(寺へ入ることを許されずフェンスの外にとどめられるダリットの人々、フェンスの中で祈りを捧げる僧侶
2004年ネパールの写真ですが、このあとダリットの人々はフェンスをよじ登って寺院に乱入する混乱となったようです。その後、王制廃止、マオイスト政権の誕生などもありましたが、状況は変わったのでしょうか?
“flickr”より By lv20
http://www.flickr.com/photos/ghumneus/100227889/in/set-1388667/)
【魔女の嫌疑をかけられて近所の人から拷問】
インドのカースト制については、その外枠にダリット(不可触賎民、アンタチャブル)と呼ばれる最下層グループがあります。近年では、政府からの援助を目当てにした自称ダリットも多く存在するとも。
それでも、ダリットに対する社会的差別の問題性が薄れた訳でもないでしょう。
先のインド総選挙では、「ダリットの女王」とも称されるダリット出身の女性政治家の動向が注目されました。
一時は、ダリットの首相誕生も・・・とも取り沙汰されましたが、結果的にはダリット以外に支持を広げられずに終わったようです。
インド同様のカースト制の国であるネパールでも、ダリット差別は存在します。
最近目にしたニュースの中でも、特に陰惨なものが下記の記事でした。
****「魔女狩り」被害に遭う下層民の女性たち、ネパール****
ネパールの首都カトマンズから南へ40キロのピュタル村で、カリ・ビスウォカルマさん(47)は、「魔女」であることを白状しろと、近所の人々から2日間にわたり拷問を受けた。
1児の母親であるカリさんは、カースト制度の枠外に置かれる最下層民「ダリット(Dalit)」の出身だ。事の発端は、ある教師が病気になったことだった。家にいたところを35人ほどの村人たちに連れ去られ、牛小屋に閉じ込められ、「(教師に)魔術をかけただろう」と責められながら殴る蹴るの暴行を受けた。さらに、人間の排せつ物を食べることも強制された。次の日にはナイフで傷つけられた。
「もう拷問には耐えられなかった。命だけは助かろうと、魔女であると告白しました。自分が貧しいから狙われてしまったんです」(カリさん)
ネパールでは、毎年数百人のダリット女性が同様の被害に遭っていると見られる。この国では迷信およびカースト制に基づく差別が根強く、大半のコミュニティーが厳格な父権社会のままだ。
ヒンズー教に基づいた君主制国家から現代的な世俗国家に移行するなか、政府は今年を「女性暴力撲滅年」と宣言している。しかし困難な道であることは政府も認めている。
■「女性」と「下層民」がネックに
女性の権利向上を目指してキャンペーンを展開する地元団体によると、女性が魔女の嫌疑をかけられて近所の人から拷問を受けるという事件はこの2年間で少なくとも82件にのぼっている。しかし、家族と共同体から見放されることを恐れて名乗り出ない人も多いため、この数字は氷山の一角と考えられるという。
ネパールの法律は女性への暴力を禁じているが、この団体によると、犠牲者が下層民の場合は法律が適用されることはほとんどないという。
専門家らは、魔女に関する迷信は、女性に暴力を振るうための口実に過ぎないことが多く、標的はほとんど毎回、下層民の女性に落ち着くと指摘する。
先のカリさんは、カトマンズの避難施設で過ごしたあと、村に戻ってきた。「魔女」の烙印(らくいん)は消えたわけではない。「わたしを拷問した何人かがまだ村にいるので恐怖です。尊厳は失ってしまったけれど、希望を捨てたわけではありません。正義のために戦います」【2月11日 AFP】
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こうした最下層女性を虐げる人々も、おそらく決して社会的に恵まれた境遇ではないのでは。
権力者による被支配者への暴力・弾圧は、“いずれ、この体制が変われば・・・”という希望がまだ持てますが、社会的に恵まれていない立場の者が、自分達より弱者に狙いを定め、その人々を虐げる・・・という構図は、人間の心の闇を見る思いがして、救いがありません。
【“テライはマドヘシのもの”】
ネパールには、こうしたカースト制や性差による差別のほかにも、南部平野部(テライ)に居住するインド系住民(マドヘシ)も存在します。
2008年の総選挙に先立っては、政治参加を求めるマドヘシの反乱で社会混乱がありましたが、時の首相が、今後採択される新憲法で連邦制を導入し、南部テライ地方住民の政治参加を拡大する方針、また、各地方の人口に応じた選挙区の新たな配分を行うことで、テライ地方に住むインド系住民マドヘシ族代表の議席拡大が促進されると説明して混乱をおさめようとしたこともありました。
総選挙結果では、南部の平野部のインド系住民らが結成した新党の「マデシ人民の権利フォーラム」と「タライマデシ民主党」が、それぞれ52議席、20議席を獲得して、一定の政治勢力を得たようです。
ただ、総選挙実施について“(治安の悪化している東ネパールのタライ地方を除き)投票率は60%にも達し、選挙は概ね『成功』したと見られている。”との記述も当時の記事に見られましたので、南部マデヘシによる社会混乱は完全には収まっていないようにも見えます。
【現実社会は・・・】
こうした、身分制度による差別、性差別、民族差別、宗教対立・・・など、住民同士の間での差別・憎しみ・暴力が世の中には溢れているのが残念な現実です。
昨夜、TVで映画「ガンジー」を放映していました。
イギリス支配に対する非暴力抵抗を訴えるガンジーは、どのような境遇でも自信に溢れているように見えましたが、独立が決まったのちに起こるヒンズー・イスラムの住民同士の対立・暴力には、なすすべもなくうろたえる老人のようにも見えました。
差別・暴力のない社会を切望しますが、いったいこの文章をどのような言葉で結べばいいのかがわかりません。
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