
(エルサルバドルの巨大刑務所「テロリスト監禁センター(Cecot)」の様子【2月4日 CNN】)
【最高裁 政権が「行政ミス」で強制送還した保護資格持つエルサルバドル人について帰国支援を命じる】
多くのメディアが詳細に報じているトランプ政権が「行政ミス」で強制送還した保護資格持つエルサルバドル人への政権の対応は、トランプ政権の性格・危険性を示しているように思えます。
****米政権、「行政ミス」で移民送還 保護資格持つエルサルバドル人****
トランプ米政権が先月、犯罪組織のメンバーらをエルサルバドルに強制送還した際、保護資格を持つエルサルバドル人男性も誤って送還していたことが1日の裁判所への提出書類で分かった。
政権は「行政上のミス」で送還したと認めたが、この男性がギャング組織MS─13のメンバーだと主張。法的権限がないため、エルサルバドルから帰国させることはできないとしている。
男性の弁護団はギャングメンバーだとする政権の主張に異議を唱え、男性の帰国を求めている。
トランプ大統領は先月15日、ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーを迅速に送還するため、敵対国の市民を拘束して送還する権限を大統領に与える「敵性外国人法」の活用を布告した。
政権は同日、この戦時法に基づき処理された強制送還者を乗せた2便と、他の規則に基づく送還者を乗せた3便目をエルサルバドルに送ったとしている。
1日の提出文書によると、男性はこの3便目に誤って乗せられていた。男性は2019年に裁判所から保護資格を得ていた。【4月2日 ロイター】
政権は「行政上のミス」で送還したと認めたが、この男性がギャング組織MS─13のメンバーだと主張。法的権限がないため、エルサルバドルから帰国させることはできないとしている。
男性の弁護団はギャングメンバーだとする政権の主張に異議を唱え、男性の帰国を求めている。
トランプ大統領は先月15日、ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーを迅速に送還するため、敵対国の市民を拘束して送還する権限を大統領に与える「敵性外国人法」の活用を布告した。
政権は同日、この戦時法に基づき処理された強制送還者を乗せた2便と、他の規則に基づく送還者を乗せた3便目をエルサルバドルに送ったとしている。
1日の提出文書によると、男性はこの3便目に誤って乗せられていた。男性は2019年に裁判所から保護資格を得ていた。【4月2日 ロイター】
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この間違ってエルサルバドルに強制送還された男性はメリーランド州在住だったアブレゴ・ガルシア氏。
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メリーランド州在住だったアブレゴ・ガルシア氏は3月15日、250人以上の移民とともに、エルサルバドルへ送還され、巨大刑務所「CECOT(テロ監禁センター)」に収容された。
トランプ政権は、根拠を示さずにアブレゴ・ガルシア氏はギャング組織「MS-13」のメンバーだと主張している。
しかし、同氏の弁護士は、アブレゴ・ガルシア氏が2011年にアメリカに来た理由は、ギャングの暴力から逃れるためであり、いかなる犯罪も犯していないと訴えている。
また、アメリカの移民裁判所は2019年、地元ギャングから迫害を受ける可能性が高いとして、アブレゴ・ガルシア氏をエルサルバドルへの強制送還から保護する判断を下している。
アブレゴ・ガルシア氏は渡米後にアメリカ市民と結婚して、メリーランド州で板金工として働いてきた。【4月15日 HUFFPOST】
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米連邦最高裁は4月10日、エルサルバドルに送還されたアブレゴ・ガルシア氏のアメリカ帰国をトランプ政権は支援しなければならないと判断しました。
****ギャングと誤り強制送還…移民男性帰国へ政権に支援命じる 米最高裁****
アメリカの連邦最高裁判所は10日、ギャング組織のメンバーだとして誤って強制送還された中米エルサルバドル出身の移民男性について、トランプ政権に帰国に向け支援するよう命じる判断を下しました。
メリーランド州に住むエルサルバドル出身の移民男性は先月、ギャング組織のメンバーだとしてエルサルバドルに強制送還され、刑務所に収容されました。
この男性については、6年前、エルサルバドルに身柄を戻せば命を狙われる危険があるとして、裁判所が強制送還を差し止めた上で保護する措置をとっていました。
トランプ政権は、男性を誤って送還したことを認めたものの、既にアメリカを出国しているため対応しない姿勢を示していました。
ホワイトハウスのレビット報道官は今月1日、強制送還が誤りだったと認める一方、男性が「残虐なギャング組織の一員であった」とする見解を強調していました。【4月11日 日テレNEWS】
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トランプ政権は、アブレゴ・ガルシア氏はギャング組織「MS-13」のメンバーだと主張していますが、根拠を示していません。
なお、アブレゴ・ガルシア氏をエルサルバドルに送還した後、誤りだったと認めた司法省の弁護士はパム・ボンディ司法長官によりその後休職処分になっているとも。「ウソでも何でもいいから誤りを認めるな」というのがトランプ政権の方針のようですが、伝えられるトランプ氏自身の人生指針そのものです。
【トランプ大統領 帰国させない姿勢 「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」】
そのトランプ大統領は最高裁判断直後はこれに従う姿勢を見せていました。
*****「手違い」でエルサルバドルに強制送還 トランプ大統領「連邦最高裁が言うなら連れ戻す」****
アメリカ・トランプ政権が「手違い」でエルサルバドルに強制送還した移民男性について、裁判所が連れ戻しを命じたことを受けて、トランプ大統領は命令に従う考えを示しました。(中略)
アメリカ トランプ大統領
「連邦最高裁が『連れ戻せ』と言うなら私はそうする。私は連邦最高裁を尊重する」
トランプ大統領は11日、このように話し、裁判所の判断に従う考えを示しました。
裁判の中で政権側は「男性の身柄がアメリカにないため、地裁に命令を下す権限はない」などと主張。トランプ大統領は6日、男性について「凶悪なギャングのメンバーでアメリカに戻す必要はない」と話していました。【4月12日 TBS NEWS DIG】
アメリカ トランプ大統領
「連邦最高裁が『連れ戻せ』と言うなら私はそうする。私は連邦最高裁を尊重する」
トランプ大統領は11日、このように話し、裁判所の判断に従う考えを示しました。
裁判の中で政権側は「男性の身柄がアメリカにないため、地裁に命令を下す権限はない」などと主張。トランプ大統領は6日、男性について「凶悪なギャングのメンバーでアメリカに戻す必要はない」と話していました。【4月12日 TBS NEWS DIG】
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しかし、考えが変わったようです。「凶悪なギャングのメンバーでアメリカに戻す必要はない」という従来の主張を貫く姿勢です。
****トランプ大統領 誤って強制送還された男性を帰国させない姿勢****
トランプ政権は誤ってエルサルバドルに強制送還された移民の男性について、アメリカに帰還を求める考えがないことを示しました。
トランプ政権は先月、犯罪組織のメンバーらをエルサルバドルに国外追放した際に、強制送還が免れる保護資格を持つ男性を誤って送還していました。
トランプ大統領は14日、エルサルバドルのブケレ大統領と会談した際に、政権として男性の帰還を求める考えがないことを示しました。
ボンディ司法長官
「彼は違法にアメリカに滞在していました。現在、書類作業が必要になっています。彼をアメリカに送り返すかどうかはエルサルバドル次第です。我々に決定権はありません」
トランプ大統領
「君はとてもよくやっている」
また、ブケレ大統領も「テロリストをどうやってアメリカに密入国させるというのか。私にはアメリカに送り返す権限などない」と述べ、男性を帰還させる考えがないことを強調しました。
ブケレ氏はアメリカから国外追放された犯罪者をエルサルバドルの刑務所に受け入れると提案してきましたが、トランプ氏はブケレ氏を称賛し、可能な限り多くの犯罪者を送り込む考えを示しました。【4月15日 テレ朝news】
トランプ政権は先月、犯罪組織のメンバーらをエルサルバドルに国外追放した際に、強制送還が免れる保護資格を持つ男性を誤って送還していました。
トランプ大統領は14日、エルサルバドルのブケレ大統領と会談した際に、政権として男性の帰還を求める考えがないことを示しました。
ボンディ司法長官
「彼は違法にアメリカに滞在していました。現在、書類作業が必要になっています。彼をアメリカに送り返すかどうかはエルサルバドル次第です。我々に決定権はありません」
