孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク  国会議員さんはメッカ巡礼中

2007-12-11 16:03:09 | 世相

(メッカ 中央の四角く黒い建物がカーバ 黒色は全体を覆う布の色だそうです。このカーバの周囲を7回まわります。 画面全体に何十重と取り巻く小さい白いぽつぽつしたものは人間です。全体で100万人収容できるそうですが、見ているだけで酸欠で息苦しくなりそうな・・・そんな感じです。 “flickr”より By alfredogutierrezch)

どこの国でも文化の違いによるストレスはあるものです。
イラクのこんなニュースも、そのひとつでしょうか?

*****メッカ巡礼による議員の大量欠席でイラク国会休会*****
毎年恒例のメッカへの巡礼のため、イラクでは国会議員70人以上が国会を欠席する事態となっており、イラク国会は国民和解に向けた法案など重要な議題が残されているにもかかわらず、休会を余儀なくされている。
6日に開かれた前回の国会では、275議席中、出席したのはわずか160人だったという。
国民和解に向けた成果を上げられないヌーリ・マリキ政権に米政府がいら立ちを示すなか、イラクの政治的惰性が見られている。【12月10日 AFP】
*********************************

以前も“夏休み”で同様のことがありました。
今年5月、「石油収入の再分配」「地方選挙の実施」「バース党員の公職復帰を認める」などの懸案の法案が1つも成立していない状態で、イラク国会議員が2ヶ月の夏休みを予定していることに対し、アメリカが「イラク国会の休会は国際社会だけでなくイラク国民に間違ったメッセージを伝えることになる」と苛立ちをつのらせていました。
イラク議員からは「これは不要な干渉。議会には責任感があり、緊急に法律を制定する必要があると判断すれば休会しない」「米国の干渉は理解しがたく、望ましくない結果をもたらす」といった批判・不満が出ていました。【5月6日 AFP】

夏休みのほうは結局1ヶ月に短縮されました。
法案が成立していない状態のままの休会には変わりありませんでしたが。

この手の問題は国際関係に限らず、企業進出・海外生活でも、普通の観光旅行でも、誰でも経験するところです。
個人的にはアメリカの苛立ちに同情しますが、今回の場合、具体的な“文化の違い”として三つほど考えられます。

ひとつは、一般的な時間の使い方、仕事の効率性に関する意識の違い、要するに日米に比べて“のんびりした”国が多いということ。
二つ目は、現地の事情がよく理解できないこと。今回のケースで言えば、“メッカ巡礼”がどれだけ現地の人々にとって重要なものであるか、外国人である日米の人間には理解できない部分があるのでは。
外国人からすれば、“この時期にメッカ巡礼などしなくても・・・”と思ってしまいますが、ひょっとしたら現地の人にとっては“メッカ巡礼より大切なものがあるのか!”という問題かも。

三つ目は、日本でもそのようなところがありますが、欧米的な“議会”を必ずしも絶対的なものとは考えていない・・・という意識の差があるのでは。
アメリカ人が考える“民主的議会”とは機能の仕方が少し異なるところがあるのかも。
日本の場合も、“国会においてオープンで真摯な質疑が交わされ、そこで何らかの合意が成立する”というケースはあまり見ません。
重要な部分は、有力者間の非公式な折衝の中で決まっていくのでは・・・、国会って結局形式的な儀式の場では・・・という思いが拭えません。
イラクでも、“重要な部分は族長や宗派指導者などの有力者間の話で決まり、国会は所詮・・・”というところもあるのでは?

ところで、イラク情勢は引き続き落ち着いているようです。
ゲーツ米国防長官は5日バクダッドで会見し、武力衝突の発生率がこの2年で最低であること、相当数の難民が帰還していること、また約7万人のイラク人が米軍と共に国際テロ組織アルカイダの掃討作戦に参加していることなどを挙げ、「イラク全土で治安状況は劇的に変化している」と、イラクの安定化および民主化は実現間近なところまできていることを主張しています。【12月6日 AFP】

また、ペトレアス多国籍軍司令官は6日の記者会見で、イラク国内の治安が改善傾向にある理由として、「イランが提供した武器絡みの典型的な攻撃」が減少したことや、シーア派民兵組織を率いる反米指導者サドル師が武装活動停止を宣言したことを挙げています。
高性能路上爆弾などのイラン製武器の減少については、「在庫が尽きたのか、(武器支援を)停止するよう指示があったのか」はわからないとのこと。【12月8日 毎日】

もちろん落ち着いているのかどうかは比較の問題で、治安改善を伝えるニュースと一緒に、いまだに爆弾テロのニュースも絶えません。
5日にはバグダッドのシーア派居住地域で車に仕掛けられた爆弾が爆発、14名死亡、28名負傷。
この爆発は、上記のゲーツ米国防長官が会見を始める直前に起きたそうです。
8日には北部のバイジで車両爆弾による警察建物への自爆攻撃があり、少なくとも6人が死亡しました。

ブラウン英首相は今月9日、2週間以内にバスラ州の治安権限をイラク側に移譲すると発表しましたが、最重要な原油の輸出拠点であるバスラ等の南部支配権をめぐっては、かねてよりシーア派の2大勢力、サドル師の民兵組織マフディ軍と治安部隊の実権を握るイラク・イスラム最高評議会の間で対立があります。
イラク治安部隊が先月17日ディワニヤで、マフディ軍に対する掃討作戦を開始したとの報道もありました。【11月19日 AFP】
イギリスからの権限委譲に伴って、この対立が火を噴かないといいのですが。


(くどいですが、これも同じカーバの様子 “flickr”より By ♥♥QATAR.♥♥.Hams al-Shefaayef.♥♥)


 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 台湾  時代は変わる・・・... | トップ | インドネシア  消える森林... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

世相」カテゴリの最新記事