で韓国へ行った」と答えます。
 それに対し西野は、「ここに来るのが仕事やないか?」と言い、「わしの頭越しに会長の機嫌をとるようなことはするな」「会長には、後から話しておく」と付け加えます。
 西野が、さらに、「今度の会長は、会議ばかり開いて」とこれみよがしに言うと、中田は「兄貴、声が大きい」と制します。

 こんなところが本作の始めの方ですが、さあこれから物語はどのように展開するのでしょうか、………?

 本作では、相変わらず、ピストルや機関銃などがぶっ放され、人が次々と死んでいきます。そうした中で、タケシが扮する主人公の大友が筋を通すとはいえ、関係者を色々と殺した挙句にいったい何が残るのか、殺された者の後釜に同じような者が入り込むだけのことであり、彼を取り巻く状況は何も変わっていないように見え、とても虚しく感じたところです。

(2)クマネズミは、これまで『アウトレイジ』(2010年)と『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)を見ていて、本作は、それらを締めくくる作品だということで映画館に行きました。

 これまでの2作については、それぞれのエントリで書きましたように、北野武監督の『ソナチネ』との関係性が注目されるところ、本作においては、既に色々と指摘されているところながら、その類似性が強く感じられました(注2)。
 例えば、
・これまでの2作では、主たる舞台は東京ですが、本作においては、『ソナチネ』の舞台が沖縄であったのと類似して、その冒頭の場面は韓国の済州島が舞台になっています。

・本作においては、花菱会の幹部の出所祝のパーティーに大友と市川が乗り込んで機関銃を乱射するのですが、このシーンは、『ソナチネ』のラストの方のシーンを彷彿とさせます(注3)。



・本作のラストで、大友は拳銃で自決しますが、『ソナチネ』においても、主人公の村川(ビートたけし)は、車の中で自決します。

 ただ、『ソナチネ』で見られたような一風変わった場面(注4)は、これまでの2作と同じように、本作でも全く登場しませんし、また女性の役割も本作では極端に小さくなっています(注5)。

 さてこれで何が描き出されたのかというところですが、クマネズミには虚しさが強く感じられたところです。
 大友は、本作でも様々な人物を血祭りにあげています。



 例えば、大友は、世話になっている金田時男)の部下が花田の若い者に殺されたことや、花菱会の会長の野村大杉漣)が張会長への襲撃を指示したことから、張会長を襲った木村組組長の吉岡池内博之)や花菱会の野村会長などを殺し、最後には、花田や、部下だった木村中野英雄)を殺したヒットマンまでも射殺します(注6)。



 でも、野村会長が殺されると、その後を襲って花菱会の会長の椅子に座ったのは昔気質の若頭・西野ですし、木村を殺したヒットマンといっても、既にヤクザから足を洗って車の修理工場を営んでいる男なのですから。
 要するに、大友の場合、なにか新しいものを作り出すための殺しではなく(注7)、自分の気持ちに収まりをつけるためだけの殺しのように思えます。

 本作は、舌足らずの言い方になってしまい恐縮ながら、監督(北野武)、俳優(ビートたけし)、そして登場人物(大友)が抱え持つやくざ物に関する三つの美学の総まとめではないかと思っているところです(注8)。

(3)渡まち子氏は、「相変わらず凄惨で、それでいて笑える凝ったバイオレンス描写が満載だが、暴力の中に、古き良き任侠映画の終焉の時を見るようで、哀愁がひときわ際立つ最終章となった」として60点を付けています。
 中条省平氏は、「一触即発、何が起こるか分からないサスペンスの持続、また、激しい暴力や流血とユーモアのバランスもうまくいっている。ラストは『ソナチネ』を想起させるが、長い物語の果てにこうなるほかないという運命的な諦念を感じさせる」として★4つ(「見逃せない」)を付けています。



(注1)監督・脚本は北野武。

 なお、出演者の内、最近では、ビートたけしは『女が眠る時』、西田敏行は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、大森南朋は『秘密 THE TOP SECRET』、ピエール瀧は『海賊とよばれた男』、大杉漣は『ゾウを撫でる』、松重豊池内博之は『グッドモーニングショー』、塩見三省白竜は『真夏の方程式』、中村育二は『帝一の國』、岸部一徳は『団地』、光石研は『散歩する侵略者』、津田寛治は『花宵道中』、原田泰造は『四十九日のレシピ』で、それぞれ見ました。

(注2)劇場用パンフレットに掲載されているプロデューサーの森昌行氏の談話の中で、同氏は、「(『ソナチネ』は)観客が容易に感情移入できるようには作られておらず、すごく“乾いて”い」るが、「(本作は)感情移入できるよう巧みな演出がなされている」、「極言すれば、『ソナチネ』は詩的で、『最終章』は現実的」だ、と述べています。

