
(チェチェン関係の一連の事件での“ロシア政府の陰謀”を糾弾したロシアの女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ 2006年10月7日、ポリトコフスカヤはモスクワ市内の自宅アパート建物エレベーター内で射殺体で発見されました。
そのポリトコフスカヤを偲ぶフィンランドでの集会
彼女の主張の真偽はともかく、“ロシアでは1999年~2006年の間に126名のジャーナリストが死亡、もしくは行方不明となっている。”【ウィキペディア】というのは由々しい事態です。
“flickr”より By a/jau
http://www.flickr.com/photos/ajau/274914056/)
【チェチェンのプーチン大通り】
2度の紛争を経験し、強攻策を主導したプーチン首相の政治基盤を固めるのにも大きく貢献したとされる、ロシア南部カフカス地方のチェチェン共和国。
今では随分治安が好転したそうで、昨年のロシア下院選におけるプーチン首相率いる「統一ロシア」のチェチェンでの得票率は99%以上だった発表されています。
首都グロズヌイ中心部にある「勝利大通り」は、チェチェン共和国のカドイロフ大統領の命令で、「プーチン大通り」と改称されました。
“カドイロフ氏は、プーチン氏のチェチェンにおけるテロとの戦い、経済、社会の復興における功績をたたえるためだと説明。記念式典でのあいさつでは「プーチン氏のためなら死ぬ覚悟がある」とまで述べ、プーチン氏への忠誠を誓った。”【10月6日 朝日】・・・とのことです。
溜息が出そうな「プーチン翼賛体制」とも言うべきものですが、今年に入って警官約30人が殺害されたとのことで、必ずしも住民ひとりひとりがこの“プーチン翼賛体制”を喜んでいる訳でもないようです。
同じカフカス地方、チェチェンの西隣のイングーシ共和国は民族的にはチェチェンと同じです。
こちらは、政権側と抵抗勢力の緊張が高まっているようです。
“ロシア南部のイングーシ共和国で18日、内務省軍の車列が何者かの待ち伏せ攻撃を受け、19日までに明らかになったところでは、兵士ら3人が死亡した。一方、同共和国の野党系のウェブサイトは内務省筋や病院関係者の話として、この攻撃で兵士ら約50人が死亡したと伝えた。”【10月19日 時事】
****イングーシ「チェチェン化」の影 衝突続く“カフカスの火薬庫”****
ロシア南部イングーシ共和国の人々は、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身の独裁的な指導者の下、息を潜めるように暮らしていた。
武装勢力や反体制派住民と治安部隊の衝突で2002年以降、数百人の死者・行方不明者が出たとの推計もある。大量の血が流れた隣国チェチェン共和国の悲劇の再来を懸念する声も出るなか、イングーシを訪れ、「カフカスの火薬庫」の現状を探った。(イングーシ共和国マガス 佐藤貴生)
首都マガス近くの商業地ナズラニ。主要道路にはバリケードや検問所が置かれ、装甲車両の脇で自動小銃を携えた兵士が警戒に当たる。傍らでは女性たちが買い物をし、子供たちは談笑しながら帰宅する。
街の様子は午後7時を過ぎると一変し、人の姿が消えた。街灯もまばらな通りは不気味なほど静まり返った。
市場などの取材現場にはイングーシ大統領府職員が常に同行し、住民に政権批判を口にしないよう無言の圧力を加えていた。マガス郊外の野外市場で出会った男性(38)は当局の目を逃れたすきに、「夜になると住民が自宅から連行されていく。ジャジコフが(共和国の)大統領になって以来、治安は悪くなるばかりだ」と小声で訴えた。
◆強権統治が招く報復
イングーシでは02年、元KGB中将のムラト・ジャジコフ氏(51)が大統領に就任して以降、治安部隊など当局の関与が疑われる殺人・拉致事件が続発。正確な数は不明だが、現地の人権団体マシルは同政権成立以後、約500人が死亡、約160人が行方不明になったとし、詳細情報をインターネットサイト(http://www.mashr.org/)で公表している。
「殺人やテロを企てた容疑で当局に連行された末、裁判もなしに兄弟や親類を失った若者たちが復讐(ふくしゅう)心から武装勢力に加わっている」と地元記者はいう。失業率5割以上、平均月収1万ルーブル(約3万4000円)という社会状況や、経済格差も若者を武装勢力に向かわせる一因とみられ、かつてのチェチェンとも重なる。
検察当局によると、治安部隊員や警官への襲撃事件は今年だけで150件に上る。特に8月末、貴重な情報発信源だった反体制インターネットサイトの運営者が殺害されて以降、報復とみられる大統領の親類への襲撃事件が相次いだ。カフカスの武装勢力が“主戦場”をイングーシにシフトした可能性もうかがえる。 (中略)
◆ロシアのアキレス腱
人権団体「メモリアル」チェチェン支部のシャフマン・アクブラトフ氏は、「ロシア政府はチェチェンに関しては『領土保全』を前面に掲げて武力行使したが、グルジアに属する南オセチア自治州とアブハジア自治共和国には独立を認めた。この二重基準が将来、北カフカス地方の住民の不満をより強める可能性がある」と指摘する。
一般のロシア人とは異なる宗教や文化、言語を有するカフカスの人々には、「血には血をもって報復する」という気性が根強く残る。武力でねじ伏せようとする限り、この地域がロシアにとってのアキレス腱(けん)であり続けそうだ。 (以下、略)【10月30日 産経】
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【二重基準】
コソボの独立を認める欧米諸国は、オセチア自治州とアブハジア自治共和国独立を認めず、
オセチア自治州とアブハジア自治共和国独立を認めるロシアは、チェチェン・イングーシの独立運動を力で抑え込む・・・・
この事例に限らず、同じような二重基準が世界中に溢れています。