
(【4月24日 WEDGE】 2018年3月 ホワイトハウスで会談するムハンマド皇太子(左)とトランプ大統領)
【サウジアラビアを重視するトランプ政権】
サウジアラビアが世界経済を左右する世界有数の産油国であり、イスラム教の聖地を管理するという宗教的には極めて重要な立場にあり、中東における地域大国であることは間違いありません。
ただ、欧米的民主主義とは異なる専制君主制国家であり、保守的なイスラム主義国家として(ムハンマド皇太子による上からの改革が行われているとは言え)女性の地位・権利が低く抑えられている国家でもあります。
また、2018年のカショギ事件(サウジの体制に批判的なカショギ記者をトルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害)にみるようにムハンマド皇太子が実質的に権力を行使している現政権の人権意識にも疑問があります。
アメリカでは9.11とサウジアラビアの関与も問題視されてきました。
そうしたネガティブな側面も抱えるサウジラビアに対し、最初の訪問国に選ぶとか、ウクライナ問題の交渉の舞台とするなど、トランプ大統領は歴代政権以上にその関係を強化しようと試みています。
サウジアアラビアが持つ“カネ”をアメリカに呼び込みたい思いと同時に、中東政策としては、サウジアラビアとイスラエルの関係を改善することで、イランの影響力を中東から排除したいという狙いもあります。
短期的には、サウジアラビアの原油増産による原油価格抑制で、米国内におけるガソリン価格(米政権にとっては国内支持を維持するうえで極めて重要)の引き下げ、更には関税政策の結果起きる物価上昇を緩和したい思惑もあるとの指摘も。
****〈トランプ政権とサウジアラビアが蜜月である理由〉ムハンマド皇太子をくすぐり引き出す“見返り”、関税政策にも影響か****
ワシントン・ポスト紙は4月2日付で、トランプ大統領は、サウジアラビアのムハンマド皇太子との良好な関係を復活させているが、サウジは、域内で紛争が継続・拡大していることにより危機的な状況となっている、とする同紙ペルシャ湾岸支局長の解説を掲載している。
トランプ大統領が就任して以来、サウジアラビアは米・ロシア協議やウクライナの停戦と鉱物資源の取引の協議の場所を提供し、自国が同大統領の最も野心的な外交政策の中心にいることに気が付いた。
トランプ大統領がサウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド皇太子に重要な交渉の仲介を要請するのは同皇太子がロシアのプーチン大統領と良好な関係にあるためだが、さらにトランプ政権第1期に培われた大統領と同皇太子の友好関係を復活させるためだ。
ちなみにトランプ大統領もムハンマド皇太子も、原理原則や同盟関係にこだわらず、何十億ドルもの貿易や投資を通じて他の国との関係を成立させるという「取引」を好む外交スタイルだ。
トランプ大統領は、第1期政権の時に乗り出し現在はガザの衝突で中断しているイスラエルとサウジアラビアの関係正常化について語るとき、それが中東に経済的繁栄をもたらすことを強調する。
サウジアラビアは、原油の確認埋蔵量で世界第2位だが、ムハンマド皇太子は、クリーン・エネルギーの垂直にそびえ立つ都市等のメガ・プロジェクトを推進し、また、スポーツのスポンサーとなり、さらに、著名人を招いた政治的、経済的な国際会議を主催している。その一方で、米国がプーチン・ロシア大統領を排斥しようとしているのにも関わらず同大統領との関係を維持し、その結果、米国とロシアの間でハイレベルの囚人の交換を仲介した。
さらに、宿敵イランとの関係を復活させている。サウジアラビア国内では、王制の支持者は、トランプ政権はムハンマド皇太子の近代化政策とその権力をより広めることを支持していると見なしている。
中東の伝統的な力の中心はエジプト、シリア、そしてイラクだったが、長年の混乱と経済力の低下からこれらの国々は弱体化し、サウジアラビアがその力の空白を埋めているとワシントン近東研究所のデニス・ロス氏(元米国務省政策企画部長)は述べている。
しかしながら、サウジアラビアは依然として非常に専制的であり、多くの反体制派は、一掃され、刑務所に閉じ込められていて、さらに昨年1年間で345人が処刑されている。
サウジアラビアは、現在、数年前に比べてより不安定化している。サウジの周辺で続いている紛争はムハンマド皇太子のプランを失敗させ得る。
