孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

再生可能エネルギー  発電割合30%超え 脱炭素戦略を加速する中国

2024-07-16 23:50:38 | 環境

(巨大風車が並ぶ中国・福建エリアの洋上風力発電群
洋上風力発電所は台風の強風時には安全のため発電を停止するケースが多いが、今回、中国の発電大手の長江三峡集団(CTGC)が運営する福建エリアの世界最大の洋上風力発電所(16MG)は、台風9号と11号の襲来時にも24時間フルに稼働した。その結果、1日当たりの発電量は38万4100kWhに達し、世界記録を更新したとしている。【2023年9月9日 環境金融研究機構】)

【再生エネ 気候変動目標には至らないものの、発電割合で30%超えに増加 原発運用を圧迫】
気候変動対策として化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が求められていますが、昨年の世界の再生可能エネルギー発電容量の伸びは気候変動目標を達成するために必要な伸びの半分足らずにとどまっています。

****鈍い再生エネの伸び、気候目標達成に程遠く インフラ不足が課題****
 昨年の世界の再生可能エネルギー発電容量の伸びは気候変動目標を達成するために必要な伸びの半分足らずにとどまったと、有力シンクタンクが指摘した。エネルギー需要の増加と送電インフラ不足が化石燃料からの転換を遅らせているという。

政府や業界団体が参画する「21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21)」(本部:パリ)が4日公表した年次報告書によると、世界の再生可能エネルギー容量は昨年、約473ギガワット(GW)、36%増加した。22年連続で増加したものの、気候変動目標達成に必要な1000GWの半分にも満たなかった。

ラナ・アディブ事務局長は「エネルギー需要が、特に中国、インド、その他の発展途上国で同時に増加している」と述べた。

REN21は、自然エネルギー部門では送電網インフラへの投資不足が課題だと指摘した。送電網への接続待ちのプロジェクトは昨年は3000GW相当だったという。

途上国が再生可能エネルギー施設を建設する資金の援助も引き続き大きな課題になっている。

アディブ氏は「資本コストは世界的に大幅に上昇しているが、発展途上国では特に高い」と述べた。開発資金も不足し、昨年の世界の再生可能エネルギー投資総額のわずか1.4%にとどまったとしている。

昨年の世界の再生可能エネルギー投資は前年比8.1%増の6230億ドル。気候変動目標を達成するには年1兆3000億ドルが必要とされる。

「技術はある。CO2排出量の80%は既存の技術で削減できる。必要なのは政治的な意志だ」とアディブ氏は語った。【4月5日 ロイター】
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気候変動目標には届かないものの、それでも世界のエネルギー事情は太陽光・風力など再生可能エネルギーが増加し、「化石燃料による発電量が減少する新時代が目前に迫っている」との状況にありますが、日本はそうした流れから更に遅れているようにも。

****世界の再エネ発電、初の30%超 太陽光が後押し、英調査****
世界の再生可能エネルギーによる発電割合が2023年に初めて30%を超えたとする報告書を英シンクタンクのエンバーが8日公表した。太陽光と風力の増加が後押しした。

「化石燃料による発電量が減少する新時代が目前に迫っている」としている。一方、日本は約24%で世界の割合を下回った。

23年の世界の総発電量は約30兆キロワット時。再エネの内訳は水力が14.3%、太陽光が5.5%、風力が7.8%、バイオエネルギーが2.4%、その他の再エネが0.3%で計30.3%。00年の再エネの全体は19%、太陽光と風力の合計は0.2%だった。

一方、日本の再エネの内訳は水力が7.3%、太陽光が10.9%、風力が0.9%、バイオエネルギーが4.8%。国の補助もあり、太陽光は過去10年で急速に拡大して世界の2倍の割合だったが、風力はほとんど増えず、他の先進7カ国(G7)と比較しても遅れている。

30年に世界の再エネ発電能力を3倍にするとの国際目標の実現に向け、風力発電を拡大する必要があると指摘した。【5月8日 共同】
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欧州では、再生可能エネルギーの増加によって、原発の稼働停止が相次ぎ、その運用を困難にしています。