トランプ大統領
「君はとてもよくやっている」
また、ブケレ大統領も「テロリストをどうやってアメリカに密入国させるというのか。私にはアメリカに送り返す権限などない」と述べ、男性を帰還させる考えがないことを強調しました。
ブケレ氏はアメリカから国外追放された犯罪者をエルサルバドルの刑務所に受け入れると提案してきましたが、トランプ氏はブケレ氏を称賛し、可能な限り多くの犯罪者を送り込む考えを示しました。【4月15日 テレ朝news】
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エルサルバドルのブケレ大統領は4万人を収容可能な巨大刑務所を作り、ギャングを手当たり次第にここに収容し、結果的に確かに治安は改善しています。
ただ、強引な治安対策の中で人権侵害が相次ぐといった批判もありますが、トランプ大統領はブケレ大統領を賞賛していて、国を超えた治安対策でタッグを組んだ形です。
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かつて殺人事件が多発し中南米でも最悪だったエルサルバドルの治安は、2019年の大統領選で初当選したブケレ氏が非常事態宣言を発令してギャングを一掃したことで劇的に改善。
治安当局による令状なしでの容疑者の拘束を可能とし、約4万人を収容できる巨大刑務所も新たに建設した。欧米メディアによると、この刑務所では外部との面会が一切遮断されるほか、鉄格子越しに24時間監視されるなどの過酷な処遇が行われているという。
メリーランド州で妻子と4人で暮らしていたエルサルバドル国籍のアブレゴ・ガルシアさん(29)もこの刑務所に収監された。
裁判記録によると、母国での暴力から逃れるため10代で米国に不法入国。19年に入管当局に拘束されたが、移民裁判所はガルシアさんが地元でギャングに迫害される恐れがあるとしてエルサルバドルへの送還を禁じ、退去保留の命令を出した。【4月15日 毎日】
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ボンディ司法長官は「彼をアメリカに送り返すかどうかはエルサルバドル次第です。我々に決定権はありません」
ブケレ大統領は「私にはアメリカに送り返す権限などない」
一体誰が責任を持つのか?
トランプ大統領は「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」と開き直り。
****手違いで移民送還、米政権の対応が物議 トランプ氏は開き直り****
(中略)
14日の首脳会談では、記者団から対応を問われたトランプ氏に代わり、同席したミラー大統領次席補佐官が「彼はエルサルバドル市民だ。エルサルバドルに自国民の扱いを指図するのは非常に傲慢だ」と釈明。
ブケレ氏も「テロリストを米国に密入国させることはできない」と応じ、ガルシアさんを帰還させる考えがないことを強調した。
食い下がる記者にトランプ氏は「いつまでこの質問に答えなくてはいけないんだ。犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」と開き直り、「可能な限り(移民を)エルサルバドルに送還したい。大統領にもっと巨大な刑務所を作ってもらえるか尋ねた」と話した。【4月15日 毎日】
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最高裁判断についてボンディ司法長官は“最高裁の判断については、「エルサルバドルがガルシア氏を戻したいのであればトランプ政権は支援すべき、つまり飛行機を用意しなければいけないという意味にすぎない」と主張した。”【4月15日 HUFFPOST】と矮小化しています。
【今後は「移民」だけでなく「アメリカ人の犯罪者」のエルサルバドルへの追放も検討】
「可能な限り(移民を)エルサルバドルに送還したい。大統領にもっと巨大な刑務所を作ってもらえるか尋ねた」・・・・記事では“(移民を)”と補足していますが、今後移民にとどまらない可能性も。トランプ大統領の発言も、“移民だけでなくアメリカ国民犯罪者も”という趣旨だった可能性があります。
****トランプ大統領とエルサルバドル大統領の立ち話が物議 “アメリカ人犯罪者”のエルサルバドル追放を示唆か****
アメリカのトランプ大統領とエルサルバドルのブケレ大統領との首脳会談前の立ち話が物議を醸しています。