サウジアラビア周辺の紛争は拡大している。停戦合意が崩壊した後、イスラエルはガザに対して激しい攻撃をしており、イエメンでは米国がイランの支援するフーシ派に対して爆撃を続けている。
そして、トランプ大統領はイランに対して核開発問題に合意しないと軍事力を行使すると繰り返し脅かしている。トランプ大統領がイランを攻撃するという脅かしは、サウジアラビアに対して思わぬ痛手をもたらすかも知れないし、中東地域をより不安定にするかも知れない、とワシントンのアラブ湾岸研究所のイビッシュ氏は言う。
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第1期、第2期ともに最初の外遊先
第1期トランプ政権時に同大統領は、カショギ事件(サウジの体制に批判的なカショギ記者をトルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害)を隠蔽した見返りにムハンマド皇太子が大統領の義理の息子の会社に大金を投資したと言われている。しかし、どうしてトランプ大統領が今回もムハンマド皇太子を重視しているのかについては明確ではない。
第2期トランプ政権が発足して以来、同政権は米・ロシア高官協議や米・ウクライナ協議等の重要な協議を、何ら合理的な理由が無いのにも関わらずわざわざサウジアラビアで行っていることは奇異だが、利に聡いトランプ大統領が意図的にムハンマド皇太子を喜ばせ、そのプライドを満足させているのは間違いないだろう。
因みにトランプ第2期政権の最初の外遊先はサウジアラビアだが、第1期政権でも最初の外遊先はサウジアラビアだった。
トランプ大統領がムハンマド皇太子におもねっている大きな理由の一つは、原油価格を引き下げることにあるのではないかと想像される。
ガソリン価格の安定は米大統領にとり大きな問題であり、バイデン前大統領は、中間選挙の前にロシアのウクライナ侵攻後高止まりしていた原油価格の引き下げのため、カショギ事件に絡んで「排除する」と宣言していたムハンマド皇太子に原油の増産を要請するためにサウジアラビアにまで会いに行かざるを得なかった。
関税政策の対策にも
現在、トランプ大統領は、過激な関税政策を行っており、その結果、米国でインフレが再燃する可能性が非常に高いとみられているが、原油価格を引き下げることが出来れば、ある程度インフレをオフセット出来ると考えているようだ。
4月に石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど主要産油国で構成するOPEC+は、これまで続けていた減産の縮小を決定した。この決定はOPEC+のシェアの奪回が目的とされるがOPEC+の最有力国サウジアラビアの意向が大きな影響力を持つのは間違いない。
しかし、ムハンマド皇太子自身がお金のかかるメガ・プロジェクトを進めており、油価を低下させる事については限界があろう。
5月のトランプ大統領訪問時に1兆ドル以上の対米投資が予定されている由だが、ムハンマド皇太子をくすぐって、金を引き出すつもりなのは当たり前だろう。
また、現在のガザの状況では進展は到底望めないが、トランプ大統領は、引き続きイスラエルとサウジアラビアの国交正常化について関心があるのも間違いない。
サウジアラビアを取り巻く内外情勢だが、内政面では、上記の記事が批判しているように非民主的な専制政治と言えるが、アラブ諸国はいずれも似たような状況であり、内政が理由でサウド家の支配が近い将来に終わるとは思えない。
周辺情勢については、サウジアラビアが一番望まないのはイランと米国・イスラエルの対立・緊張がエスカレートして行くことであろう。2019年には米・イランの緊張のあおりでサウジアラビアの油田が攻撃されている。【4月24日 WEDGE】
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・・・ということで、トランプ大統領は5月中旬、サウジアラビアなど中東3か国を訪問する予定です。
****トランプ大統領 5月中旬にサウジアラビアなど中東3か国訪問へ****
2025年4月23日 8時25分 トランプ大統領 NHK
アメリカのホワイトハウスはトランプ大統領が来月中旬、サウジアラビアなど中東3か国を訪問する予定だと発表しました。
