孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コソボ独立と分割案で問われる“領土的一体性” 

2008-10-10 18:25:54 | 国際情勢

(コソボ独立に抗議するセリビア女性 抗議運動もこのような穏やかなもので収まれば問題もないのですが・・・ “flickr”より By peregrinari
http://www.flickr.com/photos/peregrinari/2290059269/)

今日も東京証券市場は暴落を続けており、円は一時97円台まで上昇。
更に、大和生命は経営破たん・・・ということで、世間の関心は今後の経済動向に集まっています。

【領土的一体性】そんなやや騒然とした雰囲気のなか、最近目にすることが少なくなったコソボ・セルビアの話題。
ゲーツ米国防長官が今月7日、コソボを訪問しサチ首相と会談しましたが、2月にコソボが一方的に独立を宣言して以来、コソボを訪れた初の米閣僚だそうです。
これまで米閣僚の訪問がなかったのも意外な感じがしますが、セルビアやロシアを刺激しないようにとの
配慮でしょうか。

コソボには現在、NATO主体の平和履行部隊(KFOR)の一部として約1500人の米兵が駐留していますが、ゲーツ米国防長官は今後も駐留を続けること、また、コソボ治安部隊のために装備や訓練面の支援を行うことを表明しています。

また、ゲーツ米国防長官は、アメリカがコソボの分割に反対であることを強調しました。
コソボの人口200万人のうち大部分はアルバニア人ですが、少数派のセルビア人のほとんどは北部に住んでいます。コソボ独立を容認していないセルビアのタディッチ大統領は、ほかのすべての選択肢が失敗した場合という前提ですが、セルビア人の多い北部をコソボから分割するという方策に言及しています。

ゲーツ長官は「現在だけでなく将来にわたっても、分割は解決策ではない。米国はコソボの領土的一体性を支持する」と述べてこの分割案を否定したそうです。
現実的と言えば言えなくもない方策にも思えますが、仮に分割した場合、今度はその北部に居住する少数アルバニア人はどうするのか・・・という問題も出てきそうです。

それにしても、コソボ独立で無視されたセルビアにとっての“領土的一体性”を思うと、アメリカもよく平気で“領土的一体性”なんて口にできるものだと感心します。
皮肉でもなく、そうした豹変ぶり、ご都合主義は外交に限らず世の中の常であり、特段どうこう言うべきものではないのでしょう。

【国際司法裁判所判断を仰ぐ】
一方、セルビアは、コソボの一方的分離独立が「国際法に従っている」かどうかについて、国際司法裁判所に判断を要請する決議案を国連総会に提出しました。
セルビアのイェレミッチ外相は、セルビアにとって「外交と国際法を通じて主権と領土的一体性を守る」ための取り組みだと説明しています。

また、決議案提出が検討されていた9月初旬の段階で、同外相は「コソボ分離を受け入れることはできないが、セルビアは問題を平和的に外交手段で解決する」と表明したうえで、決議案について、セルビアがコソボ独立の承認国を被告として国際司法裁判所に訴えるのではなく、コソボ独立が国際法上違法なものでないか、同裁判所の見解をただす手続きになると強調しています。

この決議案は8日、賛成77票、棄権74票、反対6票で採択されました。
投票に際しては、セルビアが加盟を強く希望しているEUの加盟27か国の大半は、投票を棄権しています。

****外相は勧告を受け入れる姿勢も示している。セルビアの欧州連合(EU)加盟を前進させるため、コソボ問題で欧米に歩み寄ったものと見られる。
セルビアは現時点でコソボ独立を認めない立場を変えていない。だが、7月に発足したツベトコビッチ政権は、欧州連合(EU)への加盟方針を掲げ、独立承認国から引き揚げた外交官を再派遣するなど欧州との亀裂修復へ動いている。【9月5日 毎日】******

上記の記事によれば、今回決議案は対立を煽るものではなく、国際司法裁判所の勧告受入れという形で、国際社会復帰への道筋をつくるもの・・・ということのようです。
もし、独立を否定するような勧告が出たら?
よくわかりません。

なお、旧ユーゴスラビアのモンテネグロとマケドニアは昨日9日、コソボを承認しました。
06年にセルビアから分離したモンテネグロ、アルバニア人を国内に抱えるマケドニア・・・いろいろ複雑な事情も抱えながらの承認でしょう。
モンテネグロ、マケドニア両国は「コソボ承認は反セルビアを意味しない」と訴えています。
しかし、セルビアのイエレミッチ外相はモンテネグロの駐セルビア大使の追放という厳しい対抗措置を発表しています。

セルビアが今後どのような道筋を描くか難しいところですが、コソボも世界の関心が引いた後、どのように国を運営していくか、これまた大変だと思います。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする