歌舞伎の一か月興行では、初日の幕が開いて数日すると御社日というのがある。興行側が新聞社や劇評家や演劇関係者を招待する日のこと。
この人たちに紹介記事を書いてもらえばいい宣伝になるので、歌舞伎に限らず商業演劇でもこの日が設けられていることもある。
とにかく初日・中日・千秋楽と並んで重要な日。役者によっては、いつも以上に力を入れて芝居をする人もいるぐらいだ。
これら節目の日は劇場ロビーに、各役者の裏方である番頭や奥さんが身なりを整え、もぎりの前で贔屓筋に挨拶をするのが慣わしだ。
役者の中には奥方も女優だったりするから、そんな日に観劇をすると富司純子が今なら藤原紀香がそこに、なんてことになることもある。
もう随分と古い話で30年近く前になるけれど、とある年の年末の南座の顔見世興行に出かけたバースくん、その日はなんと
祇園の舞妓や芸者たちの総見と御社日が一緒という、とてもゴージャスな運のいい日だった。劇場ロビーに入るだけで白粉の匂いがして……
そして各家々の着物姿の奥方たちがあちこちに、ふと目が止まる物腰のやわらかい50過ぎぐらいの落ち着いたしっとりとした夫人
おや?!この方どこかで見たことがある人と、ボクのいつもの人間違いかともう一度ゆっくり見てみると、穏やかに静かにたたずむその人は
扇千景だった。へーーっ!!!わからなかった、わかっても、にわかにその方が扇千景とは信じられなかった。確かにお顔はそうだけれどという感じ。
どこまでも役者の奥方で裏方に徹しておられたその姿に、議員とのギャップがありすぎて、しばらく目が点になったのだった。
でも思えばそんなのお茶のこさいさい、だってもともとは女優さんだったのだからと大いに納得もしましたとさ。
訃報に接し、心からのご冥福をお祈りいたします鳥取のイベント情報サイト ジャングルズーム
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