****欧州で原発の運転停止相次ぐ、再生可能エネルギー急増で需要低下****
再生可能エネルギーの促進が、欧州の原子力発電業界に追い打ちをかけている。

化石燃料に依存しない電力の生産はかつてないほど急がれ、欧州の一部では依然として原発を電力政策の中核に据えている。だが、再生可能エネルギーの急増と電力価格の低下で、原発の運転にしわ寄せが及んでいる。

今後さらに厳しい時期が待ち受けている兆しもある。エネルギー危機以来、需要は十分に回復せず、風力や太陽光の発電量は増加の一途をたどる。これに押され、発電電力量に占める原子力と石炭火力のシェアはいずれも低下している。

エネルギー・電力市場分析会社ストームジオ・ネナのシニアアナリスト、シガード・ペデルセン・リエ氏は「太陽光と風力に極めて不利な状況が長期間続くか、強い熱波がない限り、現在の電力価格では従来型のベースロード電源は苦しいだろう」と指摘した。

フランスや英国などの国は地球温暖化対策の重要な要素として原子力技術を位置づけ、原発新設に巨額の資金を投じる計画だ。昨年末にドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、仏英のほか米国や日本、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)など20余りの国が、2050年までに世界の原子力発電を3倍に増やすことを呼び掛けた。

それでも長期的に、原発はますます締め出されかねない警戒すべき兆しがある。

フランス電力(EDF)は点検や修理のため長期にわたり運転を停止していた複数の原発を再稼働させつつあったが、既に出力の低下や運転の休止、停止期間の延長に迫られている。週末には電力価格がマイナスとなる事態が発生、6カ所の原発で運転を停止した。

スペインの電力価格は5日、2013年以来の水準に低下した。同国の電力取引価格は数週間にわたりゼロをかろうじて上回る水準が続き、アスコ原発1号機と2号機は過去5週間に通常ベースで出力を下げている。北欧では、原発の出力低下はより頻繁だ。

EDFの原子炉はある程度柔軟に運転できるよう設計されているが、「細心の注意を持って」現在の動向を見守っていると、同社の原子力・火力発電責任者セデリック・レワンドウスキ氏が4日、上院の公聴会で語った。

欧州連合(EU)域内で昨年増加した風力発電能力は、過去最高を記録。太陽光発電能力の伸びは3年連続で40%を上回ったと、業界団体のデータは示している。

需要が弱く、太陽光や風力による供給が急増する際に電力会社が原発の出力を落とすのは異常ではない。だが、完全に運転を停止させるとなると話は別だ。再稼働は複雑で、時間もかかるからだ。

フランスの電力スポット価格は今月4日以降、1メガワット時当たり10ユーロ(約1650円)を下回り続け、6日の入札ではマイナスを付けた。

エナジー・アスペクツの電力リードアナリスト、サブリナ・カーンビシュラー氏は、EDFが原発運転で採算をとるには卸売市場でメガワット時当たり約22ユーロの価格が必要だと指摘した。EDFはコメントを控えた。【4月9日 Bloomberg】
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世界各地で再生可能エネルギーの急増により電力の供給過剰が発生し、電力価格がマイナスになる事例が増えており、蓄電池や送電網の拡大が解決策として期待されています。

【脱炭素戦略を加速する中国】
エネルギー事情を地域別に見ると、再生可能エネルギー分野で世界をリードする立場になっているのが中国。
中国は世界最大の石炭消費国・二酸化炭素排出国として批判もされますが、国策として急速に脱炭素の方向に進んでいるようです。

****中国の太陽光・風力発電設備規模が世界をリード、二酸化炭素排出量は昨年ピークか―独メディア****
2024年7月11日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、太陽光・風力発電容量を急速に伸ばしている中国の二酸化炭素排出量がすでにピークを過ぎた可能性があると報じた。

記事は、米シンクタンク、グローバル・エネルギー・モニターが11日に発表した報告書によると、中国で建設中の大規模太陽光発電と風力発電プロジェクトの設備容量が339ギガワットに達して他国の合計値の2倍を上回り、2位の米国の40ギガワットを大きく引き離したと紹介。

計画されたプロジェクトが予定通り完了すれば、中国は「2030年までに風力と太陽光発電の総設備容量12億キロワット以上にする」という目標を6年前倒しで達成すると報告書が予測したことを伝えた。

