
(COP14が12月に開催されるポーランドの古都ポズナニの街角 “flickr”より By soylentgreen23
http://www.flickr.com/photos/soylentgreen23/2895970804/)
【温暖化対策と金融危機】
最近、12月の国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)に関する記事を目にするようになりました。
COP13での議論が注目されていた時期から1年近くになる訳で、月日のたつのは早いものだと感じます。
COP13から環境サミットと位置づけられた洞爺湖サミットにかけては、環境問題や温暖化の議論を見聞きすることも多かったのですが、サミット直前に問題化した食糧・燃料価格高騰、更に最近では金融不安の問題によって、温暖化の議論はひところほどではないようにも感じられます。
それでも、メディアで報じられる新たに発売される商品のコンセプトやいろんな社会活動などを見ていると、“エコ”ということが時代のキーワードであることには違いはないようです。
*****「温暖化対策は、金融危機に役立つ」COP14準備会合*****
12月にポーランド・ポズナニで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)に向けた閣僚級準備会合が13日、ワルシャワで始まった。世界的な金融危機に関連し、各国はそれぞれの温暖化対策を緩めないことを確認。「温暖化対策を進めることは金融危機への取り組みにも役立つ」とする緊急声明の採択に向けて調整に入った。
約40カ国が参加する準備会合は14日までの日程で開かれ、COP14で話し合う論点の整理が主な議題。ただ、金融危機で、温暖化対策に必要な途上国などへの資金供給が細る懸念が強まったことから、温暖化問題の重要性を訴える声明が発案された。
声明案では「金融危機は、差し迫った気候変動危機に対する努力を弱める理由にはならない」として、温暖化対策が遅れれば、より大きな損失を招くと指摘。むしろ低炭素型の持続可能な経済に転換することが必要で、このことは金融危機への対処と方向性は同じだとしている。
また、今回の金融危機で「世界的な危機に対処するために国際社会は協調できることを示した」として、温暖化問題でも同じような国際連携を求める。
準備会合の初日は、京都議定書に続く13年以降の温室効果ガス排出削減の枠組みについて意見を交わした。焦点の一つとなる2050年までの長期的な削減目標については、議長国のポーランドが、COP14の際に非公式な閣僚級円卓会合を設けて話し合うことを提案した。
会合では、先進国と途上国との間の溝が改めて浮かび上がっている。日本政府代表団によると、先進国からは、京都議定書で削減義務が課されていない途上国にも応分の責任を求める意見が目立ったのに対し、途上国からは温暖化対策に必要な資金を先進国が提供する仕組みづくりの提案が相次いだという。 【10月14日 朝日】
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“温暖化対策は、金融危機に役立つ”かどうかはともかく、食糧・燃料価格高騰、金融危機という一連の危機はこれまでの自由放任的・市場経済主義的なグローバリズムを基本にした世界のほころびであり、今後に向けては、これまでとは違う新たな世界観の提示が求められていると思われます。
その新しい世界観においては、環境問題・温暖化という概念が機軸のひとつになりうるものであり、そういう意味で、環境を重視した世界観の確立は現在の危機的な状況を超えて新たなステージに進む標ともなろうかと思われます。
“今回の金融危機で「世界的な危機に対処するために国際社会は協調できることを示した」”というのはいささか皮肉っぽいところもありますが、また、今回の各国の対策で危機が終息した訳でもありませんが、確かにここ数日の各国政府の協調的対応は「なんだ・・・やればできるじゃん・・・」といった感もありました。
【国の復権】
また、各国政府はせっぱつまった状況に追い込まれていた訳ではありますが、はたから眺めていると、どこか“生き生きとしている”ように見えなくもありませんでした。
市場を席巻してきたマネーに翻弄されてきた“国家”が、久しぶりのその役割を期待されて表舞台に登場した・・・そんな感じもありました。
あるいはヨーロッパにおいては、EUという枠組みに対し、“やっぱり最後は国家なんだよ!”と言う“国の復権”的な思惑もありました。
各国が同じ方向に向かって真剣な対応をとれば、そこそこのことは出来るようです。
問題は、方向と真剣さです。
“先進国と途上国との間の溝”というのは、聞き飽きたフレーズです。
まだその渦中にある金融危機ですが、世界がひとつの舟(ドロ舟だかタイタニック号だかはともかく)に乗っており、自分の国だけは安泰ということはもはやありえないということを示唆しています。
また、中国がアメリカの国債を引き受けるかたちで“最後の貸し手”としての役割を果たすことになっているように、新興国を除外した仕組みもありえないことがわかります。
先月26日には、中国が米国を抜いて世界最大のCO2排出国になったことが明らかにされました。
****CO2排出量、中国が米国抜いて第1位*****
地球温暖化対策に関する国際研究計画「グローバル・カーボン・プロジェクトが26日発表した二酸化炭素(CO2)排出に関する報告書で、中国が米国を抜いて世界最大のCO2排出国になったことが明らかになり、また世界の温室効果ガスのレベルが過去最高となっていると警鐘が鳴らされた。
報告書「カーボン・バジェット2007」によると、2005年までは、世界の人為的なCO2の大半は先進国から排出されていたが、現在は総排出量の半分以上となる53%が開発途上国から排出されている。
特に中国とインドで排出量が大きく増加しており、中国は2006年に米国を抜いて世界第1位となり、インドも間もなくロシアを抜き第3位となる。一方、先進国の増加量は緩やかになっている。
2007年のCO2排出量は炭素約100億トン相当。うち85億トンを化石燃料が、残りは土地利用法の変化、主に森林破壊によるという。
また、以下の点についても指摘されている。
-- CO2排出量は2000年以降、際立って増加している。2000-07年の平均年間上昇率は2.0ppm。これに対し、70年代は1.3ppm、80年代は1.6ppm、90年代は1.5ppmだった。
-- この10年の化石燃料からのCO2排出量は90年代の4倍に上る見通し。
-- 熱帯雨林の森林破壊による07年のCO2排出量は15億トン。【9月27日 AFP】
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環境問題は、その原因においても、その影響においても、新興国や途上国自身の問題であり、各国が危機意識を共有してのぞむべきところなのですが・・・。