(注3)『アウトレイジ ビヨンド』では、大友(ビートたけし)が、仲間〔木村(中野英雄)〕の葬儀の際に、刑事の片岡(小日向文世)から拳銃を受け取った後、山王会と花菱会の面々が打ち揃う葬儀場に乗り込みます。

(注4)例えば、紙相撲見立てのシーン。

(注5)『ソナチネ』では、幸(国舞亜矢)という女が登場します。
〔追記:『アウトレイジ』において女性の役割が極端に小さくされている点については、この記事が大層面白い議論をしていると思いました〕

(注6)木村の殺害は、前作の『アウトレイジ ビヨンド』で描かれています。

(注7)もっと言えば、大友の殺しは、2.26事件の青年将校のように、秩序をとりあえず破壊するためだけのものであり、壊されたものを収拾して秩序を作り出す役目を西野のような男に委ねてしまうと、結局は元の木阿弥になってしまうのではないでしょうか?

(注8)本作における大友の殺しは、頭に焦点が当てられているように思われます。
花菱会の野村会長は、地面に頭部だけ出ている姿で埋められて、その頭部を大友が乗った車が通過します。また、花田は、口に咥えさせられたギャグボールが爆発して殺されます。さらに、大友自身、喉元から頭頂に向けて拳銃を発射して自決します。
 登場人物の顔の大写しが多いように思える本作の前半部分と合わせて、本作は、頭部の映画といえるかもしれません。
 そうなってくると思い出されるのが、『ソナチネ』におけるロシアンルーレットのシーンで、村川(ビートたけし)が笑顔で自分の頭部に拳銃を当てるシーンでしょう〔そういえば、『ソナチネ』で大杉漣の演じる片桐が落とし穴に落ちたりしますから、本作で大杉漣が穴に埋められるのも、ある意味で当然なのかもしれません〕。





★★★☆☆☆



象のロケット:アウトレイジ 最終章

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (4)   トラックバック (16)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ミックス。 | トップ | バリー・シール »
最近の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (atts1964)
2017-11-06 22:31:12
本当に決着偏でしたね。最終作と言いながら、何か残すのかと思いましたが、あのラストではもう続きはないですよね。
現代ヤクザですが、やはり壮絶な殺し合いが主体なんで、主だった役者人が死んでいるんで、キャスティングが難しいだろうなあと思ったのと、塩見さんの病気が残念でしたね。
いつもTBありがとうございます。
Unknown (クマネズミ)
2017-11-07 07:38:02
「atts1964」さん、コメントを有難うございます。
おっしゃるように、大友が頭を吹き飛ばしてしまいましたから、いくらなんでも「もう続きはない」でしょう。
それに、これまでの2篇で相当役者さんが死んでいますから「キャスティングが難しい」と思えるところ、大杉漣とか西田敏行、岸部一徳など、本作でもそれなりの役者を揃えていますから、案外、日本の映画界の懐も深いように思われます。
二か月前に 地元の映画館で観ました (zebra)
2017-12-10 22:04:36
クマネズミさん 二か月前に地元の映画館で見ましたよ。

殺しのエグさは 淡々として 印章が薄かったですがそれなりに面白かったですよ。

大杉連さんの 花菱会 二代目 なんとも 娘婿の立場だけで 形の違った「七光り」根性で 花菱会のトップの器ではなかったですね。

それこそ 前作ビヨンドで 加瀬亮さん演じたインテリヤクザの石原と一緒で いい時は威張ってくさっていい気になってはいても 肝心のここぞというときは自分の保身しか考えない・・・。

でも 言い換えれば 連さんの役者としてのも演技力が伝わってるということでもあります。それはほかの役者さんたち皆さんも そうであります。

 >・本作のラストで、大友は拳銃で自決しますが、『ソナチネ』においても、主人公の村川(ビートたけし)は、車の中で自決します。
最後に・・・「けじめ」ってやつですね。

大友にふさわしい 偉人の格言 載せてもよろしいですかね・・・。

『生きるか死ぬかは時機に任せよう。世の人が何と言おうと、そんなことは問題ではないのだ。』
高杉晋作(長州藩 幕末の志士)

