孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  進むAI技術とその活用 完全自律型「殺人ロボット」などの懸念も

2024-07-13 22:40:20 | 中国

(【テレ東BIZ】7月4日から上海で始まった「世界人工知能大会」)

【選挙に「AI候補」】
アメリカ大統領選挙は「うそつき」「人格破綻者」と「認知症が疑われる老人」の争いになっています。
また、政治家の腐敗・汚職は世界中あらゆる国・地域で必ず見られること。

こうした状況を見れば「いっそのこと愚かな人間ではなく賢いAIに任せた方が」という考えが出てくるのは(その妥当性はさておき)当然のところでしょう。

****米市長選に「AI候補」? 州は資格否定、当局が可否判断へ****
米西部ワイオミング州の州都シャイアンの市長選にAIで生成された自動プログラムが「候補」として届け出された。「先端技術とデータに基づく意思決定を市政にもたらす」と訴える「AI候補」に対し、州幹部は「立候補資格はない」と主張し論争に。出馬を認めるかどうか地元当局が判断する。

市民のビクター・ミラーさんが対話型AIのチャットGPTを駆使してつくり出し、「仮想統合市民」の頭文字を取って「Vic」の名前で届け出た。市のウェブサイトでは、候補を2人に絞る予備選と11月の本選で構成される市長選に届け出た6人のうちの1人として名を連ねている。

AIであれば、あらゆる情報を織り込んで政策判断できるとミラーさん。当選すれば自身がAI候補を操作するが、判断は全て委ねるという。AI候補も、出馬は人間のリーダーシップと先端技術の融合を政治の世界で実現する道を開き「画期的だ」と自賛する。

選挙を管轄するグレイ州務長官は「出馬できるのは有権者だけで、実在する人間である必要がある」と、AI候補を認めないよう求めた。【6月17日 共同】
*********************

****イギリスの総選挙では「世界初のAI政治家」立候補…「不祥事を起こさない」とメリット強調****
7月4日に投開票される英国の総選挙に、政策を生成AI(人工知能)に従って決定すると公約する候補者が出馬している。英メディアの世論調査によると、当選する可能性は極めて低いとされているものの、候補者は当選した場合、AIの「代理人」として活動すると訴え、支持を呼びかけている。

立候補しているのは英南部の実業家スティーブ・エンダコット氏(59)で、「世界初のAI政治家」を目指している。投票用紙に記載される候補者名は「スティーブ・AI」だ。

エンダコット氏は経営する会社で、自身の姿と声を模したアバター(分身)とチャットボットの「AIスティーブ」を開発した。選挙期間中、有権者からの質問を24時間受け付け、音声と文章で回答する。

ロイター通信によると、当選すればエンダコット氏が議員となる。だが、政策はAIスティーブと有権者との対話や、地元のボランティアによる政策案の採点に基づいて決める。採決での投票行動も判断をAIスティーブに委ねる。

AIを使えば有権者との議論を大量にこなせ、有権者の意見を政治に直接反映できるとしている。AIが「不祥事を起こさない」とも強調している。(後略)【6月23日 読売】
******************

上記アメリカ・ワイオミングのケースについては、州法が立候補要件として求める登録有権者に該当しないとして州当局は立候補を認めませんでした。

少なくとも現時点では、AIと言えどもどういう資料をベースにしているかで判断に大きな偏りが出ることは周知のところです。参考にするには便利なツールですが、まだ判断を任せられるようなレベルにはないでしょう。

一方で、将来的に人間の能力を超えて自律的な判断が可能になるAIが出現すれば、そのようなAIと人間の関係がそうなるか、それはそれで人類的大問題。

【AI利用に慎重な日本 積極的な中国】
いずれにしてもAIを取り巻く環境は日進月歩の世界ですが、世界に比べると日本は利用に慎重な傾向があるようです。

****日本で生成AIの利用が進まない理由―中国メディア****
2024年7月10日、中国メディアの第一財経は、欧米に比べて日本では生成AIの普及が進んでいないことが日本政府の報告により明らかになったとし、専門家の分析を紹介する記事を掲載した。

記事は、日本政府が5日に発表した「情報通信に関する現状報告」(情報通信白書)で、日本における個人の生成AI利用率は9.1%にとどまり中国の56.3%、米国の46.3%、英国の39.8%、ドイツの34.6%と大きな開きがあるほか、企業での利用率も46.8%と米国(84.7%)や中国(84.4%)、ドイツ(72.7%)より低いことが明らかになったと伝えた。

また、調査に参加した人のうち、生成AIを「とても使いたい」「使いたいと考えている」と回答した割合は7割に達しており、総務省によるとAI生成利用には「潜在的な需要」がある一方、4割以上が「使い方を知らない」ために生成AIを利用しておらず、4割近くが「生活に必要ない」と認識していることもわかったと紹介した。

