(原発事故とは関係ありませんが、泥道を避難する宮城県名取市の住民 “flickr”より By Beacon Radio
http://www.flickr.com/photos/beaconradio/5519144197/ )
【依然制御できず】
東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所における危機的状況については、1号機から4号機が次々に爆発・火災・放射線漏れなどを起こす状況が続いており、運休中の5号機・6号機も温度上昇が伝えられています。
基本的知識を欠いているうえに、詳細な情報が把握できない状態ですので、一体何が起きているのかわからない部分がありますが、今日現在の状態をまとめると以下の記事のようなところです。
****福島第一1~4号機、依然制御できず*****
東京電力福島第一原子力発電所は、計6基の原子炉のうち4基で、放射能漏れや原子炉格納容器の破損が疑われる爆発や建屋火災など、深刻な事故が相次いで発生し、1~3号機で原子炉が十分に制御できない状態に陥っている。
水素爆発により原子炉建屋が大破した1、3号機について、東京電力は、核燃料の「冷却が最優先」として、炉心への海水の注入を続行。だが、圧力容器内が高圧になっていることもあり、「水が入っているかどうかは確認できない」(東電)という。15日午後の段階では、1号機の水位は依然不足しており、燃料棒の約半分が水につからず露出した状態が続いている。
3号機は同日朝に、建屋上部から原因不明の蒸気の発生が確認され、東電が調査を急いでいる。
14日夕から深夜にかけて、炉内の水位が低下し、燃料棒が2度にわたりすべて露出した2号機は15日朝、原子炉格納容器の下部にある圧力抑制室付近で爆発が起きた。海水を注入しているが、水位は徐々に低下し、やはり燃料棒の一部が水につかっていない異常な状態になっている。
一方、東日本巨大地震の発生時には、定期検査中で運転を停止していた4号機も、15日朝になって建屋で火災が発生した。建屋内には使用済み核燃料の一時貯蔵プールがあり、火災事故に伴って、放射性物質の飛散が懸念されるが、現場に近づけないため、十分に状況を把握できていない。
福島第二原発で、4基の原子炉のうち4号機だけが、冷却水が100度を下回る状態で安全に停止できていなかったが、15日朝に安全停止が確認された。【3月15日 読売】
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【4号機 建屋破損で高濃度放射性物質の大量放出の危険も】
定期点検中で、使用済み核燃料がプールに保管されていた4号機は、午前6時14分に爆発音がした後、東京電力社員が北西側の壁に8メートル四方の穴があいているのを確認したと報じられています。
****4号機、放射性物質を隔てるのは建屋のみ****
福島第一原発4号機の使用済み燃料プールの火災はこれまでの爆発事故より深刻だ。プールは原子炉圧力容器や格納容器の外にあり、外部と隔てるのは鉄筋コンクリート製の建屋しかない。1、3号機と同様に水素爆発が起きて建屋が吹き飛び、高濃度の放射性物質が大気中に大量に放出される恐れがある。
使用済み燃料は原子炉で燃やした核燃料を貯蔵しておくプールで、原子炉の隣にある。しかし、使用済みでも燃料は熱を帯びており、1時間あたり数トンの水が蒸発している。このため、常に水を補充して冷まさなければならない。今回、電源切れで水の補充が止まり水が蒸発したとみられる。このため使用済み燃料がむき出しになり、燃料を覆う合金から水素が発生し、酸素と反応して爆発したとみられる。
対策は、速やかにプールに水を注入して使用済み燃料を十分に水で冷やすことだ。4号機は地震前から原子炉が停止中だったため水を入れるのは1、3号機より容易だ。
しかし、すでに建屋内で火災が起きて一部損壊。高濃度の放射性物質が外に出ているとみられている。作業員の被曝(ひばく)の問題から作業は難航するとみられるが、建屋が水素爆発で吹き飛ぶことは防がなければならない。
専門家は、建屋の大爆発で大気中に高濃度の放射性物質が大量に飛散するのを防ぐ対策が最も重要だという。 【3月15日 朝日】
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【2号機 格納容器も一部破損か?】
放射性物質封じ込めの最後の砦でもある格納容器損傷の可能性も指摘されている2号機の問題については、専門家の間でもいろんな見方があるようです。
****爆発音の2号機、何が起きた?…専門家の見方*****
東京電力福島第一原子力発電所2号機で、15日朝に確認された大きな爆発音。
原子力の最後の安全を確保する仕組みに重大な損傷が起きたのか。放射性物質が外部に大量に漏れ出す可能性もある。専門家の様々な見方をまとめた。
原発で最も大事なのは、放射性物質の封じ込めだ。
今回の爆発では、原子炉の格納容器に何らかの損傷が起きたのでは、という指摘が専門家から出ている。
京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)は「圧力抑制室の圧力が大気圧と同じまで下がったというのは破損がそれだけ大きく、放射性物質が外部へかなり漏れ出たとみえる。格納容器とつながっているため、まさに『格納容器の部分破壊』とでも言える深刻な事態だ」と語る。
元原子力安全委員の住田健二・大阪大名誉教授も「格納容器が健全であることを前提にしてきたこれまでの考え方とは異なる状況になった」と話す。(中略)
渥美教授(近畿大原子力研究)によると、圧力抑制室は格納容器と配管でつながってはいるが、別の空間との見方もできる。そのため、今回は抑制室だけで水素爆発がとどまったと考えられるという。
一方で、藤家洋一・元原子力委員会委員長は「圧力抑制室の圧力が低下したことは、放射能を含んだ水が漏れだしていることを意味する。原子力の安全を確保する三本柱のうち最後の『閉じこめる』に問題が生じ、深刻だ。水素は空気よりも軽いため、格納容器の下部にある圧力抑制室にたまって爆発することは考えにくい」とみている。【3月15日 読売】
