孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  戦場の兵士にモラルを要求する社会の「偽善」

2012-04-23 23:18:31 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタンの首都カブールなどで15日起きたタリバンによる同時襲撃を受けて、警戒にあたるアフガニスタン兵士。“”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/6938263370/in/photostream
なお、この襲撃では、日本大使館にもロケット弾計4発が着弾し、建物の一部が破損しました。タリバンの報道担当者は攻撃対象は欧米の大使館だったとして、「日本大使館は標的ではなかった。もし着弾したのなら、戦闘中の誤りだ」と、誤爆であると強調しています。)

パネッタ国防長官「撮影された行為を断固として拒絶する」】
昨日、中国(新疆ウイグル自治区トルファン)の観光旅行から帰国しました。
旅行中に目にした記事に、アフガニスタン駐留米軍のモラルを問うものがありました。

****アフガン駐留米兵:自爆テロ犯遺体と記念撮影 米紙報じる****
18日付の米紙ロサンゼルス・タイムズは、アフガニスタンに駐留する米兵らが10年に自爆テロ犯らとみられる遺体と記念撮影していたと報じた。複数の写真も掲載した。

米国防総省のリトル報道官は18日、「パネッタ国防長官は撮影された行為を断固として拒絶する」と指摘。米軍として調査を開始したと明らかにした。

アフガン駐留米軍をめぐっては、今年に入ってイスラム教の聖典コーランの焼却事件や住民を狙った無差別銃乱射事件があり、反米感情がさらに広がるのは必至だ。

同紙によると、10年2月に米兵部隊がアフガン南部ザブール州の警察署に遺体の検証のために訪れた際に撮影されたという。写真は計18枚あり、中には遺体の手を米兵の肩に乗せておどけたものや、遺体の足を持ち上げている写真があった。
同部隊とともに任務に当たった兵士が米軍の統率や規律の乱れを示すものとして同紙に提供したという。【4月18日 毎日】
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同種のものとしては、タリバン兵遺体への放尿シーンがネット上に流出した事件が1月に問題になっています。

****アフガニスタン:タリバン遺体に米兵放尿? ネットで流出****
アフガニスタン駐留米軍兵士とみられる戦闘服姿の白人男性が、地面に横たわった男性3人に小便をかけている映像が11日、複数のウェブサイトに流出した。横たわっているのはアフガン反政府武装勢力タリバンの戦闘員の遺体とみられる。

米海兵隊は声明で、映像に示された行為は「われわれの価値観に反している」とし、「徹底調査」を約束した。
掲載したサイトの一つによると、映像には「海兵隊の狙撃兵が死んだタリバンに小便をかける」場面との説明が付いていた。戦闘服姿の男性ら4人は放尿しながら英語で「金色のシャワーだ」などと冗談を口にし、カメラに笑顔を見せている。(ワシントン共同)【1月12日 毎日】
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このときもアメリカ側は、反米感情拡大を恐れて火消しに躍起となりましたが、アフガン軍兵士が国際治安支援部隊(ISAF)傘下の仏軍兵士4人を射殺する事件などもおきました。

この類の問題が、ただでさえ強い反米感情を刺激して、駐留外国兵士の生命を危険にさらし、これまでの成果を台無しにする形で、米軍撤退計画などに悪影響を与えることは言うまでもないことです。

彼らを戦場に送ったのは私たち
そうした現実面への影響はもちろんありますが、そもそも論として、こうした“モラルに反した行為”は戦場における兵士にとっては“日常”であり、「戦場に兵士たちを送っておきながら、彼らなりの現実を表現した私的なものが問題を引き起こした時に個々の兵士を責めるのは、社会の「偽善」だ」との指摘があります。
もっともな指摘です。

****戦場の兵士たちが写した「戦利品」写真、デジタル技術で公にも拡散****
18日付の米紙ロサンゼルス・タイムズが掲載した写真で、アフガニスタン駐留米兵が旧支配勢力タリバン戦闘員の遺体とともにポーズをとって撮影していたことが明るみに出され、物議を醸している。

専門家らによれば、兵士が「戦利品」としてその成果を写真撮影することは今に始まったことではない。今回の事件で新しい現象と言えるのは、テクノロジーの発達で戦地で写されたデジタル画像が瞬時に広まった点だと、彼らは指摘する。

■デジタル技術で公の目に触れる戦場
バラバラになったタリバン兵の遺体の手脚を持って撮影した米軍兵らの写真は、戦争の残虐な側面を暴くものだ。一般市民にとっては非常に衝撃的だが、戦闘員たちにとっては珍しくもない光景だ。
「(こうした)スナップ写真は、ボーア戦争(19世紀末)の時代からある」と美術キュレーターのアン・ウィルクス・タッカー氏は述べる。

タッカー氏は米テキサス州のヒューストン美術館で11月に開催される写真展「War/Photography: Images of Armed Conflict and Its Aftermath(戦争と写真撮影:武力紛争の画像とその影響)」の監修者だ。これまで8年をかけて過去165年分の戦争写真を調査、厳選してきた。
「第1次と第2次世界大戦中にドイツ人兵士たちが撮影したスナップ写真のアルバムには、処刑の場面を撮影したものがあった。兵士たちが持ち帰って母親に見せるような類の写真だったと思う」(タッカー氏)

しかし当時の写真は現像やプリントに時間がかかり、こうした写真を目にするのは通常、少数の内輪の人たちだけだった。他人の目には長年触れることがないか、あるいは全く目にする機会がなかった。
それが今日では、携帯電話やポケットサイズのデジタルカメラで気楽に写真を撮影し、同僚の兵士や家族にメールで送ることができる。そうした写真が意図せずして公の場に出てしまうこともある。「配信技術の進化が、このような変化をもたらした」とタッカー氏は分析する。