14日、ホワイトハウスを訪問したエルサルバドルのブケレ大統領。エルサルバドル政府はそのもようをインターネット中継していました。
大統領執務室に入ってきた両首脳は、ホワイトハウス担当の記者たちが入って来る前に立ち話をしています。すると、トランプ大統領は…
アメリカ トランプ大統領
「次はホームグロウン(国産)だ。でも、あなたは場所をあと5つ作らなくてはいけない。…大きさが十分じゃないしょう」
と話しかけ、周囲から笑いがあがりました。
トランプ政権はアメリカに不法入国した犯罪組織のメンバーらを国外追放し、エルサルバドルが受け入れて巨大刑務所に収容しています。トランプ氏が言及した「ホームグロウン」はアメリカ人の犯罪者のことを意味するとみられ、アメリカ人をエルサルバドルに追放する考えを示唆したと受け取れます。
この発言の真意は定かではありませんが、トランプ氏は直後の首脳会談で「アメリカ人の犯罪者を国外追放のグループに含めたいが、そのためには法律を見なければならないだろう」と話しました。【4月15日 TBS NEWS DIG】
14日、ホワイトハウスを訪問したエルサルバドルのブケレ大統領。エルサルバドル政府はそのもようをインターネット中継していました。
大統領執務室に入ってきた両首脳は、ホワイトハウス担当の記者たちが入って来る前に立ち話をしています。すると、トランプ大統領は…
アメリカ トランプ大統領
「次はホームグロウン(国産)だ。でも、あなたは場所をあと5つ作らなくてはいけない。…大きさが十分じゃないしょう」
と話しかけ、周囲から笑いがあがりました。
トランプ政権はアメリカに不法入国した犯罪組織のメンバーらを国外追放し、エルサルバドルが受け入れて巨大刑務所に収容しています。トランプ氏が言及した「ホームグロウン」はアメリカ人の犯罪者のことを意味するとみられ、アメリカ人をエルサルバドルに追放する考えを示唆したと受け取れます。
この発言の真意は定かではありませんが、トランプ氏は直後の首脳会談で「アメリカ人の犯罪者を国外追放のグループに含めたいが、そのためには法律を見なければならないだろう」と話しました。【4月15日 TBS NEWS DIG】
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「アメリカ人の犯罪者を国外追放のグループに含めたい」と明言していますので、今後、アメリカ人犯罪者もエルサルバドルの巨大刑務所に放り込み、二度とアメリカに戻れないようにする・・・・ことが検討されるようです。
【人権意識が希薄で、真実を捻じ曲げる事もいとわない政権によって決まる「犯罪者」 その先にあるのは・・・】
「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」(トランプ大統領)に賛同する方も少なくないとは思いますが、誰が「犯罪者」かを決めるの法律ですが、その法律を運用するのは政権です。
特に、政治的犯罪については運用次第です。
トランプ政権はハーバード大学に対し補助金打ち切りをてこに、学内での「反ユダヤ主義」の取り締まり強化や、DEI(多様性・公平性・包括性)の理念が反映されたすべての教育プログラム、入学選考基準、職員採用方式などを「能力本位」に見直すよう要求しており、これを拒否したハーバード大学との対立が鮮明になっています。
「反ユダヤ主義」やDEIへの対応の適否は政権が判断しますが、そうしたものが(今は補助金が出るか否かですが)将来「犯罪」扱いになる可能性もあります。政権が嫌う考えの者、政権に従わない者は「犯罪者」扱いされる危険性も
政権の意に沿わない者は、反政府的言動の「犯罪者」扱いに。そしてエルサルバドル送りに。
司法によって保護措置がとられていた者を手違いで強制送還しても、戻す考えはなく、「いつまでこの質問に答えなくてはいけないんだ。犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」。将来的には移民だけでなくアメリカ人犯罪者も。犯罪かどうかの判断は政権次第。
こうした発想の根底にあるのは政権の判断を優先させた人権の軽視です。
トランプ大統領とその政権には「人権・民主主義の視点から、例え大統領であってもやってはならないことがある」という考えが希薄です。 更に言えば、真実を軽視し、都合のいいように捻じ曲げるのもトランプ大統領と政権の特徴です。
言い過ぎとの批判を覚悟で言えば、そうしたトランプ氏の発想の先にあるのは、天安門で政権に抗議した若者らを「暴徒」として戦車で踏みつぶした中国、忌み嫌うユダヤ人をガス室送りにしたナチス・・・・があるように思えます。