ウクライナやガザ地区の情勢、それにイランへの対応などについて意見を交わすとみられます。
ウクライナやガザ地区の情勢、それにイランへの対応などについて意見を交わすとみられます。
ホワイトハウスのレビット報道官は22日の記者会見で、トランプ大統領が来月13日から16日にかけて中東のサウジアラビアとカタールそれにUAE=アラブ首長国連邦を訪問する予定だと発表しました。
これに先立ちトランプ大統領は今月行われるローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の葬儀に参列する意向を表明していますが、レビット報道官によりますとトランプ大統領は当初、就任後初めての外国訪問先として中東を予定していたということです。
このうちサウジアラビアは1期目のトランプ大統領の初めての外遊先で、2期目でも経済的な結びつきを強化したい考えとみられます。
また、ウクライナでの停戦に向けた交渉の場を提供していることからウクライナ情勢について話し合われるとみられるほか、停戦協議が行き詰まるガザ地区の情勢についても意見が交わされるとみられます。(後略)【4月23日 NHK】
これに先立ちトランプ大統領は今月行われるローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の葬儀に参列する意向を表明していますが、レビット報道官によりますとトランプ大統領は当初、就任後初めての外国訪問先として中東を予定していたということです。
このうちサウジアラビアは1期目のトランプ大統領の初めての外遊先で、2期目でも経済的な結びつきを強化したい考えとみられます。
また、ウクライナでの停戦に向けた交渉の場を提供していることからウクライナ情勢について話し合われるとみられるほか、停戦協議が行き詰まるガザ地区の情勢についても意見が交わされるとみられます。(後略)【4月23日 NHK】
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【5月予定のトランプ大統領サウジ訪問で1兆ドル以上の対米投資に関する合意がなされるとも】
今回サウジアラビア訪問では、サウジアラビアからの4年間で1兆ドル以上の対米投資に関する合意がなされるとも報じられています。
1兆ドル・・・トランプ大統領ならずとも、引き寄せられる巨額です。
****トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対米投資で合意へ****
トランプ米大統領は6日、2期目最初の外遊先としてサウジアラビアを訪問する可能性が高いとの見方を示した。サウジによる1兆ドル以上の対米投資に関する合意を結ぶ見込みという。
ホワイトハウスで記者団に対し、おそらく今後1カ月半の間に訪問すると述べた。また、1期目の2017年に最初の外遊先としてリヤドを訪れ、サウジによる3500億ドル相当(当時)の投資を発表したことに言及した。
トランプ氏は自身の要請でサウジが米国製の軍事装備品購入など、米企業に4年間で1兆ドルの投資を行う用意があるとした。
「彼らがそうすることに同意したので、私は(サウジに)行くつもりだ。彼らとは素晴らしい関係を築いている」と語った。
サウジは米国の外交政策でより重要な役割を果たしつつある。トランプ政権のウィットコフ中東担当特使は6日、ウクライナと和平合意や停戦の枠組みを巡り協議しており、来週サウジでウクライナ当局者と会談する計画だと明らかにした。【3月7日 ロイター】
ホワイトハウスで記者団に対し、おそらく今後1カ月半の間に訪問すると述べた。また、1期目の2017年に最初の外遊先としてリヤドを訪れ、サウジによる3500億ドル相当(当時)の投資を発表したことに言及した。
トランプ氏は自身の要請でサウジが米国製の軍事装備品購入など、米企業に4年間で1兆ドルの投資を行う用意があるとした。
「彼らがそうすることに同意したので、私は(サウジに)行くつもりだ。彼らとは素晴らしい関係を築いている」と語った。
サウジは米国の外交政策でより重要な役割を果たしつつある。トランプ政権のウィットコフ中東担当特使は6日、ウクライナと和平合意や停戦の枠組みを巡り協議しており、来週サウジでウクライナ当局者と会談する計画だと明らかにした。【3月7日 ロイター】
