孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

経済危機で進む規制・管理への動きと多極化を反映する国際的枠組み模索

2008-10-27 16:18:57 | 国際情勢

(7月25日パリ サルコジ仏大統領とオバマ米大統領候補 11月以降、こうした絵が増えるのでしょうか。“flickr”より By Barack Obama
http://www.flickr.com/photos/barackobamadotcom/2701924041/)

【グリーンスパン氏「衝撃を受けている」】
東京株式市場は今日も続落で最安値更新、円は独歩高・・・。
不透明な金融危機、世界を覆う不況の不安に対する各国の懸命の対応が続いていますが、このなかでふたつの流れが感じられます。
ひとつは“自由・規制緩和”から“規制・管理”への動き。
これまでの規制緩和による市場重視の経済運営がマネーの暴走を止めることが出来ず、経済全体の枠組みを揺るがす結果になった・・・という反省です。

その象徴が、23日アメリカ議会の公聴会でのグリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)前議長の釈明というか、自信喪失ぶりです。
自由競争主義を重視する経済運営でながくアメリカ経済を牽引し、国民からは大統領以上の信頼を得ているとも言われてきたグリーンスパン氏ですが・・・。

****「自由競争主義に欠陥」前FRB議長、金融危機に釈明****
米議会の公聴会で23日、連邦準備制度理事会(FRB)前議長のグリーンスパン氏が集中砲火を受けた。議員らは現在の金融危機の原因をめぐって前議長の在任中の責任を詰問。前議長は、規制緩和や自由競争を推し進めたことに関し、一部に誤りがあったと認めざるをえなかった。
公聴会は下院の政府改革委員会が開いた。議会を主導する野党民主党は、危機の再発防止のため規制を大幅に強化する狙いがあり、06年までFRB議長を約18年半務め、米経済のかじ取り役として評判の高かったグリーンスパン氏を集中的に追及した。

ワックスマン委員長(民主)は、前議長が金融派生商品などの規制に消極的だったことを挙げながら「FRB史上最長の任期中、金融市場の規制緩和の支持でもっとも影響力があった。あなたは間違っていたか」と責め立てた。前議長は「部分的には」と認めたうえで「銀行などが利益を追求すれば、結果的に株主や会社の資産が守られると思っていたが、間違いだった」と話した。
さらに、自身が強調してきた自由競争主義の考えなどについても「欠陥をみつけた。それがどのぐらい深刻なものかは分からないが、非常に悩んでいる」と発言。金融業界が予想以上に危険な取引に走り、当局の対応が遅れたとの認識を示し、「私の経験では融資担当者は金融当局よりも、貸し出しリスクや借り手についてはるかによく知っていた。こうした決定的な支柱が崩れてしまい、衝撃を受けている。なぜそうなったのか、まだ十分理解できない」とショックをあらわにした。 (中略)

市場の力を重視する前議長の考え方は、米国型資本主義の象徴として、世界の金融業界や政策決定に大きな影響を与えてきた。その路線を修正するような今回の発言は、金融危機後の政策論議の中で強まっている規制強化の流れを、さらに加速させそうだ。 【10月25日 朝日】
********************

【早い再開が望まれるWTO交渉】
適正な(何が“適正”なのかが問題なのですが・・・)管理は必要でしょうが、一方で、規制・管理重視の動きに、今後の実体経済悪化が重なると、自国利益だけを考える“保護主義”的な傾向が強まることも危惧されます。
それは、世界経済収縮へ向かう後ろ向きの途であり、いつか来た途でもあります。

WTOのドーハ・ラウンドは7月に、主に先進国と中国・インドなど新興国の主張が対立したまま決裂しています。
「11月中旬~12月中旬には交渉を再開できる」との観測もありましたが、一連の経済混乱のなかで見通しが立たなくなっています。
「今年中に再開できなければ、おそらく閣僚会合は2010年まで持ち超されるだろう」(オサリバン欧州委員会通商総局長)との発言も出ています。

日本も食糧自給率や国内産業保護の問題は抱えていますが、その日本にしても、あるいは中国にしても、自由な世界貿易の拡大のなかで立国しているという基本的認識を見失うことなく、交渉に臨んでもらいたいものです。

【寂しげなブッシュ大統領】
金融危機への対応のなかで見えてきたもうひとつの流れは、従来のアメリカの1極支配的な体制を脱却し、多極的な国際協調を模索する動きです
国際関係の大きな流れは、グルジア紛争で“新冷戦”が危惧される状況になりましたが、その後の経済混乱のなかでまた流れが変化したように見えます。

