孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・トランプ政権の「パリ協定」離脱をいさめる中国、米国内政府機関

2017-11-04 22:31:00 | アメリカ

(トランプ大統領は、2016年4月にマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した研究に基づき「パリ協定を参加国全部が完全に実行したとしても、2100年までに地球の気温が0.2℃下がるにすぎないと推定されている。極めて小さい値だ」と演説。 これに対し、MITの研究者らは、大統領は引用したMITの研究をひどく誤解していると述べています。【6月2日 ロイターより】 “誤解”というのは非常に控えめな表現で、こういう誤った理解の演説こそ“フェイク”と呼ぶべきでしょう)

立場が逆転 中国「米国は協定に復帰し、地球に貢献してほしい」】
周知のように、アメリカ・トランプ政権は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱することを表明し、8月初旬には国連にすでに通知しています。

ただ、世界には「本気で離脱するつもりか・・・」という承服しがたい雰囲気もあって、トランプ大統領が離脱を回避する可能性についても(期待を込めて)時折報じられています。

****米、パリ協定離脱回避か=報道官「姿勢不変」と声明****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は16日、トランプ政権が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からは離脱を回避する可能性を示唆していると報じた。

カナダ東部モントリオールで開かれた環境・気候変動問題について話し合う閣僚級会合に出席した複数の高官らの話として伝えたもので、米政府高官らは16日の会合で、この協定に引き続き関わる妥協姿勢を示したという。(中略)

騒ぎを受けてホワイトハウスの報道官は16日、声明を出し「パリ協定に対する米国の姿勢は変わっていない。トランプ大統領が明確にしている通り、自国にとって、より好ましい条件で再び参加できない限り、米国は撤退する」と強調した。(後略)【9月17日 時事】
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トランプ大統領は、やはり離脱するつもりのようで、10月には、発電所の温室効果ガス排出規制「クリーンパワー・プラン」の撤廃を発表しています。

****米、温室効果ガス規制を撤廃 パリ協定離脱鮮明****
米環境保護局(EPA)のスコット・プルイット長官は10日、発電所の温室効果ガス排出規制「クリーンパワー・プラン」の撤廃を公式に発表した。3月にトランプ大統領が署名した環境規制見直しの大統領令を受けた措置。

石炭などの化石燃料の利用を続け、経済負担を減らすのが狙いだが、ニューヨーク州などが規制撤廃に反発、訴訟の構えを見せており長期化する可能性がある。
 
クリーンパワー・プランは、米国の二酸化炭素(CO2)排出量の3分の1を占める発電所からの排出を2030年までに05年比で32%減らす政策でオバマ政権の温暖化対策の目玉。

温暖化対策の世界的ルール「パリ協定」で、米国が25年までに05年比で26〜28%削減するとの目標を達成するための核となる政策だった。15年に最終版が発表されたが、経済界や産炭地を抱える州などによる訴訟で、まだ施行されていない。
 
EPAは撤廃により30年に最大330億ドル(約3兆7千億円)の経済負担が軽減できるとしており、オバマ政権が試算した規制により避けられる健康被害などのメリットは「不確実」として含んでいない。
 
プルイット氏は撤廃で「米国のエネルギー源の開発を促し、不必要な負担を減らす」としており、産業界が受け入れやすい代替案を示すことを示唆しているが、時期については明言していない。【10月11日 朝日】
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「パリ協定」に参加しないのはアメリカとシリアだけになっているとか。

****ニカラグア、パリ協定に署名 不参加は米・シリアのみに****
中米ニカラグアは23日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に署名した。これにより、パリ協定の不参加国は米国とシリアの2か国のみとなった。【10月24日 AFP】中
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当のトランプ大統領は日本・中国などアジア歴訪に向かっていますが、中国は「パリ協定」への復帰を呼びかけています。

****パリ協定復帰呼び掛け=米大統領訪問控え-中国****
中国政府の解振華・気候変動問題特別代表は31日、記者会見し、米国に対して地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰するよう呼び掛けた。来週のトランプ米大統領の訪中では、温暖化対策での協力関係をどう再構築するかも議題となりそうだ。
 
米中は温室効果ガスの2大排出国として、オバマ前政権時にパリ協定採択に向け協調したが、トランプ氏が離脱を表明した。解代表は「米国は協定に復帰し、地球に貢献してほしい」と訴えた。
 
米国は国連に離脱の意向を通知済みだが、温暖化対策の国際交渉には引き続き参加する。中国はこうした機会も活用し、翻意を促すとみられる。 
 
中国はパリ協定に基づき、二酸化炭素(CO2)排出量が2030年ごろまでに減少に転じるよう取り組む目標を掲げる。解代表は「どのような状況でも約束を100%果たす」と強調した。【10月31日 時事】
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アメリカが地球環境を軽視した行動に走り、中国がそれをいさめ、環境保護の国際世論をリードする・・・なんだか立場がすっかり逆転したような事態です。

CO2濃度 海面が現在より最大で20メートル高かった300万~500万年前のレベルへ
温暖化の進行具合や、その真偽については今回はパスしますが、最近の記事をひとつだけ。

****大気中のCO2濃度、記録的な高さに 国連機関が警鐘****
国連は30日、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が最高記録を更新したとの報告書を発表し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が設定した目標の実現には思い切った行動が必要だと警鐘を鳴らした。

