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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

食糧価格高騰、第2世代バイオ燃料のことなど

2008-07-12 15:20:35 | 世相

(バイオディーゼルの給油スタンド いかにもクリーンなデザイン “flickr”より By jonpayne
http://www.flickr.com/photos/jonpayne/762619676/)

【弱者を襲う食糧価格高騰】
6月の食糧サミットの頃は頻繁に目にした食糧危機に関するニュースも、最近はさほどでもありません。
もちろん問題が改善した訳でもなく、単に自分を含めみんなの関心が薄れたというだけのことです。
事態は相変わらずで、特に社会基盤が未整備な国の貧困層という、最も脆弱な部分に重い負担がのしかかります。

例えば、06年の騒乱をきっかけに国民の1割が避難生活を強いられてきた東ティモールでは、政府は住宅の再建資金を支給して避難民に帰還を促していますが、新しい家を借りる資金もなく、しかも食糧価格の高騰で毎日のコメが買えず、困窮する人もいます。

****食糧・燃料高騰、東ティモール再建に暗い影****
 東ティモールでは06年の騒乱後、放火や略奪などで10万人以上が空き地や政府の建物などに避難した。政府は今春から避難民に対し、住宅の損壊具合に応じて日本円換算で数万円から数十万円の住宅再建資金を支給する支援を開始。ディリ市内では6月までに一部の避難所が閉じられ、約1800家族が自宅に帰ったり、仮設住宅に入ったりした。
 帰還はおおむねスムーズに進んでいるが、経済的な理由で帰れない人もいる。グスマオさんの場合、騒乱時に借家にいたため再建資金は2万円程度。コメの市場価格はここ数カ月で3倍に高騰した。穀物や野菜、燃料なども軒並み上がっており、家を借りて出ていきたいが、難しい。この建物には約40家族が避難していたが、グスマオさんら3家族を残すだけになった。
 同国では、都市部の若者の失業率は40%以上とされ、再建資金をもらっても、生活費に回さざるを得ないのが実情だ。世界食糧計画(WFP)によると、輸送コストがかさむ地方では食糧価格の高騰がより深刻で、コメの代わりにジャガイモなどを食べてしのいでいる人が多いという。
 昨年2~3月のコメ不足の時は、若者の集団が暴徒化してWFPの倉庫を襲う事件も起きた。政府や国連はこのところの値上がりが治安の不安定化につながりかねないと懸念を深めている。(ディリ=矢野英基)【7月6日 毎日】
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【洞爺湖サミット】
日本政府は7月4日、食糧価格の高騰を受け、「特に途上国で依然として状況は深刻である」と、発展途上国への食糧支援として今後3か月で新たに5000万ドル(約53億円)を拠出すると発表ました。今年1月以降、日本政府による食糧支援額はこれで総額2億ドル(213億円)となっています。

先日の洞爺湖サミットでは、盛りだくさんな議題のなかで埋没したような感もありますが、世界の食料安全保障に関する首脳声明を発表。
食料価格高騰への対策として(1)食料輸出規制の撤廃(2)食料以外の原料を使う第2世代バイオ燃料の開発(3)国際的な備蓄の検討-を打ち出しています。

なお、食糧危機を語る首脳達の食べる贅を尽くした料理がイギリスなどで皮肉られていますが、「ごもっとも」という感じがします。
もてなし、儀式であるにせよ、状況を考えた配慮がなされないというのは、問題への関心・共感の欠如のように思えます。

【バイオ燃料の問題】
食糧問題については、基本的には食糧供給における生産性向上が重要ですが、もうひとつバイオ燃料の問題があります。
世界は、石油価格高騰の圧力をかわし、更にCO2排出増加を抑制するためにバイオ燃料に移行しています。
米国はガソリンに混入させるバイオ燃料の生産目標を掲げ、生産奨励の補助金を設けています。

EUも20年までに車燃料の10%をバイオ燃料でまかなう目標を設定していましたが、これについては欧州議会の委員会が「現時点では持続可能な形でのバイオ燃料の生産は困難」として、「10%目標」を削除した修正案をまとめたそうです。