「兵士たちのほとんどがなんらかのインターネットアクセス手段を持っており、戦場で撮影した、彼らにとって「とっておき」の写真を瞬時にダウンロードすることが可能だ」と指摘するのは、民間の米軍史保存団体「Army Historical Foundation」の主任歴史研究員、マシュー・シーリンガー氏だ。

■戦場の残虐な光景、兵士には日常
米ホワイトハウスと北大西洋条約機構(NATO)は18日、そろってロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されたスナップ写真を非難した。

その一方で、NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長は「単発的な出来事だ」と発言した。だが今回の写真の件で、アフガニスタン人戦闘員の遺体に放尿する米海兵隊員たちの動画がインターネット上で公表された1月の出来事を再び思い起こさずにはいられない。

イスラエル軍兵士が前線で直面する問題への社会的認識を高めることを目的とする元兵士らによる団体「ブレーキング・ザ・サイレンス(Breaking the Silence)」の共同設立者、ヤフダ・ショール氏は、「誰もが日常生活を写真に撮るように、私たち(兵士)も自分たちの日常を写真に撮っている」と、AFPの電話インタビューでイスラエルから語った。
「登山家がエベレストの頂上に到達すれば、写真を撮るだろう。戦闘兵としての訓練とは敵を殺す訓練だ。その任務を達成した時に『みやげ』を持ち帰るのは自然なことだ」(ショール氏)
 
ショール氏はそうした行為を容認しているわけではない。だが、戦場に兵士たちを送っておきながら、彼らなりの現実を表現した私的なものが問題を引き起こした時に個々の兵士を責めるのは、社会の「偽善」だと主張する。

キュレーターのタッカー氏も、写真が撮影された瞬間が「その時、兵士たちが生きている人生なのだ」と指摘する。「こうした写真を目にする時、彼らを戦場に送ったのは私たちであり、その彼らがそうした行為をしているということを、私たちも自覚しなければならない」【4月23日 AFP】
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旧日本軍兵士のその類の写真を目にしたことがある方も少ないのではないでしょうか。
“正義の戦争”とは言っても所詮は殺し合いであり、兵士に要求されるのはいかに多くの敵を殺すかで、敵兵の遺体は兵士にとっては自分の仕事の成果を証明するものでもあります。

そうした“殺し合い”を行うことをやむを得ないとするのもひとつの立場ではありますが、その場合、兵士を送り出している社会全体がそうした残虐行為の一端を担っていること、自分たちの手も血で汚れていることを自覚したうえでものを言うべきでしょう。

駐留兵士の間で麻薬の害が広まっているとの報道もありました。
狂気が支配する極限状態の戦場にいる訳ですから、その是非は別として、麻薬使用が広まるのも当然のことと思われます。

****アフガン:駐留米兵8人死亡 麻薬過剰摂取で****
2010、11年の2年間にアフガニスタン駐留米兵8人が麻薬の過剰摂取により死亡していたことが分かった。米陸軍はこの間、麻薬を使用した疑いなどで駐留米兵56人を捜査していた。AP通信が21日、報じた。

米監視機関が陸軍に照会した記録で明らかになった。開示されたのは捜査対象になった案件だけで陸軍しか含まれていないため、実際に駐留米兵が麻薬を使用しているケースはさらに多いとみられる。

アフガンは世界最大のアヘン生産国で、APによると、世界中に出回っているアヘンの9割を供給している。【4月22日 毎日】
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NATO 資金拠出を日本に期待
日本は2009年に「概ね5年間で最大約50億ドル程度までの規模の支援」を行うとの公約を発表。これまでに、①治安能力向上、②元兵士の社会への復帰・再統合、③開発の3分野を柱として約26億ドルの支援を実施しています。
主な具体的支出としては、アフガニスタン警察の給与支払い支援や警官の識字教育・訓練などです。
今後、米軍などの撤退を受けて、更に資金拠出が求められています。

****アフガン支援期待、野田首相にNATOが招待状****
北大西洋条約機構(NATO)が、野田首相に対し、5月20、21両日に米シカゴで開くNATO首脳会議への出席を要請することを決めた。

NATOは、2015年以降のアフガニスタン治安部隊の活動を支えるための資金拠出を日本に期待しており、首相は会議の場で拠出表明を求められる可能性がある。
首脳会議では、NATO主導の「国際治安支援部隊」(ISAF)が14年末にアフガン政府への治安権限移譲を完了するのを見据え、その後の年間約41億ドル(約3300億円)とされる財政支援計画の取りまとめが主要議題となる。

ラスムセンNATO事務総長は19日の記者会見で、「ロシアや中国など各国の財政的な貢献を歓迎する」と発言。2月にはパネッタ米国防長官が日本と韓国を名指しして資金拠出を呼びかけた。【4月21日 読売】
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アフガニスタンの治安部隊を強化・運営していくのに必要な15年以降の財政負担について、今月初めに国連、アフガニスタン政府、アメリカ政府が年41億ドルを提案しています。
アメリカに加え、日本など非派兵国が23億ドル、国際治安支援部隊(ISAF)への派兵国約50カ国が13億ドル、アフガニスタン政府が5億ドルを負担すると想定されているそうです。

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1 コメント

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Unknown (通りすがり)
2012-04-28 19:52:52
マスゴミ「報道のネタになれば、誰がどうなろうと知ったこっちゃねえな」
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