孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北極海の海氷が消える日も近い? そのとき世界は・・・

2013-12-18 22:19:12 | 環境

(【12月17日号 Newsweek日本版】)

いずれにしろ残された時間は少なく、事態は極めて深刻だ
寒さも本格化する今日のこの頃、“地球温暖化”と言われてもいまひとつ切実感がありません。「温暖化が進めば、冬も暖かくなって過ごしやすいかも・・・」なんて馬鹿なことを考えたりします。

そんな戯言はともかく、何十年、何百年という長い時間をかけて変化していく現象ですから、日々の生活に追われる者にとってはとらえどころがないのも正直なところです。

ただ、そうした長い年月をかけてつくりだされる現象ですから、「やっぱり、これはまずいかも・・・」と気づき、もとへ戻そうととしても、その時にはもうどうにもならない・・・ということでもあります。

温暖化の影響が目に見える形でわかりやすいのは、北極海の海氷の状態とかヒマラヤの氷河の変化などです。

北極海の海氷が縮小している・・・といういのは以前から指摘されているところで、資源開発や新航路開拓などの動きなども併せて、このブログでも何回か取り上げたことがあります。

今までも指摘されきた問題ではありますが、“早ければ2015年に北極海の氷が完全に解けてなくなるかもしれない”と言われると驚きます。“2015年”はともかく、“何十年、何百年”というより早いペースのようです。

****北極が消える*****
ただでさえ異常気象が続く世界に、衝撃のニユースがある。

英ケンブリッジ大学の海洋物理学教授で海氷研究の権威であるピーター・ワダムスが、早ければ2015年に北極海の氷が完全に解けてなくなるかもしれないと警鐘を鳴らしているのだ。

北極の気温上昇が進むにつれて、異常気象が深刻化し海面の水位がさらに上昇するなど、地球規模で環境の変化が加速する恐れが高まっている。

世界の気候が激変する可能性がある。これまで夏も氷に覆われていた北極海から海氷がなくなれば、海水が太陽光をふんだんに吸収して水温は上昇する。海から立ち上る水蒸気で低気圧が発達する。そうした異変が地球全体に津波や干ばっなどの被害を及ぼしかねない。

一方、人間は大惨事の足音をよそに、以前はアクセス不能だった北極の資源確保に目の色を変えている。氷が小さくなって現れた海面上には、資源運搬船や軍艦、石油の掘削装置などが急増している。・・・・【12月17日号 Newsweek日本版】
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いくらなんでも“2015年”はないだろう・・・とも思いますが、残された時間は多くないというのが科学者の見方です。

****ほかの科学者もその日が近いという点で意見は同じ****
科学者たちは北極の氷が小さくなっていくのを止めることはできないとみている。
問題は、いつ完全になくなるのかだ。

地球は恐ろしいことになろうとしている」と、ワダムスは昨年イギリス議会で証言した。

2015年までに夏の海氷がすべてなくなると予測するのはワダムスだけだが、ほかの科学者もその日が近いという点で意見は同じだ。

英エクセター大学の気候変動/地球システム科学部を率いるティム・レントン教授は、「当て推量だが、夏の氷が完全になくなる最初の年は2030年頃か、あるいは2020年かもしれない。いずれにしろ残された時間は少なく、事態は極めて深刻だ」。【同上】
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“北極の気温は、地球の平均気温の倍の速さで上昇している。これは「これから世界で起こることの強力なシンボルだ」”(NASAゴダール宇宙研究所の気候学者、ギャビンーシュミット)

もちろん、自然現象ですから、毎年測ったように・・・という訳ではなく、大きな波・変動があります。
今年の北極圏の海氷はかなり多かったようです。

****北極圏の海氷の量、前年比50%回復****
北極圏の海氷の量が10月、前年比で約50%回復したと16日、欧州宇宙機関(ESA)が発表した。夏に広い範囲で氷が溶けずに残ったことを受けたものだという。

海氷を観測しているESAの地球観測衛星「クリオサット2(CryoSat-2)」が10月に計測した北極の海氷は約9000立方キロメートルだったが、前年同月の海氷の容積は約6000立方キロメートルだった。
1年以上溶けないで残る氷の厚さが昨年よりも約30センチ上回り、20%厚みを増していたことが大きく影響した。