一方、バイオ燃料に反対する人々は、バイオ燃料の原料作付けのため自然林を伐採することはCO2の排出増加に繋がり、食糧作物の燃料転用は世界の食糧供給に悪影響を与えると主張しています。
例えば、貧困対策に取り組む国際民間団体オックスファムは、世界的な食品価格上昇の30%はバイオ燃料が原因で、バイオ燃料に関連して新たに3000万人の貧困層が発生しているとのリポートを発表しています。
また、ワシントンに拠点を置く国際食糧政策研究所(IFPRI)は、米国などのバイオ燃料の増産計画を凍結すれば、2010年の穀物価格を最大で20%引き下げられる効果があるという調査結果をまとめています。

各国の立場で意見が分かれる問題でもありますが、ドイツ首相府は食糧を原料とするバイオ燃料生産に国際的な基準を設けることなどを求める政府報告書をまとめています。

先の食糧サミットでは、当初、「最善の生産の在り方」を探るため「国際的な政策指針」づくりを目指すとしていた方針をアメリカ・ブラジルなど推進国にも配慮して削除しましたが、「バイオ燃料をめぐる課題については、食糧安全保障と環境の観点で対処することが不可欠だ」と食糧生産と競合しない必要があるとの認識を示し、更に「バイオ燃料の生産と利用について、徹底的な研究が不可欠」と国際的な対話を継続させることも明記しました。

【第2世代バイオ燃料】
高まるバイオ燃料への批判に対し、「様々な種類のバイオ燃料があり、すべてが悪いあるいは全てが温室ガスを増加させるとするのは誤りだ。バイオ燃料技術は産まれたばかりであり、効果向上のための更なる研究と投資が必要だ」との意見もあります。
洞爺湖サミットでの“食料以外の原料を使う第2世代バイオ燃料の開発”(福田総理の主張していたところですが)もこの線に沿ったものでしょう。

新聞・TVで、ときどき“食料以外の原料を使う第2世代バイオ燃料”の話題は見聞きします。
ただ、その原料作付けで、食料作物の生産がクラウディングアウトされてしまうのなら、話は同じことになります。

今日はこんな記事がありました。
****フィリピン南部でバイオ燃料開発の試験プロジェクト=日韓比の投資家****
日本、韓国、フィリピンの投資家はこのほど、フィリピン南部ミンダナオ島でバイオ燃料を開発する試験プロジェクトを手掛けるため合弁会社を設立した。
ミンダナオ島サランガニ州でバイオ燃料の原料となるジャトロファ(ナンヨウアブラギリ)を栽培するため、5万ヘクタールを開拓する方針だ。
 ジャトロファの種子からとれる油はディーゼル燃料に加工できる。ジャトロファは食物栽培に適さない土地でも育つことから、フィリピン政府から潜在的なバイオ燃料資源と認定されている。【7月12日 時事】
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“食物栽培に適さない土地”だけで生産されるのなら、土地に関しては問題ありませんが(食料生産に使える資本がバイオ燃料に流れるという問題は別にして)、生産が軌道に乗って拡大したとき、食物栽培できる土地ならもっと生産性がいい・・・ということで、結局食物生産を追い出してしまうことはないのでしょうか?

【根深い対立】
バイオ燃料批判に対する反論としては、“第2世代バイオ燃料”云々よりプリミティブな意見もあります。

***ケニア政府、自然の宝庫「タナ川デルタ」をバイオ燃料用サトウキビ畑に転用へ***
ケニア政府は1日、希少な野生動物が多数生息するタナ川デルタをバイオ燃料用サトウキビ畑に転用するプロジェクトを承認したと発表した。計画には環境保護団体などが異議を唱えていた。
英国鳥類保護協会と自然保護団体ネイチャー・ケニアは、栽培地が2万ヘクタール以上にも及ぶことから、「壊れやすいデルタの生態系を破壊する」と反対している。牧草地と農地が失われることによる甚大な影響も指摘されている。
フレッド・グモ地方開発省相は、「これは地元民の利益のために政府の肝いりで行われる重要なプロジェクト。この国では多くの人間が砂糖を輸入しているが、そうした輩がプロジェクトに反対している」と話した。【7月3日 AFP】
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最後の地方開発省相の心中を推察すれば、“今まで散々すき勝手やって贅沢な暮らしを手に入れた欧米の連中が、自分達の暮らしのレベルを落とすことなく、アフリカが豊かになろうとする試みになにかと文句をつける。環境など知ったことか。我々の命にかかわる問題だ。”といったところでしょうか。
温暖化問題での中国・インド、途上国の言い分でもあるでしょう。
それはそれで共感できる部分もあります。
いつもながらの優柔不断、どっちつかずですが、結局はバランスの問題でしょう。




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