国連の世界気象機関(WMO)は年次報告書「温室効果ガス年報(Greenhouse Gas Bulletin)」において、「大気中のCO2濃度は2016年、記録的なスピードで上昇した」と指摘。
 
また「2016年におけるCO2濃度の世界平均は、2015年の400ppmを上回る403.3ppmに達した」と明らかにし、その原因は人間の活動および強力なエルニーニョ現象の組み合わせにあるとしている。
 
さらに地球のCO2濃度が過去において同じレベルだったのは、海面が現在より最大で20メートル高かった300万~500万年前にまでさかのぼるという。
 
WMOのペッテリ・ターラス事務局長は声明を発表し、「CO2や温室効果ガス排出における急激な削減がない限り、今世紀の終わりまで危険な気温上昇に向かい、パリ協定の設定目標を優に上回ってしまう」と指摘した。【10月30日 AFP】
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米政府機関「これ(温室効果ガス)に代わる説得力のある説明はない」】
トランプ大統領は支持者を喜ばすために、何が何でもオバマ前大統領のレガシーを否定したい一念ですが、州レベルの反対だけでなく、政府監視機関及び政府機関にも大統領の離脱方針への異論もあるようです。

****温暖化進めば今世紀半ばまで年4兆円支出 米政府監査院****
米政府監査院(GAO)は24日、地球温暖化が進めば対策のための連邦政府の支出が今世紀半ばまでに年間最大350億ドル(約4兆円)に上るとの報告書を発表した。温暖化対策に後ろ向きなトランプ政権に対し、温暖化による経済リスクを把握し、適切な対応を取るよう促している。
 
GAOは米政府機関を監視する機関。報告書によると、米政府は過去10年にハリケーンや山火事などの災害支援や保険金の支払い、インフラ復興などで3500億ドル(約40兆円)以上を支出している。
 
GAOはこれまで政府や民間の機関が行った地球温暖化に関する30の研究を見直し、26人の専門家に聞き取りをした。

その結果、東海岸では海面上昇や高潮で海岸沿いの施設のリスクが高くなる一方、中西部は穀物生産が減り、西海岸は山火事や渇水、熱波が増えるとしている。2050年までに、これらの対応のために年間平均350億ドルの支出が必要になるという。
 
GAOは「政府は温暖化に対応するための戦略的な計画を実行していない」と指摘。ホワイトハウスや環境保護局に、リスクを特定し、政府を挙げた対応を取るよう促している。【10月25日 朝日】
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もっと直接的に離脱を批判する報告書も出ています。

****気候変動の原因は人間の活動」、トランプ政権が科学報告書を承認****
米政府は3日、気候変動は人間の活動によって引き起こされている可能性が「極めて高く」、炭素排出量を大幅に削減しなければさらに悪化するとの科学報告書を公表した。
 
連邦法に従って作成されたこの報告書の結論は、地球温暖化は中国のでっち上げだと言い張るドナルド・トランプ大統領の立場とはまったく相容れないものだが、ホワイトハウスは報告書を承認した。
 
この気候科学特別報告書(Climate Science Special Report)は「人間の活動、特に温室効果ガスの排出が、20世紀半ばから観測されている温暖化の主要因である可能性が極めて高い」と指摘し「これに代わる説得力のある説明はない」と述べている。
 
報告書は米航空宇宙局(NASA)やエネルギー省などの米政府機関の支援を受けて、米海洋大気局(NOAA)が編さん。政府機関、大学、民間の50人以上の研究者が共著者になっている。
 
炭素排出量を大幅に削減しなければ、今世紀末までに世界の年平均気温は産業革命前より5度以上高くなる恐れがある報告書は指摘している。
 
海水面は「これからの15年間で数インチ」、「今世紀末までに1~4フィート」(30~120センチメートル程度)上昇するとみられ、世界の海水面が「2100年までに8フィート」(240センチメートル程度)上昇する可能性も排除できないという。
 
報告書の結論は気候科学者にとって意外なものではなく、一般の米国人も既に以前より激しい豪雨、沿岸部での洪水、干ばつ、これまでになく頻発する熱波や森林火災、雪解けの早まりなどを通じて気候変動の影響を感じている。
 
トランプ政権は地球温暖化で化石燃料が果たしている役割を繰り返し否定または軽視してきた。しかしNOAAは、同報告書の公開をホワイトハウスが認めたと発表した。

NOAAによると報告書は政策を提言するものではないが、気候関連のリスク評価と政策決定のための情報提供の基礎になるとしている。【11月4日 AFP】
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“報告書をまとめたメンバーは「政権には、報告書の内容を尊重してほしい」と話しています”【11月4日 NHK】とも。

温暖化対策を否定・軽視するトランプ大統領は、今回報告書を編纂したアメリカ海洋大気局(NOAA)の裁量予算を15.9%、9億ドル(999億円)大幅削減する形で“狙い撃ち”しており、NOAAの方も“意地でも大統領方針には屈しない”といったところでしょうか。

もちろん温暖化に関する議論には多くの異論もあり、その真偽については数年レベルでは判別はできませんが、世の中の専門家の大勢が主張する方向を敢えて否定する大統領の自信がどこから湧いてくるのか不思議です。

自身の任期中に白黒がはっきりする問題ではありませんが、その“根拠なき信念”の影響は将来の全世界に及びます。

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