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サウジアラビアがカネに糸目をつけないのが兵器購入。
****トランプ米政権、サウジに1000億ドルを超える兵器売却も=関係筋****
トランプ米政権がサウジアラビアに対して総額1000億ドル相当を大きく超える兵器の売却を検討していることが分かった。事情を直接知る6人の情報筋がロイターに明らかにした。
バイデン前政権はサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化に向けた広範な取り決めの一環として、サウジアラビアとの防衛協定をまとめようとして頓挫していた。バイデン前政権はサウジアラビアが中国製の武器購入を停止し、中国からの対サウジアラビア投資を制限させる見返りに、より先進的な米国製兵器を取引することを目指していた。
ロイターは、トランプ政権の提案に同様の要件が含まれているかどうかを確認することはできなかった。
ホワイトハウスとサウジアラビア政府の報道担当者にコメントを要請したものの、すぐには返答がなかった。
米国防総省の当局者は「サウジアラビアとの防衛関係は、トランプ大統領のリーダーシップの下でこれまでよりも強固なものとなっている。安全保障上の協力の維持はこのパートナーシップの重要な要素であることに変わりはなく、サウジアラビアの防衛ニーズに対応するために引き続き協力していく」と言及した。トランプ大統領は1期目の在任中、サウジアラビアへの兵器売却は米国の雇用につながると称えていた。
2人の情報筋は、米ロッキード・マーチンがC130輸送機を含めたさまざまな先進兵器システムを供給する可能性があると語った。ある情報筋は、ロッキード・マーチンがミサイルやレーダーも供給するとの見通しを示した。
4人の情報筋は、RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)もボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・アトミックスなど米防衛大手からの供給を含めた兵器売却で重要な役割を果たすと予想した。
RTX、ノースロップ、ゼネラル・アトミックスはいずれもコメントを拒否した。ボーイングはコメント要請にすぐには回答しなかった。ロッキード・マーチンの広報担当者は、対外軍事販売は政府間取引だと説明した。
米国の法律では、主要な国際兵器取引は最終決定前に議会議員の審査を受けなければならない。
米国は長年にわたってサウジアラビアに武器を供給しており、トランプ氏は1期目の17年に約1100億ドル相当の兵器売却を提案した。
しかし、18年時点では145億ドル相当の兵器売却が始まったばかりで、駐トルコのサウジアラビア総領事館でサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が殺害された事件を受けて米連邦議会からは疑問視する見方が出た。
バイデン前政権下で議会は21年、カショギ氏殺害事件への抗議とともに、民間人に多大な犠牲者を出したイエメンでの内戦の終結を迫るためにサウジアラビアへの兵器売却を禁じていた。【4月25日 ロイター】
バイデン前政権はサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化に向けた広範な取り決めの一環として、サウジアラビアとの防衛協定をまとめようとして頓挫していた。バイデン前政権はサウジアラビアが中国製の武器購入を停止し、中国からの対サウジアラビア投資を制限させる見返りに、より先進的な米国製兵器を取引することを目指していた。
ロイターは、トランプ政権の提案に同様の要件が含まれているかどうかを確認することはできなかった。
ホワイトハウスとサウジアラビア政府の報道担当者にコメントを要請したものの、すぐには返答がなかった。
米国防総省の当局者は「サウジアラビアとの防衛関係は、トランプ大統領のリーダーシップの下でこれまでよりも強固なものとなっている。安全保障上の協力の維持はこのパートナーシップの重要な要素であることに変わりはなく、サウジアラビアの防衛ニーズに対応するために引き続き協力していく」と言及した。トランプ大統領は1期目の在任中、サウジアラビアへの兵器売却は米国の雇用につながると称えていた。