経済不安への各国が足並みをそろえた対応が緊急に求められていますが、自由経済主義・市場重視で世界をリードしてきたアメリカの自信喪失、実体経済悪化によって精彩を欠いているようにも。
ロシアとの“新冷戦”を構える余裕もなさそうです。

とりわけ影が薄いのがブッシュ大統領。
ブッシュ政権との違いを強調したいマケイン陣営からは応援の声もかからず、ホワイトハウスにこもっているとか。
年内でのなんらかの結果を目指したパレスチナ問題も、イスラエルの総選挙突入で絶望的になったようですし。

【呪い人形もなんのその 元気なサルコジ大統領】
一方、25日まで北京で開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議でひときわ元気だったのがフランスのサルコジ大統領。
“ASEMはこれまではミャンマーの人権問題などが意思疎通を妨げる「トゲ」となり、十分な機能を発揮できなかった。だが、金融危機や環境問題など地球規模の緊急課題が浮上してきたことで、両地域が連携を強化する必要性が高まった。”【10月23日 毎日】

****ASEM:国際金融体制改革、目立ったサルコジ積極外交*****
欧州連合(EU)議長国のサルコジ仏大統領は期間中、米主導といわれる今の国際金融体制の改革を目指してアジア各国首脳と積極的に接触した。会議のメンバーではない米国が、足元で広がる危機への対応と大統領選で手を縛られる間隙(かんげき)を突く形で、アジアの囲い込みに布石を打った構図だ。(中略)
同大統領とEUのバローゾ欧州委員長がブッシュ米大統領と直談判して開催を決めた来月のG20金融サミットを、EUは国際的な金融機関を監督する機構創設など新しい国際金融体制を構築する端緒と位置づける。その議論を主導するためには、中国、インドなど今後の成長センターとなるアジア新興国の支援が欠かせないだけに、各国首脳がそろうASEMは地ならしをする格好の舞台になった。

サルコジ大統領は、議長国・中国との事前調整で、金融問題の討議に半分以上の時間を確保したうえで、開幕演説では「アジアの成長力と想像力を必要としている」と表明。金融討議を締めくくる特別声明には「国際通貨・金融システムの実効的かつ包括的な改革」「健全な金融規制政策の実施、監督の強化」など、EUの主張に沿う文言を盛り込むことに成功し、「国際通貨基金(IMF)改革への地ならしはできた」(バローゾ委員長)と評価した。
97年のアジア通貨危機でIMFの支援を仰いだタイ、インドネシア、韓国などには、支援の見返りに要求された過酷な財政緊縮政策が、不況をさらに深刻化させたとの認識がなお強い。その背後にいたのが米国と投資銀行を代表とする米金融界だったというわけだ。今回の金融危機をめぐって欧州とアジアが一定の共通認識を持った意味は小さくない。

ただ、今回の「布石」は第1段階に過ぎない。同特別声明に対しては、日本が現在の危機克服に向けた「IMFの重要性」を盛り込むよう強く主張したほか、会議と並行して開かれた日中首脳会談でも「ドル基軸体制の重要性」が確認され、「反『米主導』」の色彩が濃いサルコジ大統領と改革をめぐる温度差も表面化した。【10月25日 毎日】
*************

経済成長著しい中国・インドという世界多極化の「震源地」となっているアジアとの協調を確認し、対米発言力を高めたいとの意向とか。
サルコジ大統領は世界の多極化を反映する国際的な枠組みの構築を主張しており、基軸通貨のあり方を再検討する必要性も提起しています。

国内では、内務省情報総局(公安警察)のベルトラン元長官をプライバシー侵害や虚偽捏造(ねつぞう)の罪で告訴、ベルトラン元長官に指示したとされるシラク前大統領の東京スター銀行秘密口座疑惑に関係する機密書類公開決定・・・と、政敵蹴落としにも大車輪。
一方、サルコジ大統領の“呪い人形”が売れ行き絶好調とか。
よくもそんなものを売るものだとあきれます。
なかなか個性的でアクの強い政治家ですが、国民の方もなかなかアクが強そうです。

【麻生首相も・・・】
大筋で協調しながらも、サルコジ大統領のIMF改革やドル基軸体制に関する提案に対し、一定に釘をさした形の日本の麻生首相。
麻生首相も、国内で解散時期や連夜のバー通いを記者団に訊かれているときの仏頂面と言うか悪人面に比べると、随分元気そうな表情でした。

中国は“大人の対応”という話もありますが、長くなったのでその話はまた別の機会に。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする