孤帆の遠影碧空に尽き

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イギリスEU離脱の新合意 “見通しがやや改善した”といったころか まずは明日の議会承認 

2019-10-18 23:14:56 | 欧州情勢

(10月17日、英野党・労働党のコービン党首(写真右)は、英国のEU離脱に関する新たな合意に労働党は不満だと述べた。写真は14日、英議会で女王演説を聞くコービン氏とジョンソン首相。【1017日 ロイター】)

 

【新合意で何が変わったのか?】

迷走していたイギリスのEU離脱について、あまり期待されていなかったイギリスとEUの合意が急遽成立しました。ただ、各メディアが一様に報じているように、イギリス国内の議会承認が得られるかどうかは不透明な状況です。

 

まあ、それでも「合意なき離脱」回避に向けた大きな一歩ではあるでしょう。

 

****ゴールドマン、「合意ある英EU離脱」の確率を65%に引き上げ****

ゴールドマン・サックスは、英国と欧州連合(EU)が新たな離脱協定案で合意したことを受けて、「合意ある離脱」の確率を60%から65%に引き上げた。

同協定案は英議会で承認する必要がある。

「合意なき離脱」の確率は15%から10%に引き下げた。EU離脱が実現しない確率は25%で据え置いた。

10月31日までに合意ある離脱が実現するというのが、引き続き基本シナリオという。【1018日 ロイター】

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合意内容については、あまり詳しく報じられてはいませんが(細かい内容は、イギリス以外の国にとってはあまり関心も高くないので)、一体これまでと何が変わって合意が成立したのか・・・そのあたりは、地元イギリスのBBCから。

 

****英・EUが合意した新しい離脱協定 その内容は?*****

(中略)あらゆる関係者が、EU離脱後にアイルランドと北アイルランドに「厳格な国境管理」を敷くことを避けようとしていた。検問所は武装勢力の標的になるおそれがあるからだ。

 

しかし、あらゆる関係者が受け入れられるような解決策を見つけるのは、非常に困難だった。

 

新協定案ではこの問題について、テリーザ・メイ前首相の離脱協定にあった「バックストップ」を削除し、新たな施策を設けた。一方、それ以外についてはほとんど同じ内容だ。(中略)

 

<変更された点>

関税

イギリス全体がEUの関税同盟から離脱する。つまりイギリスは今後、世界各国と個別に通商協定を結ぶことができる。

 

法的には、北アイルランドとEU加盟のアイルランドの間に関税の境界線ができることになる。しかし、税関検査は北アイルランドの「玄関口」で行われるため、実際に関税の境界線が引かれるのはアイルランド島とグレートブリテン島の間になる。

 

グレートブリテン島から北アイルランドに入ってくる物品に対して、自動的に関税が課されることはない。

しかし、そこからさらにアイルランドへ輸送される「危険」がある物品については、関税を支払う必要がある。

 

この「危険」については、イギリスとEUの代表による共同作業部会が後ほど定義を決めることになっている。

 

関税を支払った物品が、最終的にEU圏内に入らない場合もあり得る。イギリスはこうした場合に払い戻しを行うかどうかの責任を負うことになる。

 

一方、一般人に対しては持ち物検査は行わず、個人間の発送品には関税が適用されない。(中略)

 

物品についての規制

物品の規制については、北アイルランドはイギリスのルールではなく、EU単一市場の規則に従う。

これにより、アイルランドと北アイルランドの国境での基準や安全の検査を省くことが可能になる。

 

しかし、北アイルランドと、EU単一市場から離脱した残りのイギリスの間で検査が発生することになる。

 

規制の遵守

北アイルランドの「玄関口」での検査はイギリス側の職員が行うが、EUには職員を派遣する権利が与えられる。

協定案によると、EU側がイギリス側の職員の判断を覆すことができるようだ。(中略)

 

北アイルランドの「同意権」

新協定に基づけば、北アイルランドはブレグジット後、関税などの側面で残りのイギリスと違う扱いを受けることになる。そのため、北アイルランド議会にはこれらの条項について可否を問う権利が与えられる。

 

協定案では2020年末まで離脱の移行期間が定められており、最初の投票は移行期間の終了からさらに4年後、つまり20251月以降に行われることになっている。

 

北アイルランド議会が一連の条項を否決した場合、同議会はその2年後に同意権を失う。その一方、この2年の間に「共同作業部会」がイギリスとEUに対し「必要な措置」について助言を行う。(中略)

 

付加価値税(VAT

日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)について新協定案では、北アイルランドにはEU法を適用するとしている。ただし対象となるのは物品のみで、サービスには適用されない。

 

これにより、北アイルランドとイギリスの残りの地域では異なるVAT税率が適用される可能性がある。通常、EU法はこうした事例を認めていない。(後略)【1018日 BBC】

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全体的な印象としては、北アイルランドがイギリス本土から切り離され、アイルランドとの関係性がより重視されたようなイメージです。

 

それは、ジョンソン政権が議会承認を乗り切る上で頼みの綱ともなる、北アイルランドのイギリスとの一体性を最重視するプロテスタント系地域政党「民主統一党(DUP)」がもっとも嫌っていたことではないでしょうか。

 

****ブレグジット合意、現状では支持できず=北アイルランドDUP****

北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)は17日、ジョンソン首相と欧州連合(EU)が提案しているEU離脱(ブレグジット)を巡る合意について、現在の形では支持できないと表明した。

DUPのフォスター党首とドッズ副党首は声明で「現状では、税関と同意に関する問題で提案されていることを支持できない。VAT(付加価値税)についても明確さに欠ける」と表明。

「我々は引き続き政府と協力し、英国の経済・政体面の一体性を保ち、北アイルランドのためになる分別ある合意を目指していく」と述べた。【1017日 ロイター】

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上記のような内容ですから、DUPが反対するのは当然として、むしろ「我々は引き続き政府と協力し・・・」と、今後の妥協への含みも持たせているあたりの方が興味深いところです。

 

【不透明な議会承認の行方】

新たなEU離脱案の採決は19日、英下院で行われます。

 

“英メディアによる事前の票読みでは賛否が拮抗(きっこう)し、可決・否決のどちらに転んでもおかしくない状況だ。首相は態度を明らかにしていない議員らに働き掛け、賛成票の上積みに全力を挙げる。”【1018日 時事】

 

****ジョンソン英首相、メイ氏の「二の舞い」か 与野党の賛同得られず****

欧州連合(EU)離脱をめぐり、英国とEUは17日、離脱協定案を実務レベルで合意し、10月末の離脱に向けて大きな山を越えた。

 

だが、EUから円満に離脱するには、英議会で協定案の承認を得ることが必要だ。英議会で承認されなければ、EUと合意した協定案を議会で3回否決されたメイ前首相の二の舞いになりかねない。

 

「(EUと合意した協定案を)支持できない」

ジョンソン氏率いる与党・保守党に閣外協力する英領北アイルランドの民主統一党(DUP)は17日、こう強調した。(中略)

 

保守党の議席数は現在、DUPと合わせても半数に満たない。DUPは10議席ながら、アイルランド問題で発言力が強く、野党への影響力もあるとされる。ただ、最大野党・労働党のコービン党首は17日、協定案を支持しないと話した。

 

DUPが離脱の可否の鍵となるだけに、ジョンソン氏はEUと交渉しつつ、DUP幹部とも話し合いを進めてきた。しかし、EUかに譲歩した結果、最終的にDUPの意向に沿わない結果になったとみられる。

 

メイ氏もDUPの賛成を得られず、協定案を否決され続けただけに、英BBC放送は「ジョンソン氏も同じ運命をたどるとEUは心配している」と指摘した。

 

英国では19日までに協定案が議会で承認されない場合、離脱期限を延期するようEUに求めることをジョンソン氏に義務づける新法が成立している。

 

ジョンソン氏はEUと合意できなくとも10月末で離脱する構えを示してきた。だが、協定案が可決されなければ、同法に従わず、実際に離脱を強行するか、姿勢を転じて離脱の延期を申請するか、厳しい判断を迫られる。

 

一方で、ジョンソン政権は、円満な離脱を望む無所属議員や労働党の離脱派の議員に賛成票を投じるよう呼びかけており、英議会で協定案が可決するシナリオも考えられる。

 

ただ、英議会で協定案が承認されても、協定を実行するための関連法を上下院で可決させるなどの手続きが必要だ。10月末に間に合わない事態も考えられ、離脱準備に必要な短期間の延期をEUに求める可能性もありそうだ。【1018日 産経】

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民主統一党(DUP)さえ反対論を控えれば、北アイルランドをEUに差し出してイギリス本土は関税同盟を抜けるということで、与党内離脱強硬派の賛同は得やすいのかも。

 

“ジョンソン氏は、与党強硬派の支持を取り付けたもようだ。さらに労働党内の一部強硬派や、無所属議員らを取り込んで過半数を狙う。”【1017日 時事】とも。

 

合意内容もさることながら、おそらくイギリス国内も迷走・長期化する離脱論議に“うんざり”しているところもあるでしょうから、「この際、もう新合意でいいじゃないか」という雰囲気も生まれるのではないでしょうか。

その点では、議会承認クリアの可能性が強まるのかも。

 

【否決された場合は? EUは延期を認めるのか?】

もし、否決された場合、「同法に従わず、実際に離脱を強行するか・・・・」という法律無視が許されるのでしょうか?

(まあ、許されないのでしょうが、許されないことを強行した場合、どうなるのか?という問題でしょう)

 

離脱の延期を申請した場合、EU側はこれを承認するのか?

 

“ジョンソン氏が議会に拒絶されたという理由だけで、選挙で有権者に問う代わりに合意なき離脱を押し通すのは政治的に難しい。それに、任期満了を控えたジャンクロード・ユンケル欧州委員長は離脱延期があり得ないことを示唆したが、EU各国の政府がこれを支持すれば驚くべきことだろう。事実上、EUによる英国追放を意味するからだ。”【1018日 WSJ】

 

EUによる離脱延期拒否・イギリス追放はないだろう・・・というのが大方の見方のようですが、EU内部にも“もう、これ以上イギリスの迷走につきあうのはうんざりだ。出ていきたいなら好きにしたら?”という空気があるのも事実でしょう。

 

****英離脱「延期認めるべきでない」独仏で6割 EU世論調査****

9日付仏紙ルモンドが掲載した欧州連合(EU)6カ国世論調査によると、英国の離脱延期を「EUは認めるべきでない」とする意見が5カ国で50%を超えた。

 

調査は独仏、スペイン、アイルランド、ポーランド、オランダで行われた。英国のEU離脱は10月31日が期限で、延期を「認めるべきでない」とする意見はドイツが最多で66%だった。フランスとスペインの両国で57%、アイルランドで56%。唯一半数を下回ったのはオランダで、47%だった。(中略)

 

同紙は「英国のEU離脱をめぐる混乱で、うんざりする気分が広がっている」と分析した。(後略)【109日 産経】

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もちろん「合意なき離脱」はEU側にも大きなコストを伴いますが、はっきりしない状態が続くのも企業にとっては困ります。

 

“EU側には「離脱騒動」への疲れも見える。当初、英国のEU離脱は3月末に予定され、企業はこれに合わせて人員や拠点の移転、さらに在庫調整を進めてきたからだ。英国の対岸に位置するオランダのカーフ貿易・開発協力相は9月、地元紙のインタビューで「もうたくさんだ。先の見えない不安が続くより、損害に対処する方がいい」と述べ、さらなる離脱延期に否定的な考えを示した。”【1017日 産経】

 

更に言えば、ジョンソン首相が何が何でも離脱したいと思うのなら、EUが延期を拒否してくれたら好都合でしょう。

 

実際、9月段階では、そのような働きかけも報じられていました。

 

****英首相、離脱延期拒否でハンガリー説得も-「合意なき」危険高まる****

ジョンソン英首相が、欧州連合(EU)への英政府による離脱延期申請を拒否するようハンガリーを説得しようとしているとEU当局者は懸念している。そうした動きは「合意なき離脱」のリスクを著しく高める。  

 

英国では9日、1019日までにEUとの新たな合意がまとまり議会が承認するか、合意なき離脱で議会の同意を確保できない場合、31日の離脱期限の延期をEUに申請するようジョンソン首相に義務付ける離脱延期法が成立。首相は先週の段階で、離脱を延期するくらいなら「野垂れ死に」した方がましだと語った。

  

「合意なき離脱」を回避するには101718日に開かれるEU首脳会議で、英国を除く加盟27カ国が離脱交渉期間の延長を全会一致で承認する必要がある。(中略)

  

ハンガリーのオルバン首相は、難民支援を犯罪とする国内法や民主主義の制限を巡りEUと対立している。ジョンソン氏がオルバン氏の説得に動くことをEU当局者は心配し、EU首脳会議で同意に反対する誰かの拒否権行使を阻止する手段がほとんどないことをひそかに認めた。

  

英政府はオルバン氏を欧州のエスタブリッシュメント(既存勢力)に立ち向かう盟友と見なしているとEU当局者は考えているという。

  

ハンガリーのシーヤールトー外務貿易相は英国からの離脱延期要請について、「そのようなリクエストがあれば、わが国の意思で決定を行う。幾つかの西欧の大国はこれを終わらせ、何とかはっきりさせたいと切に望んでおり、この問題で鍵を握るのは、わが国の決定では恐らくないだろう」とブダペストでのインタビューで発言した。【913日 Bloomberg

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おそらく、ハンガリー・オルバン首相も“拒否権”を発動して、イギリス追放の全責任を一身に背負うことは好まないでしょうが、同調者が見込めるなら旗振り役にはなるのかも。

 

【議会承認されても、課題も多く、時間も必要】

合意案が議会で承認されて「離脱」が進んだとしても、“先は長い”のが実情で、市場は“手放しで喜ぶ”状態でもないようです。

 

****ブレグジットと米中貿易、「合意」でも消えぬ問題 ****

ほんの数カ月前なら、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をめぐる協定案合意のニュースは、サダム・フセインと握手している写真と同じくらい投資家に歓迎されただろう。

 

ボリス・ジョンソン英首相とEUが合意した新協定案は、輸出業者が課される煩雑な手続きを増やす上、EUの規制や労働基準は緩和されず、しかも英議会の承認を得られない可能性がある。(中略)

 

いずれにせよ、ブレグジットと米中貿易が前進したとしても、さほど救いにならない。企業は引き続き英国での支出について、対EU貿易の条件がはっきりするまで決定を先送りするだろう。

 

それに何年もかかったり、移行が長引いて政治的議論が絡んだりすることも考えられる。ほぼ何も解決していないのだ。(中略)

 

そしていま言えるのはせいぜい、見通しがやや改善したということだ。【1018日 WSJ】

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何はともあれ、まずは明日19日の議会承認がどうなるのか・・・・話はその結果で大きく変わります。

 

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