この種の格言は アウトレイジのような ならず者たちだからこそ カタギ者よりは理解するかもしれません。
Unknown (クマネズミ)
2017-12-11 08:53:37
「zebra」さん、コメントを有難うございます。
おっしゃるように、前作での加瀬亮、本作での大杉漣の演技は目を瞠るものがあると思います。まさに、二人の俳優は、「いい時は威張ってくさっていい気になってはいても 肝心のここぞというときは自分の保身しか考えない・・・」という役柄を、卓越した「演技力」でこなしていて、こんな男じゃ大友に殺されても仕方がない、と見ている者を説得してしまいます。
なお、高杉晋作の言葉ですが、その言葉がいつどのような状況下で発せられたのかについて何も知らないながらも、大志があったものの肺結核で27歳という若さで亡くなった彼ならではの言葉の感じがします。これからという時に病魔に倒れ、まさに死ぬことを時機に任せざるを得なくなった彼は、生き死に自体は問題ではない、生きている間に何を考え何をしようとし何をしたのかが大切なのだ、生きている間こそが大切なのだ、と言っているように思えました(「世間の人が何と言おうと」とは、忠臣蔵的な滅びの美学をあるいは指しているのではないでしょうか)。仮にそうだとしたら、高杉晋作の言葉は、大友の「けじめ」の発想に絡んでくるようには思えないのですが、如何でしょう?お考えをご教示ください。

コメントを投稿

16 トラックバック

アウトレイジ最終章 (ネタバレ映画館)
これで本当に終わりだな?
『アウトレイジ 最終章』 2017年9月25日 イイノホール (気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-)
『アウトレイジ 最終章』 をジャパンプレミアで鑑賞しました。 上映前に13名のオッサン達が揃ったが、迫力はあるかもしれないが 年寄り多くて弱そうだな...なんて思ったw  <登......
アウトレイジ 最終章 (風情☭の不安多事な冒険 Part.5)
 日本  犯罪&アクション&任侠・ヤクザ  監督:北野武  出演:ビートたけし
アウトレイジ 最終章 (映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ~)
評価:★★★★【4点】(P) ビヨンドから出ている強面の塩見さんをもういちど見たくて
「アウトレイジ 最終章」:日の名残り (大江戸時夫の東京温度)
映画『アウトレイジ 最終章』は、1、2同様に面白いのですが、一方でやや物足りなく
「アウトレイジ 最終章」☆遅い回の上映にはご注意(笑) (ノルウェー暮らし・イン・原宿)
いやー怖かった! 何が怖いって上映終って帰るときに、明るい茶髪のいかにもな女性たちの、姐さんのほうのボートネックの広く開いた背中いっぱいに見事な刺青がのぞいていて、そ......
17-294「アウトレイジ 最終章」(日本) (CINECHANが観た映画について)
小指は大事にせなあかん  山王会と花菱会の一大抗争が終結し、大友は日韓に強大な影響力を持つフィクサー張会長を頼り、韓国へと渡る。  ある時、花菱会の幹部・花田が滞在中の......
映画「アウトレイジ 最終章」@109シネマズ木場 (ITニュース、ほか何でもあり。by KGR)
2017/10/8 109シネマズ木場。 1番スクリーン。 * ビートたけし、大森南朋、西田敏行、塩見三省、大杉連、岸部一徳、 名高達夫、光石研、金田時男、白竜、松重豊。 ......
「アウトレイジ 最終章」 (元・副会長のCinema Days)
 期待していなかったが、実際に観た印象も予想通りの“中の下”のレベルだ。もっとも、前2作も観ているので、惰性でスクリーンに対峙したというのが実情である(苦笑)。ただ......
「アウトレイジ 最終章」、『アウトレイジ ビヨンド』から5年、武が帰ってきた! (ひろの映画見たまま)
おすすめ度 ☆☆☆ (劇場鑑賞) やくざ映画好き ☆☆☆★ R+15 やくざ映画だし、殺しもふんだん アウトレイジ3部作の最終章。 前作を見ていなくても。話は分かるが、人......
アウトレイジ 最終章 (だらだら無気力ブログ!)
前2作と比べると尻つぼみ感が。
アウトレイジ 最終章  監督/北野 武 (西京極 紫の館)
【出演】  ビートたけし  西田 敏行  大森 南朋  塩見 三省  ピエール瀧 【ストーリー】 関東の山王会と関西の花菱会の間で起きたし烈な権力闘争の後、大友は韓国に拠点を移す......
アウトレイジ 最終章 (信州諏訪発気まぐれ親父のブログ)
関東の山王会と関西の花菱会の間で起きたし烈な権力闘争の後、大友(ビートたけし)は韓国に拠点を移す。彼は日本と韓国の 裏社会で暗躍する実力者張会長(金田時男)の下にいた......
映画『アウトレイジ 最終章』★危なっかしい大友のケリの付け方 (yutake☆イヴの《映画★一期一会》)
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/172067/ ↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。 監督・大友 :北野武・ビートたけし 花菱会 西野 :西田敏行 花菱会 中田 :......
『アウトレイジ 最終章』 (京の昼寝~♪)
□作品オフィシャルサイト 「アウトレイジ 最終章」□監督・脚本 北野 武□キャスト ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、       松重 豊、岸部一徳、......
『アウトレイジ 最終章』('17初鑑賞112・劇場) (みはいる・BのB)
☆☆☆-- (10段階評価で 6) 10月7日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 13:00の回を鑑賞。