北極の夏の海氷面積は2012年に観測史上最低まで落ち込んだが、今年の夏は最低から6番目にまで回復していた。

海氷の量が回復したことは歓迎すべきだが、長期的な現象を逆転させるまでには至らないと科学者たちは述べている。

今回の論文の共著者で英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のアンドリュー・シェパード教授は「1980年代には毎年10月に約2万立方キロメートルあったとされる北極圏の海氷が、現在は過去30年間で最も少ない水準だ」と警告している。【12月17日 AFP】
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減ったり、増えたりを繰り返しながら、長期的には“Xデー”に向けて進行していくということになります。

北極が消えたとき何が起こるのか?】
北極の氷がなくなることによる世界中の人々や生態系への影響を主なもの3つが挙げられています。

****1.異常気象の頻発と食糧難****
北極圏の気温が上がれば、それよりも低緯度の地域との温度差が縮小し、そのために偏西風が弱まると考えられる。北半球では通常、偏西風の影響で天気は西から東へと変わっていくが、この動きが遅くなるだろう。

その結果「より激しく、より長期にわたる豪雨、干ばつ、熱波、寒波」が起きると国連環境計画(UNEP)の報告書は警告している。2010年夏にロシアを襲った記録的な熱波、11、12年の北米での長期的な干ばつはその例だ。・・・・【同上】
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先日、フィリピンを襲ったスーパー台風の記憶もまだ新しいものがありますが、あのようなスーパー台風が日本を直撃することも起きてくるのでしょう。

異常気象による農業生産被害がもたらす食糧難・食糧価格上昇は、世界中の社会、特に今でも不安定な途上国における貧困層の生活を更に難しくし、暴動の多発などで社会を揺さぶります。

****2.海面上昇と難民の急増****
北極の気温上昇により、グリーンランドの氷床の融解が大幅に加速する。「グリーンランドでは年間300立方キロのペースで氷が解けている」と、ワダムスは言う。

「それだけでも世界の海面上昇が2倍も速まる。南極の氷の融解も引き続き加速すれば、22世紀までに海面は1メートル以上、ひょっとすると2メートル上昇するだろう」

これは「とても、とても深刻な事態だ」とワダムスは言う。真っ先に打撃を受けるのは中国東部やバングラデシユなど沿岸部の低地に住む人々だ。

防潮堤などの人工のバリアを建設しない限り、海面が90センチ上がれば、1億4500万人の生活が脅かされる。
東京、上海、ニューヨーク、ロンドンなど世界の主要都市、それにマニラ、ジャカルタ、ダッカなどアジアの首都が洪水に見舞われる恐れがある。(中略)

ワダムスが指摘するように、洪水被害が予想される沿岸部の住民は内陸部に生活拠点を移そうとするだろう。
こうした「難民」の急増で社会的な軋軋轢が高まり、暴力的な抗争も起きかねない。

米軍と英軍が気候変動を21世紀の主要な安全保障上の脅威としているのもそのためだ。【12月17日号 Newsweek日本版】
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22世紀は、沿岸住民と内陸部住民の“住む場所”をかけての抗争の時代になるかも・・・。
海面が1~2mも上昇すれば、キリバスなど消えてなくなる島国もあります。日本地図も大きく変わります。

****3.氷の融解でメタンを放出する****
北極の気温上昇で永久凍土が解け、地中や海中に閉じ込められていたメタンが漏れ出しており、大気中に大量の温室効果ガスが放出される恐れがある。(中略)大気中に放出されたメタンガスは、二酸化炭素の23倍も強力な温室効果を発揮する。

世界の海にも大量のメタンが含まれている。海底のメタンは低温・高圧下でシャーペット状のメタンハイドレートとして眠っているが、北極海の水温上昇とともに気化して放出されるメタンガスも急増している。

権威ある学術誌ネイチャー・ジオサイェンスに先月発表された論文で、シャコフらは東シベリアの海底からこれまでの予測の2倍以上の年間1700万トンのメタンが放出されていると報告した。

氷融解は経済的時限爆弾
経済的打撃も甚大だ。北極圏の永久凍土が解けて大量のメタンガスが放出された場合、その影響は60兆ドルに上る・・・そんな研究論文が今年、英科学誌ネイチャーに発表された。

これまで見過ごされてきたが、北極は海や気候など地球のシステムの中枢的な役割を果たす存在。そこでの氷融解は「経済的な時限爆弾」のようなものだと、論文執筆者の1人であるオランダのエラスムス大学のゲール・ホワイトマン教授は言う。(中略)