さらに、生成AIをすでに利用している人の具体的な利用シーンは「質問」が8.3%と最も多く、「コンテンツの精緻化・翻訳」が5.9%で続いたほか、生成AIがもたらす影響については「新しいアイデア」「業務の効率化」「人手不足の解消」と回答した人が7割を超える一方、「情報漏えいなどのセキュリティーリスクが拡大する」「著作権侵害の可能性が高まる」といった悪影響を挙げる人も7割を占めたとしている。

その上で、総務省の報告では日本企業が生成AIに対して「慎重」であり、海外企業が顧客へのサービス提供など幅広い業務に活用しているのに対して国内企業は会議の日程調整など一部の社内調整にのみ用いる傾向があると指摘し、政府が生成AIの導入を促進するためには、明確なルールとガイドラインを確立してリスクを減らし、個人、企業が安心して利用できる環境を構築することが重要との見解を示していると伝えた。(中略)

また、朱氏が日本では1960年代から国の行政処理業務にコンピューターを使い始めるなど比較的早い段階から情報技術の導入を始めた一方で、コンピューターによるデータ処理を規制する地方条例を設けたり、70年代からは個人情報保護の制度化に関する大規模な議論が始まったりして、80年代以降は個人情報漏えい問題に対して総じて敏感かつ保守的な姿勢が鮮明になったと指摘したほか、2000年前後には民間企業による個人情報の不適切な取り扱いが絶え間なく発生したことで国民の個人情報保護意識が一層強まったと紹介し、このような状況が生成AIの受け入れに対して日本社会が「恐る恐る」な姿勢を崩せない根底にあると論じたことを伝えた。【7月13日 レコードチャイナ】
**********************

何事につけ、新たなものに「慎重」なのは昨今の日本の傾向です。
メリットよりも、悪影響を先ず考える・・・・そういう日本社会の傾向が日本の長期的停滞・衰退の根本原因だと個人的には考えていますが、その話はさておき、日本と対照的に新たな技術にアグレッシブなのが中国。

****生成AI特許出願は中国が7割、2位米国を大きく引き離す3万8210件…昨年までの10年間****
世界知的所有権機関(WIPO)は3日、2023年までの10年間に出願された生成AI(人工知能)に関する特許件数約5万4000件のうち約7割を占める3万8210件が中国からの出願だったとする報告書を発表した。
 
2位米国の6276件を大きく引き離しており、世論操作などでの生成AI使用が懸念されている中国の群を抜いた注力ぶりが浮き彫りとなった。

次いで韓国4155件、日本3409件、インド1350件だった。組織別でも、IT大手のテンセントや百度(バイドゥ)、保険大手の平安保険グループ、中国科学院など中国勢が上位を占め、中国以外ではIBM(米国)が最も多かった。

生成AIに関する特許は急増しており、14年の出願件数は733件だったが23年には1万4000件超となり、この1年だけで全体の4分の1以上を占めた。【7月4日 読売】
******************

****中国でAI最先端を紹介 驚異の技術 展示会 “キュウリの皮むき”も****
中国・上海で最先端のAI(人工知能)の展示会があり、キーワードをもとに瞬時にイラストを描くなど驚異の技術が紹介されました。

4日から上海で始まった「世界人工知能大会」には中国の「百度(バイドゥ)」や「アリババ」といった国内外のIT企業など500社以上が参加し、最新のAI技術を披露しました。

特に目立ったのは簡単な指示をもとに瞬時に精巧なイラストを描く画像生成技術です。
他にもCGの少女が自然な口調で来場者と対話する展示など、各社が技術の高さを競い合っていました。

中国は国家戦略としてAI産業育成に力を入れていて、国内のAI企業はすでに4500社を超えたと言われています。【7月4日 テレ朝news】
*********************

****AIの活用進む中国の医療現場、「Apple Vision Pro」もオペ室で活躍****
米アップルは先ごろ、「空間コンピューティングデバイス」である「Vision Pro」を発売した。ただその販売価格は3万元から(約66万円。日本での販売価格は59万9800円から)と高価なため、「技術オタク」であってもまだなかなか手が出せていないようだ。そんな中、中国では外科医がすでにオペ室に導入し、活用している。

テクノロジー感満載のある動画が最近、話題を集めている。その動画を見ると、外科医が「Apple Vision Pro」のARヘッドマウントディスプレーを装着して、手慣れた様子で患者に手術を施している。