また、中国は30年までにカーボンピークアウト、60年までにカーボンニュートラルを達成する目標を立てており、膨大な再生可能エネルギー設備容量によって30年より早い段階でカーボンピークアウトを達成する可能性もあると紹介した。

その上で、アジア・ソサイエティ政策研究のシニアフェローでエネルギー・クリーン大気研究センター(CREA)の主任アナリストであるラウリ・マイリビルタ氏が、中国の5月の石炭火力発電比率が前年同月比7ポイント減の53%と過去最低を記録した一方、非化石燃料発電比率が過去最高の44%となったことに言及し、「この傾向が続けば、中国の炭素排出量は昨年すでにピークを迎えたことになる」との見解を示したことを伝えた。

記事はさらに、報告書が「新エネルギーを目覚ましい速度で導入する一方で、中国が直面している大きな課題の一つは、石炭発電用に設計された送電網が膨大な規模の再生可能エネルギー発電をどのように吸収し、追加電力を必要とする地域に送電できるかということだ」と指摘したことを併せて紹介した。【7月14日 レコードチャイナ】
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太陽光パネル生産で世界を席巻しているのは周知のところですが、風力発電でも。

****中国が洋上風力発電で世界をリード****
世界の洋上風力発電容量の44%が中国海域に設置されており、今後さらに増加する見通しである。5カ年計画に支えられた長期的な視野と実践力が、他の再生可能エネルギー分野や電気自動車(EV)分野と同様に、中国を世界のリーダーに押し出している。

米国は巨額の補助金を使って、洋上風力発電のプレゼンスの引き上げを図っているが、インフレによるプロジェクトコストの急上昇によって、いくつかのプロジェクトが頓挫した。英国は洋上風力発電権益のオークションに入札者が現れない事態に直面し、メカニズムの再設計が要求されている。

米英の失態にもかかわらず、洋上風力エネルギーのサプライチェーンは、99%以上が欧州とアジア太平洋地域に集中している。特に中国は、世界最大の洋上風力発電容量を誇り、大規模プロジェクトが進行中である。

2020年には、欧州は世界の洋上風力発電容量の80%を占めており、当時の中国の容量(4.6GW)の約5倍だった。しかし、その後中国は洋上風力のサプライチェーンを急速に強化し続けている。

世界風力エネルギー協会(GWEC)が発表した最新の報告書によると、2022年における世界の洋上風力発電容量64.3GWのうち、ヨーロッパの占める割合は約47%に減少し、アジア太平洋地域が約53%とこれを上回りた。

アジア太平洋地域の増加の大部分は中国の貢献によるものだ。中国は世界全体の洋上風力発電容量のほぼ49%を占めている。GWECによると、ヨーロッパが2021年に累計設備容量55.9GWの50%を占めていた時から、市場の優位性が変化し始めているとのことだ。(中略)

2014年から2021年にかけて、中国は国家発展改革委員会が策定した複雑な政策のもと、洋上風力発電事業者にさまざまな補助金を提供していた。2021年末までに建設を完了した事業者は、20年間、有利な固定価格で電力を買い取ってもらうことができ、価格競争から保護された。

補助金の停止は市場に打撃を与えた。(中略)補助金の打ち切りは、中国の洋上風力発電業界を激しい価格競争の世界へと突き落とした。(中略)

しかし、競争は技術革新を促しているようだ。風力タービンメーカーは、長期的なコスト削減に役立つユニットの容量を増やしてきた。洋上風力タービンの平均発電容量は、この10年で大幅に増加し、最近では福建省沖に世界最大容量のタービンが設置された。さらに、各社はさらに沖合の風力資源を開発するために浮体式タービンを開発している。【2023年11月9日 吉田拓史氏 AXION】
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中国の躍進は補助金だけではないようです。