北極の気温上昇が進み、大量のメタンガスが放出されると、それによってさらに気温上昇とメタンガスの放出に拍車が掛かり、事態は悪化の一途をたどる。
北極でこのドミノ現象が始まることが最も心配だと科学者たちは言う。そうなればもう歯止めは利かない。【同上】
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“メタンハイドレート”は日本の新たなエネルギー資源として注目されていますが、「日本海の広い範囲に存在する可能性がある」と、喜んでばかりはいられないようです。

“だが、まだ間に合う。流れを変えれば、損害は抑えられる。・・・未来の世代のために今すぐ手を打つ必要がある”【同上】とのことですが、11月末に行われた国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)の様子を見ると、相変わらず先進国と途上国の対立が続いており、有効な対応策には程遠い状況です。

目先の利益に狂奔する国々
一方で、北極海の海氷減少に伴う資源開発・新航路開拓については、周辺国・関係国がすでにザワザワと騒ぎ初めています。

****北極海航路が活況、ロシアの思惑は****
北半球が冬に入り、アジアとヨーロッパをつなぐ最短の海上ルートが、間もなく今年のシーズンを終えようとしている。

ロシア沖合の北極海を経由する全長およそ4800キロの「北極海航路(NSR)」は近年、地球温暖化の影響により夏場は解氷が進み、数カ月間限定で商業運行が具体化した。

ロシアの原子力砕氷船団を運用する国営企業ロスアトムフロートによると、今年、大西洋側のバレンツ海と太平洋側のベーリング海峡を結ぶロシア沿海の北東航路を航行した船舶は71隻で、昨年と比較して50%以上の増加だという。

総数としてはまだ小規模だが、わずか4隻だった2010年からは飛躍的な成長を遂げている。なお、NSRを通る際には、ロスアトムフロートの砕氷船の伴走が義務付けられており、手数料を支払う必要がある。(中略)

NSRを利用すれば、ヨーロッパから東アジアの航行距離は35~60%短縮されるという。また、アフリカ沿岸部やマレーシアのマラッカ海峡など、紛争地域や海賊の危険回避も可能だ。ただし航行可能な水域の水深によって、NSRを通過する船舶には喫水制限があり、ロシアから通行許可を得る必要もある。

また、氷が後退したといっても、北極海の気象は非常に過酷で、予測が難しい。視界が悪い上に、風で移動する氷況変化が激しく、予想もできない遅延が生じる恐れがある。
「国際的な商用航路として不的確」と考える専門家も少なくない。(中略)

◆経路ではなく目的地
ブリガム氏をはじめとする一部の専門家は、NSRが「経路」ではなく「目的地」として重要になると考えている。未発掘の石油・天然ガス資源の22%がこの地に眠っているからだ。(中略)

当海域では、ロシアの半国有企業、ガスプロムと民間企業のノバテクが、石油・天然ガス開発でせめぎ合いの真っ最中だ。
ガスプロムが所有する海上石油掘削基地は、グリーンピースの格好の標的となり、エネルギー開発が北極海の環境や地球温暖化に及ぼす影響が懸念されている。(後略)【12月3日 NATIONAL GEOGRARHIC】
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ロシアのプーチン大統領は、極東サハ共和国沖の北極海にあるノボシビルスク諸島に約20年ぶりにロシア軍基地を復活させる方針を明らかにしています。

北極海の地下資源に対する諸外国の関心が高まり、北極海航路を航行する船舶も増加していることから、この海域での軍事的な存在感を確保しておく必要があると判断したと見られています。【9月18日 産経より】

****氷の島」に資源ブーム到来?=レアアース解禁、反対運動も―グリーンランド****
北極圏に位置する世界最大の島、デンマーク領グリーンランドに、空前の地下資源ブームが到来しつつある。

10月には自治政府がウランやレアアース(希土類)の採掘を解禁。大規模な鉄鉱石開発も動き始め、本国デンマークからの独立に向けた経済基盤強化へ期待も大きい。

ただ、環境破壊などへの懸念から反対運動も活発化する。世界経済にも影響を与えかねない膨大な地下資源を前に、「氷の島」が揺れている。【11月3日 時事】 
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北極海にしても、グリーンランドにしても、中国が多大な関心を示していち早く動いているのも、“例によって例の如く”です。

目先の利益には皆目の色を変えますが、遠くに見え隠れする危機についてはなかなか動こうとしません。
やむを得ないことではありますが、これだけ世界的に危険が指摘されてもいる訳ですから、将来に起こる異常気象、食糧難、海面上昇、難民急増、メタンガスによるドミノ現象・・・は、愚かな人類の自業自得というべきでしょう。

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