2人の情報筋は、米ロッキード・マーチンがC130輸送機を含めたさまざまな先進兵器システムを供給する可能性があると語った。ある情報筋は、ロッキード・マーチンがミサイルやレーダーも供給するとの見通しを示した。
4人の情報筋は、RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)もボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・アトミックスなど米防衛大手からの供給を含めた兵器売却で重要な役割を果たすと予想した。
RTX、ノースロップ、ゼネラル・アトミックスはいずれもコメントを拒否した。ボーイングはコメント要請にすぐには回答しなかった。ロッキード・マーチンの広報担当者は、対外軍事販売は政府間取引だと説明した。
米国の法律では、主要な国際兵器取引は最終決定前に議会議員の審査を受けなければならない。
米国は長年にわたってサウジアラビアに武器を供給しており、トランプ氏は1期目の17年に約1100億ドル相当の兵器売却を提案した。
しかし、18年時点では145億ドル相当の兵器売却が始まったばかりで、駐トルコのサウジアラビア総領事館でサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が殺害された事件を受けて米連邦議会からは疑問視する見方が出た。
バイデン前政権下で議会は21年、カショギ氏殺害事件への抗議とともに、民間人に多大な犠牲者を出したイエメンでの内戦の終結を迫るためにサウジアラビアへの兵器売却を禁じていた。【4月25日 ロイター】
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【アメリカ サウジアラビアとの民生用原子力に関する合意形成を加速させる】
兵器購入から更に原子力発電に関する支援となると微妙な問題も。
民生用とは言え、核兵器開発にも関連してきますので。イスラエルとしては民生用でもサウジアラビアが核に関与するのは望まないかも。
****なぜアメリカとサウジは核開発で手を結ぶのか?...各国がそわそわする背景****
<アメリカとサウジアラビアの動向を見守るプレイヤーは、イラン、中国、ロシア、イスラエルなど多数>
アメリカはイランの核開発を抑制すべく交渉する一方で、イランの主要なライバルであるサウジアラビアと、民生用原子力に関する合意形成を加速させている。
イランが核兵器を保有した場合、サウジも同様の道を模索する可能性が高い。
一方でアメリカとサウジの核協力が深化すれば、石油と安全保障を軸に築かれてきた両国の長年の同盟関係を強化しつつ、同地域での中国・ロシアの台頭に対抗する効果もある。
合意できれば、米企業がサウジ初の原子力発電所の開発を主導できるようになり、サウジがアメリカに拠点を置くウラン濃縮施設への投資を伴う可能性も出てくる。
これはアメリカがロシア産濃縮ウランへの依存を減らすのに役立つと、米シンクタンクのブルッキングス研究所は指摘する。
協議は進展する可能性が高いが、少なくとも数カ月かかる見込み。核保有国とみられるイスラエルは、この合意がサウジの核開発への道を開くことを阻止すべく動くだろう。【4月21日 Newsweek】
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アメリカは2008年、NPT(核拡散防止条約)に加盟していない核兵器保有国インドと「米印民生用原子力協定」を「例外的に」締結し、民生用原子力開発の支援を行う道を開きました。
中国に対抗する勢力としてインドをアメリカ側に取り込むという地政学的現実を核拡散防止の理念より優先させた結果です。
インドに比べると、サウジアラビアはNPT加盟国ですから(ただし、より厳格な査察を可能にする枠組みである追加議定書には署名していません)、民生用原子力の支援はハードルは低いかも。
ただし、火薬庫のような(と言うより、すでに火の手がいくつもあがっている)中東のバランスを崩す危険性があります。
イランの核開発(イランは民生用と主張しています)への対応にも影響するでしょう。
なお、サウジアラビアについては、パキスタンの核開発を資金的に支援し、有事の際にはその核兵器を入手できる「密約」が存在するという話が以前からあります。
これについては確実な証拠はなく定かではないものの、状況証拠的なものはあり、地政学的にも「あり得る話」とも見られています。