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枝野官房長官は、第3号機付近で最大400ミリシーベルトと一般人の年間被ばく量1000マイクロシーベルトの400倍と人体に影響ある放射性濃度を検出したことを明らかにしていますが、TV報道によると、第一原発の中央制御室の放射線レベルが高すぎて東電社員が常駐出来ず交替で作業にあたっているとのことで、そのことが現在の危機的状況を物語っています。
なお、東京都は15日、新宿区内で同日午前に実施した放射線量調査で、通常の最大21倍の放射線を検出し、最大値は0.809マイクロシーベルトだったと発表しています。これについて、都は「ごく微量で、人体に影響を及ぼすレベルではない」としています。
【「撤退などありえない」】
次から次に重大なトラブルが発生する状況に官邸も苛立ちを募らせているようです。
****「覚悟決めてくれ」首相、東電に 危機管理、後手後手****
東京電力福島第一原子力発電所で相次ぐ事故を受け、菅内閣は15日早朝、政府と東電が一体で危機対応にあたる「福島原子力発電所事故対策統合本部」(本部長=菅直人首相)を設置した。二転三転する東電の対応に危機感を抱いたためだが、地震発生から5日目、高濃度放射性物質が放出される恐れがある事態になるまで対応は後手に回り、政権の危機管理能力の欠如が露呈した。
菅首相は15日午前5時40分、首相官邸から東京・内幸町の東電本店2階の統合本部を訪れ、「テレビで爆発が放映されているのに、官邸には1時間くらい連絡がなかった。一体どうなっているんだ」「あなたたちしかいないでしょう。撤退などありえない。覚悟を決めて下さい。撤退した時は、東電は100%つぶれます」と強調した。(中略)
依然として官邸の事態把握と情報提供は混乱が続いている。
そんな政府の対応に、与党・民主党内からも批判の声が強まっている。参院若手は「官邸は何か隠しているのではないか」。会見のたびに「安全だ」と繰り返す枝野氏らの発表を問題視する意見が党所属議員から党地震対策本部に相次いで寄せられているため、民主党は15日午前8時15分、官邸に文書でこう申し入れた。「最悪の事態を想定して、住民がどういう避難などをすべきか情報開示してほしい」【3月15日 朝日】
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「撤退などありえない。覚悟を決めて下さい」と言うのも、玉砕覚悟の死守を命じる旧日本軍の指示みたいで、東電社員には気の毒でもありますが、「あなたたちしかいないでしょう。」というのも事実です。
なお、多少言い過ぎたと思ったのか、菅首相は会見では東電社員の献身的努力を高く評価していました。
【「安全だと言われれば、危険だと思っていても信じてやるしかなかった」】
一方で、作業に協力している自衛隊からは不安・不満も出ています。
****安全のはずが命がけ…怒る自衛隊・防衛省****
放射能汚染の懸念が一層高まる事態に、自衛隊側からは怒りや懸念の声が噴出した。関係機関の連携不足もあらわになった。
3号機の爆発で自衛官4人の負傷者を出した防衛省。「安全だと言われ、それを信じて作業をしたら事故が起きた。これからどうするかは、もはや自衛隊と東電側だけで判断できるレベルを超えている」。同省幹部は重苦しい表情で話す。
自衛隊はこれまで、中央特殊武器防護隊など約200人が、原発周辺で炉の冷却や住民の除染などの活動を続けてきた。東電や保安院側が「安全だ」として作業を要請したためだ。
炉への給水活動は、これまで訓練もしたことがない。爆発の恐れがある中で、作業は「まさに命がけ」(同省幹部)。「我々は放射能の防護はできるが、原子炉の構造に特段の知識があるわけではない。安全だと言われれば、危険だと思っていても信じてやるしかなかった」。別の幹部は唇をかんだ。【3月15日 読売】
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危機的状況が連鎖・続発する事態に、海外からは「米国のスリーマイル島の事故(79年)より深刻だ」との見方も伝えられていいます。
****東日本大震災:スリーマイル以上と仏原子力機関 原発事故****
フランス原子力安全機関(ASN)のラコスト総裁は14日、日本の福島第1原発の事故について「米国のスリーマイル島の事故(79年)より深刻だ」との見方を示した。AFP通信が伝えた。
総裁は日本が事故の深刻度を、国際原子力機関(IAEA)が決めた8段階の尺度で「4」としていることについて、「(さらに深刻な)5以上で、6程度との感触がある」と指摘。この判断は「日本側からの情報に基づくものだ」とした。スリーマイル島事故はレベル「5」に指定されている。
一方、総裁は日本の事故について、旧ソ連のチェルノブイリ事故(86年)のレベル「7」よりは深刻でないとの見方をしている。【3月15日 毎日】
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【望まれるタフなシステム】
今は現在の危機的状況の沈静化に全力をあげるときですが、今後について考えると、想定外の巨大津波で冷却系がすべてストップしてしまった今回事態を反省して、災害時にも機能しうるシンプルでタフなシステムの構築が望まれます。
中国の新型原発は、原子炉の上部に数千トンの水をためるようになっており、非常時には動力を使わず、重力で水が落下して冷却する仕組みであるため、中国原発専門家は今回のような問題は起きないとしています。
そうしたシステムの安全性についてはまたいろいろ意見もあるところでしょうが、何か今までとは異なる発想の安全確保の仕組みを付加する必要がありそうです。
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