手術が行われているのは北京大学人民病院のオペ室で、同病院の王俊(ワン・ジュン)院士が率いるチームが、中国で初めて「Apple Vision Pro」を活用して、胸腔鏡を使った肺がんの根治を目指す手術を行った。執刀医は高健医師が務めた。

同チームによると、胸部外科の胸腔鏡手術では先進的なディスプレー技術が執刀医をサポートする重要な役割を果たしている。デジタルコンテンツと現実世界がシームレスに統合され、医師に高い解像度で超低遅延のストリーミング処理を提供し、医師は手術の初めから最後までディスプレーを見ながら手術を行うことができる。

中国各地においては、各大手医療機関が技術革新を通して、「オペ室の革命」、ひいては「病院全体の革命」を試みている。

例えば、復旦大学附属産婦人科病院の専門家は、「5G+AI」技術を活用して、手術支援ロボットを正確に遠隔操作して、2000キロ以上離れた場所にいる多発性子宮筋腫が原因で貧血が起きている患者を対象に腹腔鏡手術を行った。かかった時間は約2時間で、手術は無事成功した。

上海市第一人民病院は数日前、モバイル決済サービス「支付宝(アリペイ)」と共同で開発した上海初の「AI陪診師」をリリースした。基盤モデルやデジタルヒューマンといった技術をベースに、通院する患者と双方向のやり取りをしながら付き添うサービスを提供してくれる。

現在、治療薬やワクチンの開発、医療用ロボットといったさまざまな分野において、人工知能(AI)技術が幅広く活用されている。

先ごろ世界経済フォーラム(WEF)が発表した「2024年新興テクノロジー・トップ10」のトップは科学発見を駆動する人工知能(AI)だった。

米市場調査会社・IDCの統計データによると、2025年に世界のAI応用市場の規模は1270億ドルに拡大し、医療業界がそのうちの5分の1を占めるとみられている。そしてそれがこの先5年の間、成長が最も著しい競争の場の一つとなりそうだ。

医学設備の分野を見ると、大まかな統計ながら、2023年末の時点で、中国ではAI関連の医学設備63種類と医療用ロボット61種類が認可を経て、発売されている。【7月7日 レコードチャイナ】
****************

日本だと、AI利用については、「問題が起きたとき、誰が責任をとるのか」といった議論に終始して、結局使用されない・・・となるのでしょう。

なお、中国生成AI市場の激戦状態については「資源の無駄遣い」との批判もあります。

****ベリシリコン創業者、生成AIの百モデル大戦は「資源の無駄遣い」―中国メディア****
中国メディアの快科技によると、中国RISC-V産業連盟の理事長で、中国半導体回路設計大手、芯原微電子(ベリシリコン・マイクロエレクトロニクス)の創業者・董事長の戴偉民(ダイ・ウェイミン)氏は、「百モデル大戦」とも形容される生成AI(人工知能)市場の激戦状態について「資源の無駄遣い」との認識を示した。

戴氏はこのほど上海で開催された世界人工知能大会の「RISC-V・生成AIフォーラム」で、AI大模型(大規模モデル)に対する見解を共有し、「ChatGPTが生成AIブームを引き起こして以来、多くの企業が大規模モデルの研究開発に投資してきたが、そうした『群模乱舞』現象は実際のところ不経済だ」と指摘した
戴氏は「人間の脳を超えるAIを実現するには、モデルパラメータの規模を継続的に拡大しなければならない。それには計算能力の指数関数的成長が必要で、膨大な電力消費を伴う」と強調。中国の基本的な大規模モデルの数は2028年までに10未満となり、理想的な状態は5だと予測した。

戴氏は「世界には100を超えるAI大規模モデルが存在しているが、持続可能ではない。やみくもにモデルの数を追求するのではなく、より効率的で環境に優しいAI技術の開発に資源を集中すべきだ」との認識を示した。【7月11日 レコードチャイナ】
********************

【AIロボットの未来 介護分野での可能性の一方で、自律型殺人ロボットも】
AIが頭脳なら、手足に相当するのがロボット。
中国はロボット分野でもアグレッシブです。

****世界のロボットの50%が中国に設置―中国メディア****
中国メディアの参考消息は23日、世界のロボットの50%が中国に設置されていることがロシアの報告書で分かったとする記事を掲載した。

ロスコングレス財団が発表した報告書「世界とロシアの産業用ロボット市場:人口動態が需要を左右」は、中国について「世界の産業用ロボットの生産と運営において議論の余地のないリーダーだ」とし、「2022年に世界で新設されたロボットの50%が中国にあり、台数は29万258台に上った」と指摘した。(中略)

22年の世界の産業用ロボット平均導入密度は、産業部門で雇用されている従業員1万人当たり151台で、6年前の2倍だ。生産の自動化が最も進んでいる国は韓国(従業員1万人当たりロボット1012台)で、シンガポール(730台)、ドイツ(415台)と続く。【5月29日 レコードチャイナ】
*****************