ただ、再生可能エネルギーは安定性にかけるため、依然として石炭火力を多く使い続けるものの、石炭火力の低炭素化を促進する方針のようです。

****中国、石炭火力発電部門の排出削減で行動計画 新技術採用など****
中国政府は石炭火力発電業界の温室効果ガス排出削減に向けた行動計画を発表した。新しい発電技術の採用などを盛り込んだ。

国家発展改革委員会(発改委)と国家エネルギー局は、天然ガス発電による炭素排出レベルを石炭火力発電部門のベンチマークに設定。また、バイオマスブレンド、グリーンアンモニアブレンド、炭素回収・利用・貯蔵の3つの低炭素発電技術の採用を計画している。

2025年までに技術の一部を用いた最初の低炭素プロジェクトを始動する。これらのプロジェクトによる平均排出量は23年比で20%削減されるという。

27年までに低炭素プロジェクトを拡大し、運営コストを下げ、平均炭素排出量を23年比で50%削減することを目標に掲げた。

同計画はまた、地方政府に対し、低炭素プロジェクトの立ち上げを支援・助成するよう奨励している。

一方、発改委の報道官は16日、再生可能エネルギーは不安定だとして、石炭火力発電がエネ安全保障の柱であり続けることに変わりはないと語った。【7月16日 ロイター】
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再生可能エネルギーの加速、石炭火力の低炭素化で世界のエネルギー戦略をリードするポジションを獲得する・・・明確な長期戦略で短期的事情にブレずに進む・・・このあたりが人権・民主的価値観に照らすと致命的欠陥はあるものの中国共産党政権のしたたかさ・強みでもあります。

水素エネルギーも忘れていないようです。

****四川省成都市、水素エネルギー産業に3年で170億元超を投資へ―中国****
運行速度160km/h、最大航続距離1000km以上の成都製の水素エネルギー市内列車が3月に試験運行を完了した。その頂部の動力源である「金属箱」は、四川栄創新能動力系統が製造した水素燃料電池だ。

これにとどまらず、水素燃料電池の応用の見通しは日増しに広くなっている。6月末に第1弾・1000台の水素燃料自転車が成都市の錦江区と新都区に投入されると、市民は「100gの水素で約100kmを快適に走行」という画期的な技術を体験できる。人民日報が伝えた。

これは成都の水素エネルギー産業の発展に注力することの縮図だ。成都は今年に入り複数の水素エネルギー産業支援措置を発表している。今後3年で170億元(約3740億円)以上の投資を行い、水素エネルギー産業のさらなる拡大と強化を促進する。

水素貯蔵設備、水素充填設備、天然ガス水素製造装置などで、成都は全国の上位を占めている。厚普股份の水素充填設備の市場シェアは20%に達した。中材科技は70MPa車用圧縮水素ガスボンベの開発に成功し、市場シェアが22%に達した。

成都には一汽トヨタ、成都客車、重汽王牌など7社の水素エネルギー車メーカーが集まり、水素エネルギー路線バス、中・大型トラック、物流車両など複数車種の生産能力を備える。すでに累計で689台の水素エネルギー車を生産し、水素ステーションを5カ所完成させており、年間1860トンのアルカリ性電解水水素製造工場を稼働させている。

全国各地が水素エネルギー産業発展の政策を続々と発表する中、成都はどのようにして産業発展の先進地になるのだろうか。

「成都は今後3年で水素エネルギー関連の46件の重点プロジェクトを推進し、投資総額は170億元以上」。
成都市経済・情報化局の関係責任者によると、グリーン水素モデル牽引プロジェクト、重要技術ブレークスループロジェクト、産業チェーン・クラスター形成プロジェクト、シーン応用拡張プロジェクト、インフラ難関プロジェクト、産業エコシステム育成プロジェクトの六つのプロジェクトを実施する。

うち成都は水素燃料電池商用車の推進・拡大を強化し、国家水素燃料電池車モデル都市クラスター第3弾を建設し、交通、エネルギー、建築などの分野での応用を拡大し、成都江堰8MWグリーン電力水素製造・貯蔵・発電一体化プロジェクトの完成を急ぎ、水素エネルギー鉄道交通モデルラインなどの建設を模索する。【7月1日 レコードチャイナ】
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四川省成都市が水素エネルギーを強力に推進・・・このあたりは、各地方政府が成果を中央にアピールすることで、地方政府幹部が昇進できるという中国独特の政治体制のもたらすものでしょうか。
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