当然ながら、ロボットにAIを搭載して「人型ロボット」という発想にもなります。

****人型ロボットが世界人工知能大会に登場、感情的に人間を高度に模倣―中国****
復旦大学工程・応用技術研究院のスマートロボット研究院が開発した人型ロボット「光華1号」が4日、中国上海市で開催中の2024世界人工知能大会(WAIC)に登場した。

このロボットは身長が165cm、体重が62kgあり、歩ける上、表情を作ることもでき、感情的に人間を高度に模倣できる精巧な作業用ソフトロボットだ。

同大学工程・応用技術研究院の副院長を務めるスマートロボット研究院の甘中学院長が同日、「人の表情を読み取れ、ふさわしい感情で対応できるのが、『光華1号』が他の人型ロボットと最も異なる点だ。『光華1号』は顔部分のスクリーンで喜・怒・哀・楽の4種類の表情を作ることもでき、人間との双方向のやりとりをする過程でよりわかりやすい感情的な体験ができる」と説明した。

現在、「光華1号」はまだ実験室での開発段階にとどまり、これから四川省、河南省、江蘇省、浙江省などの地域でテストを行うとともに、介護機能の最適化を絶えず進め、動作の安全性、正確性、柔軟性をさらに高める。

例えば、高齢者をベッドから抱き起こす、高齢者がトイレに行くのをサポートするといった機能がある。開発チームは高齢者ごとのパーソナルなニーズに応える機能をカスタマイズすることもできる。年内に試作品が打ち出され、来年には小規模の産業化普及テストが行われる予定だ。【7月6日 レコードチャイナ】
*****************

一方で、AIロボットの軍事利用は中国だけでなく世界の軍事大国がどこも考えていること。

****中国の自律型殺人ロボット、戦場に登場間近...AI戦争の新時代到来****
<中国軍が開発する自律型殺人ロボットが2年以内に実戦配備される可能性が高まり、AI兵器の脅威が現実化している>
(中略)劇場化する今世紀の戦争の中で、ドローンやサイバー攻撃などの遠隔操作戦争は、ますます中心的な役割を果たすようになった。

無人航空機による空の制圧は、ウクライナで続く戦争で重大な問題になっており、アメリカ国防総省はこのほど、新たに10億ドルを拠出してドローン部隊をアップグレードすると発表した。

 さらに一歩先を行き、兵士に代わって戦場に配備するAI駆動の完全自律型「殺人ロボット」の開発に乗り出した国もある。 「2年以内に自律マシンが中国から登場しなければ驚きだ」。防衛アナリストのフランシス・トゥーサはナショナル・セキュリティ・ニュースにそう語り、中国はAIを使った最新鋭の船舶や潜水艦、航空機を「目が回るほどのペースで」開発していると指摘。「アメリカより4~5倍速く動いている」と言い添えた。

 報道によると、中国とロシアは既にAI兵器の開発で協力関係にある。 中国人民解放軍は5月にカンボジアで行った軍事演習で、銃を装填したロボット犬を披露した。(中略)

「殺人ロボットに関するアメリカの政策は、そうした兵器の倫理的側面にほとんど関心を示していない。自律兵器に対して新たに国際的な禁止措置や制限措置を講じることには反対し、自主的な行動規範のみを求めながら、戦場への配備を急いでいる」(国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのグース氏) 

2023年3月、自律殺傷兵器システムに関する国連会議でアメリカ代表は、そうした兵器の開発に対する法整備の着手について、今は「適切な時ではない」と発言した。 

こうした抑制の効かない進展に対し、非人間の兵器は戦争法を守れず、国家が兵士の犠牲を恐れて戦争を躊躇することもなくなると危惧する声が巻き起こっている。 

そうした兵器の使用を規制する役割を担う超国家機関はロシア、中国、アメリカ(殺人ロボットでを積極推進する国家)の独占状態にあることから、規制しようとしても「実質的にほとんど何も生まれない」とグースは言う。 

このまま放置すれば、自律兵器は核兵器や気候変動とともに、「人類の生存に対して最大の危険を投げかける」とグースは警鐘を鳴らしている。【7月8日 Newsweek】
*********************

中国は日本と違って倫理的な問題には無頓着なところも。
完全自律型「殺人ロボット」以外でも、“死んだペットに「再会」できる!?急成長する中国のクローンペットビジネス”【7月9日 TBS NEWS DIG】といった話も。そのあたりがブレーキがない車のようで怖いところでもあります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ドイツ  米長距離ミサイル... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

中国」カテゴリの最新記事